エル様漫遊記・アトラス偏
その日の夜。
タリムの屋敷の客室の一室でのんびりとして外をながめいるあたし。
空気がざわついている。
小動物の気配がほとんどしない。
あいつの気配や戦いの気配を察知して逃げているようね♡
そろそろ来るはずだし、ひとまず廊下にでておきますか♡
来たら少しばかり、とことんからかうとしますかね♪
廊下にでて周囲を見渡すと、何のための護衛なのだか……
タリムに雇われている何人もの男達が廊下で眠りこけている。
毛布に包まり、身を横たえ。
またあるものは、本当は見張り番なのに、立てた剣に身をもたれさしたまま眠っている。
お仕事はお仕事としてきちんとしなきゃ♡
と。
ふと気配を感じ取る。
あら♡ようやくきたわね♪
かなり待たせてくれたわねぇ♡
それと共に、外から聞こえてくるとある音。
ぎぃぃぃぃぃぃんんんんん!!!
鋼の音と悲鳴とが、夜の夜空にと響いきわたっているけども。
「目を覚ましなさい!!敵襲よ!!」
あたしはその辺りにいた人間達にと、寝覚めていどに簡単な精霊呪文を叩き込み。
何人かをそのまま蹴り飛ば…もとい、親切にも起こしてみる。
あら♡
蹴ってみるのもけっこう人間の体ってボールのように飛ぶじゃない♡
今度これ、部下達にも早速導入しましょうっと♡
なぜかあたしが蹴ると、そのまま壁に埋まって、ぴくぴくしている人間たち。
別に、そんなに力いれてないのにね♡
一応そんな彼らに一言言ってから、あたしは外にと向かってゆく。
血臭が立ち込めている。
……なんであんな程度のヤツに勝てないのよ……
はぁ~……
情けないったら……
犠牲者というか、情けない奴等が結構でている。
なんでこの程度のことで、あたしのとこに戻ってくるのよ!
輪廻担当部門が面白くなるからいいとしても。
それでも情けないわよっ!!
あたし、そんなにひよわに創造ってないわよっ!
ここの輪廻転生部門は何かまたか…というような感じであまり動じてはないようだけど。
…何か最近あまり騒がなくなってきてるわねぇ…何かつまなんいわね……
とりあえず、気分的に『
とりあえず、明るさは、満月程度くらいにして…っと。
昼間の明るさだと…他のやつらにも気づかれるしね♡
まあ満月の明るさ、といっても強いていえば、夜明けの明るさ程度といった代物を打ち出しておく。
あらあら♪
視れば判ってはいるけど、周囲には、デイミアのとこの
紫の鱗に覆われた大きな狼。
あと、少なからず…ほんとぅぅぅぅに少ないけど、下級魔族であるレッサーデーモンが数匹。
しかもこのデーモンの依代は、蚊とか人だったりしてるし♪
タリムが雇っている護衛というのは大概、はっきりいって小銭欲しさの存在ばかりなのよね。
全然、タリムは人を見る目がなってないし♡
そんな傭兵の指揮と実力では、情けないことに到底かなうわけのないレベルの相手ではあるが。
根性だせばいいのにねぇ~……
屋敷の中から、一応は何人かはでてくるが、異形の兵士達を見るや否や、怖気づき。
あるいは逃げ出し、気絶して。
挙句は、それらを見ただけで、あたしのとこに還ってきている……つまり死んでるやつもいる。
……ほんっっっっっとうぅぅぅぅに情けなすぎよぉぉぉ!!!!
