エル様漫遊記・アトラス偏


街は活気に満ちている。
市場が開かれ、店に通りにあふれる人々。
「あぁあ。何が楽しくて、こんないっぱいの人間がこんなところをたむろしてるのかしらねぇ。」
あたしはつぶやく。
あたしのつぶやきに。
「けどな?オレ達だって、そのたむろしている人間のうちの二人なんだぜ。」
ガウリイがいってくる。
「解ってるわよ、いったみただけよ。」
人じゃないけどね。
などと、たわいのない会話をしつつ、のんびりと通りを歩く。
あたし達はタリムの屋敷に向かっているのだけど。
ガウリイの右に並んで、てくてくとあるいてゆく。
しばらくするとあたしの横に、とある一つの気配が一緒になり歩き出す。
あら♪
この気配って♡
「お願いです……」
小さな女性の声。
あたしは、声の主に視線を送る。
白い服をきて、夕日の色の髪をした女性。
視線は、前を向いたまま、言葉だけがその唇から滑り出る。
「……この件には関らないでください……」
それだけいうと、彼女は思いつめた瞳の色でぺこりと一つ頭をさげて人ごみの中へとかき消えてゆく。
「今の人…何がいいたかったんだ?」
ガウリイが何か首をかしげてつぶやいてるけど。
「…なるほどね♪大体わかったわ♡」
面白くなってるじゃない♡
わかってるからきたんだけど。
「何がだ?」
あたしの言葉に、ガウリイがいうので。
「秘密♪」
「……ケチ。」
ふふふふ♪
からかって遊ぶか…どうしようかしらねぇ♪
そだ♡
いいこと、思いついちゃった♡
んっふふふ♡

「ほほぉぅ、引き受けてくれるきになりましたか。よかった、よかった。これで百人力ですな。」
本当にうれしそうにタリムはいうと、バーベキューの串にかぶりつく。
口をもぐもぐさせながら。
ときどき、ぷかりと葉巻をふかす。
これじゃあ、いくら料理の味がよくても解らないわね。
タリムの屋敷の裏庭で、昼のテーブルを囲みつつ、仕事の話を進めるあたし達。
「これでもう、完全に安心じゃよ。デイミアの馬鹿者が、わけのわからん暗殺者共をさしむけても。
  枕を高くして寝られるというものじゃ。」
いって、陽気に笑う。
本気でそう思っているようだけど。
魔族相手に、安心もなにもあったものじゃないわよね♡
魔族をなめないでほしいわよねぇ。
あれでも、あんななさけないやつでも、一応は、ここの魔族なんだし。
「ま、別に安心しても、かまいませんけど。・・・で、護衛の期間は?。」
他に何かいらないことを言い出すまえに、無難な話しにあたしは切り替える。
「そうじゃの……評議会の選出会が開かれるのは、半月後じゃからとりあえずそれまでということで。
  あとのことは、儂がつけるさ。報酬は……必要経費プラス・・そうじゃな。」
タリムのいう金額は、人とすればまあまあといった程度。
あたしにとっては、微々たるものだが。
ま、どうせ、暇なんだし♡
彼との話しをざっとまとめたあとで、あたし達はとりあえずあちこちを見て回ることに。
気分上というか、下見という名目だけど♪
自分の目で見るのって、無駄なことだけど、結構この無駄も楽しいのよね♡


