エル様漫遊記・クリムゾンの妄執偏
「……いやあの??……あれって……」
何やら、それをみて呆然とつぶやいているアリアに。
「…いったい、このリナにしろあの子にしろ……本当に人間なのか?」
何やらぼそり、とつぶやいているルーク。
「あら♡人間よ♡」
今はそのふりをしてるんだし♡
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
あたしの即答になぜか無言になっているルークとミリーナと、そしてアリアの三人。
「まぁ、この程度ですんでいるのが奇跡かと……本当に遊ばれてますねぇ…あの御方は……」
何やらユニットのほうをみて、ずずっとお茶を飲みながらそんなことを言っているゼロス。
しばし、そんな光景が続いていき。
それに加えてユニットが風とか起こし、さらに雪の量を増やしていき、
何やらゾナゲインやグライモアの悲鳴と――ガウリイの、
「どうにかしてくれぇぇ!とめてくれぇぇ!!」
などという情けない悲鳴が響き渡っていたりするそんな中。
「な…何だぁ!?」
がさり。
森の中より聞こえてくる第三者の声。
そして。
「どわぁぁ!?何をなさっているのですかぁぁ~!!??やっと見つけたとおもったらぁぁ~!!??」
それと共にとてつもなく聞き覚えのある声が。
「あら?レイさん、ま、とりあえず♡」
すっ。
森の中より出てきた二つの人影を目にして、ユニットが手にしていたロッドを空にと向ける。
と。
ぴたっ!
降り注いでいた七色に光る雪と上空にとあった雲が一瞬のうちにと掻き消える。
「がっ!ぐっ!ひくぞ!グライモア!」
何とか必死に回復魔法をかけつつ、溶けただれたグライモアにといっているゾナゲイン。
……が。
「……おひ……」
何やら小さくつぶやいてるし。
そこには、すでに緑色に完全に溶けたグライモアの姿が。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
しばし、それを目のあたりにして、そして目を点にして。
何やら、ギギギィ、とユニットのほうに恐怖の視線をむけ。
そして。
「…ちっ!おぼえておれよ!」
まったく全然捨て台詞になっていない言葉を言い放ち。
そのまま、きびすをかえし、森の中にと駆け出していっているゾナゲインの姿。
「……今の…何だったんだ?」
一人呆然と、森の中から出てきた男性が言っていたりするけども。
と。
「エル様ぁ~!!こんなところにいらっしゃったんですか!?
完全に気配をゼロスのまで消さないでくださいぃ~……」
何やらこちらに向かって奔ってくる長い黒髪に紅い瞳の男性。
ドッスッ!
「ぎゃっ!?」
なぜか走ってくるその背中に、なぜかその背後にスコップが出現し、
男性の背中をそのままスコップが突き刺ってゆく。
ま、関係ないし♡
「ああ!?魔王様!?」
――ぶっ!!
思わず叫ぶゼロスの言葉になぜか噴出しているルークとミリーナ。
ごほごほごほっ!
そして何やらむせこんでるけど。
……まったく、今はその呼び方は止めなさい♡っていってるのにねぇ♡
「――で?何しにきたの?S?」
背中にスコップを突き刺して、なぜか倒れている男性――
……いうまでもなく部下Sにと問いかけるあたしの言葉に。
「うっうっうっ。ある程度一段落したら報告に戻れっておっしゃったじゃないですかぁ……
スィーフィードは、『私に任せた♡』とかいいますし……」
何やらスコップを背中に刺したまま立ち上がりだくだくと涙を流しながら言ってくる。
だぁぁ!
うっとうしい!!
