エル様漫遊記・覇軍の策動偏
扉から入ったそこは、ちょっとしたロビーのような造りとなっており、反対側に宮殿の奥にと続く廊下がのびている。
壁際に光量が抑えられている
「妙ね。宮殿の出入り口にも見張りの一人もいないなんて。」
「ああ。多分……罠だな。」
ミリーナの言葉にうなづくルーク。
「とにかく、先にいきましょう!」
一人はりきり、すたすたと歩いてゆくアメリア。
そんなアメリアの声に呼応するがごとく、
「――お待ちしておりました。鍵はあいていますので、どうぞ……」
とある道の奥から声が響き渡ってくる。
……今だに、あたしやユニット。
そしてゼロスがいる…というのにすら気づいてないのよねぇ~……
どうせジェイドを魔族化したのなら、その辺りのことも読み取ればいいものを……
いくらあたし達に関することは判らないように、記憶等にちょっぴし干渉していてもそれくらい連想しなさいよね……
どこか心の片隅で、
『あってほしくないこと。』
というのでその可能性を完全否定しているようだけど。
まったく…あいつらは……
声と共に、奥にと続いている扉の一つが開かれる。
「…どうやら誘っているようだな。」
「つ~か…あの奥。魔族がいるぞ?」
ため息をつきつつも、つぶやくようにいうゼルに続き、さらり、と言っているガウリイ。
「――…あんた…よくわかるな。」
そんなガウリイを呆気に取られてみているルークに、
「まあ。ガウリイさんの勘は侮れませんからねぇ。
なにしろ魔王様の気配ですら言い当てますからねぇ。いやはや♡」
そんなルークに、にこやかに説明しつつ答えているゼロス。
部屋の中にとあるおくにと続く廊下の一つの扉が声とともに、開かれ、あからさまに誘っている。
「…で?どうする?」
それをみてとり、確認をこめて聞いてくるゼルに対し、
「どうするも何も!行くにきまっていますっ!
それにメフィさんたちはともかくとして、ジェイドさんたちも気になりますし。」
きっぱりと言い切っているアメリア。
未だにメフィたちは、こちらに合流してきてはいない。
何か未だに遊んでるようだし……結界の中で……
アルスとジェイドにいたっては……ま、別にいいけど。
「行くしかないでしょうね。
うかつに動き回って後ろをつかれたり、狭撃されるよりは、正面からあたったほうがましですし。」
淡々とそんなことをいっているミリーナ。
くすっ♡
「なら、決まりですね♡いきましょ♡」
くすりと微笑み、すたすたと開け放たれている扉のほうにと歩いてゆくユニット。
そんなユニットに続き、あたし達もまた奥にと進んでゆく。
一番奥にとある廊下の突き当たりの扉が音もなく開かれる。
そこにはちょっした部屋があり、部屋の四方には扉、そして端には上にと続く階段が見てとれる。
そして、その部屋の中心に一人、にこやかにたたずむ男。
見た目三十程度の細身の男性が一人、その場にたたずんでいたりする。
藍色のゆったりとしたローブには、銀の紋様が組み込まれている。
そういや……、グラウシェラーのやつって……
部下にはそれぞれ地位を示す【形】なる紋様…一応与えてるのよねぇ~……
全員の名前を安易に決めたことについて、Sをどつきに…もとい、根性を入れにいった帰りにちょっと立ち寄って、
ついでに注意した後……
なぜか紋様の組みあわせによってどの存在の配下かわかるようにしてるし……グラウシェラーのやつは……
そこまで詳しくゼルたちに説明することもないから言わないけど。
それはあたし・ユニット、ゼロスに気づくこともなく、
……いくら見えないようにしているからとはいえ……ちょっぴり気をつければ判る程度にしてるのに……
ともあれ、ルーク、ミリーナ、そしてアメリアとゼル。
この四人にと視線をむけ、
「夜分にようこそ。始めてお目にかかります。
わたくし表向きはこの国で交易大臣を勤めさせていただいておりますサーディアンと申します。」
丁寧にふかぶかとお辞儀をしつついってくる。
「『表向き』とはずいぶん開きなおってんな。」
「つまり。ごまかすつもりも何もなく、真っ向勝負をしよう。と受け取っていい…ということか……」
そんなそれ――【サーディアン】に対し、交互に言っているルークとゼルの言葉に、
「そのように受け取っていただいて間違いないかと。」
にこやかに言い放ち、再びお辞儀をしてくるサーディアン。
そんなサーディアンに対し、
「あなた方はいったい何をたくらんでいるんですか!?
