エル様漫遊記・クリムゾンの妄執偏
カイラスが手にしているのは一本の飾り気のない黒い剣。
「「――あれはっ!?」」
それを見て同時に叫んでいるルークとミリーナ。
そして。
そういえば、さっきガウリイ(さん)がアレの名前を出してたような……
などと、二人は思っていたりするけども。
そしてまた。
「う……そ。嘘でしょう!?エリディア!!エリディア!!??」
「ダメだ!アリアちゃん!危険だ!!」
ミュカレのほうに手を伸ばしていこうとするアリアをどうにか押しとどめて叫んでいるディラール。
そして。
「あ…あ゛あ゛あ゛あ゛あぁぁ~っ!!」
カイラスに【剣】を向けられたことにより――ミュカレの自我は再び閉ざされ。
そして、無言のまま、ゆっくりと、アリアとディラールのほうに、刃にと変形させた手を構えて歩き出す。
「エリディア!?嘘でしょう!?何でっ!?」
信じたくない…信じたくないが、先ほどの声は紛れもなく……
そんなことを思いつつ、叫ぶアリアに。
「無駄ですよ。アリア。その子は私の操り人形。…さて、と。ゾナゲインはもう……」
もう、始末をつけたころあいでしょうか?
と思いつつもあたし達の方にと視線を向けるカイラス。
と。
――プスプスプス……
「……え…えっと……」
それをみてしばし呆然としているカイラスの姿。
カイラスの視線の先においては。
「やっぱり火だと早いわね。毛が燃えるの♡」
「というか、あのゾナゲインさんが着ていた服も燃えやすい性質だったからじゃない?」
つんつんと。
ちょっひし投げた火の球をうけて、あっさりとまるこげになり、
すでに墨と化した物体をつつきつつ話しているあたしとユニット。
「……というか、俺らが術をつかってもはじかれたのに……」
その後ろで多少いじけてつぶやいているルークに。
「ま、リナさんだから…と割り切るしかないかと。…ルーク。」
かる~くなげた火の球によってあっという間に墨と化したゾナゲインをみてつぶやいているミリーナ。
「アリアちゃん!とにかくここは危険だ!あいつらはリナさんたちに任せて!」
ぐいっ。
アリアの手をひっぱり、そして自分たちの後ろにとある、開け放たれているベランダにと視線をむけ。
「とにかく外へ!」
「いやっ!姉さんが!エリディアが!」
そう叫ぶアリアに。
「ベルさんを助けるにしてもこの部屋からは無理だ!いったん外に出て、外から……」
いって、ぐいぐいアリアの手をひっぱりベランダに出てゆくディラール。
――が。
「馬鹿っ!出るなっ!」
そんな二人に気づき、別にもう一体出てきていたこちらは元副評議長であった元人間と対峙しつつ、
あっさりと相手を倒した直後、そんなふたりに気づきガウリイが思わず叫ぶ。
「――え?」
アリアがその声に足をとめたその刹那。
ドッンっ!!
すでにテラスにと出ていたディラールの右胸を、
真上から伸びてきた蔓が変形して見た目鎌のようになっているものが貫いてゆく。
「――ばか者!女は殺すな。といっただろうが!――アイレウス!」
それをみて、何やら叱咤しているカイラスの姿。
「…どじねぇ。というかアリア。何混乱してるのよ?早く回復かけないと死ぬわよ?ディラール。
最も、死んでもよければ別だけど。気がむいたら生き返らせるし。」
ディラールの横で口を押さえ声にならない悲鳴を上げているアリアをみつつ話しかけると。
「……はっ!?」
その言葉にあわてて、ディラールに駆け寄っていき、回復の術を施し始めるアリア。
「――???何だぁ!?今の……」
ディラールが何か植物の蔓のようなものに胸を貫かれたのをみてしばし絶句した後に、
何やら叫んでいるルーク。
「だから外にでるなっていったんだよ。
この屋敷さっきもいったけど、何か人と魔と植物が入り混じった何かの意思に覆われてるんだから。」
剣をカイラスに向けて構えなおしつつ、言っているガウリイ。
あまりに剣の切れ味がうんぬん、と毎日のようにうるさいので、
とりあえず、ちょっとした紋を剣の柄にと入れている。
ゆえに、今ガウリイが手にしている斬妖剣は、
ガウリイの意思のままにその切れ味をコントロールできるようにとなっていたりする。
それゆえに、抜き身の剣を手にもっていても、何でもかまわずにすぱすぱと切り刻む。
という面白いことはなくなっていたり。
……まったく……つまらないけどねぇ。
でも、その方が相手も油断するっていうのもあるし…ね♡
「アイレウス…って、確か地下で……」
何やらそのカイラスの台詞を聞き、何やらつぶやいているミリーナ。
くすっ。
「あら、さすがね♡ガウリイ。そうよ?
