エル様漫遊記・クリムゾンの妄執偏

「…さてっと。それじゃあ聞かせてくれるか?」
「アリア…さん、でしたわね。一体どういう事情があるんですか?」
テルモードの町を出てすぐに、街道沿いには進まず、横手の森の中を進むことしばし。
その森の中の小さな湖のほとりにある狩猟小屋にと入っているあたし達。
その中でルークとミリーナがほぼ同時にアリアにと問いかける。
そんな二人の言葉に。
「…いやあの…事情説明するのはいいんですけど…何でこんな場所でなんですか?」
とまどいつつも問いかけてくるアリアの姿。
「ああ、それは簡単よ♡あのゾナゲインとか名乗ってた人間ね。
  まずあっさりと兵士達をあのままかわしてあたし達を追いかけてくるでしょうし。
  そうなるとクリムゾンにと向かう街道のほうを探すでしょ?普通。
  でもだからって、『クリムゾンにいかない。』という訳にもいかないしね。」
だって面白そうだし♡
そんなあたしの言葉に続けて。
「とりあえず、この辺りに一時身を潜めておいてから、
  あのお爺さんをやりすごしてからゆっくりとクリムゾンに向かう。ということよ。
  わかったかしら?アリアさん♡」
にっこりと、あたしに続けて説明しているユニット。
「―…けど、あの爺さんが追いかけてこなかったら時間の無駄になるんじゃぁ…」
あたし達の説明にうなづくアリアと。
ふと、そんなことを言っているルーク。
「あら?それじゃぁルークは一人でいけば?
  そして延々とあの老人にレッサーデーモンでもしかけられとけば?
  そしてそれの相手すればいいし。一人で。
  でもそれもいいかもしれないわね。たわごという人゛かいなくなるから静かになるし。」
そんなルークに、さらり、と言っているミリーナ。
「ミリーナァ~…そりゃないぜ。俺はいつでもお前に対してはこんなにもほん……」
冷静にミリーナに突っ込まれ、そんなミリーナにと何やら泣きそうになりながら、
またまたミリーナにアプローチをかけようとしているルークだけど。
「で?説明していただけます?」
しくしくしく……
言葉の続きを言うこともできずに、あっさり無視してアリアに問いかけるミリーナの言葉に、
何やらしくしくといじけているルークの姿。
「そういや。何だってあんたクリ何とかって町にいかないといけないんだ?
  それに、ゾナ何とかってあの爺さん、見たところあんたをマークしていたみたいだし?」
こちらもまた、何やらいじけているルークを無視してアリアにと問いかけているガウリイ。
そんなミリーナとガウリイの問いかけに、しばし下にとうつむき。
そして。
顔を上げ、決意を新たに。
「――姉さんを……助けなきゃぁいけないんです……」
いって、アリアは彼女自身の説明を開始する。