今こそあこぎなことはやめて正義の心に目覚めるのですっ!」
そんなサーディアンに向かって高々と言い放っているアメリア。
「それについてはお答えしかねます。……なるほど。あなたがセイルーンのアメリア姫ですか。
『正義かぶれ』という報告の通りですな。」
などといいつつ、ちらり、と全員を見渡し、
「それでは。そちらの
そして、残りの二人がルーク殿とミリーナ殿…ですか。
あなた方にはこちらでつい先ほど誕生したばかりのコマと戦っていただきましょう。」
パチン!
いうなりサーディアンが指を鳴らしたその刹那。
ヒュッン……
風を切り、二階へと続いている階段からサーディアンの側にと飛び降りてくるのは赤い人影。
血が空気に触れて固まったような黒ずんだ赤色をしているその体には目も耳も、そして当然口もない。
そしてその体のいたるところには無数の黒い縞模様が浮き出ていたりする。
……兄弟、といわず親子そろって同じ方法にひっかかってどうするんだか……
このコードヴェル親子達は……
だがしかし。
『……まさか……』
そのことに気づいて、思わず声をだすゼル、アメリア、ミリーナとは対照的に。
「…おいおい。また雑魚連中をぞろぞろ呼ぼうってわけかよ。」
一人気づかずにそんなことをいっているルーク。
「――なあ?」
ガウリイがあたしに対し、問いかけるよりも先に、ルークの声に口元を笑みの形に浮かべ、
「いえいえ。あなた方相手に有象無象の下級魔族を送り続ける。などということは失礼の極み。
よって、私自身とそして、この一人とでお相手をさせていただく所存です。
――ご紹介しましょう。といっても、あなた方の幾人かは気づいているようですが。
先にヒドゥルのやつがこれの仲間を引き連れてあなたがたにと仕掛け……
そしてあなた方はそれを倒していますものね。人というものは何とも愚かな。
――ともあれ、改めてご紹介させていただきます。
【ジェイド=コードウェル】にございます。」
『―――!?』
サーディアンの言葉に、その場に立ち尽くしているアメリア、ゼル、ルークにミリーナ。
そしてまた。
「……何かこの家族って…これで全員がデーモン化一度はさせられたんじゃあ?」
ぽそり、とつぶやくガウリイに対し、
「そもそも。幾度もシェーラは魔族で、さらにはドゥールゴーファのことは話してたのに。
剣をつかんで相手に隙を見せたほうが情けないのよ。」
さらりと答えておくあたし。
実際にその通りだし。
…ミルガズィアとメフィと引き離され、シェーラの目前にと出た二人はシェーラに対し、戦いを挑み……
わざとシェーラがジェイドの剣技におされて落としたように見せかけた剣を拾い。
…挙句、父親、そして兄と同じくデーモン化させられちゃってるのよねぇ~…こいつは……
姿が変わった直後。
ミルガズィアが結界の内より脱出し、アルスはジェイドが変わりゆく姿を目の当たりにした後、
ミルガズィアたちにと助けられて無事だけど。
「なるほど。まあ理屈で考えれば依頼主であったジェイドさんやグライアさんがいなくなれば。
これ以上、アメリアさんたちが関わってはこないだろう。と踏んだわけですか。
……人間、というのもを本当に未だに理解していませんねぇ~♡」
にこやかに、そのことに気づき言っているゼロス。
そんなあたし達の声にようやくこちらに気づきはするものの、
「……?」
少し首をかしげただけで、気にすることはない…と判断し。
……というか、このサーディアンは【かわいい人間の女の子が二人ほど四人の背後にいる。】
というように見えてはいるが。
だが、それは別に関係ないだろう。
と捉えていたりする。
…ゼロスには未だに気づいてないし……
ゼロスが彼らには視えないようにしている、とはいえ、少し気をつければ判る程度なのに・・・ …
ああもうっ!
