エル様漫遊記・覇軍の策動偏
「…まったく。無茶をしますわね。」
戦いがひと段落し、ルークにと何やらいっているミリーナ。
戦いの中、シェーラが落としたドゥールゴーファをつかみ、
逆にシェーラにときりつけたルークに対してのミリーナの最もな意見。
「でもよく支配されませんでしたね。ルークさん。」
そんなルークにと問いかけているアメリアに対し、
「…あの空間…だったからじゃないのか?
……あれ、どうもみてもリナが【あの力】を使っていたようだし……」
検討はずれなことをいっているゼル。
とりあえず、人々に憑依していた魔族たちはあっさりとその力を削ぎ、
器という媒体があるにも関わらず、具現化できるほどの力をなくしている。
それゆえに、器となっていた人々の肉体がそこらかしこに転がっていたのを一箇所にと集めたばかり。
なぜか動いていたのはそんな下っ端魔族ばかりだったというのに、
腹を薙がれたり下半身を失ったり。
挙句はシェーラやグラウシェラーが放った威嚇攻撃にあっさりと直撃し、
薄皮一枚で胴体とつながっていたりする兵……など。
アルスやジェイドにいたっても例外ではなく、なぜか怪我を負っていたりする。
とりあえず、アメリアやシルフィール。
そしてミルガズィアなどがそんな人々に回復魔法をそんな人々に施してまわっている。
手足などを失っていた存在たちに関しては、ひとまずそれらを再生させてから【空間】を元通りにし、
今あたし達がいるのは元のディルス城の謁見の間――
「そこのエルフほどじゃあないと思うぞ?」
戦いの中、ゼナファの装甲を解き、とにかく光線を出しまくっていたメフィーを見つつ、
ルークがそんなことをいってくるけど。
「ま。ルークがのっとられたら、戦う相手が増えただけだけどね。」
というか、ルークにはそれは通用しないけど。
何しろルークの精神の中にはSのやつがいるし…ね♡
当人は判ってないけど♡
「とりあえず…っと♪さって。グラウシェラー?わかってるわよねぇ。
ひとまず後始末をするのもあんたの役目ね♡
ちまちまと人間の国なんか相手にして行動するんじゃないの♡――わかった?」
なぜか完全に色がなくなり透明と化しながら、
何とか実体化を保っているシェーラとグラウシェラーの二人にと話しかける。
ダメージ的には色がかろうじて残っているシェーラよりグラウシェラーのほうが大きいけど。
…ほんと、情けないったら……
実体化していた一部とその本体。
それぞれにダメージを受けたために色すらとることが不可能になってるし…こいつは……
ガウリイ一人に力の半分…削がれてるのよねぇ~…グラウシェラーのやつは……
まったく……
ガウリイの一撃一撃は、確かに岩が水滴を打つ程度のものに過ぎないにしろ、
その力と技は今までの経験上磨かれている。
だからといって…ねぇ~……
本体の一部を実体化していたグラウシェラーは、メフィがゼナファアーマーの装甲を解き、
その体に装着させ、本体と一時遮断した後。
その後、ミルガズィアが力の全てを出し切ってグラウシェラーにと向かっていき、
実体化していたグラウシェラーの方は、ダメージを受け一時姿を消したのだけど。
最も、本体が残っていることもありすぐさま再生していたりする。
「とりあえず。これで少しはミルガズィアさん達も魔族さんたちの戦いになれたかしら?」
シェーラとグラウシェラーに対し、にこやかに話しかけているあたしの少し後ろでは、
にこにことミルガズィアやメフィにと話しかけているユニットの姿が見てとれる。
そして、未だに放心状態のジェイドを初めとした兵士達の姿がこの場において見受けられていたりするけど。