姉の名はベル、ということ。
気立てのいい美人でアリアにとって自慢の姉であったこと。
やがてベルにも恋人ができ、婚約し、しばらく後には結婚し。
姉と自分だけであった家族が増えると喜んでいた矢先――
そんなベルを見初めていきなり言い寄ってきたのが、
やもめ暮らしをしていた魔道士協会表議長のカイラス。
血筋ゆえか、政治的手腕には長けており、協会の運営能力や魔道士としての実績だけは高かったものの。
人間として評価するなならば最低ランク。
かたっぱしから美人、とみるや手をつけて、それを実力的に表ざたになるのを封じ込め――
ゆえに、それによって自殺したものはアリアが噂で聞いただけでも軽く100人は超えるとか。
まあ、事実そうなんだけど。
ゆえに、町の人や魔道士の人達からの人望はまったくなく。
あるものは、その実績による評価と、一応王家の血縁者であることから何も手をうとうとしなかった町の人々。
一度結婚したものの、そんな男に女性がついていけるはずもなく……
というか、事実は無理やりにその女性を攫って監禁し、家族にお金つませて、そして結婚した。
という事実があるんだけど。
あの人間は……
隙をみてその女性は何とか逃げ出し……まあ、逃げ出してもすぐにつかまえて、
薬づけにされてある場所に売ってたりしたけど。
まったく、最低な人間よね……
ゆえに、今は独り身のカイラス。
ベルが当事19歳であったのに対して、カイラスはもうすぐ50になろうか、という男。
そんな理由からも当然ベルがなびくはずもなく――ベルはきっぱりと断った。
そのときには数日後に婚約者との結婚を控えていたベル。
そして。
そんな中で、ベルは自分が恋人との子供を身ごもっているのに気づき、彼に話したところ。
その婚約者はベルの安産の祈願をかねて、隣町の教会からお守りを購入しよう、と出かけた先で――
その婚約者は殺された。
運ばれてきた婚約者の体は無残にも数箇所差避けており――何ともいたたまれない姿であった。
その彼と――ベルは自分たちが次の日には結婚式を挙げるはずであった教会で対面し……
とうぜんベルは泣き崩れた。
人々は誰もが噂した。
ベルを手にいれるために、カイラスがベルの恋人を殺したのだ…と。
一人、どうしても恋人の側についていたい、というベルの心情を人々は察し。
その日はそっとしておいてやろう。
ということになり、教会の前に数名の人々を残し、それぞれ帰路にとついた。
アリアもまた、一人にして、という姉の言葉に後ろ髪をひかれつつ家に帰り――
そして、事件はおこった。
何があったのかは想像に難くない。
ベルを心配した近所の人がせめて夜食でも…と、教会にと足を向けたところ。
教会の前にいた人々は血まみれでそこに倒れており……
そして、あわてて人々をよび、教会の中にと入っていった人々が目にしたのは…
無残に服を破られ、全裸で教会の床にうつぶせになっているベルの姿と――
そして、その横で服をちょうど着終わったばかりのカイラスの姿。
だがしかし、人々が踏み入っても動じることはなく、
逆に。
『騒ぎを大きくしたらきさまらもそれなりに対処する。』そう言い放ち…
そして、カイラスにそういわれ…人々が硬直したところで、カイラスはその場を笑いながら立ち去り。
人々は何もできぬままにと、ベルをなぐさめるしか手はなかった。
何があったのかは想像に難くない。
彼女としては自分が恋人の子供を宿している…と知らなかったら、ベルはその場で自害していたであろう。
子供のために…と、ベルはあれは悪い夢、と思うようにし、生きることを決意し……
――だが、それからしばらくして……ベルはカイラスと結婚した。


「…姉さんがカイラスと結婚したのはそれからしばらくしてのことでした……
  理由を聞いても答えてくれず…困った顔をして…
  それから姉さんとはほとんど会えなくなったんですけど……
  でも、でも、それでも姉はこの子がいるから大丈夫、と哀しく笑っていたんです。
  それ以外は…幸せ、とはいえないようでした……でも…ある日…」
そこまでいって言葉を区切るアリア。
「…姉さんが流産した、と話しを聞いたんです……
  ……理由は…カイラスが必要に姉さんを攻め立てて…と噂で聞きました。
  私もすぐに姉さんに会いに行ったんですが、とりついでもらえず……」
いって下をうつむき。
「――そんなある日。私はクリムゾンの教会でいろいろと研究をしていたんですけど……
  …ある日…使いの人がきて…姉さんからの呼び出しでした。今すぐに会いたいって……
  流産してから一度たりとて会ったことも…というか取り次いでさえもらえなかったのに……
  そんなことは一度もなく…あわててそれでいってみたんですけど。そこで姉さんから聞いたんです。」
そういってうつむくアリアに。
「カイラスが反乱を起こしている――ということをですか?」
アリアの話しをききつつ、
さらにカイラスに対して憤りを感じつつ問いかけるミリーナの言葉に、こくり、とうなづくアリア。
そして。
「『たぶん協会のみんなを巻き込むつもりだ。あなただけは逃げてこのことをほかの町に知らせて。』…と。
  クリムゾンから一番近くて大きな教会がある町、とっていったらサイラーグなんですけど。
  サイラーグに続く街道には少し前からデーモンが大量に勃発していたらしくて……
  その次に近かったのがテルモード・シティだったんです。
  他にも近い場所に協会のある町もあったのかもしれませんけど……
  私が確実に道を知っていて、間違いなく協会のある町、といったらテルモードしかなかったんです……」
そういい、うつむくアリアに。
「なるほど……な。確かにこの場合、言ったこともないような町に向かって途中で道に迷ったり、
  目をつけた町に協会がなかった。という展開になったらそりゃしゃれになんねえな。」
こちらもまた、カイラスという男に憤りを隠さずに。
深刻そうにそんなことを言っていたりするルーク。