本気で情けないったら!
「て…てめぇ…なんつ~ことを……」
「なるほど。私たちから彼を引き離したのはこういう目的もあったのですわね。」
ぎゅっと拳をにぎりしめ、奥歯をかみ締め唸るルークに、
彼らの意図を読みとり、きっと見据えていっているミリーナ。
くすっ。
「あ。あたしは邪魔だろうし。視てるだけにするから♡頑張ってね♡
そのサーディアンは見た目どおりむちゃくちゃに弱いから、たとえ一人で戦うことになっても大丈夫よ♡」
そんなあたしの言葉に。
「『見た目どおり』とは…ずいぶんと失礼なお嬢さんですね。
――ここはぜひとも非礼を後悔させて差し上げる必要がありそうですね。――始めるぞ。ジェイド。」
どっちが失礼だか。
サーディアンがパチン、と鳴らした指音を合図にジェイドが床をける。
「あ♡そうそう。ガウリイ♡ちょうどいい訓練になるし♡
ジェイドの中にいる魔族の気を捉え、その魔族だけ倒しなさいな♡」
「ちょってまてっ!んなこといきなりいわれてもっ……!」
そんなあたしの言葉に、なぜか抗議の声を上げてくるガウリイ。
くすっ。
「あら、大丈夫よ♡今まであたし達の暇つぶしをかねた遊びにつきあってるんだし♡」
「要領としたら、よく雨の日にやっている水の中の力の源となっている核を壊す♡
あれでいいんですよ。ガウリイさん。」
よく雨の日などは、【雨で器を形つくり力の源となる物質をその中にといれ、それを壊わさせて遊ぶ。】
というようなこともやってるからねぇ。
あたし達はガウリイに対して。
それでもって、水に攻撃が加われば、その攻撃力は反射してガウリイの体に転移する。
ということもやってるし。
そんなあたし達とガウリイの会話をきき、
「……相変わらずお前はむちゃくちゃなことにつき合わされていたか……」
「でもリナさんが見てるだけ。というのは助かります。
無差別に虚無の力を使った全体攻撃でもされたら……はっきり言って私たち死にますもん。
でもまあ、おそらく死んだとしてもリナさんがすぐに蘇生してくれますけど。」
「もしくは、死ねないように何らかの力を加えられるか。……だな。」
しみじみとあたし達のほうをみて言ってくるゼルに、そしてまた、きっぱりと何やら言い切っているアメリア。
「――でも人間相手に、んなことやったことはないぞ!?」
「あら?なら先にゼロスででも実験してみる?」
「でぇぇぇ~!?…できればものすっごぉぉくご遠慮させていただきたいです!
ガウリイさん。リナ様方の特訓のせいで実力的には魔王様クラスに近くなってるじゃないですかっ!
…肉体がついていけない。ということも無意識的に精神体つかってこなしてますしっ!」
ガウリイの突っ込みに、にこやかにゼロスをみて提案するあたしの言葉に、
なぜかゼロスがずざっと壁際にまで退き、ぴたっと壁に張り付いて何か抗議してくるけど。
「…って、ちょっとまてぃ!?……まさか…まさか…ゼロス様!?」
……そして、ここにいたりよ~やくゼロスの存在にと気づき、何やら驚愕の声を上げるサーディアン。
そして、なぜか怯えた視線をあたしにと向け――
「……まさか…まさか…この人間…あの『リナ=インバース』!?」
今さらなことをいってるし。
「…やっぱり。気づいてなかったんですねぇ。」
「まあ。知っていたら魔王ですら手玉にとりこき使うリナに、
普通『喧嘩をふっかける。』というような馬鹿なやつはいないだろう。」
「ですね。」
そんなサーディアンの反応をみて、なぜか同情の声をあげているゼルとアメリア。
ドデっ!!