一応、奮闘しているメンバーもいるようだけど。
でもそれも、ランツとロッドとガウリイだけ……この三人だけがまともに戦っている。
あとの人間達は、レッサーデーモン達にお手玉にされたり等と、完全に遊ばれている。
彼らは人間達で遊んでおやつ程度の間食でもするか。
といった感覚で行動して、負の感情を煽っているようだけど。
ま…別にいいけどね。
見れば。
ロッドは正面から大男につっこんでゆき、
刀を大きく振りかぶる男の手前で、進路を変更して、向かって右側を駆け抜ける。
人間にしてはまずまず…といえるのでしょうけど。
すれ違いざまに腹をないでいるし。
だけどせめてその刃に、致死量の五億倍くらいの毒くらいは、仕込んでおきましょうね♪
続き頭の高さを横に薙ぐ一撃をロッドは腰を沈めて軽く交わし、ずいっと大きく伸び上がる。
それと同時に男の体は真っ二つに縦一文字に断ち割られる。
ガウリイは……と。
まあ、彼は人の中では腕はたつからねぇ。
あれでも。
ガウリイを鍛えたら、間違いなく、下達より腕はあがるでしょうけど♪
……考えてみましょうっと♡
それで、もしガウリイに部下たちが負けたらお仕置きスペシャルコースとかにして♡
ランツは、剣と体術を組み合わせて戦っている。
それが彼の得てとする戦い方。
とりあえず…っと。
ひとまず、そんな彼らをみつつ、手近にある小石を拾って刺客達の方にほうりなげてみる。
……が。
たったのそれだけで、半数以上がそれだけでなぜか倒されている。
いくら何でも弱すぎよぉ!
はぁぁ~…も少しくらい根性みせなさいよねっ!根性を!!
そんなことをしていると、ようやく暇つぶし相手の気配がやってくる。
まあ、あたしから見ればかなり役不足だけど。
雑魚だし……
でも、少しは楽しませてくれるでしょ♡
ようやく出現し視線を送ってくるそいつを見上げるようにとわざと振り向く。
案の定、とういか。
こいつ……わかりやすい行動よねぇ。
そこにいたのは、いうまでもなくあのセイグラム。
一応かなり弱いにしろこいつも曲りなりにも純魔族だし♡
純魔族。
本来、魔族や神族といった上の
魔族は完全に精神生命体。
そんな彼らが物質世界に具現化する場合は、何かを依り代とするか、根性と自力で具現化するか。
そのどちらか。
神族の方は……竜のように、肉体を持っている存在もいるけど。
基本的には竜神や竜王といった存在は本質的には魔族と同じく精神生命体。
純魔族と一般に呼ばれているもものは、根性で自力で物質世界に具現化している存在のこと。
まあ、力が強ければ、人間そっくり…というか、すべてのものにそっくりになれるけど。
あたしがいい例♡
あたしは何にでもなれるしね♡
あたしにできないことはないし♡
まあ、あたしは魔族でも神族でもないけど。
それらを創り出してる存在だし…
ま、それはそれでどうでもいいとして。
「―…人間よ。…一体何をした?
我らが主は、完全に記憶を無くしている。あまつさえ、我の不死の契約を破るとは……」
あんたの主は正式にはゼラスでしょうがっ!!
下っ端とはいえ、獣王に組しているでしょうに。
まあ、人と情けないような契約を結ぶ下級魔族だから、いってもしょうがないにしても。
そんなことをこのあたしにむかっていってくるセイグラム。
「…さらに主は子供の姿になっている……どういうことだ!?」
何やらわめていてあたしにいってくるけど。
それと同時。
ふわりと、その横の虚空より出現してくるもう一つの姿がみてとれる。
「……セイグラム様。こいつらはとりあえず『始末』しましょう。」
何かそんな無謀なこといってるけど。
あらあら♡
ギオ=ガイアったら♡
何を土台無理なこと言ってるのかしら♡
面白いこといってくれるじゃない♡
あんた達程度じゃガウリイにもかてないよわよ♡
それに……ふふふ♪
こいつら、これでも、ちょっとは面白いことやってるじゃない。
でも…もうすこし、外見とかも考えてかけましょうね♡