このアリア…知らないからねぇ。
カイラスのゆるぎない攻め立てによって子供は早産ながらも無事には産まれはしたんだけど……
ベルの目の前で、カイラスが、
『女だったら成長したら使い道はあるが男には用はない。』
といって、産まれたばかりの赤ん坊を殺した。ということを。
表向きは流産、ということにして。
それでなくても、大嫌いな男に毎日のように穢され。
精神崩壊を起こしかけていたベルの心をどうにかつなぎとめていたのは。
恋人の忘れ形見である赤ん坊の存在があったからこそ。
――ゆえに。
ベルの精神は崩壊をきたし……
カイラスを…そして、町の人々を…
そして、愛しているけど自分が嫌いな男と結婚することになったキッカケとなった妹の存在を…
すべてをうらんでいたところに、シェーラがやってきて、彼女にアレを渡したんだし。
まあ、それは今説明することでもないし。

ルークの言葉にこくり、とうなづき。
「――はい。ですけど――
  私がこの町についてそれを知らせるよりも先にカイラスが動いたようなんです……
  この町に何とかたどりついて協会にことの次第を報告して…
  …カイラスが反乱を起こし、領主を暗殺したこと。そして…国王軍が動き出したのを知ったのは…
  ……私が協会のことの報告を終えたその翌日のことでした……」
いって、その目に涙をためつつ。
「町は……今は完全にカイラスの支配化にあるそうです。
  ――カイラスがどれだけの力を蓄えているのかは知りませんけど……
  でも、国王軍まで動いたからにはたぶん町の鎮圧は時間の問題だとおもうんです。
  でも……そうなったら姉さんも巻き込まれる……」
そういうアリアの言葉に。
「なるほど…ね。それで国王軍より何とかクリムゾンへ先にいって何とかしたい…と。」
そういうミリーナの言葉に
「ええ。もちろん……一人でもそれができなるならやりますけど。
  …私も少しくらいならば攻撃呪文も仕えますけど。使えないよりまし、程度のものですし…
  それに、今まで戦いの経験ってものがなくて……」
だからこそ、町につくまで彼女、時間かかったのよね。
道には、デーモンとかは発生しているわけで。
それらをどうにか交わしつつ進んでいたから。
そんな彼女の言葉に。
「だから、自分を連れて行ってくれそうな人。
  また同時に力になってくれそうな人がくるまでまっていて……
  で、そこに私たちがやってきた、というわけね?アリアさん♡」
うつむき、説明するアリアにと話しかけているユニット。
「虫のいいお願いだ、ということはわかっています。私がいっても足手まといにしかならないことも。
  私がクリムゾンに行ったからってどうにかなる、ってものでもないことも――でも――」
「――でも、お姉さんを助けてあげたいんですね?人間って本当にかわってますねぇ♡」
「?」
そんなゼロスの言葉に首をかしげているアリア。
この人も人間でしょうに、まるで自分が人間でないような言い回しをするのですね?
などと思っていたりするけど。
このゼロスは人間でなくて魔族なんだけどね♡
まあ、説明することもないから言わないけど♡
「しかし。そのカイラスってやつどつき倒したくなってきたな。
  話きいてると。男のかざかみにもおけねぇやつみたいだし!」
そう憤るルークに対し。
「偶然ね。ルーク。私もそうおもったわ。」
「おっ!さすが俺とミリーナは以心伝心!一心同体!!」
「馬鹿いってないで、今は冗談をいってるときではないでしょ?」
冷たいまでに冷ややかに言い放たれ。
「…冗談って…ミリーナ…俺は本気なのに……」
いって、またまたいじけているルーク。
そんなルークとミリーナのやり取りをしばし見つめ。
思わず唖然とし。
そして――
「――プっ!お二人とも面白いんですね。
  私の気を紛らそうとそんな会話までしてくださってありがとうございます。」
いや、これが素なんだけど。
まぁ面白いから勘違いさせたままにしときましょ♪
「まあ、カイラスを知っている人は必要だけどね。でもアリア?覚悟はいい?
  その話しの流れからして――おそらくベルは妹であるあなたの命と純潔を奪う…
  というような内容の、この二点で脅されて結婚したんだとおもうけど?
  ――そうでなかったら大切な人の子供がおなかにいる状態で、その子が殺される恐れがある。
  しかも、自分を穢し、さらには恋人を殺した、と確信がもてる相手だからこそ。
