まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
こんにちわ。お久しぶりですv
って、何まだ初めのころの番外編を打ち込みしてないのに、
後半部分。つまりは新刊のほうのを先に打ち込みしてるんですかねぇ…自分(自覚あり
んでもって、のんびりと打ち込みしている間に次々と新刊さんが続々と……
が、がんばらねば(滝汗
このお話は、SP20巻に収録されている、「雨の人情宿」編の漫遊記版となっておりますv
発売当初から打ち込みしてて…なかなか気分がのらずに気づいたらすでに29巻まで発売中…
……懺悔します…はい(汗
何はともあれ、いっきますv
さて…下からは簡単なお話の時期的内容説明ですv
さてさて。
この度のお話は。
トリガルウ(SP版、わんだほ~)の一件が終わった後。
つまりはTRYにいく前。
ついでにいえば、映画の「プレミアム」よりも前のお話です。
(詳しいことは漫遊本編のほうを参考にしてください←書きなぐりさんには投稿してません)
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エル様漫遊記 ~戦慄!雨の人情宿場~
どざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……
「ほんと、よく降りますねぇ」
窓から外をみてぽつりとつぶやく。
「というか。お前は姉貴のことをつっこまないのか……」
言っても無駄。
とはわかってはいても言いたいのが人の人情というもの。
そんなアメリアにむかって、ちらりと視線をとある方向にむけて言っているのは…
「すごいでしょう?姉さんってものすごい人望とかあるんですよ?」
「…いや、そうじゃなくて…も…いい……」
セイルーンの今後が果てしなく恐ろしいように思うのは絶対に俺だけじゃないよな……
そんなことを思いながら、ため息まじりにつぶやくゼル。
街道筋から少しはずれたとある川の側にぽつんと一件佇む小さな宿。
外は数日の間雨が止むことなく降り続き、川はちょぴっと増水している今現在。
それゆえに、いつもなら出ているはずの渡し舟などというものはこの程度のことで欠航中。
この川は街道からは外れてはいるものの、物流などにおいては川を利用したほうが能率がいい。
ということもあり、晴れている日はそこそこ人の出入りも頻繁だったりする。
だが雨の日となれば話は別。
いつ川が氾濫するかわからない。
というのもあり、雨になればこの宿にはまず人はあまり集まってはこない。
現実に、今この宿にいるのもあたし達のほかには数名のみ。
幾人かは街道筋に戻るためにと引き返したりした旅人もいたりする。
宿の一階にとある食堂においては、
「お~ほっほっほっほっほっ!!」
ここ数日のようにいつものように高笑いが響き渡っていたりする。
「いやぁ。このたびの雨宿りはあきないねぇ」
「まあ、この高笑いが玉に瑕だけどね。ナーガさん。また何か面白い話をおねがいしますよ」
「お~ほっほっほっ!いいわ!そのかわりにビールでもおごってくれるわよね!お~ほっほっほっ!」
いうまてもなく、テーブルにてビールジョッキ片手に高笑いしているナーガ。
そして、そんなナーガに話しかけているのは、この雨で足止めをくらっているほかの客。
「ほんと、ナーガさんってかわってますよねぇ。よく酔いませんよね……」
ここ数日毎日のように飲んでいるのにまったく酔ったようには見えないナーガ。
ナーガ曰く、
『人から奢ってもらえる可能性があるときは酔ったらダメ、とお母様から教育をうけてるし』
ということだけど。
ナーガに話しかけているのは、旅の行商人トレマーと名乗った男性。
やや小太り気味でなぜか似合っていない黒ヒゲが目立つけど。
そしてま、そんなトレマー、と名乗った人物に続きナーガに話しかけているのは、
当人曰く、父親の使いで品物を客に届けた帰りにこの雨で足止めをくらっている。
と説明している赤毛の男性、トッシュ。
そして、そんなナーガをみてにこやかに場違いな笑みを浮かべていっているのはいうまでもなくゼロス。
「しかし。…ほんとうにあんたたち…姉妹?」
そんなナーガと、そして窓の外をみているアメリアを見比べて、
未だに信じられない。
という表情で問いかけてくる金髪の男性、アディス。
「はた迷惑な姉妹だがな……」
「あ~。ひっどぉい!ゼルガディスさん!どういう意味ですかっ!」
「言葉の通りだ」
アディスの問いかけをうけ、ため息まじりにづふやくゼルにすかさず抗議しているアメリア。
そんなナーガや、アメリア達のほうをのんびりとながめつつ、手にしているコップの紅茶を一口。
「でも。こんなメンバーでよくまとまって旅ができてるねぇ。あんたたち」
コトン。
デザートのケーキをテーブルに置きながら話しかけてくるこの宿を切り盛りしている女性。
ちなみに名前をリューシャ。
もっとも、この宿は別の意味あいも込めた宿屋ではあるんだけど。
それを今アメリア達にいったら楽しくないしv
ゼルもまさかここが『あの場所』とは気づいてないようだしv
「うん。いける!おばちゃん、この野菜炒めおかわり!」
「はいはい。こっちの金髪の兄ちゃんは食べ盛りだねぇ~」
ガウリイが今食べている野菜炒めのおかわりを要求し。
何ともほのぼのとしているこの空間。
あたし達のほかにいる客はたったの四人。
つまりはこの宿にいる人数は今のところ十人ほど。
「あら?楽しいわよ?」
くすっ。
そんな彼女にくすくすと微笑みながら返事を返す。
さってと。
そろそろ…ね♪
バシャバシャバシャ……
屋根と大地に打ち付けている雨音。
それに混じってあからさまに雨の中を走る足音がこちらにと近づいてくる。
ギィィ~……
こんな雨降りの中を旅人が?
