エル様漫遊記・覇軍の策動偏

「……なるほど。つまり一人で様子を見に戻った…と……」
マイアスとグライアが話しをしている最中の同時刻。
ジェイドから説明を聞き終えたゼルがつぶやくようにいい。
「…気持ちはわからんでもないけどよ。一人で…というのは感心しねぇな。」
腕を組みつつ言っているルーク。
「というか。彼の力程度じゃあ魔族に対抗できるかどうかすら怪しいですわね。」
ため息まじりにさらりと的確なことを言っているミリーナ。
「リナさんっ!のんびりしていないで追いかけましょうっ!」
ガタン、と椅子から立ち上がりそんなことを言っているアメリアに対し。
「とりあえず…相手はかなりの高位魔族らしいですし…こちらの態勢を万全にしてからのほうが……」
少々顔色も悪く言っているシルフィールに、
「まったく。人間というものは何を考えているのかわかりませんわね。あの人間に限らず。」
ずずっとお茶を飲みながら言っているメフィ。
「まあ、とりあえず。今から行動するのに越したことはないけど。
  各自出発の用意をし終えたら一気に里に行きましょ♪武器調達もかねて♪」
別に武器や防具、それに道具…といったものはあっても困るものでもないし。
荷物持ちもいることだし♡
「また襲ってきたりしたら楽しい…もとい、面倒だしね♡」
『……楽しいって……』
そんなあたしとユニットの言葉になぜか数名、ユニットに対して突っ込みをいれているけど。
「…ですが。その武器調達…って…どれくらいの日数がかかるんですか?」
ジェイドからすれば今すぐにでも兄をおいかけたい、というのが心境。
だがしかし…どうも『魔族がらみ』…ということを、ようやく実感し始めているがゆえに、
戸惑いつつもあたし達に問いかけてくるジェイド。
「ここからだと。人の足でいうならば、おそらく十日前後…というところだな。」
そんなジェイドの問いかけに鷹揚に答えているミルガズィアだけど。
くすっ♡
「だ・か・ら♡一気に移動するのよ。今ならこの辺りの空間にはなぜか下っ端達すらいないからねぇ。」
「というか。さっきのシルフィールさんの一言で情けないにもこの周辺にいた下っ端魔族さんたちって。
  情けないことに一瞬のうちに滅んだり消滅していたりするからねぇ。
  たかが、シルフィールさんが『金色の魔王』っていっただけで♡」
「……当然の反応だと思うぞ……」
あたしとユニットの言葉に何やらゼルがぽそり、と言ってくるけど。
「それはともかく。…ということは、もしかしてまた瞬間移動ですか!?
  私あれ苦手ですっ!リナさんっ!」
そんなゼルとは対照的に、力いっぱい拳を握り締めて抗議してくるアメリア。
そんなあたし達の会話をききつつも。
「……だからどうして…我々りゅうぞくですら瞬間移動や空間移動は難しいのに……
  …どうしてリナ殿はそうあっさりと……」
「あら?普通は誰でもできるってば♡」
「そうそう♡この私でもできるんですし。ミルガズィアさん♡」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
この二人は特別のような気がひしひしと……
あたしとユニットの即答に、ガウリイとゼロスを除く全員がそんなことを思っていたりするけど。
まったく。
誰でもできるでしょうにね♡
「とにかく。追いかけるにしても準備は大切だし。
  各自それぞれ準備が出来次第、またこの一階に集合…ということにしませんか?」
「……誰でも云々…というのはともかくとして…たしかに、ミリーさんのいうとおりですわ。」
ユニットの言葉にミリーナがうなづき。
「まあ、確かに一理あるが……」
「ともかくっ!急いで準備してグライアさんを追いましょうっ!」
絶対に何かがあるのは確定ですし。
そんなことを思いつつ力説しているアメリア。
「……まあ、僕としてはリナさんが関わってくださらないわうがいいんですけどねぇ。
  まあこうなったらしっかりと楽しませてもらうだけですし♡」
にこやかに笑みを浮かべていっているゼロス。
そんなゼロスの言葉をきき。
『…だからリナ(殿)(さん)って一体……』
何やらつぶやいているミルガズィアとメフィ。

ともあれ、簡単な会議…というか話し合いをしたあと。
それぞれ各自用事を済ませ、まだ夜ではあるけどあたし達は出発することにと決まり、
一度それぞれの部屋にともどってゆくことに。
くすっ。
さって、グラウシェラーのヤツの動きが見ものよね♡