「あら♡ここに来る前に、デイミアのところによったのね♡
それはいいとしても。何、不完全な
腹いせもいいけど、せめて完全にかけるならかけましょうね♡
しかもちょっと、失敗してるようだし♡」
本来なら、その人間というか対象者を正気に戻してから、あれをかけるのにねぇ。
気が狂ってるままじゃ役にたたないじゃない♡
そんなあたしの言葉にようやく気が付いたかのようにはじかれたように空を振り仰ぎ。
ランツ、ロッドがセイグラムに気がついてるけど。
遅いってば♡
「・・・・だ!?」
「・・・・な゛!?」
何か、二人とも、セイグラムとギオをみて、一言いってから固まっていたりする。
別にどうみても人ではないからって、固まる必要なんかないでしょうにねぇ♡
こいつらはしょせん、下級魔族程度だし。
「ちょっとまてぃぃ!!ななななんで、まままさか、ななななんでこんなとこにこんなのがいるんだ!?」
ランツ♡
かなり声がどもってるわよ♡
面白いけど♡
「こんなのって。これでも一応こいつら魔族の一人よ。
かぁぁぁぁぁぁなり下っ端で、かぁぁぁぁなりむちゃくちゃに弱いけど。」
あたしが事実をいうと。
なぜか、ひきつるセイグラムとギオ。
そして、なぜかその言葉にそのままその場にて固まっているランツとロッド。
「な゛!?…魔族ぅぅぅ!?」
一瞬の静けさの後に、しばらくしてひときわたかくランツの声が響き渡る。
「お。おい、もしかして、あんたら魔族相手に喧嘩うってんのか!?」
ランツが何やら悲鳴をあげる。
何をわめていているんだか。
「何、些細なことで驚いてるのよ?
そ♡ハルシフォム評議長が、このセイグラムと、不死の契約結んでたの♪
その契約を破壊してみたのよ♡そしたら、彼は子供になったけどね♡」
一部は事実だし♪
ひとまず、驚くランツたちに親切にも説明しておく。
本当になんて親切なの!あたしって!!
「…って!!?あの子供、評議長本人だったのか!?」
ランツがまたまたわめいている。
だからぁ、そんなに驚くことでもないでしょうに。
あたし達がそんな会話をしていると。
「……いい加減に無視するのは、やめてもらおうか?…だが、人間よ?
なぜ、我が
不死の契約を破るといい?……貴様、何ものだ?」
セイグラムがあたしを見つめていってくる。
「んな下っ端に説明しても意味ないでしょ?」
あたしはあっさりという。
というか、あたしの通り名だけで死ぬか消滅する程度のこいつらに、説明するだけ無駄というもの。
「そんなことはどうでもいいんですよ。セイグラム様……始末さえすれば……」
ずいっ。
言ってギオ=ガイアが前にでてくるけど。
「はあ~……。相手の力量もわからないなんて……。…そもそもの原因は……
…やっぱりこれは部下Sの教育がなってないのよねぇ~。」
これも、すべて部下Sの教育がなってないから!!
せめて相手の力量くらいは、すべてにわかるように指導しときなさいっ!
せっかくあたしが、まがりなりにもこの世界をあんたに任せているんだし。
それが魔王としての勤めでしょうが!
「…できないことは、いうんじゃないの。あんたは。…ガウリイ!」
とりあえずあきれつつもガウリイを呼ぶ。
あたしが手を下すまでもないし。
「おう!!」
あたしの呼びかけで、ガウリイが一気にギオ=ガイアの下へ回り込み。
「――っはぁ!!」
ガウリイが気合とともに、気を吐きだす。
その瞬間。
ざんっ……
……ギオ=ガイアはあっさりとガウリイに斬られていたりする。
……情けなすぎ……
ガウリイがもってる剣が、自分達とは別世界の魔族とも気づかないなんて……
「な゛!!!?馬鹿な!?光の剣だと!?」
セイグラムが叫ぶ。
「がうわぁぁぁぁ!!!!……」
叫び声を一応あげる暇があったらしく、そのまま叫ぶと同時にギオは塵と化す。
本体そのものの、精神すらも、滅んでるし。
……ほんとうに情けない……
せめて、死ぬ程度ならまだ救いがあるというのに……
あ゛あ゛!!
