エル様漫遊記・覇軍の策動偏
すでにあたし他たちはの町の中心地より外れており、
町の裏街道の出入り口付近にと差し掛かっていたりする。
それと共に辺りにちょっとした気配が立ちこめ、
ピタリ。
辺りに響き渡っていた虫の声が止まり、夜の静寂をより深くかもしだす。
「……何かまたややこしいことに首をつっこむような気が……」
ガウリイがぽつり、といったその刹那。
ドッン!
静かな町の中。
ちょっとした衝撃音が鳴り響く。
「――な!?何だ!?あっちのほうから!?」
あっちは、この気配の主がいる……
そんなことを思い叫びつつ、そのままそちらに向けて駆け出してゆくガウリイに。
「あ♡そうそう、ゼロス♡この一件が終わるまで。別にゼラスに報告にいってもいいけど。
グラウシェラーにはその報告がいかないようにね♡からかって遊ぶから♡」
そんなあたしの言葉に。
「……覇王様…がんばってください……」
何やらぽつり、とそんなことをいっているゼロスの姿があるけども。
「とりあえず、私たちもいきましょ♡」
にっこりとユニットがいい。
とりあえず、あたし達もまた、その音のしたほうにとむかってゆく。
走ってゆくことしばし。
しばし走っていったその先にあるのは、竹林がぽっかりと開いている空間。
その空間に立っている一つの建物。
その建物の下、壊れた木の窓の破片が散らばる中倒れ付している一人の男性。
歳のころは二十歳すぎ。
辺りに流れている液体が夜空の月を赤く映し出している。
あたし達がその場にたどりつき、その男性のもとにと駆け寄ると同時。
ギッン!
その気配に気づき、ガウリイが剣を抜き払い、
向けられてきた一撃をかるく凪ぐぎ、あいてがもっていたロングソードを叩き折る。
そこにいるのは全身真っ黒な影一つ。
その体全体が黒く染まる中、異様な白い紋様が月明かりの中照らし出されていたりする。
そして。
「ソノオトコにヨウガアル。」
あたしとユニットのほうをみて、くぐもったたどたどしい声でいってくるそれ。
「死んでるわよ?もう。」
今は死んでるけど、生き返らせればいいし♡
しっかし、いくら自我を壊されて憑依されているとはいえ……自分の子供に手をかけるとはねぇ。
まあそれによって無意識に生じる罪の意識の感情は魔族にとっては結構いいご馳走だったりするんだけど。
あたしの言葉にしばし沈黙し。
そしてその模様しかない顔をこちらにむけ。
「……シンデ…イル?」
どこか何かが失われたような気もするが。
だが、自分の子供のことを忘れている彼にとってはその【失われた】部分は理解ができない。
「ソウカ…シンダか……」
今命じられた任務を全うできた。
――そういえば、もう一つ……
などとおもい、ふと顔をあげ。
「オマエタチ……ワタシヲミタナ?」
いってこちらに向かってくるソレ。
元人間であるグランシス=コードウェルという人間の変わり果てた姿――と。
「お待ちなさい!!このような夜更けにあまつさえ、人の寝込みを襲うとは何ごとです!
このアメリア=ウィル=テスラ=セイルーンがいる限り!悪はほうってはおけません!とうっ!」
ふとその声に振り仰げば、
壁が壊され部屋の中が具間みえている一つの部屋より下を見下ろして言ってきている一人の女性。
そして掛け声とともに、そのまま飛び降り――
―――…ベチッ。
「―――?ヘンナノ……フエタ?」
それをみて首をかしげる【グランシス】。
それと共に。
「何をやってるんだ?お前は?」
ふわっ。
そんな彼女の後ろより舞い降りてくる一人の男性。
どうでもいいけど二人とも、そのパジャマの上にマントを羽織っている格好…
…というのはちょっと面白いものがあるわよ♡
その声とともにがばっと飛び起き。
「あなたがグライアさんを付けねらっていた悪ですね!…って、ああっ!?リナさん!?スミレちゃん!?」
ぴっとくろい人影…【グランシス】に向けて、
水玉マークのピンクのパジャマの上にマントを羽織っていた女性が指を突きつけ言い放つと同時に、あたし達にといってくる。
「ハ~イ♡アメリア♡」
「あ。アメリアさん。久しぶり♡」
そんな女性――『アメリア』にと手をふるあたし達。
そして。
そして又。
「――……世間は狭いな……。さて?どうする?これで五対一……」
そう言い放つ、もう一人の男性――いうまでもなく『ゼルガディス』の言葉に。
「……ナゼ?モクゲキシャ…フエタ??」
いいつつも、首をかしげ、そのままだっと後ろにと飛び退り。
闇の中にとそのまま駆け出してゆく。
「あ!まて!」
それをみて、追いかけようとするゼルに対し。
「ゼル!深追いは禁物だ!」
待ったをかけているガウリイの姿。
「ちっ。」
その言葉に小さく舌打ちし、抜き放っていた剣を鞘にとしまいつつ。
「――久しぶりだな。旦那たち。」
いって、ガウリイにと話しかけ、そして……
「何だ?まだあんたらはゼロスと一緒なのか?」
ゼロスに気づき、苦虫をつぶした顔をして何やらいってくるけど。
「ひどっ!久しぶりの再開なのに!ゼルガディスさんのいけずぅ!」
そんなゼルの言葉に、叫びつついじけているゼロス。
「ああ!逃げられてしまいました!それはそうと、リナさん、スミレちゃんお久しぶりです。
って!ああ!ゼルガディスさん!グライアさんが!」
座っているあたしとユニットの前に横たわっている男性、グライア=コードウェルに気づき何やら叫んでいるアメリア。
あたし達の前にはだくだくと血を流し胸を貫かれ、
胸のところにぽっかりと穴を開けて横たわっているグライアの姿が。
「ちっ!?遅かったか!?」
いいつつも、あたし達のほうにとかけよってくるゼル。
「あら?アメリアやゼルの知り合い?とりあえず♡生き返らせましょ♡」
あたしがそういい手ふっとをかざしたその刹那。
パアッ!