ほ~ほ~ほ~……
梟の声と虫の声が当たりにと響き渡る。
「……本当にこのリナ殿は一体……」
なぜかため息まじりに呆然とつぶやいているミルガズィア。
「……まあリナさんですし。それよりミルガズィアさん。ここってどの辺りなんですか?」
森を抜けたすこし小高い丘。
その眼下に見えているのは、切り開かれた…といっても過言でないちょっとした平野。
平野、といっても、自然の木々などを利用して建物などは立っているが。
そのさきにはうっそらとしたキリに包まれている岩肌が見えている。
そんなアメリアの問いかけに、
「カタートの麓だ。」
「とりあえず…ついたのですね?」
淡々と語るミルガズィアに、多少戸惑いつつも確認をいれているミリーナ。
宿の精算を済ました直後、この場所に全員を移動させた…というだけのことなのに。
なぜか一部を除いてほとんどの存在ものが顔色を悪くしてるし。
「ひとりであの人間が城に向かった、というのならぱ急がねばなるまい。こっちだ。」
ここはエルフの隠れ里。
霧に多少魔力干渉を加え、他の存在などがハイって来れないようにと対面的な処置が施されている。
人に強い力を貸し与える…ということには、いささか抵抗を感じなくもないが。
相手は…覇王ダイナスト
覇王ダイナスト当人がでてこなくとも直属の部下である神官や将軍、
などといった存在が出てきてもおかしくはない。
…もっとも、このリナ殿がいる限りそれらが真実だとしても、杞憂に終わる…という可能性も否めないが。
そんなことをミルガズィアは思いつつ、眼下に見えている村にと向けて足を勧めてゆく。

「…なるほどのぉ~……で、そちらのかたが例の…ですな。」
ちらり、とあたしを見つつもミルガズィアにと問いかけているのはこの村の村長と長老。
「しかし…ガイリア・シティに本当にあの覇王ダイナストが入り込んでいるのですか?」
困惑しつつもそんなことを言ってきていたりする。
「まあ。当人かどうかはともかくとして。少なくとも【何か】があるのは事実ですわね。」
「それ以前にゼロスさんの説明からしても明白なんじゃあ……」
メフィの故郷でもあるカタート山脈の麓に位置するエルフの村。
この地は以前、アクアが、
……つまりは水竜王がとある術を施していたがゆえに、下級魔族といったやからは入れない。
最も、それは気持ち程度のものだけど。
夜ではあるが、ひとまず長老の家。
つまりはメフィの祖父の家にと音連れ、簡単な話し合いをしているあたし達。
なぜか面白いまでにゼロスやあたしに対して怯えていたりする彼らたち。
不安と戸惑い、そして恐怖…といった負の気が周囲に満ち溢れてるし……
彼ら――即ち、メフィの祖父と父親に、そんなことをいっているミリーナとアメリア。
「わたくしとしましては。リナさんが関わりになった時点で全て問題なし。…ともとれるのですが……」
「まあ。リナだしな。何しろこいつは異界の魔王や竜神。
  さらには北の魔王…といったヤツラまで何かあっさりとこきつかっているしな。」
「どっかの異世界の魔王とかいうやつも呼び出すぞ?リナは?」
シルフィール・ゼル・ガウリイのそんなほのぼのとした会話に。
「「…いや、異世界のって……」」
何やら同時につぶやいているメフィたち。
「そんなことより。グラウシェラーさんと遊び…もとい、グラウシェラーさんに会いに行くのに、
  防具や武器など、といったものを貸してもらえるんですか?
  正確にいえば貸して貰う、というよりは譲ってもらう、というほうが正確でしょうけど♡」
そんな中、にこやかにちょこっと椅子に座って話しかけているユニット。
「まあ、あたしやユニットはともかくとしてもねぇ。各自、自分の身くらいは自分で守れないと…ね♡」
「……今、ユニットちゃん…『遊びにいく。』…って言いかけただろ……」
あたしの横でガウリイが何やらぽつりとガウリイがいってるけど。
と。
ゴメッ!!
なぜかそのまま椅子ごと床に押しつぶされてびくびくしているガウリイの姿が。
なぜかぴくぴくしているガウリイの姿をみて、一瞬全員黙り込んでいたりするけど。
「…あのぉ~…リナさんって一体……」
震える声でゼルにと問いかけているジェイド。
「――聞くな。」
「…ガウリイさんはいい加減に慣れてますよ。きっと。」
一言で済ましているゼルに、にこやからさらり、といっているゼロス。