「魔族に威厳ってものがないぃぃい!!!なんで、魔族のくせに、そんなに弱いのよ!!」
お母さん、悲しすぎるわ!!!
「くぅ!!とりあえず、勝負は預けておく!!」
捨て台詞と負け台詞を残して。
いうなりセイグラムは
「あらあら。逃げちゃったわねぇ~。」
まったく…近頃の魔族は!!
根性もないの!?
やっぱり無能な部下Sのせいよね!!
……あとで、お仕置きにいってやる……
お母さんは、そんな風に弱くは育ててないからね!
「お……お前なぁ~…何をのん気に……」
ガウリイがいいかけたその直後。
セイグラムが消えて、硬直が解けたランツがなぜか。
「お…おい!!何であんな魔族がでてくるんだよ!冗談じゃないぜ!!
あんなもん相手にした日には、いくつ命があっても、足りゃしねぇじゃないか!」
この程度のことでなぜかわめいてるし。
「…ガウリイといったな。貴様のその剣……もしや、伝説の『光の剣』なのか?」
ロッドがガウリイが光る刃をしまい刀身を柄にはめていると言ってくる。
「…え!?」
その言葉にランツが驚いているけど。
どうやら魔族に気を取られていて、ガウリイの剣に気づいてなかったようだけど。
そんな心の余裕くらいはどんなときでももたなくちゃ♪
「あんな雑魚もどきなのに♡そんなこといってどうするのよ。ランツ♪」
「ああ。オレの家に代々伝わる家宝の剣だが?」
かるくガウリイが肯定すると。
「す……すごいぜ兄貴……」
なぜかランツまでもが、ガウリイを尊敬する眼差しでみて何やらいってるし。
「ま、どうでもいいじゃない♡それよりデイミアの家にいってみたほうがいいわよ♡
それと、タリムの側にも誰かついていたほうがいいでしょうね♪
あいつ、もう一人くらい腹いせするかもしれないし♪」
そんなあたしの言葉に。
「何だ?その腹いせって?」
不思議な顔をして問いかけてくるガウリイだけど。
「知りたい?」
「ああ。」
「じゃ、いってみればわかるわよ♡」
あたしの言葉に。
「俺は残る。」
ロッドが静かにいう。
「あっそ。じゃ、いってみましょう♪」
残っている、血にまみれた傭兵や、
腰抜かしているやつらは、無視するとして。
あたし達は、そのまま、タリムの屋敷をでて、ロッドを残しデイミアの屋敷に向かってゆくことに。
まったく、もう少しあれくらいましにかけないさいよね……本当に……
月の光を背におって、デイミア邸は静かに佇んでいる。
見た目には昼間とまったく変わりがないが、今と昼間では、瘴気というか妖気のレベルが違う。
つまり、精神世界面において瘴気が濃くなっていたりする。
ついでにいえば、物質世界においても♡
「……すげえ雰囲気……」
思わずぽつりとづふやいているガウリイ。
まあなぜだか、この雰囲気だけで普通なら発狂するわね。
ガウリイの額には小さな汗の球が浮かんでいる。
「ほ……ほんとうにこの中にはいるのか?」
ランツにいたっては、全身真っ青になりはて、全身に鳥肌がたって、立っているのもやっと。
といった何とも情けない状況にとなってるけど。
しかも、家の中にはいるのにすら怖気づいてるし。
「ほらほら♪さっさといくわよ♡」
あたしは、二人を促しそのまま中にと入ってゆく。
ごくり。
ランツがつばを飲み込む音が闇の中に響く。
夜の闇と屋敷のかもしだす闇に、開け放たれたままの門をくぐる。
重く湿った冷たい空気とガウリイたちは感じているらしいけど。。
この雰囲気は、カタートの入り口に近いくらいの雰囲気というところ。