そこのカイラスがあのドゥールゴーファ使って人間に植物を融合させて。
で、人間の魂を核にして、新たな魔を生み出したのよ♡
――で?ドゥールゴーファ♪彼が町の女性たちにしたこと。
そしてさらにはそこのカイラスがこのあたし達を生け捕りにして何をしようとしているのか。
それに気づいてて♡でもその男に力を貸す気かしら♡」
びくくくくぅっ!!
あたしのにこやかなまでの言葉に対し。
カイラスの手にしている黒い剣――
すなわち。
覇王将軍シェーラの部下であり武器でもあるドゥールゴーファが面白いまでにその刃身を震わせ。
――そして。
ばしゃっ!
『あ♡はじけた♡』
いともあっさりとはじけるように、カイラスが手にしているその剣は消えてゆく。
それをみて、あたしとユニットの声がかさなり。
「……懸命な判断ですね。ドゥールゴーファさん。こちらの一部を殺すとは……」
それをみてしみじみといっているゼロス。
カスラスが手にしていた剣はカタカタとその刃身を震わせ、
そして内部からはじけとび、飛び散った黒い粒はそのまま空中にと溶け消える。
「――なっ!?馬鹿な!?何がおこった!?」
いきなり力の源でもあった剣が掻き消え、うろたえているカイラスに対し。
「…とりあえず残っているのはお前さんと。そこに人だけだな?どうする?」
この場にいるのはカイラスとミュカレ、そして外にアイレウスのみ。
「…何が起こったんだ?あのシェーラの剣が…消えた?」
「一つだけいえることは。
この一件にも、またあの覇王将軍シェーラさんがかかわっていた、ということですわね。」
それをみて、カイラスに言っているガウリイに。
そしてまた、つぶやくようにいっているルークに、的確なことを言っているミリーナ。
「――……ぐっ。何が起こったのかはわかりませんが……ですが。
剣がなくなったからといって。この私に勝てるわけはないじゃないですか。」
いって。
ひゅうっ。
その口元から小さな声を漏らすカイラス。
それと同時に。
ぐにゅっ。
ドアの前から少し離れていたところにいたミュカレと、そして、ぽこり、と床を突き破って出てくる、
ちょっとした人の顔が張り付いている白くにごった肉球。
それらがゆっくりとカイラスのほうにと吸い寄せられるようにと身体の中に取り込まれてゆく。
一方。
「お願い。ディラールさん。目をさまして……」
ほとんど涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらも、ディラールに、
ふと真上や、左右をみれば、このカイラスの屋敷の表面をびっちり覆っている緑の蔦と、
ところどころに見えているぽっこりとした白い肉球。
だがしかし、アリアの治療の最中にもゆっくりとディラールの体温は失われていたりする。
「おやおや。アリアさん?そんなモノじゃあだめですよ。
ま、例え死んじゃったとしても、リナさんが気が向きましたら生き返らせるでしょうから。
見殺しにしてもいいのでは♡」
そんなアリアのほうをみて、にこやかに言っているゼロス。
「ゼロスさんっ!そんなことをいってないで、手伝ってはくれないんですか!?」
そんなゼロスに叫びつつ、非難の声をあげるアリアに。
「ちっちっちっ。アリアさん?他力本願はいけませんよ?