エルフの村の長老宅。
その居間にて話し合いをしているあたし達。
丸いテーブルの木の椅子にそれぞれ座り話し合っているのだけど。
「…ともあれ、ミルガズィア殿も了解されているのならば我らには断る理由もなかろうて。
  …それに……」
断ったりすればゼロスが何をしてくるかわからない。
かつての降魔戦争において、一撃の下に竜の混合部隊を壊滅にと追いよった獣神官ゼロス。
どうして人間とともに行動しているのか、その真意はわからないにしろ。
下手に逆らうことは即ち、死を意味する。
そんなことを思いつついってくるメフィの祖父。
「別にゼロス程度に畏れることもないでしょうに♡Sにしても、ものすっご~く弱いのに♡」
「…それはリナとユニットちゃんの基準だと思うぞ……」
「普通の存在には明らかに、魔族そのものは脅威だとおもいますわ。」
「まあ、リナさんは北の魔王のレイさんもこきつかってましたし。
  リナさんからしてみればそうなのかもしれませんけど。」
「確かに。リナに関わるとたとえ魔王といえども軽くあしらわれているのは事実だな。」
「…つ~か、やっぱりこりリナに関わってから…異様に魔族がらみの事件が多いような気が……」
「ルーク。気にしてはだめです。」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
何やらあたしの最もな意見に、ほぼ同時に突っ込んでくるガウリイとシルフィール。
そしてまた、そんな彼らになぜかうんうんとうなづいて何やらいっているアメリアとゼル。
さらには、それらをうけてね腕をくんで何やらこれまた言っているルークに。
そんなルークに対して突っ込みをいれているミリーナ。
ジェイドはなぜか無言となってるし。
「まったく。たかがSとか、さらにはその腹心程度に対して畏れを抱いてどうするのよ♡」
「そうよねぇ♡その意見は私も同感。とりあえず、それぞれが自分にあった武器などを選んで、
  それからガイリア・シティに向けていきましょ♡何か夜が明けかけてるし♡」
ほのぼのとしたやり取りをしているそんな最中。
暗かった夜空はすでに明るさを帯、外は朝もやが立ち込め始めていたりする。
そんな外をみて、にこやかに全員を見渡してにっこりというユニットの言葉に。
「それもそうですね。ゆっくりしている暇は確かにありませんね!
  悪の陰謀はこの私たちが正義の名の下に打ち砕くべきなのですからっ!」
「…兄上…陛下……」
一人、力むアメリアに、ずっとうつむいて終始ほぼ無言であったジェイドがぽそり、とつぶやく。
まあ、居間のディルスの国王本人は、グラウシェラーのやつにただの肉の塊にさせられてるからねぇ~。
あいつ、大雑把にアレをかけてるし……
「確かに。ここで話をしていても自体は解決するわけでもない。…すまんがミルガズィアさん。協力してくれるか?」
腕をくみつつも、ミルガズィアにと問いかけるそんなゼルに対し、
「…いたし方ないであろう。それでは、いいですね?お二方とも。」
メフィの父親たちに了解の意をこめて問いかけるミルガズィア。
そんなミルガズィアにこくり、とうなづいている二人の姿。
そして。
「…何かこのリナさん達に関わってからというもの……」
魔族がらみの一件が多くなった…というのは気のせいではないですわよね?
一人ぶつぶつとそんこなとをつぶやいているメフィ。
「とりあえず♡話もまともったみたいだし♡それじゃ、準備開始ね♡」

あたしの言葉を合図に、それぞれ品物が保管されている場所にと足をむけてゆく。
まあ、あたしとユニットは別にそんなものはいらないからのんびりとするとして。
さってと、こちらはこちらでこれでいいとして。
あっちも面白くなってるみたいね。
ふふ♡


              -続くー

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あとがき:
薫:とりあえず。リナ…もとい、エル様(まて)達のほうばかりではなく。
  一人城に向かったグライアの動向や、そしてまた覇王の動向。
  それらを交えての打ち込みです。(かなりまて
  というわけで、次回はエル様たちから移ってまたまたガイリア城ですv
  まだまだ先はながいなぁ……
  というか、グライアもグランシスも…救い…ある…といえばある…のかなぁ?
  ううむ……ま、エル様が関わってるからねぇ(爆!
  何はともあれ、いくのですv
  ではでは、また次回にて。
  2005年2月19日某日


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