そんなことを思いながら、ゼルや、そして他の客たちが一斉にと開け放たれた扉にと視線をむける。
「ふぅ……」
扉をくぐり、入り口付近にたったまま、
傘も差さずに走っていたがゆえに濡れたからだをひとまず軽く手で振り払っている一人の女性。
肩や髪にかかった雨を軽く振り払いながらも、ちらりとその視線をこちら。
即ち宿の中にと向けてくる。
歳のころならば、見た目十五、六歳。
事実十五になってまもなかったりするけど。
短くまとめた黒い髪に、
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
しばし、その視線をうけ思わず黙り込んでいるアメリアとゼル。
面白いことにそちらのほうも固まっていたりするけど。
そして、しばしの沈黙ののち。
「って…あああ!?マーリーンさん!?」
「ってマーリーン!?なぜこんなところに!?」
「って、アメリアさんにゼルガディスさん!?それにリナさんたちまで!?」
驚愕の叫びを上げているその女性。
いうまでもなく、少し前ちょっとしたかかわりがあったマーリーン=ライドパーク。
そしてまた、あの一件が未だに印象深かったらしく覚えているがゆえに叫んでいるアメリアとゼル。
「おや?マーリーンさんじゃないですか。まさかまた家出ですか?」
そんなマーリーンのほうに視線をむけてにこやかにいっているゼロス。
宿にいるほかの客たちはあたし達と今入ってきたマーリーンを交互にみて顔を見合わせてるけども。
「また…って……」
そんなゼロスの言葉に一部のものが反応して何やらつぶやいてるけど。
ま、マーリーンはよく家出してたし。
最もすぐにカーシャたちに連れ戻されてるのはお約束。
「おやおや。まあまあ。こんな雨の中を……はい」
「あ。すいません」
手渡されたタオルをそのままつかみ、髪などを拭き始めているカーシャであるが、
律儀にもゼロスの問いかけに、
「いや。違う。今回はお父様にいいつけられたのだ。今日、ここにこい。と」
ふきふきふき。
髪を拭いて、さらには服などを軽く拭き、ついでに腕などをも軽く拭いて水気をのける。
とはいえ、完全にはのかないけど。
どうでもいいけど、体についてる水分くらい簡単に蒸発とかさせなさいよね……
「?待ち合わせか何かですか?」
マーリーンから使い終わったタオルを受け取りながらもにこやかに問いかけるリューシャ。
「いや。多分違うとおもう。あのお父様のことだから……」
いってうつむくマーリーン。
「…もしかして、もしかしなくても……フェーンは……」
あの新月のグールのこと。
今、耳に入ったマーリーンの台詞からたどりつく結論は一つのみ。
そんなマーリーンの会話を小耳に挟み、なぜかものすごくいやそうな顔をしているゼルに、
「何かものすごく嫌な予感がするのは私の気のせいでしょうか…?」
先日のカーシャにちょっとしたことに付き合わされた一件を思い出して小さくつぶやいているアメリア。
そんな二人の心情はまったく気にせず、
「お~ほっほっほっほっほ!どんどんおかわりもってきて!!」
一人元気よくビールジョッキ片手に高笑いを続けているナーガの姿。
くすっ。
「それで?マーリーン?何ていわれたわけ?」
判っているけどここはあえて問いかける。
マーリーンのほうに視線をむけて問いかけたあたしの言葉にはっと我にと戻り、
「あ。そういえば。お父様は『暖炉の側を探せ、それに従え』…とかいってたが……」
「それってやっぱり何かのテストか訓練なんじゃぁ……」
ぽそりというゼルの台詞は何のその。
「暖炉って…あそこにある暖炉ですか?」
まさかまた、私達カーシャさんにマーリーンさんのテストで狙われる…なんてことはないですよね?