それに僕としましては、別に人間の一人や二人殺されても問題ありませんし♡
それに下手なことをしてリナさんのご機嫌を損ないたくないですからねぇ。はっはっはっ♡」
にこやかに笑いながらアリアの方をみて話しかけているゼロスをみて。
「……その余裕…どこまで保てるかな?…まずは、神官。きさまから始末してやろう……」
アイレウスとミュカレ、そしてアイレウスが取り込んでいた地下にいた下級魔族たちすべて。
それらを取り込み終わったカイラスがそんなことをゼロスにむけて言い放つ。
まったく……相手の実力くらい判断しなさいよね……
そして。
「
カオウワーズなしの力ある言葉だけで、術を解き放つカイラスの姿。
それと同時、ゼロスの背後に緑色に透き通った壁が出現し、
かっ!
カイラスの術をうけ、光をはなち、そして、あたし達の方に向かって衝撃波がむいてくる。
「くっ!?」
「ミリーナ!?大丈夫か!?」
それを何とかかわし、膝をついているミリーナに声をかけているルークに。
「……おいおい。んな攻撃あっさりとどうにでもなるぞ?あんた?
なあ?リナ?こいつとっとと斬り捨ててもいいか?」
そんなあからさまに、あたし達の実力がわかっていないカイラスを指差してあたしに聞いてくるガウリイ。
「別にいいけど。――あ、ならその柄の紋は消しとくわね♡」
「って!?ちょっとまてぇ~~!!」
ガウリイが何やら叫んでくるけど、とりあえず無視♡
スパパッ!
カイラスが何の考えもなしに解き放っている瘴気とその魔力によって辺りには魔力が満ちている。
ガウリイの持っている剣にと触れた風が、
その剣を掠めたときに生じたちょっとした摩擦力がそのまま風の刃となってあたりかまわずに斬り裂いてゆく。
無論、壁、天井、床をも問わずにv
「さって♡カイラスはガウリイに任せといて♡アリア?ディラールは?」
「……離れるのは賛成ですわ」
「同じく。」
カイラスと向き合うガウリイをそこに残し、テラスにいるアリアのほうにと歩いてゆくあたし達。
「なっ!?逃げるか!?」
それをみて、まったく見当違いなことをいっているカイラスの姿があったりするけど。
そんなカイラスに片手で剣をもち、そして残った片手で頭をぽりぽりかきつつ――
「どうでもいいけどねあんた?その力に頼りすぎ。しかも見た目で判断しすぎだぞ?
ま、反省は死んでからでもゆっくりするんだな。」
どうらすんなりと死んでからもこいつは許してもらえないだろうしな。
そんなことを思いつつ、カイラスにむけて言い放つガウリイ。
そして。
ふっ。
「何っ!?」
次の瞬間、カイラスの視界からガウリイの姿が掻き消え、驚きの声をあげているカイラス。
だがしかし。
「動きがおそい!」
「――なっ!?」
その声に振り仰げばガウリイはその一瞬のうちにとジャンブし、
そして、カイラスにとってはいつの魔にか見上げたすぐ真上にガウリイが振り下ろした剣が見え。
そして。
「……がっ!?ぐっ…がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ザッッッッッン!!
カイラスの真上から振り下ろされた刃は、そのままカイラスの体を真っ二つにと切り裂き、割ってゆく。
ガウリイの手にしているのは、
その周囲の魔力を吸収し、切れ味となす。
ゆえに、魔と同化し、また魔と半ば変化していたカイラスは…その魔力を剣にと吸収される。
「が…がぁぁっ!!」
左右に分かたれた体から、それぞれに手を前にと伸ばし…その体は瞬く間に白一色となり。
そして。
ごっ!
