エル様漫遊記・覇軍の策動偏

扉を開くと同時。
あたし達の方にと向かってくる光の帯が数十個。
だが、それらが突き進んでくるものの、
「「「「虚霊障界ヴーム・エオン」」」」
アメリア、ゼル、ルーク、ミリーナの張った対魔法結界があたし達全員を包み込む。
「あ♡あたし達は手出ししないから♡」
「アルスさんとジェイドさんはこっちにね♡ガウリイさん達の邪魔になるから♡」
交互に言うと同時、特定の存在からは視ることの出来ない防壁を、ゼロスとアルスとジェイドに張り巡らせる。
あたしやユニットは別に何もしなくても、相手に気づかれないようにするなんてわけないし。
あくまで三人に対しては、他の存在の目があるゆえの処置。
…別にわざわざこんなことをしなくても簡単ではあるんだけどねぇ~……
ま、物事にはのりも大事だし♡

ヴァバババ!
数十の光条が、結界にとあたって砕け、光と化して宙に散る。
第一派の攻撃を結界が受けきったその直後。
「メキドアーク!」
ゴウッン!
メフィの放った【力ある言葉】と同時に、その先にいた、二・三体の黒い物体が紅蓮の炎に包まれる。
ゴォォォ……
炎とうなりとともに、その黒い物体もどきは消滅してゆく。
「メフィさんっ!」
だがしかし、それが【何を意味しているか】ということに気づいたアメリアが声を上げるのとほぼ同時。
「……ここにいるヤツラ……全員元人間……だな。」
などといい、額に手をあてため息をついているガウリイ。
くすっ♡
「そういうこと♡で別に大丈夫よ♡気にしなくても♡彼らに憑依している下っ端だけを倒せばいいんだし♡」
まあ、この中の人間達の幾人かの魂はすでにあたしの元に還りきている存在もいるけど。
そんなあたしの声をうけ、改めて部屋の中を見渡し、
「…なるほど。ずいぶんと悪趣味…だな。」
などとつぶやいているミルガズィア。

部屋の中にといる三十二体ほどの黒い影。
彼らは柱の姿に擬態している他の二体の魔族とは異なり、全て元人間。
シェーラに反対し、魔族化されたもの。
また、事実に気づいて口を封じられたもの。
など、人それぞれ理由はあるにしろ。

「…なるほど。これが全て元人間…ってか。一体何でまた……」
攻撃しようにも、相手が【元人間】と聞かされ、戸惑いの声をだしているルーク。
いくら見た目人間とは異なる。といっても一応は元人間。
しかも、罪のない人々ばかり。
と判っているがゆえに。
人、というのもはそういう場合少なからず戸惑い躊躇する。
以前のルークならば、何も考えずに倒しているところだけど。
「――とりあえず。この空間を作っているやつらから倒せばいいんじゃないのか?」
そのまま言うなり、だっと炎の屋やらが飛び交う部屋の中を駆け抜けていき、
ガウリイはそのまま部屋の一角にとあるいかにも不自然な柱にとむかっていく。
そして。
「――はぁっ!」
ザッン!!
気合とともに剣を一閃し、二つの柱にときりつける。
「ぎ…ぎゃぁぁぁぁ~~~!?」
どろり……
ガウリイが柱にきりつけると同時、周囲に叫び声が響き渡り、
柱の姿にと擬態していたそれは、瞬く間にと溶けるようにしてそのまま崩れ掻き消えてゆく。
と。
シュ……
小さな音とともにね結界に包まれていた【場】が崩れ、そして――
結界が解けたその場には、赤い絨毯の先にとある玉座。
そして、その玉座に座っている男性と、その側に立っている女性の姿が見てとれる。
何のことはなく、ただ単にガウリイが、結界を張っていた魔族を倒したので、
その結界が解けて本来の部屋にともどっただけなんだけど。


「――何事だ?」
あたし達が結界から抜け出るのと同時。
あたし達にと向かって投げかけられてくる一つの声。
そして、
『――陛下!?』
アルスとジェイドがその姿を認め、叫ぶのと、
「リナさん!ガウリイ様!」
バタン!
と別の扉が開き、後ろに数名の兵士を引き連れたシルフィールが姿をあらわし発する声とが同時に重なる。