「見物かい。お二人さん。」
柱に背をあずけ、腕をくんで、たたずみ。
小馬鹿にしたような目つきで、あたしとガウリイをみているのは、あのランツ。
「下見よ♡そんなこともわからないの?それじゃあ、役に立たないわよねぇ♪
  カタートのSというか、レイ=マグナスより、役にたたないかもね♡
にっこりと微笑むあたしの言葉に。
「…は!?役にたたないって……なら、お前さんは!!?」
なぜか叫んでいるランツ。
「あたしに勝てる存在なんてないわよ。まあ、互角に出来る相手は……いるにはいるけど。
  神や魔王程度だったらいるわけないし♪それ以上でもね♪次元が違うのよ♡」
あたしに勝てる…というか、互角にできるのは。
あたしと同等の存在の彼女達や彼らだけである。
このあたし自身でもある、この世界でそんな相手はいるはずもない。
あたしがさらりというと。
「お前なぁ……あおることなんていうなよ。ランツ…だっけ?
  じゃ、ちょっとだけ実力見せてやるよ。」
ガウリイはそういうと懐から一枚の金貨を取り出し、剣を右手で水平に構えそして刃の上にのせる。
「はぁ!」
ガウリイはまっすぐに、気合とともに剣を引く。
きんっ!
小さな乾いた音がして、その程度な些細なことでランツが目を見張る。
床に落ちた金貨は、真ん中から真っ二つに断ち切られている。
刃の上にのせた金貨を、『剣をひく。』という動作で、両断したのだけど、このガウリイは。
剣にこめた気の力。
技、スピード。
どれもが、人間でいうと並の天才以上……と呼ばれるものほどのものでなければできないこと。
……ま。
あたしはそんなこと、簡単に出来るけど♪
気合をためなくても、ちょっと、そうしようと思っただけで♡
手を動かすこともなく、簡単にできるけどね♡
「す……すげえ!!」
それをみて、ランツが心からの感嘆した声を上げる。
「ふふん。」
ガウリイはさも得意そうに剣を鞘に収めてたりするけど。
ばこっ!!!
「何やってんのよ!!」
ガウリイの頭をスリッパでどつくと。
すっばぁぁぁん。
こぎみいい音が響く。
……結構いいわね。
スリッパ攻撃も。
常に部下達でも試しましょ♡
あたしの力をちょっぴし上乗せして♡
「な……何しやがるんだ!!兄貴に向かって!!」
ランツがあたしに向かって叫んでくるけど。
今の技で、すっかりガウリイを兄貴分に祭り上げているし、こいつは……
「な……なんだよ…いきなり……」
ガウリイが頭をふりふり、起き上がる。
「たとえデモンストレーションとはいえ、金貨でやらないの!!金貨で!!
  金貨創るの面倒なのよ!!ここのお金限りがあるんだから!
  せめて、オリハルコンの原子の粒とかで、手を打ちなさい!
  だったら、別に斬ってもまだ使えるでしょ!!」
別に面倒……というわけでもないが。
やっぱ、面倒だし。
その気になれば、一瞬のうちに、金貨などは創りだせるけど。
でもそれをやったら、面白みがないし。
だから、あたしは極力、盗賊などから没収して、資金などは使うようにしている。
あんまり、ぽんぽん作り出すと、流通が麻痺しかねないしね。
だったら、元からあるのを活用するのが得策というものだしね♡
ちなみに。
余談だけど、ルナの両親やってて、あたしの形式上の両親となっている実家は、商売人である。
ま、もっとも、スィーフィード…つまりは、あたしの姉ということになっているルナは、
リアランサーという食堂で、ウェイトレスのアルバイトをやっているけど。
「ま…まあ待て。要は、オレが切っちまった金貨が、何かの役にたてば文句はないだろ?」
ガウリイが頭をさすりながらいう。
あんな程度で痛かったのかしら?
ちょっと、硬度と攻撃力をあげた程度で頭をはたいたのに。
「まあね。」
ガウリイは床に落ちた二枚の元金貨を拾い上げ、ランツに見せる。
「どんなもんだ。自分でいうのも、何だが、見事な切り口だろ?」
原子構造から、すぱっと切り取られ滑らかな切り口。
「ほ・・ほんとだ、すげえ!!」
「この技は、滅多に人には見せないんだが…
  …この金貨、お守り代わりに、一つどうだ?15リーフくらいで。」
「うぉぉぉぉ!!!買った!!」
ちなみに、リーフというのはこの辺りの通貨で、十リーフで約金貨一枚程度。
あら、このガウリイも結構な商売人じゃない♡
「…で、」
斬られた金貨をなぜか後生大事に懐にしまいながら、ランツはじと目であたしをにらむ。
……いい根性してんじゃない♡
「で、あんたは、どんな技を使えるんだ?…いや、それとも、兄貴にくっついている金魚の糞かな?」
この人間、誰に向かっていっているのかしらねぇ♡
「ナーガじゃあるまいし♡あんた、誰に向かってそんな口を聞いているのかしら?
  じゃ、どれかみせたげる♡選ばしてあげるから感謝しなさいよ♡
  問答無用で力を叩き込んでも、あんたは文句言なんかいえない台詞いったんだから♡」
「今ここで、見せたげる。そうねぇ。
  おとなしいところで、Sの奴の力…赤瞳の魔王の力の竜破斬ドラグスレイブがいいか。
  ここでは最高とされている火炎呪文最高の暴爆呪ブラストボムがいいか♪
  簡単なことろで、ラティルト、あ、あと、かなり、簡単すぎるけど、
  この街くらいなら、一瞬で消滅する、重破斬ギガスレイブってのもあるわよ♪」
まあ、ギガスレイブは、この街どころか、世界そのものも消滅できるけどね♡
あれはあたしの力なんだし♡
うきうきして言うあたしの言葉に。。
「……リナ……頼むからどれもやめてくれ……」
ガウリイがなぜか冷や汗ながしながらいう。
「…それに最後にいってた、ギガなんとかって……
  …確かシャブなんとかって魔王を倒したときに使ったものだろうが……
  んなもん、こんな所で使ってくれるなよ……」
本気で汗をかいて言っているガウリイ。
別に些細なことじゃないのよ。
ねぇ♡
そのガウリイの台詞に、なぜかランツが硬直する。
「あ…兄き……そのシャブ…なんとかって……。……魔王シャブラニグドゥのことじゃないよな!?」
なぜか汗じとでそんなことを言っているランツだけど。
「別にあいつなんて、Sでいいのに……」
あたしのつぶやきは、聞こえてないらしい。
「おお、そうそう。確かそんな名前だったよなぁ。
  いや、本当、目の前で復活されたときには、どうしようかと思ったもんな……」
うんうんうなづいているガウリイ。
「あんなS程度で、どうしようも、こうしようも、あったもんじゃないけど……」
あたしのつぶやきはガウリイやランツの耳には届いてない。
「……で?まさか、この連れが倒した…と?」
あたしを見る目になぜか怯えが入り、声がなぜかかき消えていたりする。
「リナには逆らわないほうがいいぞ~。何たって魔王より強いし。
  こいつのあだ名も、ドラマタリナだの。ロバーズキラーだの。
  ……オレよりどうやら、腕は上だし。生きとし生けるものの天敵…だの。」
「ガウリイ♡もっという勇気ある?」
にっこり笑った、あたしの手には黒い塊。
「……いや、ない…」
そのまま、汗流して硬直するガウリイ。
よろしい♡
あたしは、塊を霧散させる。
「……っ!!って!!ドラマタリナ…って!!
  もしか…もしかして…あんた……あ……あの『リナ=インバース』!?」
ランツは急にしり込みし始めてるけど。
「何よ、あのって、『あの』って!!…ま、いいけどね。
  …ど~せ、あたしのことを本名で呼ぶなんて、到底無理だし。
  頭文字をとって呼ぶとか、金色の王とか呼ぶからね。部下達も。」
あたしの名前は、はっきりいって力のないやつが口にしたらあっさりと消滅する。
思っただけでも消滅する輩は多いけど。
まあ、あたしの本名を言えるのは、あたしと同等の存在だけだし。
仲がいいから、彼らも、あたしを愛称で呼ぶけどね♡
あたしの話しを聞いてないガウリイとランツ。
「……兄貴…俺…とんでもない人に喧嘩うってたかも……」
しどろもどろしているランツ。
今のあたしの言葉を聞いてなかったわね。
ま、聞いても、意味が解らなかったでしょうけど♡
「ま♡ともかく♡どれがみてみたい♡」
あたしがいうと。
「い…いえ!!!遠慮させていただきますのです!」
いきなり敬語になっているランツ。
「あっそ。面白くないわねぇ~……」
あたしの言葉に、ガウリイがほっと胸をなでおろしているけど。
ま、いっか♡
「じゃあ他の所も見て回りましょう♡あ、ランツ、あんたは案内役ね♡」
あたしのにっこりとした語りかけに、ランツは素直にうなづいてるし。
まったく、そんなにおびえなくてもいいじゃない。
根性がないったらねぇ……♡


