エル様漫遊記・クリムゾンの妄執偏

「オラオラオラ!オレ達が甘い顔をしている間に大人しくだすもん出したほうが身のためだぞ?」
「でねぇと……」
うららかな、朝の街道。
何も考えていない、というか、何というか、森の横にと伸びているとある街道。
あたしとユニット、ゼロスとガウリイの計四人で歩いていると、
横との木陰から出てきて芸のない月並みな台詞を言って来る六名の盗賊たち。
「……芸がないわね……」
ぽつり、とそんな彼らの言葉に対してつぶやくユニットの言葉に。
「何だと!?いくらかわいいからって容赦は……」
ぴくんっ。
――容赦はしてやらねぇぞ!そんなことをいうんだったら!
そういいかけた、男達の体がびくりと本能から恐怖を感じ取り震え。
「……な……何だ!?」
「何かいるぞ!?」
あからさまにうろたえ、きょろきょろし始める。
それと同時。
ガサッ!
彼らが先ほどでてきた森の奥よりゆっくりと現れてくる影一つ。
そして。
「うるぐわぁぁ~~!!!」
『どわぎゃぁぁ!!??』
現れたそれは、あたし達の姿をみるなり軽く吠え。
それをみて、何やら盗賊たちは悲鳴を上げているけど。
それが放った声により、なぜか面白いまでにその場にて腰を抜かしている男達の姿。
「おや?こちらには来ないでくださいね♡」
そんなソレ……森の中より出てきた一体のレッサー・デーモンに、にこやかに話しかけ。
そのまま。
すっ。
と、その手にしている錫杖を横にと振るゼロス。
――と。
パシッュ!!
一瞬のうちにデーモンの体は消滅する。
ま、死んだだけだし。
関係ないけど♡
そして。
くるり、とあたしの方に向き直り。
「さて?リナさん♡とりあえずアレは殺しときましたので♡続きをどうぞ♡」
にこやかに、あたし達にといってくるゼロスの姿。
一方では。
『なななななっ!?』
今のをみて、腰を抜かし、何やら【な】の字を連発している盗賊たち。
「あら?もう殺したの?まあいいけど。さってと♡あんたたちはアジトに案内なさいね♡
  いやなら、今のレッサーデーモンと同じ目に会うかもよ♡」
なぜか中には失禁しかけている男達もいたりするけど、そんな男達に話しかけると。
――なぜか、男達は素直にアッサリと首を縦にとふってゆく―――


「けど、何だってこのごろアレが多いんだ?」
森の中をゆく細い街道。
とりあえず襲ってきた男達にとアジトを吐かせ、そのアジトをつぶした帰りの道すがら、
何やら言ってくるガウリイ。
「まあ、いいじゃないの。ガウリイさん。
  たかが数千匹のレサー・デーモンが襲ったとしても、防ぎきれない人達が悪いのよ♡
  仮にも悪事をやっているんだったら、それくらい自分たちで対処しないと♡」
先ほど、盗賊のアジトを壊滅させていたとき、
なぜかその騒ぎに惹かれその辺りにいた野良デーモンたちがほんの16体ほどアジトの中に出現し。
なぜか盗賊たちが大バニックになってたり♡
ガウリイはそれをさして言っているようだけど。
そんなガウリイに、にこやかに、ホットミルクを両手で抱え込み、こくこくと飲みつついっているユニット。
ユニットがこういう動作してたら、かなり絵になるのよねぇ~♡
外見上がとてつもない美少女だから♡
まあ、歩きながら…というのはともかくとして。
「…いやあの…それは無理だと思うのですけど……」
ガウリイの言葉に横でそんなことをいっているゼロス。
ちなみに、あたしとユニットが先を歩き、その後ろから、ガウリイとゼロスがついてきていたりする。
そんなゼロスの言葉に、手にしていたコップをかき消し。
「あら?簡単じゃない♡」
ミルクを飲み終わったユニットがさらり、といっていたりするけども。
「「……いや、ムリだと思(うぞ)(います)」」
そんなユニットの言葉にきっちりきっぱり声をハモらせているゼロスとガウリイ。
「ま、そんなことはどうでもいいし。いくわよ♡」
なぜか普通の人間達はあんな下っ端魔族、しかも何の力もない、といっても過言でない。
小動物などの体を媒体にしないと具現化すらできない輩、
レッサーデーモンとブラスデーモン、と呼称されているモノに対してかなりてこずったりするのよねぇ。