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?』

しばし、一瞬の間をおき、そして何やら互いに顔を見合わせ。
そして。
「……今……」
果てしなく聞きたくない名を聞いたような……
などと思いシルフィールにと視線を向け、そして再びミルガズィア達…つまりはこちらにと視線を向けてくる。
シェーラ達の視界にはあたしやユニット。
そしてゼロスやジェイドの姿は視えていない。
結界が解除されると同時に、アルスの姿のみは彼らにも認識できるようにしておいたけど。
姿が見渡しても視えないことにほっとしつつ。
そして。
「何事だ?アルスよ。そのもの達は何なのだ?今お前は謹慎中の身のはず。」
「アルス殿!もしや陛下の命を無視し、
  挙句はそのような輩や異形の存在と結託し、陛下のお命を狙ってきたか!?」
二人動くことなく何やらいってくる。
…気づきなさいよね…まったく……

そんな二人の会話をききつつも、
「陛下!その女からお離れください!その女は!!」
さすがに一度、シェーラの手…正確にいえば、ドゥールゴーファにより魔族の器となったがゆえに、
シェーラが魔族である…ということは疑いのない事実。
と遅すぎではあるが真実を捉えている。
それゆえにこそ、ウェルズ本人…と未だに思っている『国王』を助けようと、
ジェイドが玉座に座っている人物に向けて叫んでるけど。
姿を視えなくしているというだけなので、声は彼らにも聞こえる。
それゆえに、その声にと驚き声の聞こえてきたほう。
つまりは、あたしのいるほうにと視線を向けてくる二人の…つまり、シェーラとグラウシェラーの姿がみてとれる。
そしてまた、
「…なっ!?これは…!?陛下!?」
謁見の間だというのに、
あからさまに異形としか言いようのない人型のようなものが三十体ばかりあるのを目にし、
驚きの声をあげているシルフィールと共にやってきた兵士達。
「あらあら。シルフィールさん。兵士さん達をつれてきたんですか?
  つれてきたほうがどちらかといえば大変なのに♡」
くすくすと、そんなシルフィールにと向かって微笑みながら話しかけているユニット。

ピッシ……
その声とともに、あからさまに音を立てて一瞬固まり、
そして。
「……ま…ままままさか……」
カタカタと震え始めるシェーラに、ガタリと椅子から立ち上がっている国王のふりをしているグラウシェラー。
なぜか恐怖した『負』の気を振りまきつつ立ち上がっていたりするけど。
「まったく。本当に、今の今まで気づかないとはねぇ。」
パチン♪
軽く指を鳴らすと同時、グラウシェーラーとシェーラにも、
あたしやユニット、そしてゼロスやジェイドの姿が確認できるようにとなり――
「き…きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~!!!」
「なななっ!?何で貴女様がここにぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