「??レイさんが探してたのって…この人なのか?何か胸とかイロケとかがまったくない……」
Sと共に出てきた男性があたしをみてそんなことをいってくる。
ほぉぉぅ。
お仕置き決定ね♡あの人間♡
そんな彼の言葉に。
「「「恐ろしいことをいわないで(くれ)(ください)!!!!」」」
きっちしきっぱり、同時に叫んでいるSとゼロス。
そして。
どうにか息を整えて、あたし達のほうにとやってきていたガウリイの声が重なる。
「??あ…あの?…いえ、何でもないです。――それより。あの?リナさん?この人達は?」
今…ゼロスさんが【魔王】とか言ってたような気がしなくもないですけど…
…気のせいですよね。きっと。
などと一人自分を納得させ。
Sともう一人の男性…名前をディラールっていうんだけど。
そんな彼らをみて言ってくるアリア。
歳は21。
黒い髪に黒い服。
ちょぴっとやせ気味の男性。
まばらに伸ばしている、というか伸びている髭とよれた服がだらしなかったり。
「ああ。俺はディラールってんだ。で、そっちの人がレイ。」
いって、アリアにと微笑みかけ。
そして。
「それはそうと……さっきのは何だったんだ?あんな光る雪なんてみたことないけど……」
腕を組みつつ、そんなことをいってきたりする。
「深く考えないほうがいいですよ?ディラールさん。」
そんなディラールに静かに言い放ち。
「えっと…とりあえずエ…でなかった。リナ様達以外は初対面ですし。
私はレイ=マグナスといいます。以後お見知りおきを。」
いって、ぺこり、と頭を下げ。
「あ、これがあちらの世界の今のところの報告書です。」
いってあたしに一つのファイルを差し出してくるSだけど。
『レイ=マグナス!?』
その言葉に何やら叫んでいるアリア・ルーク・ミリーナの三人。
「でもレイさん?ずいぶんと遅かったですね♡こっちら戻ってきたの大分前でしょうに♡」
とりあえず、それぞれ地面にと敷いているシートに座りつつ、といってもディラールとSは立ってるけど。
ガウリイにいたっては。
「とりあえず気分なおし。」
とかいって、おいてあるクッキー等に手をつけてるし。
横にとつったっているSにと話しかけるユニットの言葉に。
「はぁ……まあそうなんですけど…何しろ気配も完全に隠されてますし……
とりあえず、ゼラスからの報告でクリムゾンに向かったのでは?と聞かされて……
で、クリムゾンに向かったはいいんですけど。
途中レッサーデーモンやブラスデーモンごときに駆除のためにと、
魔道士を徴収している国王軍につかまっちゃいまして……
で、このディラールさんとであって、彼もそこから出るつもりだ…
……というので下っ端をとりあえず陣地の中で暴れさせた隙に国王軍から抜けてきたんです。」
何やらだらだらと汗をかきつつ言ってくるSに続き。
「とりあえず、このレイさんとは国王軍が片っ端からタダで徴集した連中の中で知り合ったんだ。
――どうやらあんたたちの格好からしてクリムゾン・タウンに向かっているみてぇだな。
――けど、悪いことはいわねぇ。このまま街道を行くのはやめたほうがいいぜ?」
何かこのレイさんの今の言い回し犯しかったけど…ま、
『報告を早くもっていかないとどんな目に合わされるか!』
とか何とかいってたしな。
でもこの女…そんなに怖くなさそうだけどな?
そんなことを思いつつ、あたし達をざっと見渡すディラールに。
「?あの?それって…?」
戸惑いつつも声を上げているアリア。
「まあ。みても想像はつくと思うけどよ。俺も一応魔道士でな。
やっぱり協会の要請でクリムゾンに向かっていたわけだ。
……駄賃はスズメの涙だけどよ。金欠だったし。協会の要請じゃあ聞いたほうが得だしな。
……ところが。だ。ここから半日ほどいった先で国王軍が居座っててよ。
何でもレッサーデーモンやブラスデーモンにゲリラ戦しかけられて足止めされちまってるらしくて。
で――だ。連中デーモンに対抗するためにお上の威光をカサに着やがって、
通りがかった魔道士を片っ端から徴用してやがるんだよ。――しかもタダで、だぜ?
俺も徴用されそうになったんだけどな。というか足止めくらってたんだけど。
えらそぶった頭のお固い軍人さんにこき使われるなんざ冗談じゃねぇ。
で、たまたま出会ったこのレイさんと、一緒に。
偶然奴らの陣営内部にデーモンが出現してパニックになったところをとんずらこいたわけだ。
と、いうわけで、このまままっすぐいったら国王軍とデーモンの軍勢に突き当たるぜ?」
いって、アリアの手をとり。
「こんな美人があんなヤツラにこき使われるなんざ気の毒だしな。
そっちの銀色の髪の姉ちゃんも綺麗だし。守備範囲以下だけどそこの女の子もかわいいし。
胸がないけど一応かなりの美少女の栗色の髪のあんたも……」
そんなことをいっていたりするディラール。
「ディ…ディラールさん!?失礼があってはいけませんよ!?下手したら消滅決定ですよ!?」
「エ~ス♡あんたもそうなりたい?んっ♡」
「いえ……すいません……」
そんなディラールの言葉に悲鳴に近い声をあげ、注意しているSににこやかに言い放つと、
なぜか大量に汗を流して謝ってくるSの姿が。
「――そんな……私どうしても国王軍より早く町にいかないと……姉さんが……」
ディラールの言葉にその顔色をさらに青くして、
というかほとんど血の気を失ってつぶやいているアリア。
「?何かわけありみたいだな。よかったら話してくれないか?
なぁに、君みたいな美人をほっとけないだけさ♡」
さらに両手でアリアの両手を握り、そんなことを言っているディラールだし。
「ま、それはそうと?S?ファインネル王国の国交はきちんとなったのかしら♡」
とりあえず、手渡された報告書にざっと目を通し、未だに汗を流して固まっているSにと話しかけると。
「……いえ、あのまだ……」
口ごもりつついってくる。
まったく。
どれくらい時間をかければいいのかしらねぇ♡
「あそ♡それじゃ♡」
すくっと立ち上がるあたしに。
びくくっ!
