エル様漫遊記・覇軍の策動偏
うららかな午後の日差しがあたりの景色を優しく包み込む。
右手の森から聞こえてくる小鳥の声。
「近くに小川でも流れてるんですかね?みえませんけど、水の流れる音がしてます。」
いって、きょろきょろと周りを見渡しているアメリア。
ガイリア・シティにと続く街道の一角にてそんな会話をしているあたし達。
「……しかし、ガイリア・シティ。というのはよくよく魔族の標的にされるところだな。
ゼロス。きさまに聞いても無駄とは思うが。その覇王一派は何をたくらんでいる?」
腕を組み、前を歩くゼロスにと問いかけるゼルに。
「ですからぁ。覇王様は獣王様方には詳しい連絡をしてくれないんですよ。
何でも連絡したらリナさんが率先して関わりになられる可能性が高いとか何とかいって……」
ぽりぽりと額の横をかきつつ、説明するゼロスに。
「……あ、あの?前から思っていたんですけど……
どうしてゼルガディス殿やアメリア殿はこのゼロス殿にその…『魔族』のことをきいてるんですか?
何か話しを聞いていたらこのゼロス殿が魔族の内情によく通じている。
というような口ぶりなんですけど……」
とまどいつつも問いかけてくるグライアに対し。
「あれ?あんた気づかなかったのか?このゼロスは一応魔族だぞ?」
ごけけっ!
さらりといったガウリイの言葉に、
面白いまでにその場に倒れ付しているアメリア・ゼル・ゼロス・グライアの四人の姿。
「ガウリイ!いきなりそういうことをいうな!」
「ガウリイさんらしい…といえばそれまでですけど…」
起き上がりつつ何やら抗議の声を上げているゼルとアメリアに。
「いやあの…まままま…!?」
「そうですよぉ。ガウリイさぁん……」
今だに腰を抜かして口をぱくぱくさせているグライアに、錫杖で身を起こしつつつぶやくゼロス。
「ま。そんなことより。――どうやらお客さんみたいよ♡」
ざわっ。
くすっと笑いつつあたしがいうのと同時に、先ほどまで聞こえていた小鳥の声がひたりととまり。
辺りに立ち込めるのは、あからさまな瘴気。
それと共に。
ざざざっ。
茂みを掻き分ける音がなり幅気。
ざっ!
それと共に茂みより踊りでてくる一つの影。
「でましたね!何の目的で私たちを狙うのです!」
がばり。
と起き上がり、ぴしっと指を突きつけてその出てきた『それ』に向かって言い放っているアメリアに。
「……またきさまか……」
いいつつも身構えるゼル。
それと共にその手にしたロングソードを構えつつ、あたし達のゆく手をさえぎるのは……
「――…ココナラ、モクゲキシャ…フエナイ……」
たどたどしい口調でいうならソレはゼルにむかってダッシュをかける。
「くっ!」
すでに抜き放っていた剣でゼルがその一撃を受け止めるのと同時。
「ギャウッ!」
それが雄たけびを発する。
それと共に、
「
アメリアが唱えていた呪文を解き放つ。
そういえば、以前ゼラスたちと一緒に旅をしていたとき、
アメリア、ゼラスたちにせがんで、いくつかの術…習ってたからねぇ……
あたしも面白そうなので、教えるように♡と指示したのもあるけど、それはそれだし♡
アメリアによって生み出された光の帯は起動を変えつつ、相手を追尾する。
大概この程度の力に攻撃されたくらいで死んだり滅んだりする存在達。
まったくもって情けない。
だがしかし。
「くおうっ!」
それをみて、出て来たそれ――
【グランシス】が吠えると同時に小さな薄い光の盾が【グランシス】のすぐ側に、術の軌道を防いで出現する。
だがしかし、光の帯はそれをあっさりと砕きつつもそのまま【グランシス】にむかってゆく。
それを何なく紙一重で、ひょい、とかわし、再びそれを幾度か繰り返し。
やがて。
―…パキィン……
澄んだ音を立てて、やがて威力を徐々に弱められていた光の帯は、
六度目に出現した盾にぶつかり、互いにぶつかり消滅してゆく。
「―…やりますね。対術と弱防御魔法の組み合わせで術を無効化するとは。ならば!」
いって別の呪文を唱え始めるアメリア。
「ひゅっ!」
それと共に【グランシス】が短い、それでいて辺りに響き渡るちょっとした声を出すのと同時。
『がぐわぁぁぁぁぁ~!!』
この辺りにいた野良デーモンたちが一斉にこちらにむけて移動してくる。
「ふ…ふえたぁ!?」
それをみて、何やらおたおたしているグライアだし。
まったく、情けないったら。
「グライア?騎士たるものの心得は?」
あたしの言葉に、はっと我に戻りつつ。
「いついかなるときも全力をもって立ち向かうべし!」
自分自身に言い聞かすようにいって、剣を抜き放ち身構えるグライア。
「モクゲキシャとそのオトコ……コロス……」
ゆらり、とそんな呼び出したデーモンたちの中心に立ち尽くし、こちらにいってくる【グランシス】だけど。
それと同時。
「
ゼルが唱えていた呪文が完成し。
数体のレッサーデーモンたちを青い光と共に消し去ってゆく。
それと同時。
「
アメリアの呪文も完成しデーモンたちに向かって解き放つ。
それと同時。
「
別の二つの声が左手の茂みからデーモンたちにむかって投げかけられ。
次の瞬間。
ピキィン!