グライアの体が金色の光に包まれ、瞬時のその胸の傷もふさがってゆく。
そして。
「う……あ……うわぁぁ!?化け物!?」
わめきつつ意識を取り戻し、記憶がフラッシュパックして顔に手をあてて何やら叫んでいるその男性。
「ほほぉう。せっかく助けたのに人を化け物よばわり?ん?」
勘違いしているのはわかっているが、そんな彼にと言い放つと。
「ああっ!?リナさん!?せっかく生き返らせてくれたグライアさんをまた殺さないでください!」
「お、おちつけ!リナ!そいつはさっきのやつのことをいってるんだ!」
面白いことに、間髪いれずに叫んでくるアメリアとゼルの姿があったりするし♡
「冗談よ。冗談。わかってるわよ。それくらい♡」
パタパタと手をふりつついうそんなあたしの言葉にほっと胸をなでおろすアメリアに。
「……それはそうと?何だってお前らがこんなところにいるんだ?」
ほっとしつつもあたしに聞いてきているゼル。
そして又。
「…え…あれ?……あ、あの?――…あ。アメリアさん、ゼルガディスさん?私はいったい……」
ふと自分が何ともないのにようやく気づき、パタパタと自分の体を触りつつ、
呆然としてアメリアとゼルに気づき話しかけている先ほど本来ならば死んでいたはずの男性。
グライアのその言葉に。
「お~い?何がどうなっているのかわからないんだが…アメリア?ゼル?これ誰なんだ?」
さっきのヤツの中にあった人の気配と似てるけど…こいつの身内がアレに姿を変えられてるのかなぁ?
何か親子みたいな感覚うけたけど。
そんなことを思いつつ、首をかしげていっているガウリイ。
「あ。そうでしたね。――とりあえず、お久しぶりです。リナさん。スミレちゃん。実は……」
そういいかけるアメリアの声をさえぎり。
「どうでもいいけど?ゼル?アメリア?
あんた達いつまでそのパジャマの上からマントを羽織っている格好のままでいるつもり?
今の騒ぎでそのうちに人もあつまってくるわよ?――とりあえず…っと♪」
ふっとあたしが壊れている目の前の宿の二階の一室にと目をむけると同時に、瞬時に再生する建物の姿。
「――……え!?」
それをみて、目を見開き驚いているグライアに。
「ああ!そうでした!」
「うっ!」
アメリアはそれに小さく叫び、ゼルはゼルで声を詰まらせてるけど。
ちなみに、ゼルは宿に備え付けてある青い星の柄が入った上下のパジャマの上にマントを羽織り、
そして片手に剣を持っている状態だったり♪
「と…とりあえず、服を着替えてから…でもいいですか?」
「同じく。どうしてあんたらがここにいるのかも気になるしな。――とりあえず事情説明は後で……」
いって二人同時にふわりと浮き上がり、あたしが今再生したグライアが泊まっていた部屋の、
その開け広げられているままの窓から、宿の中にと入ってゆく二人。
そして、一人残されているグライアはといえば。
「……あ?あの?私どうして助かったんでしょうか?