「さあ!グラウシェラーさん!今こそ率先して正義の心に目覚めましょう!」
そんな兵士達を気にするわけもなく、未だになぜか倒れているグラウシェラーにと何やら言っているアメリア。
「……とりあえず……だ。あんたもリナが関わっていて災難…もとい、思惑外だったろうが。
とにかく、詳しくはなしてくれるか?」
アメリアをおしとどめつつ、コメカミを抑えながらも、グラウシェラーにと問いかけているゼルの姿。
そんな状況の中、
「――どうやらこちらも終わったようですね♡覇王様。シェーラさん。お疲れ様でした♡」
虚空よりふいっとゼロスが姿をあらわし、そして。
「どうにか生きてたか。」
「ですわね。」
などといいつつ、ゼロスに続き出現してくる人影二つ。
「「……うっ……」」
その姿をみて、ミルガズィアとメフィが同時にうなり、そして。
「あれ?お久しぶりです。ゼラスさんにダルフィンさん。」
そんな二人にと話しかけているアメリア。
言うまでもなくゼロスに続き虚空より出てきたのは、ゼラスとダルフィンの二人。
どうやらそろそろ終わったらしい。
というのと、グラウシェラーの気配が弱くなったのをいけて様子を見に来たようだけど。
「……あんたたちは……」
そんな見知った二人の姿に思わず目を丸くするルークと、
「……新手…というわけではなさそうですわね。」
彼らが戦いに来たのではない。
と感じ取り、ほっとしつつも多少声を硬くしていっているミリーナ。
……ゼラスにダルフィンって……
多少意識を取り戻しかけている人間達などの一部からは、そんな思いが流れ出していたりする。
ま、Sの…つまり、この惑星上において、【魔王の腹心】なんて、確実に名前を言える存在。
などはそのあたりに携わる存在とかでないとあまり知られてないからねぇ。
ま、呼び名はけっこう知れ渡っているようだけど。
「お久しぶりでございます。」
「皆様。お元気そうで何よりですわ。」
二人はいいつつも、深々とあたしに対してお辞儀をし、アメリアたちに向かってそんなことをいっていたりする。
いきなり現れた真珠のネックレスに青いワンピースのドレスの漆黒の長い黒髪の女性。
そして、身軽な旅人風な服を纏った淡い金髪を後ろで短くまとめている女性。
そんな二人の姿をみて、動揺を隠し切れないアルスたち。
そういえば、アルスたちはこの二人に会ったことはなかったわねぇ~。
そんなアルスや、アメリアたちの反応を気にするわけでもなく、グラウシェラーにと目をやり、
「グラウもわかっていませんわね。
今この時期に目立つような行動をすれば、この御方が関わってくるのは明白でしたでしょうに♡」
ひらひらのついた扇子を開いて手にもちいうそんな青いドレスの女性、ダルフィンの言葉に、
「…お前らはそれをしっていても何もいわなかただろうが……」
「それは当然だろう。グラウ。我々の優先すべきことの順序からすれば…な。」
グラウシェラーのつぶやきに、あっさりともう一人の女性…即ちゼラスが答え、
そして。
「さて……。同僚の不始末において、私達も何かすることありますか?」
などとあたしに対して聞いてくる。
今回の一件に率先して関わらないと決めたのはいいものの、
だがしかし、後始末くらいは手伝わないと後が怖い。
という理由でやってきているこの二人。
ちなみに二人の仕事は全て今あまり動けない状態にいるフィブリゾにと回っていたりする。
そんなゼラスの声に続き、
「そもそもわたくしたちにすら、きちんと報告をしてこなかったそちらも悪いんですのよ?