バシュ!
剣を構えていた【グランシス】の剣が術により打ち砕かれ。
そして――……
「ああ!?リナさん!?それにアメリアさん達も!?」
がさり。
と茂みをかきわけて出て来たのは、四つの人影。
うち一人の女性があたし達をみて驚きの声をあげ。
そして。
「ちっ。はずしたか。」
いってはき捨てている声は聞き覚えのあるものだったり♡」
「ん?何だ?ミ…何とかって人の尻にひかれているル…何とかってやつじゃないか。」
横をみてそういうガウリイに。
「ルークだ!人の名前くらいいい加減に覚えろ!あんたは!」
そんなガウリイに即座に突っ込みをいれているその男性――ルークの声に。
「――…よくよく縁がありますわね。」
いって苦笑しているその横にいる銀の髪をポニーテールにしている女性。
そして。
「なっ!?ジェイド!?」
「――…兄さん!?」
こちらのグライアと、ルーク達。
つまりは、ルーク・ミリーナ。
そしてシルフィールと共にいたもう一人の男性が、互いの姿を確認し思わず叫んでいたりする。
森の中から姿を現したのは四人。
紅い髪を黒くそめている、紅い瞳のルークに。
銀の髪をポニーテールにしている女性、ミリーナ。
そしてその後ろに長い黒髪の女性、シルフィールがいたりする。
そしてもう一人。
こちらもまた、見た目は二十歳前後に見える一人の青年。
その腰にはブロード・ソードをぶら下げていたりする。
だがしかし。
【グランシス】は一番後ろにいる【ジェイド】に気づくことはなく。
「???……?モクゲキシャ…フエタ?」
しばらく首をかしげていたりする。
それをみて。
「…タダの暗殺者かとおもったけど…どうやら違うみたいね。」
いいつつ茂みから出てくるミリーナに。
「ああ。人間の気配じゃねえな。こいつ。」
いって剣を抜き放ち、【グランシス】に向けて青眼に構えるルーク。
しばし、【グランシス】は未だに森の中にいるシルフィールと道に出てきているルークとミリーナをみつめ。
そして。
自分ではどうすればいいのかわからないがゆえに。
そのまま。
だっ!!
きびすを返し、森の中に飛び込んでいき、そのままその足音はあっさりと遠ざかってゆく。
後に残るは、数体のレッサーデーモンたちのみ。
「「……あ。」」
「逃げやがった!?」
それに気づき声を上げるアメリア達とルークではあるが。
「ルーク。今はそれより、このレッサーデーモンたちを何とかするのが先ですわ。」
冷静にそんな【グランシス】を追いかけようとするルークを止めているミリーナ。
そして又。
「お久しぶりです。リナさん。それにガウリイ様。ゼルガディスさんにアメリアさんも。」
いってぺこり、と頭をさげてあたし達のほうにと近づいてきていっているシルフィール。
そして。
「?あの?こちらの人は?」
いってユニットを見てくるけど。
そういえば、シルフィールはまだユニット知らなかったわね♡
「ミリアム=ユニットよ。よろしく♡
リナとは親友なの♡愛称はスミレなのでスミレってよんでくれたらうれしいな♡」
にこやかに、そんなシルフィールにといっているユニット。
「まあ。リナさん。こんなかわいい子とお知り合いでしたの?」
あたしをみてそんなことをシルフィールはいってくるけど。
一方で。
「ジェイド!?お前がどうしてこんなところに!?」
「グライア兄さんこそ!?…あ、あの?この人達…は?」
互いに駆け寄り、声をかけあっているグライアとジェイド。
そんな二人の会話に。
「と、いうことは。あんたがいってたアニキか……」
一人しみじみと納得しているルークに対し。
「
アメリアがとりあえず唱えていた呪文を、レッサーデーモンたちに向けて解き放つ。
「…面倒ね♡ゼロス♡とっとと消しちゃってね♡」
あたしの言葉に。
「わかりました♡」
いって。
パシュ!!
