エル様漫遊記・覇軍の策動偏
「…セイルーンの使者?」
「はっ!」
謁見の間にて、椅子に座る一人の男性。
その横に控えている三つ編みの女性。
そして、そんな彼らの前で膝を折っている男性の言葉に。
「ほうっておけ。」
「いやしかし!陛下っ!」
セイルーンにも話が伝わっているとなると……
しかも兵の話では、『この国に再び【魔族】が入り込んでいる。』とセイルーンの使者はいったらしい。
そこまでは口に出さないものの、セイルーンよりの使者がやってきた旨を伝えているこの男性。
すこし白髪の混じったひげ面のこの男性の言葉に。
「アルス将軍。陛下の言葉がきこえなかったのか?
陛下は『かまう必要がない。』とおっしゃっているのだ。」
「しかしっ!」
「くどいっ!」
主の横にいる女性にいわれ反論するも、一言のうちに言い返される。
「アルスよ。シェーラの言うとおりだ。何をいってこようが一切構うな。…それより、門をとざせ。」
「……は?陛下?」
彼――アルスと呼ばれた男にとって、目の前の人物は絶対的存在。
ゆえにこそ、言葉の意味を捉えかねて聞き返す。
「聞こえなかったのか?門をとざせ。といったのだ。」
淡々と語るその言葉に。
「あの……陛下?」
とまどいつつも問いかける。
「アルス将軍ともあろうものが聞こえなかったのか?
陛下は『門を閉ざして人々の出入りを禁止しろ。』とおっしゃっているのだ。
この街よりさほど離れていない場所でデーモンの襲撃があったと報告があった。
いつ何時、この街や城にもむかってくるやもしれん。」
「街より出ようとする者は無視するとして、街にはいろうとする者は排除せよ。安全のためだ。」
そんな二人の交互の言葉に。
「しかしっ!」
「くどいっ!下がれアルスっ!」
「……はっ……」
意見しようにも聞く耳もたず。
とはこのことかも知れない。
きっぱりといわれては自分としてはこの場より下がるしかない。
しかし……『全ての出入りを禁止しろ。』など……尋常の沙汰ではない。
謁見の間を出つつも、
「…陛下……」
思わずつぶやくアルス。
あの女がきてから陛下はかわられた。
今もそう。
おそらくはあの女のさしがね。
国王にあの女を引き合わせたのは自分。
そして……
「私は間違っていた……のか?」
変わってゆく国王を前にして何もできない自分。
そして又、次々と姿を消していっている反シェーラ派の人々。
今さらながらに気づいても…と自己嫌悪状態に陥ってしまう。
ヴェルズ国王は片時もあの女を手放すことなく、自分達よりもあの女のことを重んじる。
彼女を召抱えたときの神官長の言葉……『あの女は危険だ。』。
その言葉を一笑に伏した結果がこれ。
今では自宅にて謹慎処分を神官長はうけている。
もはやこの九日はあの女…シェーラのなすがまま。
自らに無力感を感じつつ、そんなことを思いつつも彼――アルスは兵士達に国王の『命』を伝えてゆく。
アルスが完全に退出したのを見届け、
『……どう思う?シェーラ?』
先ほどの声とは違う声で、傍らにいる女性にと問いかける。
「私が感じました気配としては…あの兄弟と、そしてセイルーンの皇女。そしてもう一人…くらいでしたけど……」
彼女が捉えて感じた気配は四つのみ。
他の
あたしとユニットは、元々全ての気配わ隠してるけど。
そのことすらにもこいつらって気づいてないし♡
「…セイルーンの皇女……か。確かあの御方とかかわりがある人間の一人…だな。
シェーラここは一気にしかけるぞ。運がよければ魔王様も覚醒なさるだろう。」
「御衣。」
そう言い放ち立ち上がり、【国王】と呼ばれていた人物にとひざまづくシェーラの姿が、
しばし謁見室において見受けられていたことに、この国…ディルス王国の人々は誰一人として気づいていない。
気づきなさいよねぇ。
国王が自分達の本当の【国王本人でない。】ということくらいは♡
夜の酒がはそれなりのざわめきが満ちている。
店に満ちたアルコールの匂い。
よっぱらい達のよもやま話。
時々おこるバカ笑い。
この辺りにはまだデーモンの襲撃がない為に、人々は夜も平気で外に出ていたりする。
『自分達はだいじょうぶだから。』……と、まったく根拠のない確信のもとに。
そんな中、二つのテーブルにと腰を下ろしているあたし達の周囲の周りのみ、
何やらどんよりとした重苦しい空気が覆いつくしていたりする。
ガイリア・シティの隣に位置する小さな町。
ここより二キロほど先にいったところにこの国の首都たるガイリア・シティが位置しており。
ゆえに、旅人など…といっても、ここ最近は流れの傭兵達が主体ではあるが。
ともかく、そういった彼らはもう少し足を伸ばし、首都まで行くために、
この夜の酒場にいるのはこの街に駐留している兵士や町の人々。
そして警備の人間達のみ。
酒場といっても、宿屋の一階にある食堂が、酒場と兼用となっているのだけど。
六人がけのテーブルにそれぞれ腰をおろしているあたし達。
二つのテーブルをくっつけて、互いに向き合うように座っていたりする。
右からガウリイ・あたし・ユニット・シルフィール。
そしてミリーナにルーク。
そしてもう片方にゼルガディス・アメリア・ジェイド・グライア。
そしてメフィにミルガズィア。
この順番で座っている今の状況。
ゼロスはといえば、テーブルの端に椅子をもってきて座っているけども。
とりあえず簡単な夕食を注文し、席につくことしばらく…
「……そういや…よ。」
ゆっくりと初めに声を出したのは他ならないルーク。
あらかた食事を終えているジェイドやグライアに向かって。
「アルス将軍ってのは何者なんだ?