フィブリゾをアストラル・サイドに多少閉じ込めお仕置きして、閉じ込めてここの世界の時間率でいえば約半年。
まあ、その後、部下DやらWが何やらちょっぴし混乱していたりもしたけども。
まあ、それはそれ。
なぜかあたしがここにいるのに気づいてからというもの、
Sの欠片を何とか見つけ出し、あたしに差し出そうとしていたりするのよね……
…あいつらは……
まあ元々、一時休止していたものの、グラウシェラーのやつが行動を起こしていたので。
今もまた、あいつは約半年前から本格的に行動していたりするこの現状。
何も考えてない、というか何というか…あちこちで下っ端を具現化させて野放しにしてたりするし……
ゆえに、最近ではあまり行商人や旅人。
といった人々の姿は根性のないことにあまり見受けられなくなっていたりするけど。
ま、たまに夜の宿でレッサー・デーモンの襲撃うけて、ゼロスが姿を薄くしてたり、ということもあったりするけど。
後はお約束にも盗賊たちなど、といった存在たちがそんな彼らの襲撃をうけて壊滅していたり♡
ま、品物だけもらえればそれはそれで、こちらはまったく関係ないし♡
そんなこんなで、なぜか人々の心の中には、
【何かが起こりつつある。】という漠然とした不安が広がり始めており、
エルフ達や竜族達にいたっては、
ついこの前この地にて起こった【降魔戦争】と呼ばれている戦いを、
再び魔族が何かそれに近いものをたくらんでいるのでは!?
などと思い、調査に当たっていたりするけども。
ま、『あたし』のことは口止めしてるから下っ端の存在たちは当然知るはずもないしねぇ~♡

あたしの言葉に。
「そね。あ、そろそろ町が見えてきた♡」
いって、ユニットが街道の先に見えている町並みの門を指し示し、そんなことを言ってくる。
「…ええと…何てとこだっけ?あそこ?」
その町並みをみて、首をかしげているガウリイに。
「ガウリイさん。テルモード・シティですよ。
  ……まあ、あの町にはこれっ!といった特徴も名物も名産品もありませんが♡」
そんなガウリイに説明しながら話しかけているゼロス。
「――ま、そういうことね。いきましょ♡」
いってあたし達は町に向かって進んでゆく。


「――おや?何かありましたかねぇ♡」
テルモード・シティにと入る門の前。
その向かって右側に張られている紙一つ。
それを目にして何やらつぶやくゼロスに。
「うん?何かあるのか?」
そんなゼロスにと問いかけているガウリイ。
「ああ、これですよ♡」
いってゼロスが指差したその先には、門柱に貼られている一枚の髪。
「あら?何?何♡」
いって、ふわり、と浮き上がり――まあ、ユニットの目線よりこれ、高い位置に貼られている。
あたしの今の背でも少し見上げるくらいの位置にこれ、貼ってあるしね、これ……
そこには。

【――旅行中の魔道士様各位。
  急用なき方は至急最寄りの魔道士教会まで顔を出されたし。――魔道士協会評議長】

と、かかれている一文の紙。
ぱっと読んだだけでは、
立ち寄った先の魔道士協会に魔道士は一応【今この町にいる】という登録をするのが一応決まり。
と知っている人々にとっては、最近それを守る人々があまりいないせいかな?
とも思える一文。
だがしかし。
この文章の中の【最寄りの】というところが、
見る人が見れば緊急事態が起こったから協力してくれ、とも見て取れる。
まあ、事実、この一文は後者の意味合いをもってるんだけど。
ちなみに、この辺り一体にこの【一文】は貼り出されており……
協会の面子と存亡にかかわる!というので魔道士協会側も躍起になってたり♡
「あら?リナ♡何か魔道士協会に寄ってね♡ってかかれてるけど♡」
すとん。
と降り立ち振り向きつつ言ってくるユニットに。
「?いつも町とかに入ったら寄ってるじゃないか。
  何か以前町に入った登録するのが当たり前云々とかいってなかったか?」
いってそれをみて、首をかしげているガウリイ。
「ま、今日のコレは一般の人にはあまり知られて区ないらしい出来事が起こったようよ♡
  ほら、用件とかもまったくかかれてないでしょ?」
あたしもまた、紙の前に立ち微笑みながら説明する。
「…そんなものなのか?」
あたしの言葉に首をかしげているガウリイだけど。
「――ま、ともかく。この町にも魔道士協会あるし。いってみましょ♡」
そういうあたしの言葉に。
「…何かイヤな予感がするのは僕の気のせいでしょうか?
  …そういや今、覇王グラウシェラー様の計画…どうなってるんでしょう……」
などとつぶやいているゼロスだし。
ま、グラウシェラーの奴はゼラス達にも言わずにこそこそとしてるからねぇ。
ゆえに、当然ゼロスにも情報は入ってないし♡
「気のせいよ♡さっ、いきましょ♡」
いって、そのまま、町の門をくぐり町の中にと入ってゆく。
あたしに続き、ガウリイ達もまた入ってくるけど。
そのまま、あたし達はこの町の魔道士協会にむかって進んでゆく。