それと共に、
落ちてきたのは浅黒い肌をしている男。
そして、すぐさま起き上がり、
「……ど、どういうことだ!?サーディアン!?」
「知るかっ!シェーラ様は、『リナ=インバースが関わっている。』などとは一言もっ!
そもそも、関わりがある人間……
『アメリアというものや、ゼルガディスという人間を殺したりしたら、
リナ=インバースが関わってくるのでとにかく足止めしろ!』
という命令だったろうがっ!ファリアール!」
……何か責任のなすりあいをはじめてるし……こいつらは……
「あんたたち!魔族のプライドはどうしたのよっ!プライドはっ!
……まったく…これは少々お仕置きが必要ねぇ~……」
「あ。リナ。だったらルークさんたち余人は私が守っとくから。思う存分にお灸を据えたげて♡」
「……って!?僕は!?ユニット様!?」
「ゼロスさんは自分でどうにかしてね♡」
「そんなぁ~!?」
そんなあたし達の会話をききつつ、
「……オレは?」
何か果てしなく嫌な予感が……
などと思い、あたしにそんなことを聞いてくるガウリイだけど。
「あら?ガウリイはさっきいったでしょ?ガウリイはジェイドに憑依している下級魔族の相手♡
それじゃ、話がまとまったところで♡」
『まとまってませんっ!』
『まとまってないぞ!?』
なぜか同時に、アメリアとミリーナ。
そして、ゼルとルークの声が発せられてくるけども。
別に彼らの意見は関係ないし♡
ぶわっ!!
あたしの言葉と共に、この場が特殊な空間にと覆われる。
外からは入ってはこれるが、中からは決してでることは出来ず。
そしてまた、この内部を視ることもできない。
――あたしの許可がない限り。
「…えっと……」
周囲の雰囲気が変わったことに、戸惑いの声を上げるルークに、
「…こうなっては、リナの気がすむまで付き合うしかない…な……」
「……ですね。」
「あ♡みなさん、ついでですし。休憩タイムにしませんか?」
パチン♪
ユニットがにっこり微笑み、指を鳴らすと同時。
真っ白いテーブルと椅子が出現し、
テーブルの上には銀の食器でできたティーカップセットと、そしてまた、ハーブクッキーが出現する。
「……それもそうですわね。」
あっさりいって動じることなく椅子にと座るアメリアをみて。
「――…慣れてるんですね。アメリアさんたちって……」
「慣れたくて慣れたわけじゃないがな。」
ぽつり、とつぶやくミリーナに、これまたぽそり、と答えているゼル。
下手に動くと巻き込まれる。
というのは、今までの経験上、四人とも理解しているせいか、そのまま椅子にとすわり、
なぜかそれぞれ一種の現実逃避に走ってるようだけど。
そんな彼らを傍目にみつつも、
「さってと♡仮にも魔族ともあろうものが、根性のないことをいったりして♡覚悟はいい?」
にっこりと、なぜか怯えて固まっているサーディアンとファリアールに向かって話しかける。
それと共に、二人の周囲を黒い闇が覆ってゆく。
……まずは、本体ごとじっくりとお灸を据えることにしますかね♡
簡単に消滅したり、滅んだりはできないようにしておいて…っと♡
さって。
アメリアたちに気づかれない程度にしておきますか♡
-続くー
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あとがき:
薫:なぜかません…
というか、頭のなかではとあるオリジナルばかりが反復してます……
時間はかかりますが、のんびりと頑張るのです。
何はともあれ、ではまた次回にて……
PS:エターニアオンラインゲーム始めるつもりですv(こらまてやっ!)
2006年3月14日某日
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