しかし…面白いことをなさっていますわね。
ほとんどガーヴがやっていたこととかわらないんじゃありませんの?」
などとにこやかに言い放っているダルフィン。
まあ、こいつは前例があってそれを実行する。
というあまり情けない性格してるからねぇ。
まったく……
そんな二人に対し、
「……まあ聞くのも何か怖いので…どうしてあんたたちまで来たのかは聞かないが……
話の内容からして、今後の後片付けは任せてもいい。ということか?」
おそらくリナが関わっているので何もしないと後が怖い…
とでもいったようなことを思って出てきたんだろうが……
リナはアレと間違いなく関わりがあるだろうし…な。
そんなことを内心思いつつも表情には表さず、額を片手で押さえ軽くため息をつき、
淡々とそんな二人に対して話しかけているゼル。
「…えっと……。そ、そういえば。あなたはどこにいっていたのですの?」
こちらここちらで半ば現実逃避をしつつも、話題を変えようとゼロスに問いかけているミリーナ。
先ほどの今である。
それでなくてもほとんど自分達を除き、他の人々は気が狂いかける寸前のはず。
今もしここで、この二人が……
……自我を崩壊させてしまう人が出てもおかしくはない。
まったくもって、何もわかっていない兵士達のことを思いやりながらどうにか話題を変えようとしているミリーナ。
だがしかし、ミリーナもまた多少同様しているので質問的にはその意図にあっていないものになってるし。
「僕ですか?他にも入り込んでいた人たちにこの場より退いてもらっていたんですよ。
いやぁ、民間人の中にも成り代わって生活していた人たちもいましたのでね♡」
そんなミリーナにとにこやかに答え。
そして、
「あ。リナさん。とりあえずこの町にいた魔族の方々にはお引取りを願いましたので♡」
あくまでも町にいたヤツラだけ…というのがゼロスらしいけど。
城下町や城内においても目の前で、『仲間』と思っていた存在達の姿が溶け崩れたのをうけ、
面白いまでに何やら更にパニックが広がっていたりするようだけど。
まったく…物質世界に具現化できなくなる程度くらいにゼロスは力を抑えて攻撃していた。
というのに。
それで滅びている輩も少なくない。
そこまでわざわざ説明する必要もないのでいわないけど。
「…少しいいか?…その…?その者たちは?それに……」
なぜか先ほどの光景を垣間見て、髪を真っ白にしたアルスが震える声でふらふらとしながら聞いてくる。
どうもいまだにきちんと理解できていないようだけど。
先ほどシェーラが放った衝撃派で、いともあっさりと肩をばっさり消滅させてたし……このアルスは……
国王だと思っていた人物は、目の前でまったく知らない男性にと姿を変え――
さらにその前に、壁をスクリーンと化した状態で映し出された二つの肉塊のうちの一つから、
ウェルズ国王の声をアルスは聞いている。
それらもあってどうやら思考がきちんと定まっていないようだけど。
「そんなことより♡それじゃ、ダルフィンは城内の騒ぎを収めてね♡で、ゼラスは城下町担当♡
グラウシェラーとシェーラはこれから本物の国王のところに一緒に言ってみんなに説明♡
ゼロスはゼラスの手伝いね♡ってことで♡さ、いきましょ♡
道々ついでにゼルやミルガズィア達にも判るように説明なさいね。グ・ラ・ウ♡」
びくぅぅ!!
にっこりというあたしのその言葉になぜか思いっきり体を震わせているグラウシェラー。
たかが、これしきのことでそんなに恐れおののかなくても……
「気にしなくてもいいのよ。アルス。こいつらのことなんて♪それよりウェルズのところにいきましょ♡」
グラウシェラーに言った後にアルスの問いに答えにっこりと微笑み軽く指を鳴らす。
と。
シュ……
その刹那。
この場…即ち、謁見の間にいた全ての存在がとある地下室へと瞬時に移動する。
「…リナぁ……。だからいきなりはやめろってば……」
抗議の声を上げてくるガウリイはとりあえずほうっておき、
目の前にとある鉄で多少補充されている一枚の扉に手をかざす。
ギギィ~……
『う……うぁぁ……』
鈍く音を立てて開く扉の奥から聞こえてくる声というかうめき声が二つ。
扉が開くと友に、肉が溶けかけた腐臭もまた辺りにと立ち込める。
部屋の中はガランとした石牢のつくりとなっており、ランプに照らされた床の上。
石畳の上に転がっている肉の塊が二つほど目に入る。
その肉の塊にと張り付いているそれぞれの顔があたし達の姿を認め、
『……殺してくれ…頼む…殺してくれ……』
などといってくる。
兵士の幾人かは、その声の阿智の一つがウェルズのもの。
また、張り付いている顔もまたウェルズ国王そのもの。
ということもあり、その事実に気づき半ば硬直していたりもするが。
「さってと♡これが本物のウェルズ国王なんだけど。説明なさいね?」
未だになぜかその体に、本当になぜか幾本のピッケルを突き刺したままのグラウシェラーにと語りかける。
そんなあたしの声に、
「……うう…判りました。今回のこれは……」
いって素直に話し始めるグラウシェラー。
ゼラスたちはといえば、一応一緒に移動したものの、行動は早いほうがいいだろう。
というのであたしに一言断って、それぞれ後始末をするために移動していっている。
「…なあ?本気でいつも思うんだが……。リナって一体何なんだ?
