エル様漫遊記・覇軍の策動偏
――降魔戦争。
それがこの世界で何を指し示しているのかというのは、赤ん坊ですら知っている。
人間達のこの地区での伝承では七つに分かたれたS。
……つまりは、魔王の欠片が目覚め水竜王に戦いを挑み。
水竜王は負けたものの、魔王のその身を氷で封印した
そしてこの地は外部とのつながりが遮断され、独自の発展を遂げることになった。
という旨の伝承が伝えられていたりする。
「以前の異界の魔王。
……よもや、あのレイ=マグナス殿が
ぶひっ!
さらり、といったミルガズィアの台詞に、
お茶に手をつけていたルークが思わず噴出し、何やらむせこんでいたりするけども。
「確かその戦いで、ゼロスさんが一人で竜族を壊滅状態においこんだんですよね?」
ふと思い出したようにアメリアがつぶやき。
そして。
「ついつい、いつもリナさんにいいように使われているゼロスさんを見てたら忘れてますけど。」
「ひどっ!アメリアさん!」
そんなアメリアに抗議の声をあげているゼロス。
「リナ殿達の正体は未だに我らとてわからんが……」
いいかけるミルガズィアに。
「あら♡あたしはあたしよ♡人間だって♡」
今は人間のふりして遊んでるし♡
運ばれてきた料理を食べつつも、答えるあたしに。
「私は私だし。――それで?ミルガズィアさん?
竜族たちも、その『降魔戦争再現』については賛成なんですか?」
にこやかに答え、問いかけるユニットに。
「……と、とにかく。ミリアム殿の言うとおり。うむその通りだ。
ここ最近ディルス王国で軍備増強をしている。という話しは聞いていたしな。
それに加え最近のデーモン大量発生事件。
話しを聞く限り、ダメージをうけ精神世界面から冥王がでてこれず。
また人間達が結界外との交流を深め始めた今。
魔族側としても降魔戦争再現により逆襲……と竜族とエルフ族の共通いた意見だ。
―――…もっとも、私やメフィからしてみれば。
……ものすごくそれにリナ殿が深く関わっているような気がしなくもないが……」
いって、お茶を一口すするミルガズィアに。
「いやですねぇ。ミルガズィアさん♡逆襲だなんて♡
ただ、覇王様はこれ以上、今動くことのできる北の魔王様が弱体化したら困るからって。
人の心……すなわち、精神面に封じられている魔王様の欠片を見つけようとしているだけですよ♡
もっとも、覇王様はゼラス様たちに詳しくご報告されてきてないので、僕も詳しくはしりませんけど♡
とりあえず、僕らは傍観しておく。ということで、話しはまとまってますし♡獣王様も海王様も冥王様も♡
というわけで、今回のこれは、魔族全体の意向ではありませんよ♡念のため♡」
にこにこと言い放つゼロスに顔をしかめ。
「……弱体化?…まあ、そういえばそうかもしれんが……」
ゼロスの言葉に、以前のSのことを思いだし、なぜか額に汗を流しつつもつぶやいているミルガズィア。
「……そういえば、このリナさん……あの『北の魔王』をこき使ってましたもんね……」
さらり、というメフィ。
――べしゃっ!!
――ぶっ!!
――ぴしっ!
そんな彼女の言葉に、なぜかスープに顔を突っ込んでいるルークに。
コーヒーを噴出しているミリーナ。
そして、シルフィール・ジェイド・グライアにいたっては、なぜか硬直状態と成り果てていたりする。
「まあ。あのレイさんのことはどうでもいいし。」
「そうそう。どうせSだし。」
至極もっともな、ユニットとあたしの意見に。
「「……どうでもいいって……」」
すでに誤差ラメの食事に手をつけつつ、問いかけてくるガウリイの言葉に。
「……相変わらずだな。人間よ。――ともかく。だ。我らはエルフ族と連絡を取り合い。
事実を見極めるために、何人もの竜やエルフが現在は調査のために散っている状態だ。
最もドワーフたちとは連絡はとってないがな。
彼らの個体数は激減しているし、さしたる戦力にもならないだろうからな。
かつての戦いにおいては共に戦いはしたが。――ともかく、だ。
我々もディルスに大きな魔の気配を察知して調査していた、というわけだ。」
いって、一息つくミルガズィアに。
「そりゃそうだろ。リナがいってたけど。
ダイ何とかってやつがディルスにいるらしいから魔の気配って当たり前なんじゃあ?」
がたたぁぁぁん!!