タリムの屋敷の下見を終えて、あたし達は街の下見へと出かけてゆく。
ランツは、なぜか、びくびくしながら、案内役をこなしているが。
「さぁ…ついたぜ。兄貴。」
ランツが足を止める。
通りを隔てた向い側に、人にとっては結構大きい館が建っている。
あたしにとっては、小さく感じるけど。
3階建ての高さで、庭は、皆無に等しく存在してない。
敷地のほぼ全体に、どがっと家を建てている。
もうすこし、コーディネイトを考えて建てましょう♡
風景にも、全然あってないじゃないのよ♡
「へえ。ここが。」
「は…はい!!デイミアの家です!!」
あたしのつぶやきに間髪いれずに、答えてくるランツ。
なんでか、あたしをかなり怖れているようなのよねぇ。
ま、いいけど、別に。
「じゃ、いってみましょ♪」
あたしがいうと、ガウリイとランツが同時に眉をひそめる。
「いく……って?」
「デイミアの家よ♡もちろん♡」
「デっ!!!」
なぜか、ランツが思わず声を上げる。
「正気ですか……いや、なのですか!?
  昼間から、デイミアの家に乗り込むなんて…いや、乗り込まれるなんて!」
何かデスマス口調でわめくランツ。
「あら♪誰も殴り込むなんて、いってないわよ♡
  正面から堂々と入っていって、玄関先でちょっと話しをするだけよ♡
  向こうも無茶なことはできないでしょ♡」
本当は、ちょっとこの家の地下に用があるんだけどね♡
「…いや、やっぱり……やめといた方がいいんじゃないか?」
  …タリムのおっさんの話しだと、まともな相手じゃないみたいだし……
  間違って、騒ぎにでもなったら……相手は一応、この街では地位も名誉もあるだろうから、
  下手すりゃ、こっちが一方的に悪者にされちまう。」
腕をくみながら言うガウリイ。
あら、ガウリイにしては頭使っているじゃない。
「あら。ガウリイでもたまにはまともなことをいうのね♡」
「お…おまえなぁ……」
ま、あたしはガウリイがわざとぼけているのは、お見通しだけどね♡
多少、天然もあるけど♡
「でも、いくに決まってるじゃない。さっ。いくわよ♪」
『あ…おい!!!!』