昼間、名前が出たときにあんたらは何か含むところがあるみてえだったけど……」
斜め前前に座っている二人に向かって問いかける。
問われてジェイドとグライアは顔を見合わせ。
そしてカップのラーダ酒を一口あおってから。
「……赤騎士団を束ねる将軍です。……悪口になってしまいますが……余りいい噂はききませんでした。
どこまでが真実かはつかめませんが…出世するためにいろいろと汚いこともやったとか……」
いって下を向くジェイドに続き。
「生真面目な父とはいつも彼はことあるごとに対立していました。
問題のシェーラを登用し陛下に引き合わせたのも彼です。
回りの者の誰もがアルス将軍の行動は陛下のご機嫌取りだ。といってましたけど。」
いって顔を曇らせるグライア。
「人間ってロクでもない人が多いのですわね。」
そんな二人の説明をきき、平然と言い放つミックスジュースに手をつけているメフィ。
「そういう人は上の人が取り締まるべきなんですけどね。」
そしてまた、あきれつつきっぱりといっているアメリア。
「で?とりあえずどうするんだ?あんたたち兄弟は?
父親もいなくなった。騎士団。そして近衛団は除名。町へも出きり禁止ときた。」
そう問いかけるゼルの言葉に続き。
「確かに。…つまりあんたらは、この国には何の義理もなくなっちまったわけだが……」
などと続けていっているルーク。
そんなルークに。
「ルークさんっ!このまま悪事を見逃す!というのは正義とはいえませんっ!」
すかさず突っ込みをいれているアメリア。
「話は最後まできけっ!あんたもっ!…と、ともかく…だ。それを踏まえて…だ。
それらを踏まえてもまだシェーラの奴を…
この国の現状を何とかしなきゃならねぇ。と思っているわけか?わざわざ危険を冒してまで?
正直いっていっそのこと、どこかよその国にでも出奔して、そこで改めて仕官の道を探したほうが早くねぇか?
話によるとゼフィーリアなんかは、あそこの女王さんはえらく評判がいいんだ。ってことらしいが。」
ルークの言葉にしばし沈黙するグライアとジェイド。
「確かに。リナ殿たちやそしてこのアメリア殿たちは別として。
そのほうたちにはそのほうがいいかもしれんな。万が一、魔族と戦うときに足手まといになりかねん。」
いともあっさりと淡々と語っているミルガズィア。
「?わたくしたちならば、問題ないのですの?」
そんなミルガズィアの台詞に首をすこしかしげ問いかけているシルフィール。
「すこしでもリナ殿と一緒に旅をしてことがあるものならば。多少の免疫はついておろう。」
何やらきっぱりと言い切るミルガズィア。
どういう意味かしらねぇ~♡
「…それは言えてますわね。以前私たちが行動を共にしたとき……異界の魔王や竜神。
そして本来ならば北のカタート山脈で氷づけになっているハズの北の魔王でもある、
レイ=マグナス=シャブラニグドゥ。そして海王に獣王まででてきましたものね……」
なぜか顔色も悪くミルガズィアに続いてつぶやいているメフィ。
そんな彼らの言葉に。
「確かに。あの獣王や海王はリナさんに対して畏れを抱いているようでしたしね。
私たちも幾度か彼らを目の当たりにしましたが……
そんな私たちはともかくとして。まったく免疫のない分、ジェイドさんたちには危険かもしれませんわね。」
ふとゼラスたちのことを思い浮かべつつ、淡々と言っているミリーナ。
そんなミリーナの言葉に。
”やっぱりこの人たちもアレラ(彼ら)にあっていた(んですね)(か)……”
などと心で思っているアメリアたち。
そんなゼルやミルガズィアたちの会話をうけ。
「…確かに。相手が【魔族】だと聞かされても、ピンとこない私では足手まといかもしれませんが……
ですが…私はこの国が好きですから。」
すこし顔を伏せつつも、きっはりと言い切るジェイドに。
「……それに…この時期……
いくら何でもこのタイミングで父が病気でなくなった……などとタイミングがよすぎます。」
続けざまにぽつり、といっているグライア。
「なるほど♡謀殺の可能性は高いですね♡」
彼らの父親がどうなったのか知っているのにわざと事実をいわず、
にこやかに場違いな笑みを浮かべていっているゼロス。
そんなゼロスの言葉に。
「……確かに…な。今の話や今までの話からしても……
あんたらの父親と対立していたアルス将軍。そしてその将軍が登用したシェーラ。
不審を抱いたあんたたちの父親……