ガウリイが剣を構えて飛びのいたその刹那。
カイラスの体は鈍い音とともに砕け散ってゆく。
「…あいつだけとは剣の手合わせしたくねぇな……」
テラスにと出ていルークが、部屋の中のその光景をみてぽつり、とつぶやいているけど。
そして又。
「……うっ……」
アリアがまだ覚えたての
そして。
「――あれは!?」
ふと、周りをみて驚き思わず叫んでいるミリーナ。
ぼろっ。
ぼたぼたぼたっ。
ばたっ。
ぼとぼとっ。
ドサッ!
町の至るところで徘徊していた下級魔族や姿を変えられていた生物たちが、
そのままその場に倒れ動かなくなってゆく。
間地全体まではミリーナたちの目からは『視えない』ものの。
空より落ちてくる翼を持ったレッサーデーモン数匹と。
そして。
ガウリイがカイラスを倒した直後。
屋敷を取り巻いていたアイレウスの緑の蔦がぼろぼろにと枯れはて、そして壁から一部剥がれ落ちてゆく。
「……いったい…何が?」
それをみてつぶやくルークに。
「…カイラスが…死んだからではないでしょうか…?」
とまどいつつも、つぶやくアリア。
と。
「うっ…ん…」
アリアがづふやくと同時、うっすらとディラールが目を開ける。
「ディラールさん!?」
そんなディラールにはっと視線をうつし、話しかけるアリアの言葉に
「うっうっ…俺はモウダメ…最後にアリアちゃんやミリーナさんのキスであの世におくってくれ……」
うめきつつ手を虚空に伸ばしているディラールに対し。
どごっ!!
「てめぇ!もう怪我はアリアちゃんの
この俺ですらまだ!ミリーナにキスなんてしてもらったことねぇんだぞ!
ミリーナのほうから手を握られたことすらもないのに!俺からはしょっちゅう握っては叩かれてるが!!」
そんなディラールの台詞をきき、即座に足蹴りしているルーク。
「ルーク。やりすぎです。とりあえず、意識をはっきりとさせるには。
このベランダから外につるしておけばしっかりと目が覚めるのでは?」
またそんなディラールの言葉に、さらりと面白いことをいっているミリーナ。
「あら♡それいいわね♡ちょうどクローゼットの中にロープがあったし♡」
いいつつ、クローゼットの中にと入っていたロープを取り出し。
パッシ。
軽くロープを伸ばす。
――と。
「あわわっ!?冗談だって!?」
何やらぱっと目を見開き、ずざざざっと退いているディラール。
「あら、そう?遠慮はいらないわよ♡」
「え…遠慮しますぅ!!」
柵にとよれかかり、手を差し出してそんなことを言ってくるディラールをみて。
「とりあえず。ディラールさんはもう大丈夫そうですわね。」
淡々と言っているミリーナ。
「――はっ!?姉さん!!」
はっと気づき、そしてぱたぱたとベルが連れ去られた扉のほうにと駆け出してゆくアリア。
「問題は…残った敵、というかカイラスが操っていたほかの連中がどうでてくるか…だな。
コントロールだか呪縛だかしんねぇが・・・あのドゥールゴーファがかかわってたことだし。」
いって腕を組んでいるルーク。
「そういえば…ベルさんって、魔法使えるのでしょうか?」
ふと、疑問に思ったミリーナがつぶやいているけど。
「使えてたらあんな男のいうなりになんかになることなく。
綺麗さっぱり、黒妖陣とかで形も残さずに消し去ってると思うけど♡」
そんなあたしの至極もっともな意見に。
「…それはあんただけだとおもうぞ?」
などとつぶやいているルーク。
「魔法のことは知らないんじゃないかしら?彼女は♡
アリアさんの話だと、アリアさんのお姉さん。
早くに両親を亡くして両親が経営していた食堂を切り盛りしながらアリアさんを育ててたみたいだし♡
そんな暇もなかったでしょうし♡」
にこにこと、さらり、と言い放つユニットの言葉に。
「いってましたっけ?