なぜか思いっきり叫んでいるシェーラに、面白いまでに狼狽しうろたえ叫んでいるグラウシェラーの姿が。
驚きの余り、グラウシェラーのやつは、一瞬のうちに、【ウェルズ国王】の姿であることをやめ、
本来よくとっている形状の姿の一つにと成り代わっていたりする。
その変化を目の当たりにし、固まっている存在も数名いたりするけど。
まあそれはそれで無視するとして。
そして、
「ど…どういうことだ!?ゼロス!?」
狼狽しつつゼロスにと問いかけてるけど。
まったく……
「あのねぇ。本気にこのあたしに隠れて何かできるとでも思ってたわけ?あんたは?
  そ・れ・に♡初めにちょっかいかけてきたのはそっちだし♡」
「グライアさんを器として具現化していた魔族さんが、『目撃者は殺す。』とかいって仕掛けてきたんですよ♡」
にっこり微笑み答えるあたしに続き、にこやかに追加説明しているユニット。
そして。
「ま。そういうわけです。僕らとしてはリナさんの意見・意思が何よりも先決。
  ゆえに、他の腹心の皆様方も『覇王ダイナスト様には仕方ない。』とあきらめてもらう。
  というので万全の一致をみてますので♡」
さらり、とそんなグラウシェラーに対してにこやかに答えているゼロス。
余りの驚きに、その【存在自体としての力を隠す。】
……ということすら、綺麗さっぱり忘れ去っているこのグラウシェラー。
その【気配】に圧倒されてほとんど動けなくなっているルーク達。
そしてまた。
「やはり覇王ダイナストさん!あなたがこの一件の黒幕ですねっ!一体何をしようとしていたんですか!?
  さあ!今ここに全てを懺悔し、そして正義の心にと目覚めるのですっ!」
しばらくSと一緒に行動していたこともあるせいか、
まったく動じることなくアメリアがグラウシェラーに向けてポーズを決めて言い放つ。
「……お前なぁ~……。…とりあえず、確認のためにきいておきたい。
  本物のウェルズ国王はどうしたんだ?」
アメリアの言葉にため息をつきつつも、言っても無駄だと悟り、淡々と問いかけているゼル。
「……城の端で呻く肉塊がひとつから二つに増えたところで気にするものなどはいないので…な。
  それはそうと…何で貴女様が……関わりになっている。と知っていれば……」
などと、ゼルの質問に答えたのち、何やらいじけ始めてるけど。
「……ああもうっ!細かいことをいわないのっ!あんた借りにも一応Sの腹心でしょうがっ!
  この世界では高位魔族として位置してる存在でしょうっ!何を根性のないことをいってるのよっ!」
どすっ!
ぐさっ!
「ぎゃっ?!」
あたしの一喝と同時、
ちょっとした大きさのツルハシがグラウシェラーの上空にと出現し、そのまま頭から突き刺さる。
ツルハシでまともに頭から貫かれ、その場に倒れているグラウシェラー。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
なぜかそれをみて無言になっているほかのものたちは、とりあえず無視するとして。
さってと♪
「とりあえず♪これで役者はそろったわけだし♡少しは楽しませてよね♡
  シェーラ。それにグ・ラ・ウ♡」
びくぅぅ!
にっこりというあたしの言葉に、あからさまに体を震わせるグラウシェラーに、
「もういやぁぁ~!!何で毎回このお方が係わり合いになってくるのよぉぉ~!!」
ほとんど泣きべそ状態に陥っているシェーラ。
「まあまあ。シェーラさん。気にしたらダメですよ♡」
「気にするわよっ!」
和やかにそんな会話をしているあたし達やゼロスをみつつ、はっと我にと戻り、
「…こ…これは一体……」
呻くようにして声を出しているアルス。
「だ・か・らぁ♡牢の中でも説明したでしょ?
  ウェルズ=ゼノ=ガイリアのふりをしていた覇王ダイナストグラウシェラーと。
  そしてその直属の部下でもある、覇王将軍ジェネラルシェーラ。この二人がいるって♡
  ま、それはともかく♡ガウリイは今までの経験を生かしてこいつの相手ね♡」
そんなアルスにと軽くこたえ、
未だにツルハシを頭に突き刺した状態で転がっているモノに視線を向けてガウリイにと話しかける。
「……オレは別にかまわんが……。何かあわれだなぁ……」
そんなグラウシェラーをみて同情し、ぽつりとつぶやくガウリイだけど。
別に同情するようなことは一つもないし。
「さってと。アメリアたちはそこの『元人間』達をお願いね♡
  精神世界面アストラルサイドが視える空間にしておくから♡
  下っ端魔族たちだけを倒していくのは簡単でしょうし♪」
パチン♪
顔の横で指を鳴らすと同時、
人の目には視えていなかった精神世界面アストラルサイド側の光景が、物質的な視野にと入り、解け混じる。
覇王の本体ともいえる、精神体や、シェーラの本体。
そして、またゼロスの本体なども多少垣間見えていたりするけど。
なぜかそれらが発する『威圧感』にと気おされ、動けなくなっているアルスやジェイドたち。