つまり、グランシス=コードウェル将軍が、あんたらと数名を諸侯の元に走らせ……
その間にそのグランシス将軍が志望した。というのはいくら何でも出来すぎてるな。」
腕を組みつつ、ゼロスに同意しつぶやくようにいうゼルに。
「彼らの動きを邪魔に思って、アルス将軍かシェーラが命令して暗殺した。ともとれますわね。」
表情一つ変えることなく続けて言い放つミリーナ。
そんなゼルとミリーナの台詞にこくん、とうなづき。
「もしそうなら……せめて、誰がやったのかつきとめたい…そうおもってます……」
「父上もこのままでは浮かばれないでしょう。」
顔を曇らせつつも交互にいっているジェイドとグライア。
というか、彼らの父親のグランシスって一応まだ死んではいないんだけどねぇ♡
その精神体と肉体は別のモノと化してるけど♡
一応、人であったときの心をすこしだけあれはまだ残してるし♡
気持ちほど♡
わざわざ今は教える必要もないから教えないけどね♪
「とにかくっ!悪は正すべきなのですっ!
ここはやはり。正面から堂々と乗り込んで、
彼ら魔族とはいえ、いつか正義の道に目覚めてくれるはずですっ!
あの北の魔王と呼ばれているというレイさんですら、リナさんの言うことには従い。
そして、正義の道に近づいているのですからっ!」
一人きっぱりと断言し、言い切るアメリアに。
「……アレは断るに断れないだけだと思うぞ?……オレは……」
怖くて……
その横でそんなことを思いつつも、ぽつり、とつぶやいているガウリイ。
そりゃあ逆らったりしたら、スペシャルお仕置きは確定だしね♡
「とりあえず。エルフの里に武器を調達にいって。それから…ね。
とりあえず今日のところはゆっくりと休んで、明日一番でエルフの里にむかいませんか?みなさん♡」
ざっと全員を見渡しつつ、にこやかに言うユニットの言葉に。
「ここからだと里は。人の足でならば三日ばかり先にある。」
「ここで悩んでいてもしかたないのは事実ですわね。」
互いに顔を見合わせつつ、淡々と言っているミルガズィアとメフィ。
しばしそんな会話をしつつ。
あたし達はそれぞれに部屋を…といっても、部屋数があまりなく、ゆえに相部屋となり。
一部屋に四・五人づつ、それぞれ部屋をとり、休むことに決定し。
それぞれ、割り当てた部屋にとそれぞれ入ってゆく。
さってと♡
これからが楽しくなりそうよね♡
-続くー
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あとがき:
薫:ようやく14話目…でも実はまだ11話目を打ち込み全部はしてないという(こらこら…
L:あんた、なかなか打ち込みが進まないわねぇ~……
薫:・・・ぎくっ(汗
L:初期のほうとラストのほうだけ打ち込みしてから11話目なんてまったく手付かずじゃない?
薫:あ・・あははは・・・ひとまず、書いてる紙をぎりぎりまで探してみよっかなぁ・・とか(汗
L:瞬間的にそんなものくらい出現させなさいよ♡
薫:・・・・・エル様なら可能でしょうけど…あとスミレちゃんとか(汗…
L:まあいいけど。とりあえずvようやくあんた番外編の編集もとりかかったみたいねぇ。
それはそうと、あたしの幼少編とかがまだなんだけど♡
薫:・・・・うぐっ・・・・・あ・・あはは・・(何か雲ゆきがあやしい?・・汗
と、とりあえず。編集作業をしがてら、これの打ち込み(気分転換)やってますし…
L:気分転換…ねぇ。パラレル・トラベラーのあたしの活躍もまったくうちこまずにねぇ…
薫:・・・あうぁうあぅ……
L:ま、気分転換ならいいほうほうがあるわよ♡
さ、ということで用意しておいたこの中にはいりなさいな♡
薫:・・あ・・あの!?それってどうみても巨大なミキサー!?
L:しのごいわずにはいりなさいねv
薫:んぎゃっ!(瞬間的にそれの中にと移動される・・)
L:さ~てと。気分転換。といってたわね。それじゃ、いろいろとまぜてみますかv
ということでいろいろと野菜や果物、ついでに部下とかもまぜてスイッチオン♪
ギュルル…(以下、殺伐シーンのためにカット…)
L:さってと。なぜかミックスジュースもどきになりはてて。
気分転換が完了した薫はほっといて。それでは、また次回でねv
それじゃ、まったね♪
2006年1月17日某日
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