  だからこそやりかねない、と確信したから結婚したんだろうし。
  ――それをあなたはどう受け止めるの?」
事実、その通りだし。
まあ、ベルがカイラスから言われたのは。
『ならば、妹も複数の男達にたっぷりとかわいがってもらって、
  本来ならば義兄になるはずだった彼のもとにおくりましょうかねぇ。
  まだ幼いですが十分にあなたの妹も楽しめそうですし。』
その言葉を聞き――妹に手を出さない。
という条件の下。
ベルはいやいやながらも、妹を守るためにと結婚したんだし。
――おなかにいる子供だけを支えにして。
「――そんっ……な……」
あたしの言葉に言葉を詰まらせるアリアに。
「確かに。リナさんの言うとおりでしょうね。
  話をきけばそれくらいなことはカイラスって男はやりかねませんわね。
  ――そんな男を野放しにしておくわけにもいきませんわね。
  それに、私もベルさんを助けるのは賛成ですわ。――けど。」
そういいかけるミリーナの言葉に。
「けど…何です?ミリーナさん?」
にこやかに、笑みを崩さぬままで、首をかしげてミリーナに問いかけているゼロス。
「いいたくはないですけど……生きているかどうか……も怪しいですわね……」
「――そんなっ!!」
心の支えであった子供をうしない。
そして何よりも気がかりであったであろう妹であるアリアを逃がした後。
アリアの姉であるベルが自ら命を絶ったとも考えられる。
そんなことを心で思いつつ。
そういうミリーナの言葉に小さく叫び声をあげているアリア。
「――でも、いってみないとわからんだろ?」
……ま、リナやユニットちゃんならわかるだろうが……
そんなことを思いつつ、壁によりかかりつつ、のほほんと言っているガウリイ。
「ま、確かに、あんたのいうとおりだな。
  ……よっしゃ!ここはその男のクズを片っ端からたたきのめしてやる!」
いって。
片方の手をこぶしに握り締め、そして気合をいれているルーク。
「カイラスを叩きのめす、というのは同感ですね。――アリアさんもそれでいですわね?」
「――はい。」
ミリーナの言葉に顔色もわるく、こくりとうなづき。
「――もし…姉さんが死んでいたとしても…
  ……だったらせめて姉さんの恋人のお墓に入れてあげたいですから……」
ミリーナに言われ、すでに姉が死んでいる可能性があるのだ、と今さらながらに気づき。
自分自身に言い聞かすようにつぶやいているこのアリア。
――まあ、『恋人』も殺されはしたものの、ベルを…
そして子供を心配して成仏することなくずっとベルの側に付き添ってたからねぇ。
今はドゥールゴーファにその意識は封印されてるけど。
彼としては、何もできずに、ただ見守っていることしかできなかったわけだし。
魂だけで具現化する方法に気づいてたら、こんなことにはならなかったでしょうにね。
アリアとベルをつれて、町から出ればそれまでだったんだし。
町から出る、という方法を彼女たちがとらなかったのは、
今までに町を出た人達はすぐさまに行方不明になった。
という話しを聞いていたからに他ならないし。
恋人の力があれば、そんなことはたやすかった、というのにね。
人間って、なぜかあまりに危険、とおもったことには自分から近寄っていかない節があるからねぇ。
一部の人々を除いて。
「ま。それじゃ、決まりね。アリアもつれていきますか。クリムゾンに。」
あたしの言葉。
「あ、ありがとうございます!リナさん!それに皆さんも!」
いって、あたしの言葉にその目に涙をためてお礼を言ってきているアリアだし。
ま、このほうが楽しくなるしねv

                            -続くー


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あとがき:
薫:・・・何かほとんど説明だけでおわったなぁ・・・この回・・・・
  ・・・・・・・・・ま、いっか。ぽかしてもよかったけど、ポイントと後になってくるからボカしたくなかった部分。
  何があったかは詳しくかいていませんので、あしからず(まてこら!
  さて・・・次回。
  またまた登場、ゾナゲインですv
  ではv
  2005年3月5日某日


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