――とにかく、問題は…ベルさんも、『変えられていないか。』ということですわね。
見たところ…このような現象が町中で起こっているようですし。
とすれば…相手、つまり変えたのはあのドゥールゴーファです。
ゼロスさんの普段の姿をみてたらついつい忘れがちになりますが…ゼロスさん?
あのドゥールゴーファという剣の形をした魔族はどれほどの力をもっているのですか?」
「――だっ!?なっ!?まっ!?」
魔族っ!?
ゼロスに問いかけるミリーナの言葉に、何やら口をパクパクさせて叫んでいるディラール。
「ドゥールゴーファさん…ですか?
どれくらい。と申されましても。とりあえず、僕からすればずっと下っ端ですし♡」
「ゼロスさんからすればね。ま、とりあえず。
どうやら精神体の一部を切り離してここにいたみたいだし♡あのドゥールゴーファさんは♡」
ゼロスの言葉につづき、さらり、と言い放つユニットに。
「なあ?リナ?でもあのカイラスとかやつがもってたあの剣、お前の言葉で消えたけど…
……アリアのお姉さん、それでも大丈夫なのか?」
いってあたしにきいてくるガウリイに対し。
「?ガウリイさん?大丈夫とは?」
「?大丈夫とは…何なんだ?」
二人同時、意味がわからずにガウリイに問いかけているミリーナとルーク。
「ん?いや、だって、あのアリアの姉さん、ドゥー何とかって魔族と同化してたじゃないか?」
『――ぶっ!!』
さらり、といったガウリイの言葉に面白いまでに噴出している、ルーク・ミリーナ、そしてゼロスの三人。
「ガウリイさん!?そんなことまでわかるんですか!?」
何やら驚愕の声を上げているゼロスに対し。
「「…そんなことまで『わかる。』って……」」
まさか…イヤな予感をめぐらせつつ、同時につぶやいているルークとミリーナ。
「ん?でもそうだろ?リナ?何かあの姉ちゃん、一回死んでたみたいだし。
それでドゥー何とかって奴の力で生きているように見せかけてたようだけど。
何かほとんど同化してたし。」
またまた、さらり、と言い放つガウリイ。
「あら♡よくわかったわね♡ガウリイ♡」
「見たところ、あのベルさん、自分をそして国の人々や町の人々を許せなかったみたいだし。
あんな男を野放しにしていた、ということを。
そして妹をたてに脅されたとはいえ、あんな男の言いなりになるしかなかった自分を。
あんな仇でもある男にとついでいいように身体をもてあそばれ…
さらには大切な愛する人との子供まで殺されたんだから。当然、といえば当然だけど♡」
あたしの言葉に。
そしてまた、ガウリイの言葉にあっさりと同意しているユニット。
「まあ。あのシェーラもベルに同情してあれ渡したんでしょ。
一応シェーラも魔族といえども女として創られてるんだし♡」
あたし達がそんな会話をしていると。
「…それはそうと、アリアさんほっといていいんですか?
どうやらベルさんを探しに行かれたようですけど?
さっきはじけたドゥールゴーファさんは単なるここに残されていた彼の分身体にすぎませんし。
ドゥールゴーファさんの精神体の一部はみたところベルさんと共にいるようですけど♡」
にこにこにこ。
なぜか絶句しているルークとミリーナににこやかに話しかけているゼロス。
しばし、彼らはその言葉の意味をとりかね。
そして。
『――…なっ!?』
その意味に気づいてなぜか何やら叫んでいるルークとミリーナ。
ディラールにいたっては意味が理解できずに首をかしげているけども。
「…よくわかんねぇが…アリアちゃんが危ないってこと?アリアちゃんっ!」
いって、立ち上がり、そのまままアリアを追いかけてゆくディラールの姿。
一方で。
「姉さん!姉さんっ!」
悲鳴に近い声を上げながらベルを呼びつつ、そして、二階に駆け上がっているアリア。
そして。
バタンッ!!