テルモード・シティ魔道士協会。
ざわざわざわ。
協会の中は面白いまでにパタパタ、ざわざわしており。
いつもは一般にも立ち入りを自由に認めている協会だ、というのに、
厳しく入出のチェックが施されていたりする。
一階までも【立ち入り禁止】としたら、何かがあった、と気づかれるのは明白であるがゆえに。
一応一階部分のみは一般の立ち入りも認められている。
「すいません。表の入り口の張り紙を見てきたんですけど……」
そういいつつ、魔道士協会の帳面にあたしの名前を書き込み、受付に座っている女性にと話しかける。
「お待ちしておりました。向かって左側の階段より図書室のほうにお降りください。
  ――そろそろ説明会が始まると思われます。」
一人、一人に説明していたらラチがあかないので、
人数がある程度いるときには、まとめて全員に説明しているここの評議長。
「あれ?リナさん?この名前……」
あたしが名前を書いた欄のほんの十行ばかり前に書かれている名前二つ。
それをみて何やらいってくるゼロス。
一応、あの書きかたでも、判る存在には判るので、旅の剣士や傭兵。
そしてごくたまに立ち寄る宝探し屋トレジャーハンター
そんな人々も魔道士協会には立ち寄っていたりする。
「あら♡」
「ま、とにかく――降りましょ♡」
その名前を見て、知っているくせに、目をきらきらさせているユニットに。
「――……ってことはあの二人…また巻き込まれるのかぁ……」
何やら腕を組んでしみじみといっているガウリイの姿もあったりするけども。
とりあえず、あたし達は五・六人の魔道士や傭兵といった人々が警備しているその横を通り。
地下へと続く階段を降り、その下にとある図書館にと向かってゆく。


ざわざわざわ。
図書館の入り口でその中にと入るためにと名前を記入して、
あたし達が部屋の中にと入ってゆくと、そこにはすでに数十名の人々の姿が。
――そして。
「あ♡ルークさん♡ミリーナさん♡」
ドガシャ!!
「―――………」
ユニットの言葉に後ろの席のほうにと座っていた男女二人が振り向き……
そして、あたし達の姿を認めるなり、面白いまでに、イスから転げ落ちている男性のほう。
そして。
「なっ!?何でお前らがんなところに!?」
何やら起き上がりつつあたし達のほうをみて言ってくるけど。
「あら?一応あたし魔道士なんだけど♡貼り紙をみてきたにきまってるじゃない♡」
まあ、今は一応魔道士ってことにして、人間やってる、というかふりして遊んでいるわけだし♡
「…ルーク。リナさんがここにいても何ら不思議ではないですわ。…まあ同じ協会にやってきた。
  というのは偶然にしてはできすぎているような気もしますけど。とにかく、お久しぶりです。」
いって、席を立ち上がり、軽く会釈をしていってくるもう一人の女性。
「あら、偶然よ♡」
そんな彼女――ミリーナの言葉をさらりとかわす。
「あリナ?ルークさんたちの横、二つほど席空いてるみたい♡」
いいつつ、とたとたと、そんな二人の横にと走っていき、開いているイスをポンポンと叩いていってくるユニット。
「あら♡ならそこに座りましょ♡」
あたしの言葉に。
「…なあ?リナ?オレ達は?」
「もう席あまってないみたいだし。だから立っててね♡」
「――………」
即答するあたしの言葉になぜか無言になるガウリイ。
地下のこの戸償還は、八列ほどに長テーブルが左右、そして中央、と規則正しく並べられており。
その長テーブルは四人がけできるようになっている。
規則正しく並べられている席にはすでに人々が腰をおろし、又、席を確保し他の人々と話しをしていたりする。
「まあまあ♡いいじゃないですか♡ガウリイさん♡
  それとも、僕が椅子の形に一部を具現化させましょうか?」
そんな黙り込むガウリイにと、にこやかに言っているゼロス。
まあ、ここの魔族は精神生命体だし。
望む姿に姿形なんてものは変えられるしね♡
今のこのゼロスの姿もゼロスの本体の一部にすぎないし。
かくいうあたしもこの姿は一部を実体化させているだけなんだけど♡
そんなゼロスの言葉に。
「……いや、いい。遠慮しとく……」
それって…ゼロスの膝の上に座るってことだよな……
などと思いつつ、思わず頭の中で中腰になっているゼロスの膝の上に自分が座る姿を想像し……
一瞬、頭を振りかぶり。
「ま、壁にでももたれかけとくよ。」
いって、そのまま、そこにある本棚にと体を寄りかけているガウリイ。
「おや?そうですかぁ?僕としては構わないんですけどねぇ♡
  ガウリイさんを抱きかかえる形になりますけど♡ガウリイさんからいい食事ができそうですし♡」
そんなガウリイに対してにこやかに言っているゼロスだけど。
「いや。ものすっごぉ~く遠慮しておく。オレ。」
即座にそんなゼロスの言葉を却下しているガウリイだし。
「ほらほら、二人ともどうでもいいこと言ってないで。―――話しが始まるわよ?」
すでに、ミリーナたちの席の横につき。
目の前、というか正面にある教壇をみつつ、そんな会話をしている二人にと話しかける。