魔族特有の・・瘴気。
瘴気とは負の力の集合体のようなものと捕らえれば判りやすい。
ちょっと違うけど。
玄関の扉には、当然ながらも鍵はかかってない。
「……うっ!」
扉をあけると同時に何やらランツがうめいている。
家の中に満ちている生臭い異臭。
腐った生肉の臭い。
「何だ?この臭いは?血臭ってのならまだわかるけど……」
ガウリイが顔をしかめ、独り言をいいながらそうぼやく。
「こっちね♡」
そんな彼らを無視し、そのままどんどん屋敷の奥へと入ってゆく。
奥に進むにつれ、異臭はますます強くなる。
ランツが、恐怖心にまけて何やら口を開いてくる。
人や存在はなぜか恐怖すると、話し始める傾向がある。
恐怖などを紛らわせる自己防衛らしいが。
そんなことをしても、関係ないでしょうに♡
「……人の気配もない。何ともおかしな雰囲気だし……」
そんなことを震えながらいってるし。
「何だ?あの声?」
言ってガウリイが足をとめる。
――……るる……
「声?」
ランツが聞き返す。
ランツが耳をすますと、どこからかかなり離れたところからかすかに笑い声が聞こえてくる。
「―…笑い声か?」
ガウリイそんなことをいってるけど。
あら、正解♡
「そのとおり♡この声はデイミアの声よ。」
さらりというあたしの言葉に。
「お…おい、リナ?お前何か知ってるのか?」
ガウリイが聞いてくるけど。
「さっき。あたしがセイグラムにいってたでしょ?
あいつ、どうも呪法を使ってたから、どんな風にしてるのかちょっと見てみようとおもってね。」
『呪法?』
ランツとガウリイか同時に言葉を出す。
と。
そんな会話をしている中、あたし達は大きな扉の前にたどり着く。
あたし達が昼間に入った扉の前だけど。
部屋を利用して、ルーンブレイカーが敷かれていたあの部屋の前。
「ここね。」
あたしは、扉をあける。
徐々に広がってゆく扉の隙間から、狂った笑声が流れ出てくる。
やっぱりというか…
あの術は相手を正気に戻してからやらないと♪
相手の苦しみが増さないのよ♡
わかってないのかしらねぇ?
まあ、あたしとしては、どうせやるならあんな不細工な塊にはしてほしくはないけど。
室内に入っていくあたしとガウリイ、そしてランツ。
くるりと辺りを見渡したガウリイの視線がとある一点でとまり。
「……何だ…ありゃぁ……」
ガウリイにしてはめずらしく、かすれた声をその口から滑らせている。
「何が?」
ランツもまたガウリイの横をすり抜けて、立ち尽くしたままのガウリイと同じ方向を見やり。
「うげっ!!?」
それと同時に、一言叫び、そのままランツは硬直してたりするし。
やっぱりこれは完全に失敗してるし。
本来これって、もう少し綺麗なのよ!
そこに転がっているのは、一つの巨大な肉の塊。
むき出しの内臓をもこね回して作り上げたような肉塊。
本当に、存在そのものの内臓を表に出して使っているのたが。
簡単にいうなれば、その肉体のうちにある内蔵と、皮をひっくり返した状態。
それをだんごにしている様子。
それらは絶えず、脈打ちしうごめいている。
ジャッ!
一部が盛り上がり、肉でできた小さな蛇を生み出す。
それから生えた蛇は、肉塊の一部に食いつき、それを食い破りながら塊の中に再び没してゆく。
それが、塊のすべてにわたっておこっている。
普通ならこれはしっかりと、内臓の様子が分かるまでに、きちんと姿形まで整備されてるのよ!!
こんなに不細工じゃないわ!!