あっさりと言うガウリイのその言葉に、なぜか椅子からひっくり帰っているルークやメフィ。
そして、なぜか硬直しつつ。
「あ……あの?一体それって……」
何やら顔色の悪いシルフィール。
そ~いえば、グラウシェラーのやつがいる、とまでは彼らにはあたし、いわなかったっけ♡
ま、別にいっか♡
シルフィールが顔色もわるく、あたしを見てくるけど。
「そういえば、リナは今ディルスでかつての昔のレイナードと同じことが起こっている…とかいってたな。」
そんなゼルの言葉に。
「……レイナード?レイナードとはあのレイナードの一件か?」
顔をしかめ、問いかけてくるミルガズィアに対し。
「あら♡ゼロスからの報告によれば、グラウシェラーはどこかの国の国王に成りすまして。
国を使ってSの欠片を見つけ出そうとしてるらしいし♡
となれば、話をまとめて考えたらそれくらい想像つくでしょ♡」
ま、ゼロスはグラウシェラーの奴がディルスで…ということまでは、始め知らなかったようだけど。
嘘はいってないしね♡
「……そんな……そうするとディルスの国王は…もう?」
「「??」」
意味がわからずに首をかしげるコードヴェル兄弟とは対照的に、顔色も悪くつぶやくシルフィール。
「レイナード王国といえば、かつて国王が魔族となりかわり、
それを退治した人物が国を追われ命を失った、という、あの一件ですか?」
ミリーナが、記憶をたどりつつ聞いてくるけど。
「……そんな……」
とまどうメフィに。
「ならば、すべてのつじつまが合うな。……しかし、よもやグラウシェラー自らが……」
いいつつも、顔色の悪いミルガズィア。
「「あ……あの?いったいどういう?」」
意味を理解していないグライアとジェイドが問いかけてくるけども。
…………………
……………
…………
なぜかあたしやユニット、ガウリイやゼロスを除く全員はしばし無言と成り果てていたりする。
「まったく。この程度のことで黙ってどうするのよ♡それで?ミルガズィアたちはどうするの?」
「私たちはディルスに行ってグラウシェラーさんをからかい……
……もとい、あの国をとりあえず正しにいくけど?」
あたしとユニットの言葉に続き。
しばし、彼らは沈黙し。
そして。
しばしの沈黙のうち。
「……ほうっておくわけには……いかぬだろう……」
それに、リナ殿達の正体の手がかりが、何かつかめるかもしれん。
そんなことを思いつつ。
ミルガズィアはその一言をしばしの沈黙の後、吐き出していたりする。
まったく、あたしはあたしだってば♡
ふふ♡
とりあえず、そんなほのぼのとした会話を簡単にすまし。
あたし達は今日のところは体を休め、明日の朝出発する、ということで話しはまとまり。
町の人々から提供された無料の宿にて体をそれぞれ休めることにして。
それぞれ、部屋を決め、各自部屋にと入ってゆく―――
「でも叔父様?あのリナさんって一体……」
「私にもわからん。だが、確かにいえるのは。あの魔王達ですら、リナ殿を恐れていた……。
その事実からして何らかの形で、あの『金色の王』とかかわりがある……
というのは多分間違いない……のだろうがな。」
それぞれに割り当てられた部屋の中でそんな会話をしている彼ら達。
「あのパシリ神官から何とか聞きだせませんかね……」
「うむ。」
彼ら――ミルガズィアとメフィがそんな話をしていると。
――ピッション……
廊下のほうから聞こえてくる水の音。
それとともに、空気が一瞬凍りつき。
「叔父さま!」
「うむ。いくぞ。」
その気配を察知して、メフィとミルガズィアは部屋を飛び出してゆく。
とりあえず、又衝撃の可能性もなくはないから。
という理由でそれぞれ二人づつ、一部屋を取り休んでいるあたし達。
ガウリイがグライアと同室で。
ルークがジェイドと。
あたしは一人でゆっくりと♡
ゼルとゼロスが同室で。
アメリアとシルフィール、そしてアメリアとシルフィール。
そして、ミリーナとユニット。
そしてミルガズィアにメフィ。
計十三人でそれぞれにと部屋を取っているあたし達。
ピッシャン……
廊下から聞こえてくる水の音。
くすっ♡
とりあえず、きずかれないように、この辺りの空間を閉鎖しましょうかね♡
「…ちっ。どうやら早速おでまし……か。」
外より感じるあからさまな瘴気。
「……あ、あの?」
とまどうジェイドに。
「どうやら早速襲撃のようだ。――油断するなよ?」
びくっ。
ルークの声にと体を震わせるジェイド。
そして、すばやく身支度を整え、扉のほうにとルーク達は歩いてゆく。
「お~。きたようだなぁ。というかあいつら。リナのこと気づいてないんだろうなぁ。気の毒に……」
のんびりと、ベットにこしかけ、扉…つまりは、扉のむこうの廊下のほうをみて言っているガウリイに。
「あ、あの?ガウリイ殿?こんなあからさまな気配が立ち込めている中。何をそんなに落ち着いて……」
そんなガウリイに震える声で、カタカタと震えつつもいっているグライア。
「ん?でもリナもいるし。ユニットちゃんもいるしなぁ。…本当にあいつら気の毒に……
たぶん間違いなく今やってきている魔族のやつら、そのこと知らないんだろうなぁ~……」
しみじみとそんなことを言っているガウリイだけど。
あら、どういう意味かしらねぇ♡
そ・れ・に♡
教えたら面白くないじゃないのよね♡
「とりあえず、部屋からでるぞ?」
いって、ガウリイもまた、グライアとともに、扉にと手をかけてゆく。
「アメリアさん…これは……」
「どうやら敵のようですね!」
二人顔を見合わせ、ドアにと手をかけているアメリアとシルフィール。
そして又。
「とりあえず♡僕は気づかれたら面倒なので姿を消してますね♡」
「あ!おい!」
ふっ。
こちらは、こちらで、ドアをあけようとしているゼルが姿を消したゼロスに向かって叫んでいるけど。
「あ♡早かったわね♡この気配さっきのミアンゾさんだ♡」
扉の向こうの気配に対し、にこやかに言っているユニット。
そんなユニットの言葉に。
「……なるほど。先ほど完全に倒しきれてなかったのですわね。」
そういい、身構え、ドアに向かってゆこうとするミリーナを制し。
「あ♡ミリーナさん♡今ドアをあけたら、正面にミアンゾさんの顔と正面から対面するわよ♡」
「え?」
ユニットの言葉に首をかしげるミリーナの様子に、くすっと笑い。
「こういうこと♡」
パチン♪
いって、軽くユニットが指を鳴らす。
と。
バタッン!