一階から二階まで、片っ端からドアを開けていたアリアの動きが、一つの穂やの扉を開け放った直後。
アリアの動きがその場にとまる。
アリアの声をたよりに、ディラールがアリアにと追いついたときに目にしたものは。
扉の向こう。
外向きに大きく開かれている窓。
涼風に白いカーテンがそよそよと部屋の中にと泳いでおり。
その窓に面したところに白いロッキング・チェアが一つ。
そして――
「――……アリア?」
そのロッキング・チェアの上に座っていた人物が肩越しに振り向く。
そこには、椅子に座っているベルの姿が。
――逃げてくれていれば。
という思いと、この子さえいなければ私は…という思いが未だに入り混じっている。
だがしかし。
その魂はすでにドゥールゴーファによって生かされており…そして。
彼女、ベルが決意していることはタダ一つ。
何ごとにも変えがたい、強い決意。
その自らのその身、すべてを代償として。
だが、アリアは当然そんなベルの想いを知るはずもなく…
「ね…姉さんっ!」
いってその瞳に涙を浮べ、そのままベルにと抱きつくアリア。
妹の姉を心配する気持ちが直接ベルに流れ込む。
そっとそんなアリアを、優しく抱きとめるベルではあるが。
いとしくて、いとしくて……でも、憎んでいるのも事実。
だが、アリアはカイラスに聞かされ、自分が原因でベルがカイラスに嫁いだ、ということを知っている。
ベルに対し、償い切れない罪を犯した、ということを十分に理解している。
そんな思いと、そしてだからこそ。
自分の命を全身全霊をかけて、何を引き換えにしてでも、今度こそ姉さんを私が救いたい。
というアリアの想い。
それは混じることなきにして純粋なる願い。
「姉さん…姉さんっ…よかっ…無事で…ごめん……なさい……」
いって、ベルの胸に顔をうずめ、なきじゃくるアリアの頭をそっとなでる。
――私にはこの子は殺せない……けれども……
そんなことを思いつつ。
「…終わったのね……」
自分自身に言い聞かすようにつぶやくベル。
「そうよ。姉さん、終わったの。カイラスは…やっつけたわ。これで町も平和になる。
…姉さん、これから償いをさせて…私のせいで姉さんは…だからまた一緒にくらして……」
カイラスの口から自分の命を盾にベルがカイラスと結婚したことがわかっているアリアは。
自分のすべてと引き換えにしてでもベルに償いをしたい、と心から切実に願っている。
その想いは、ドゥールゴーファと同化し、触れたものの特性をコピーする能力を身に着けているベルに、
ほとんど失われていたベルの『慈愛』の心をよびさます。
そんな二人をみつつ。
「――それはそうと、ベルさん…でしたっけ?あなたは大丈夫なんですか?
何かあのカイラスってやつ、見たところ…屋敷の人とか合成獣にしてたようだけど……」
さきほどのあたしたちの会話のこともあり、確認の意味をもかねて問いかけているディラールの言葉に。
はっと顔をあげ。
「そうよ!?姉さん!大丈夫!?カイラスに…おかしなことはされなかった!?」
そう問いかけるアリアの言葉に。
「――私は大丈夫よ。アリア。
…だって、みんなを変えさせたのは…カイラスじゃなくて私みたいなものなんだから……」
「「アリア(さん)(ちゃん)!!」」
そう、二人が会話をしている最中。
ようやく硬直が溶けたミリーナとルークを伴い、あたし達もまた。
ベルがいる部屋の中と入っていったのは、ベルが静かにそう言い放った直後のこと。
-続くー
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あとがき:
薫:うにゅ。あとすこしーvvちなみに。この姉妹の平和な暮らし。
一応ノートにも書いてはいるけど・・・オマケとして入れ込みしようかな?(まて!)
それかそのまま続きとして書いてもいいかな?うみゅ。
平和な暮らし、というか、うん?という感じかなぁ?(笑
気の毒なのは、誰なのでしょうねぇ?(にやりv
ヒントは、女性に変えられているディラールがかぎですvv
何はともあれ、ではまた次回にてv
ではではv
2005年3月10日某日
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