…確かあの全身黒くて異様な白い模様が入っている魔物に攻撃された……
……というところまでは覚えてるんですけど……」
いって自分の胸を押さえつつ聞いてくる。
「ああ。死んでたのを生き返らせただけよ。あたしはリナ。で、そっちがガウリイ。」
「ミリアム=ユニットよ♡」
「謎の神官ゼロスといいます♡」
そんな彼にととりあえず簡単に自己紹介をしておくあたし達。
そして。
「あ、ちなみに。一応アメリアとゼルとはあたし達知り合いよ♡」
あたしの言葉に。
「そう……なんですか?ん?…いまあの…『死んでたのを生き返らせた』って……
……リナさん…といいましたっけ?いや、いいませんでした?」
ふとそのことにと気づき、問いかけてくるこのグライア。
「心臓を貫かれてもまだ生きていた、とおもうんだったら冗談、と捕らえてもいいわよ♡」
そんなあたしの言葉に。
「――…って!?もしかして…リナって、あの!?リナ=インバースさんですか!?」
ずざっざっ!
なぜかずざっと後ろに退くグライア。
と。
バッン!!
「うるせえぞ!」
「何時だとおもってやがる!」
宿の窓の数箇所から泊り客が顔を出し、何やらこちらにむけて言ってくる。
そんな会話をしていると。
バタバタと服を着替え終わったアメリアが階段を駆け下り、そしてあたし達のいる外にと出てくる。
そして。
「リナさん!お待たせしました!」
「――…おい。アメリア。今は夜なんだからもう少し声のトーンを考えろ。」
いってそんなアメリアの後ろから同じく服を着替え終わったゼルガディスも出てくるけど。
そんな二人の姿をみて。
「あ……あの?アメリアさん?ゼルガディスさん?
この女の人…って…『あのリナ=インバース』さんなんですか!?」
何やら悲鳴に近い声でアメリア達に聞いているグライアだけど。
「あら♪どういう意味かしらねぇ♡グライア♪」
「ああ!すいません!すいません!ごめんなさい!」
あたしの言葉に何やら平謝りしてくるけど。
「どうでもいいけど。ここにいたらさっきの人がまたくるかもしれないし♡場所移動しない?」
そんなあたし達の会話にわって入ってくるユニット。
「それは俺も思った。…まさか、宿で襲撃してくるとはおもってなかったからな。
それでなくても通のものしか知らない宿に泊まった、というのに。」
いって、ちらり、と横手にある宿をみて言ってくるゼル。
そして。
その手にしている荷物の一つをグライアにと投げ渡し。
「あんたの荷物だ。アイツが戻ってくる前にここを引き払うぞ?すでにチェックアウトは済ませてきた。」
いって腕を組んでたり。
「とりあえず立ち話しも何ですし?何でしたら僕たちが泊まっている宿にいきませんか?
……リナさん達もそれでかまいませんよね?」
立ち直ったゼロスがあたしに聞いてくるけど。
「そうね。とりあえず、ここから移動しましょ♡」
パチン♪
そういうと同時に軽く指を鳴らす。
「うきゃ!?」
「うわっ!?」
「――……なっ!?」
何やらいきなり感じる浮遊感に叫んでいるアメリア・ゼル・グライアの三人。
次の瞬間。
あたし達はその場からアメリア達三人を連れ、あたし達が泊まっている宿の前にと出現してゆく。
「なっ!?」
それをうけ、辺りをきょろきょろと見渡して驚いているグライアに。
「リナさぁん!何度もいいますが、いきなりアレはやめてください!心臓に悪いです!」
なぜか涙ながらに抗議しているアメリアに。
「かわっとらんな……おまえは……」
いって深くため息をついているゼル。
「まあまあ。夜中に騒いだら迷惑ですよ♡」
そんなアメリアににこにこといっているゼロスに。
「とりあえず宿に入ろうぜ。」
ギイッ。
いいつつも、ドアに手をかけ宿の中にと入ってゆくガウリイ。
「そうそう。話しは中で……ね♪」
そんなあたしの言葉に。
「はっ!?そういえば今は夜中でしたっけ!?」
「……おひ…アメリア……」
ふとようやくそのことに思い当たり、思わず叫ぶアメリアに突っ込みをいれているゼル。
「ほらほら、とにかくみんな中にね♡
こんなところで話していて、もしアレにみつかったらそれこそ町の人の迷惑よ♡」
にこやかにアメリア達を促すユニットの言葉に。
「――…確かにな。」
「――ですね。」
「――…は。はぁ……」
それぞれに何やらいいつつも、とりあえず、各自順次に宿の中にと入ってゆく彼らの姿。
さってと。
これから楽しくなっていくわね♡
-続くー
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あとがき:
薫:最近花粉の影響で打ち込みスピードがおちまくっている私です・・・
しくしくしく・・・・
まだまだこの話しも序盤です・・・何はともあれのんびりといきますわ・・・はい・・・
ではでは・・
2005年3月17&18日某日
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