「……つ~か!んなもん視せてくんなっ!!」
「…さすがに巨大……ですわね……」
それを目の当たりにし、なぜか文句をいってくるルークに、額に一筋汗を流しつつつぶやいているミリーナ。
別に彼らの本体が視えた程度でそんな反応しなくてもいいでしょうに♡
「ガウリイはそれじゃあ。グラウシェラーのヤツの本体担当ね♡
  ミルガズィアとメフィ。そしてシルフィールはあたしと一緒にこっちの具現化しているほうのヤツ担当♡
  シェーラはルークとミリーナ。あと参加しなくてもいいけどアルスやジェイドたちね♡
  ゼルとアメリアはこの場にいる下っ端魔族たちの駆除♡
  ゼロスは…そうねぇ。他にも入り込んでいるヤツラと遊んできなさいな♡」
そんなあたしの言葉をうけて、
「判りました。それじゃあ、覇王様。シェーラさん。
  まあ滅ぼされることはたぶんまずないでしょうから頑張ってくださいね♡」
たぶん、まず、という言葉を強調し、
ふっ。
いうなりこの場より姿を掻き消すゼロス。
そんなゼロスをみて。
「卑怯よっ!ゼロスっ!」
何やら叫んでいるシェーラだけど。
「さってと。今のあたしの振り分けに異存のある人♡」
「十分大有りだっ!…つ~か、オレとミリーナでシェーラと戦えってか!?」
「普通なら勝てませんわね。」
「大丈夫よ♡ルーク達を殺したりでもしようものならあたしがお灸据えるし♡
  それに死んだとしてもすぐに生き返らせてあげるから♪」
「というか。今この空間内って、絶対に死ねないようになっているので、
  気にしなくても大丈夫ですよ。ルークさん。何があっても肉体から精神体が……、
  つまり魂自体が抜け出すことが出来ない空間になってますから♡」
にっこりと微笑むあたしに続き、詳しく説明しているユニット。
『……死ねないようになってるって………』
なぜかあたしとユニット以外の全員の声が重なるが。
「ともあれ♡お遊…でなかった。決着ケリは一応つけましょ♡
  あんたたちも文句ないわよね?何しろ先にちょっかいかけてきたのはそっちの落ち度♡ということで♡」
にこやか~なあたしの言葉に、ほとんど姿が透けかけているシェーラに、
「うう……。どうあがいても逃れられない…か……」
などと倒れているまま泣き言をいっているグラウシェラー。
そんな彼らの様子をみつつ。
「……だから。リナ殿はいったい…本当に何者なのだ?」
「ものの見事にあの覇王ダイナストですら…畏れてますね……」
「…まあ、あの北の魔王ですらリナ殿に対しての畏れようは…普通でなかったから…な。」
シェーラやグラウシェラーの本体からしてみれば、あたし達は普通の存在。
ただの人間。
と彼らの目には視えている。
最も、あたしの気配を少しでも解放したりするものならば、
この町など一瞬も立たないうちに消滅するだろうけど。
町といわずにこの惑星、強いてはこの銀河全てが。
とりあえず、そんな会話をしているミルガズィアとメフィはひとまずおいとくとして、
「舞台を盛り上げるのに空間を少し変えて…っと♪」
トッン♪
軽く床を踏みしめると共に、瞬時に周囲の光景が変わり行く。

周囲に視えているのは、後ろに浮かんでいる球体の一つの惑星。
そして…少し先には太陽が。
周囲をこの惑星の外の空間とつなげてみたのだけども。
一応、空気がないと死んでしまうガウリイ達のような存在には、
その個々の周りのみ空気と、そして重力などを加えているのでさしたる問題はない。
床のようなものも一応設定しているので、そのまま宇宙空間に落ちてゆく…ということもない。
「あ。あとそれと♡少しは楽しませてくれたら。お仕置き…もとい。
   お灸を据える程度を考えてみてもいいわよ♡二人とも♡」
そんなあたしの言葉をうけて。
「…もう、こうなったらやけよぉぉ~!!」
「…どっちにしても、何もしなければしないで…うう……」
などと同時にいっているシェーラとグラウシェラー。
それと同時。
ドッン……
二人から発せられた、【魔族】という存在としての威圧感から発する衝撃波が、
この場にいる全てのものたちに襲い掛かってゆく。

さってと。
お楽しみ…もとい、お仕置きタイムの始まりね♡


              -続くー

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あとがき:
薫:ようやく覇王さんとの戦い(?)に突入です。
   ちなみに、エル様が変化させた空間。
   ・・・・・・本気の本気で宇宙空間。IN惑星の外。とおもってください。
   惑星の引力内ですね。なので太陽や月、そして当然母星も見える・・という(まて
   何はともあれ、ではまた次回で……
   2006年3月24日某日

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