面白いまでにびくついているS。
とりあえずっ…っと♡
「S♡後ろむきなさいな♡」
「は……はぃ。」
あたしの言葉にSが素直に後ろを振り向いたその直後。
「なら、とっととあっちに戻ってルナともども働きなさい!!」
ふっ。
ブンッ!!
ドガガ・・・カッキィィン!!
あたしの手の中にと出現した棘付バットがSを空高く打ち上げてゆく。
「あら♡レイさんよくとんだわねぇ♡」
それをみて、手をかざしてにこやかにいっているユニットに。
「……魔王様……成仏してください……」
何やら小さくつぶやいているゼロス。
「「……いやあれ…命にかかわるんじゃぁ……」」
何やらそれをみて呆然といっているミリーナとルークに。
「ま。Sさんだし。」
それですませているガウリイ。
そして又。
「……あのレイさんが怖がってたわけ……何となくわかった……」
などと、何やら硬直しつつも、空高く舞い上がってゆくSをみてぽつり、ともらしているディラール。
「さってと♡職務怠慢なSなんぞはほっといて♡とりあえず自己紹介がまだだったわね。」
かるく手を叩きつつ、手にしていたバットをかき消し座りなおすあたしに。
「……なあ?今の…誰だったんだ?」
多少声を震わせつつもゼロスに聞いているルーク。
何かこのゼロスや、それにあの獣王ゼラス=メタリオムの名前…あいつ言ってたし…
…魔族…ではあるんだろうが……
そんなことを思っているルークだけど。
「ま。レイさんのことはどうでもいいじゃない♡ルークさん♡それより始めましてディラールさん♡
私、ミリアム=ユニットっていいます♡愛称はスミレってよんでね♡よろしく♡」
「で、こっちがガウリイに、ルークとミリーナ。で、その子がアリアに。あたしがリナ=インバースよ?」
ずざざざっ!
あたしが名乗ったその直後。
面白いまでに腰をひかしたまま、大きく後ろに退くディラール。
そして、思いっきり腰を抜かしたままで、
「リリリリリリリリリリナ=インバース…いや…リナ…インバース…さん?」
声がカタカタと震えてがくがくと震えてたりするし。
「そよ♡」
「も……もしかしてあの…リナ=インバースさん…ですか!?」
「あんたが思っているそのリナ=インバースよ♡いっとくけど、あんたが思ってることみたいに。
初対面の人間をしばき倒したりしてぼろぼろにして身包みはいで抵抗する力を失わす。
ってことはしてないから♡でも、ディラールにはやってもいいわねぇ♡
さんざん人を馬鹿にした発言してたり、思ってたりしたんだし♡」
にっこりと微笑み、手の平に光の球を出現させるあたしに対し。
がばっと冷や汗だらだら全身に流しつつ、そのまま地面にと手をついて。
「申し訳ありません!知らぬこととはいえ数々の無礼な言動!
どうか許してください!命だけは!!路銀全部差し出しますから!」
何やら叫びつつ言ってくるし。
「い・や♡」
「ひぃぃ!!そこを何とかぁぁ~!!」
そんなあたしとディラールのやり取りに。
「……なあ?リナ?からかっておもしろいか?そいつ?」
じと目であたしに言ってくるガウリイ。
「これはこれは♡すばらしいまでに恐怖した負の感情がでてますねぇ♡」
などとにこにこしていっているゼロス。
「――まあ、そんなことより?リナさん?その手の明りはしまってもいいのでは?まだ明るいですし。
それよりどうやってクリムゾンに向かうか…ですわよ。」
そんなあたし達のやりとりに、額に一筋汗を流しつつもさらり、といっているミリーナ。
「そう?からかうの面白いのに♡面白いまでに混乱してるしねぇ。このディラール♡」
未だに地面に頭をこしりつけ、だらだらと汗を流して固まっているディラールの姿。
そんなディラールをちらり、とみつつ。
「それじゃ、この光はこうしておいて…っと♡」
パッシュv
とりあえず手にしていた光の球を土下座しているディラールに向かって投げは夏。
「うぎゃぁぁ~!!??」
何かそれに気づいて叫んでいるディラールだけど♡
ま、あたしにため口きいたお仕置きは必要だしね♡
-続くー
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あとがき:
薫:ちらっとでてきた部下Sこと赤眼の魔王・シャブラニグドゥ(笑
でも、出てきた直後に吹き飛ばされ(笑
ちなみに、ルークもミリーナも、まだ、彼が魔王、だとは知りません(笑
次回、ディラールが受けたお仕置きの内容は?(笑
をお送りします。
ではではv
2005年3月6日某日
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