ゼロスが錫杖を一振りすると、
ものの見事にそこにいたレッサーデーモンたちの肉体は瞬く間にと消滅してゆく。
「……相変わらず…というか何というか……」
それをみて、苦い顔をしてつぶやくゼル。
「こんなものでいいでしょうか♡」
『!!??』
この中ではゼロスの正体がわかっていない、ジェイドとグライアがそれをみて驚いているけど。
まったく、この程度で……情けないわね♡
それをまったく意に介することなく。
「ルークさんたちはこの前のクリムゾンの一件以来だけど、久しぶり♡」
ルーク達に向かって、にこやかな笑みを浮かべて話しかけているユニット。
「よくよく縁がありますわね。…ところで?そちらのお二人は?
一人は…どうもジェイドさんなお兄さんのようですけど……」
いって、アメリアとゼル、そして、二人並んで話しているジェイドとグライアをみてあたしにと聞いてくるミリーナ。
くすっ。
「ま、とりあえず。話しは長くなりそうだし♡近くの町にでもよってからにしましょ♡」
にっこりといったあたしの言葉に。
『げっ!??』
『え゛!?』
『まさかっ!?』
なぜか同時に小さく叫んでいるガウリイとルーク。
そして、ゼルとシルフィール。
アメリアとミリーナ。
それぞれの声が一致する。
「えい♪」
パチン♪
彼らが叫ぶと同時にかるく指を鳴らすと。
「やっぱりぃぃ~!!」
「きゃっ!?」
「うどわっ!?」
「……はぁ……」
「……やっぱりか……」
「リナさん!ちょっとまっ!」
なぜか、同時に叫んでくる、アメリア・シルフィール・ルークにガウリイにゼルにシルフィール。
ゼルにいたっては無言でため息なんかついているけど。
そのまま、あたし達の姿はその場から瞬時にと掻き消えてゆく。
「とりあえず。ミリーナ達にとっては初対面な人もいるわけだし。簡単に自己紹介をするわね。
まず、あたしがリナ。リナ=インバースよ。で、こっちが。」
「ガウリイ=ガブリエフだ。」
「ミリアム=ユニットです♡すみれってよんでくれたらうれしいな♪」
「謎の神官ゼロスといいます♡」
とりあえずなぜか顔色が悪いミリーナやアメリア達を伴い、瞬時にと移動した近くの町の食堂で。
それぞれにかるく注文を済ませ、簡単な自己紹介をすることにしたあたし達。
「…リナ=インバース…さん!?…どうりで……」
そんなあたしの言葉に。
今の出来事が、あの
瞬間的な今の移動もわかるようなきがする……
などと一人納得しているジェイド。
「私はミリーナよ。
言って横にいるルークに視線を向けるミリーナに。
「……あのなぁ。お願いだからいきなりアレはやめてくれ……」
未だに顔色の悪いルークがあたしにと何やらいってくる。
とりあえず、ちょっとした人数がいるのでテーブルをくっつけて一つにしているあたし達。
今ここにいるのは、あたしにユニット。
それにガウリイにゼロスにアメリアにアメリア。
ゼルガディスにグライアにジェイドにミリーナ、そしてシルフィール。
この11人。
テーブル四つを四角にと並べ、食堂の奥のほうにと座っているあたし達。
何しろ他には客もほとんどいないので、店の人がテーブルをそのように並び替えてくれたこの現状。
何やらルークが言っているけど、とりあえず無視するとして。
「俺はゼルガディスだ。ゼルガディス=グレイワーズ。」
「…ゼル・・・?もしかして、白のゼルガディス…か?」
ゼルの言葉にふと顔をあげて問いかけているルーク。
そんな彼の言葉に。
「まあそうだが…なぜ俺の通り名を知っている?