ガウリイとランツ。
二人の声が重なってゆく。


                                    -続くー


 HOME    TOP    BACK    NEXT


####################################

あとがき:
エル:・・・あたしが活躍してない・・。
 薫:しょうがないじゃないですかぁ!!
   何しろ、できるだけ、原作の通りに・!
   というのが、今回の話しの設定だったんですから!!
   ・・かいた時期が・・時期だからなぁ・・(滝汗)
 姫:エルなら、いーわよ。私なんか、欠片もでてこないし・・・。
 薫:・・ぎくぅ・・。
 姫:しかも、貴女、並ある小説無視して、また別のを重点的に打ち込んでるし・・。
 薫:あ・・・・あはははははは(滝汗)
   しかも、アップはとーぶんしないといっておきながら・・。
   ・・・やっちゃいました♡てへ♡
エル&姫:テヘ☆じゃないぃぃい!!
ばっしゅうぅぅぅ・・・・・・・・・
 姫:まったく・・・・・
エル:あと、このアトラスは・・12ページ・・か。
 姫:そ~ね。まったく・・・・
エル:そうよねぇ。ま、とりあえず、今回は、何か無償にむかむかするから・・
    どこかいきましょうよ♪ユニット♪
 姫:さんせい♪エル♪
エル&姫:それじゃあね♪

―しゅん・・・・・

瞬く間に、かき消える金色の女性と黒い髪の少女・・・

・・あとには、黒い染みがのこるのみ・・・・・


 HOME    TOP    BACK    NEXT