ユニットが扉には手も触れずに扉を開け放ったと同時。
それぞれの部屋にいたルークやガウリイ。
アメリア達もまた、同時にドアを開け放ってゆく。
「き…きゃぁぁ~!!気持ちわるいですぅぅ!!!」
「きゃぁ!」
バタン!
扉をあけたその正面に、女の首がぶら下がっていたりする。
それは紛れもなく、先ほど倒した…とアメリア達は思っていた、【魔族・ミアンゾ】の姿そのもの。
シルフィールは間近でみたその姿に何やらその場に卒倒してるけど。
アメリアはアメリアで叫びつつ、すばやく呪文を唱え、
「いやぁぁ~!!気持ちわるいです!!」
どごっ!!!
魔力を込めたこぶしでドアの目の前にぶら下がっているミアンゾを叩きのめしていたりする。
「お~。ずいぶんといっぱいいるなぁ。」
「ななななな!?」
扉を開けたその正面に、ぶら下がっているミアンゾの首。
それを何なくあっさりと斬りおとし。
外を見た――すなわち、宿の廊下をみたガウリイがのんびりとそんなことを言っているけど。
「ガウリイ殿!?何をのんきに!」
何やらそれをみて、悲鳴に近い声を出しているグライア。
そこには、床にみちりと、うぞうぞとうごめいている、細い血管のような蔓のようなものと。
そして。
天井よりぶり下がっている女性の顔が数十個。
所々廊下からも、その頭をもたげているのが数個。
すばやく術を唱え、立ちふさがるようにしてドアの前に垂れ下がっていたミアンゾを撃退し。
外に出ようとしたゼル・ジェイド・ルーク・ミリーナ・アメリア・グライア達がみたのはそんな光景。
「……これは………」
ゼルがそれをみてつぶやくと同時。
「――何をやっている。ミアンゾ?
遊んでないでとっととジェイドとグライアとという人間を殺して。目撃者を始末せぬか!」
虚空より声が響き。
その声はやがて、廊下の中央にふよふよと浮ぶ人影一つ。
その人影は、頭のある部分には角がひたすらに生えて固まっていたりする。
そんなソレの言葉に。
「わかってるよ。ツェルゾナーグ……」
いって、うぞうぞと人の血管のような蔓もどきを、それぞれの部屋の中で立ち尽くしているゼルたちにと向けてゆく。
「「「――
どっん!!
直後、すでに唱えていた術を解き放つミリーナ・ゼル・アメリアの三人。
それに伴い、一直線に青い光の筋がのび、
その光にのみこまれ、その道筋にある蔦もどきは掻き消えていたりする。
そして。
「お~い?リナ?こいつらどうするんだ?」
足元の蔦もどきを、いともあっさりと斬り払いながら廊下に出て、あたしに聞いてくるガウリイ。
「だぁぁ!あんたらと関わったらいつも何でか魔族がらみじゃねぇか!」
などと叫びつつ、剣を抜き放っているルークの姿。
「とりあえず、命令は命令だからねぇ。お前たちにはここで死んでもらおう。」
にゅるにゅると、天井と床からそれぞれに首をもたげるミアンゾに。
「いやぁ~!!だからこれ、気持ちわるいです!!」
どがばぎゃっ!
横に壁に、わさわさと這っている蔦もどきを殴りつけているアメリア。
それと共に。
「少し派手にいくよ。ツェルゾナーグ……」
ミアンゾがいったその刹那。
「あ゛!まずい(です)!」
ゼルとアメリアが廊下に出て来た、メンフィスとメフィに気づき同時に声を上げ。
次の瞬間。
ぐががぁぁん!!
メフィからほとばしった閃光が、
あたしが閉鎖している空間の内部にてそこにある宿の建物を吹き飛ばしてゆく。
あらあらv
またまたメフィ、やってるしね♡
-続くー
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あとがき:
薫:宿崩壊vというわけで。
メフィ…さすがです(まてこら)
さて、ではでは、次回で。魔族達は一体どうなるのでしょう?(かなりまて
では。
2005年4月17日
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