…ルーク、と確か貴様はいったか……ん?…ルーク?」
ルークという名前が心当たりがあり、まじまじとルークをみているゼルの姿。
だが、ゼルが知っている赤き死神ルークは、赤い髪に赤い瞳、赤い剣を携えている人物。
目の前の人物の瞳は確かに赤いが、その髪は黒色。
…別人か?
そんなことを思っていたりするけども。
ただ、赤い髪を染めているだけなのにね♡
「わたくしはシルフィールといいます。
偶然であったジェイドさんとディルスに向かっていたところ、その…デーモンに襲われまして。
そんなときに、こちらのルークさんとミリーナさんに助けられたんです。
わたくしはサイラーグの巫女頭をしております。」
いって軽く頭を下げるシルフィールに。
「私はアメリアといいます!アメリア=ウィル=テスラ=セイルーンです!
何か正義の心が騒いでディルス王国に行く途中。
ゼルガディスさんとそこのグライアさんが盗賊たちに襲われているところに出くわしまして。
正義を広めるために、きっと天が私たちを導いてくれたんですね!
それから少しして、まさかリナさんたちと合流するなんて!
えっと、ルークさんにミリーナさん。でしたよね?
それにシルフィールさんまで!これぞきっと天の意思!
さあ!私と一緒にディルス王国に巣食う悪を――」
ぼごっ!!
「~~!!いたぁぃ!ゼルガディスさぁん……」
だんだんエスカレートしてゆくアメリアの頭をこぶしで叩き黙らせているゼルに対し、
抗議の声をあげて頭を押さえてうづくまるアメリア。
そんなアメリアにかまうことなく。
「――…こいつのことは気にしないでくれ。」
ため息まじりに手をこぶしの状態にしたままで、ルーク達にむかって話しかけていたりするゼルだけど。
「……いや、『気にするな』って……」
何やらづふやくルークに。
「…?セイルーン?ひょっとしてあのセイルーンの第二皇女の?」
少し顔色もわるくアメリアに問いかけているミリーナ。
ミリーナたち、あのフィルを知ってるからねぇ♡
ふふ♡
「そうですけど?」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
即答するアメリアに、なぜか無言になっているルークとミリーナとジェイドたち。
ミリーナやルークにいたっては、セイルーン王国……大丈夫なのだろうか?
というようなことを心で思っていたりするけど、それはそれ。
「それはそうと。グライア?そっちのジェイドとは兄弟みたいだけど?
……ルーク達もあの依頼うけたわけ?」
彼らが無言になったところを見計らい、問いかけるあたしの言葉に。
「あ。はい。こちは弟のジェイド=コードウェルといいます。」
「こちらは兄のグライア=コードウェルです。」
呆然としつつも、あたしの問いかけに、はっと我に戻り自己紹介をしてくるコードヴェル兄弟。
「「――…なるほど。」」
そんな二人の言葉に同時にうなづくルークとゼル。
そして。
「一応。話しはこのジェイドさんから聞いてます。……それで?
その…さっきのはどうみても魔族だったような気が………何かあったんですか?」
グライアをみつつ、そしてあたしに向き直り、問いかけてくるミリーナ。
セイルーンのアメリアやフィルが、よくお忍びで旅をしている。
というのは裏の筋では有名な話であるがゆえに、
あまり動じてなかったりする彼らではあるけども。
そんなミリーナの言葉に。
「そうだ。兄さん?あれは――?」
いって隣に座っているグライアに問いかけるジェイド=コードウェル。
「――とりあえず、簡単に説明しよう……」
そんな彼らの会話にゼルが静かに、語りはじめてゆく。
-続くー
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あとがき:
薫:ただ今ノート13P目v・・・さて、いったい何話しになるんでしょうか?いやほんとうに・・・
まだまだ先はながいぞー・・・・。ノート約70Pくらいあるしなぁ・・・あはははは。
何はともあれ、次回説明&回想シーンですv
んではでは、また次回にて。
2005年3月30日某日
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