蛇が肉を食い破るたびに、デイミアの嘲笑がひときわ大きくなる。
肉塊の中心に、張り付いているデイミアの顔が発する笑声が。
「……な゛……なんだ……これ……?」
ガウリイがつぶやく。
「これが、セイグラムがかけた呪法よ。
完全に失敗作のようねぇ……。ちなみに、そうね。
このほかで有名なところではディルス二世、ガイリア王国の国王が二十年前。
たった五千人の精鋭部隊の人間を引き連れて、カタートに討伐に向かい、
そして彼らは戻ってこなかった。
北の魔王によって、返り討ちになったのだろう。という世間の噂くらいしってるわよね?」
「……聞いたことはある。」
「……知ってる。」
弱々しくいうランツ。
ガウリイは、まあ彼の祖父があれに参加してたようだから、知ってるのは当たり前だけど。
「本当はね。ディルス国王は一人だけ、戻ってきたの。
夜が明けて。詰めの兵士達が謁見の間に現れたとき、
それがいつの間にか、届けられていたのに気がついたのね。
王の玉座に転がる肉塊に。ちょうどこれよりもう少し大きい程度の大きさかしらね。」
まああれを届けたのは、確か覇王将軍ノーストらしいが。
別にそこまで詳しく説明する必要はないし。
「で、それは、自らが産んでいる蛇に食われながら、兵士達に哀願したらしいのね。
殺してくれと。ディルス国王の声でね。
一応、魔族にしか使えない呪法で、といっても、誰でもやろうと思えば、できるけど。
ともかく、それが変わり果てた英断王の姿だったのよ。
この術をかけられたものが死ねるのは、術者が滅びたときのみ。って言われてるわ。
他にも方法はあるにはあるけど。人間の力とかでは普通は無理でしょうね。」
あたしの力を使えば、簡単にそれは断ち切れるけど。
これは不完全のものだと、他の存在でも誰でもそれを無効化することは可能。
もしくは、術者以上の魔力をもってして解除することも可能なんだけど。
それに、だぁぁれも気づいてないのよねぇ……
「今でも、夜になると、ガイリア城では、『殺してくれ』と哀願するディルス国王の声が、
通風孔を抜ける風にのって聞こえることがあるらしいわよ。」
というか、あの人間は実際にガイリア城の地下のとある一室に閉じ込められてるし。
平気で説明しているあたしを不思議ぎがりつつ、
「リナ。お前これみて……何ともないのか?コレを目の前にして……?」
ガウリイが何かいってくるけど。
「別に。あたしは初めからわかってたし。だから確かめにきたんじゃない。
でも、ちょっと……これはいくら何でも術のかけ方が下手すぎるわねぇ……
こんな程度じゃ、肉体と精神のつながりがあっという間になくなって精神が崩壊して、
それでもってあっさりと消滅しかねないわね。」
至極最も意見をさらりというあたしに。
「…何か残念そうにきこえるんだが……」
何やら横でつぶやいているガウリイの意見はひとまず無視。
「も……もしかしてこれがあんたのいってた……あの魔族の腹いせ……ってことか!?」
ランツがなぜか怯えのこもった声でいってくるけど。
「あら。よくわかったわねぇ♡そのとおりよ♡」
ランツの言葉ににっこりしつつ。
「……で?他に何か聞きたいことある?」
『……とりあえず、外に出たい……』
ガウリイとランツが異口同音で何やらいってるけど。
何か二人とも顔色わるいようだけど…ま、気のせいかしらね♪
たかがこんな程度で…ねぇ♡
外の空気は夜独特の気配で澄んでいる。
まあ、ガウリイ達の顔色が悪いのは、月明かりのせいだけではないようだけど。
ちょっびり、あれでもくるものがあったかしらね?
かなり下手だったし……あれは……
あれくらいで情けない気もするが。
まあ、見たことない存在なら無理はないのかもしれない…のだけど、情けない。
……とゆうか。
部下達へのお仕置きコースの中に、あれより、もっと面白いものも多々とあるけど?
まあ、些細なことだし♪
お仕置きされる彼らが悪いんだし♪
しばらく、そのまま、無言で歩いてゆく、ガウリイとランツの姿がその場にて見受けられていたりする。
二人とも、少し根性鍛えましょうね♡
-続くー
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あとがき:
薫:よぉぉぉし!!!あと、四ページぃぃぃぃ!!!!
あ・・・時間が・・次の日になってる・・・(汗)
んではでは・・・・・・。
次回で・・・・・・。二巻分は、終了です♪ではでは・・・・・・・・・。
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