あっさりと腹心連中まで手玉にとってるし……」
「俺たちに聞くな。俺たちに。……まあ、リナに関しては、おそらく。『
――それとかかわりがあるのかもしれない。ということくらいだ。
……魔族は本来、契約を交わしたものか、より強いものにしかかしづかない。
リナの力は…それを覆すほどに神族。魔族たちにとっては驚異的なんだろう。
……何しろ自在に『その力』を使えるし…な。」
ルークのそんな質問にため息まじりに答えているゼル。
ま、あたし自身が『そう』だとは、いまだに気づいてないのよね~♡
ゼルたちって♡
ガウリイはすでに判っているのにねぇ♡
くすっ♡
シェーラが来てから国王は変わった。
周囲にはそう見えていただけのこと。
何のことはない。
シェーラの色香や魔力でたぶらかされていた国王などは元々いない。
そもそも、シェーラが登用されると同時、グラウシェラーはウェルズと入れ替わっていたのだから。
シェーラはグラウシェラーの存在を隠す為のいわばカモフラージュ。
「不審に思って探りを入れてこようとした人々は全て、実験材料とし……」
「全ては人の心のうちに封じられし、赤眼の魔王様を見つけ出し…封印を得こと。
人の世が負の気で満ちれば自然、封印も弱まる――」
半ばあきらめ、掻き消えるような声で説明してくるシェーラとグラウシェラー。
そんな二人をみつつ、
「まあ。それって以前の降魔戦争でフィブリゾのやつがやったこととまったく同じだけどね。
あのときは人の戦いの中で大切な人を失ったレイ=マグナスがその身の中のSを受け入れて。
そして結果として覚醒したんだし。」
「……そういえば。レゾのときは目を開きたい。という執念だったな……」
そんなあたしの台詞に、ふとレゾのことを思い出してぽつりとつぶやいているゼル。
「ま。この国を選んだのは、後エルの……
……というか。『金色の王』のことがさらに外部に漏れないようにするため。
というのもあるんだろうけど。そもそも国の仕組みって面白いしね♡
国王が理不尽なめいめいを出しても無条件に下の存在は従うし♡
最も、それを止める人がいない国は長続きしないけど♡」
いくら上司が理不尽な命令を出しても、それを止めようとするものがいるのといないのとでは、
国の発展の仕方が大きく異なる。
…最も、あえて部下を試す意味をこめて命令を下すこともあるようだけど。
……あたしの場合は別。
というか、一応部下っていうことにはしてるけど、そもそも竜神や魔王。
つまりは世界を任せているやつらとあたしとでは、存在からして違うし。
そもそも、あたしが彼らを【創造った】んだし……
ま、これは全員理解してるし…ね♡
あいつらは♡
一部、勘違いしているヤツラもいることにはいるけども。
そんなユニットの言葉をききつつ、
『………今………』
金色の王のこと【エル】って……
たしかよくリナがそう呼ばれているような……
果てしなく怖い予感がしたのは……気のせい(か)(でしょうか)?
などと思いつつ、異口同音につぶやいているルーク・ミリーナ・ゼル・アメリア・シルフィール。
そしてメフィとミルガズィア。
この七人。
あら♡
今彼らが思ったことが真実なんだけどね♡
ふふ♡
-続くー
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あとがき:
薫:なかなかにいい区切る場所が・・・・・長くなるのでひとまずここで区切るのです。
・・・アメリア達…まだ気づいてません。
というか、気づきたくないのかもしれませんね(汗
本能的に……
何はともあれ、ではまた。次回にて・・・
2006年4月1日某日
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