――ざわざわ。
ピタリ。
その教壇にこのテルモード・シティの魔道士協会の評議長と、数名の人間達がやってきて。
そして。
「……皆様。本日はよくお集まりになられてくれてありがとうございます。
  この近隣の魔道士協会ともども連動をかねておりますがゆえに……
  それぞれの町や村にしてある貼り紙を見られたかと思われます。
  実は――重大な事件が発生いたしました。――すでに国王軍も動いておりますが。
  我ら魔道士協会としましては、ぜひとも協会の手で解決せねば……
  ………ひいては、魔道士、という立場、協会の存続にもかかわりますがゆえに……」
静かに、そして顔色も悪く、教壇の前に立ちタンタンと話をし始めるテルモード魔道士協会評議長の言葉に。
ざわりっ。
一瞬、この部屋にと集まってきている人々から動揺の声が巻き起こる。

――国王軍も動いている。
それは、並々ならぬ事態が発生している、といってまず間違いない。
どんな鈍い存在でもそれくらいは理解できる。

…まあ、一番の問題はあのカイラスよねぇ。
金と権力さえあれば、何でもできるし思い通りになる、と勘違いして……
彼女を手に入れるために数日後に結婚を控えていたその彼女の恋人を殺し。
あまつさえ、その死を悲しんで教会に一人のこっていた彼女を無理やりに力づくで犯し。
さらには、その真実を記憶球に閉じ込め、【自分のものにならなければこれをばらまく。】と脅し。
止めにたった一人の彼女の肉親でもある妹のアリアの命とそして彼女もまた、
【複数の男達にいいようにされて恋人のところにいったとしてもいいんだな?】と脅し……
彼女を自分の妻にした挙句に、
せっかく宿っていた彼女と恋人との間の子供まで、カイラスの手によって殺され…
彼女がカイラスを…
そして、それを止めようともしなかった回りの人々に対しうらみを持ってゆくのは、
人の心理として当然のこと。
まあ、その想いに共感して、シェーラも、アレ、渡したんだし…
――これで敵が仇がうてるから――
と。
それ以後のことは、彼女の意志でもあるし。
まあ、あんな人間を野放しにしていた周りにも責任あるしね♡
あの人間、かわいい女性、とみたら、見境なしに無理やり力づくで【味見】と称して何やらやってたしね……
あの人間があの町の魔道士教会評議長になって、その後。
それが原因で命を自ら絶った女性って、軽く百六十人超えてるし……
それでも何の手もうたなかったんだから…いくらこの国の王家の血縁者だからってねぇ……
そんなことを思いつつ。
とりあえず、知っているけどテルモード魔道士教会評議長の説明を。
あたし達はしばし、聞いてゆく……


                            -続くー


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あとがき:
薫:ちなみに、私的には、あのカイラス!キライです。はい。
  好き、という人はいないでしょうけどね。
  でも、あの彼だと無理やりに犯す・・・ くらいはしてそーです(断言!
  というか、んなやつ魔道士協会評議長に据えとくなよ・・・クリムゾン・・
  とあれを読んだときの第一感想ですね。
  いくら実績がいい・・・とはいえ・・・ねぇ。人望がない人で、何か裏でやっていそうな人を・・・
  そんな彼がそれでも評議長をやっていたのは、何か裏があるような気がしなくも・・・
  それか、自分にはむかうものは闇にとほうむってたか(汗
  そんなわけで、この話しはかなりカイラスは非道っぷりを強調してます。はい。
  さて、次回、アリア登場・・です。
  ではではv
  2005年3月4日某日


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