そう思う心情は声にはださず、
食堂の一角にとある暖炉にと目をやりマーリーンをみて話しかけているアメリア。
そしてしばし、ゼルとアメリアは同時に顔を見合わせ、二人同時に暖炉のほうにと駆け出して行く。
小さな火が燃えている暖炉の周り。
積み上げられている薪の下、ひび割れたレンガの隙間の一角。
その中のレンガの一つがすっぽり外れるのを発見し、
「あったぞ!」
「ありました?!」
なぜか本当にあの程度のことで懲りているらしく必死な二人だし。
別にどうってこともなかったでしょうに。
たかが、ちょぴっとマーリーンが独り立ちするのにあたり、
マーリーンの母親のカーシャによるテストが行われ、
そのテストの内容が『カーシャが狙うアメリアとゼルガディスを三日間護衛すること』だったにしろ。
最も三日ももたずにカーシャの夫の登場でもったいないことに一日と少しで終わったわけだけど。
「お父様は何と!?」
ゼルの声をうけてアメリア達のほう、即ち暖炉のほうにと駆け寄りつつゼルが手にした髪を覗く。
マーリンとゼルとアメリア。
そして興味本位でそんな三人の後ろから覗き込んでいるゼロス。
ゼルが手にしているのは二つ折りにされている羊皮紙がひとつ。
三人が覗き込んでいる中、折りたたまれている羊皮紙を開くと、そこには一言。
【―――がんばれ―――】
『何を(だ)!?』
その神にかかれている文字をみて面白いまでに同時に突っ込みをいれているアメリアとゼル。
そしてマーリーン。
「おやおや…v」
どうりで、エル様がこちらのほうこうに来られたわけですねぇ。
そんなことを思いながらもにこにこといっているゼロス。
「というか、どういうことなんですか!?マーリーンさん!?」
「わ…わたしにもわかんないわよっ!
というか、何でアメリアさんやゼルガディスさん、それにリナさん達がこんなところに!?」
「話をすりかえないでくださいっ!まさかまた私達まで巻き込まれませんでしょうね!?」
そんな二人のやり取りをしばし眺め、そして再び羊皮紙に視線を落とし、ため息ひとつつき、
「…アメリア。すでにこのマーリーンがこの宿にきた時点で巻き込まれてるとおもうぞ?
どうりでリナが街道筋から離れてこんな場所のほうに進んだわけだ……」
疲れたようにいっているゼル。
そして。
「そもそも。あいつのことだ。
この子がやってきたとたん、この宿から飛び出したりする人物がいたとすれば、
それは間違いなく放っておかないだろうしな。おそらくは……」
そういいかけるゼルの言葉をさえぎるように、
「というか。あんたたち…知り合いなのか?その姉ちゃんと?」
「そもそも、何いきなり暖炉をしらべてるんだ?そんなところに何かあるのか?」
先ほどまでナーガに話しかけていたトレマーとトッシュと名乗った男性達があからさまな面白い行動。
彼らにとっては挙動不審というか警戒を抱かせる行動をしたがゆえに声に固さを含んで問いかける。
ぐびぐびぐび。
そんな男達の反応とは裏腹に、
「あら?アメリア?知り合いなの?」
動じることなくビールジョッキを手にしたままでアメリアにと話しかけているナーガ。
「はい。姉さん。以前ちょっとしたことで知り合ったマーリーン=ライドパークさんです」
「…ライドパーク?」
そんなアメリアの言葉に、ジョッキをカタンとテーブルにおき、
「もしかしてあのフェーン=ライドパークとカーシャ=ライドパークに関係あるのかしら?あなた?」
カタンと椅子から立ち上がり、両手を腰にあてて胸をそらしながらマーリーンにと問いかける。
「……姉さん?」
ナーガの格好にようやく気づき、しばし唖然としながらアメリアとナーガを見比べて戸惑いながらも声を出す。
「ええ。私の姉さんです。何か?」
「…何かって……」
この格好をみて何も思わない人がいるのか?
面白いまでに戸惑いの感情をあらわにして言葉に困っているマーリーン。
「あの?お父様とお母様を知っているのですか?」
とりあえず無難な質問を投げかける。
「ふっ!愚問ねっ!あの二人をこの
幼いころに誘拐されて養成されていたダイナスト・ファミリーを壊滅させて逃げ出した。
なんてのはその筋では有名な話よ!お~ほっほっほっ!
それに新月のグールといえばとある国の秘密諜報部員じゃないっ!
そんな常識的なことをこの私が知らないわけないでしょうが!お~ほっほっほっ!」
ざわっ。
あ、ざわめいてるv
ナーガの高らかに言い放つその台詞に店にいたほかの客たちが一斉にと殺気だつ。
「お…お父様って秘密諜報部員だったんですか!?」
逆にそんなナーガの台詞におもいっきり驚きを隠せないマーリーン。
「…というか。おまえ、自分の父親なのにしらなかったのか?」
思わずあきれ顔でそんなマーリーンに問いかけているゼルの姿があったりするけど。
「あvそうそう。言い忘れてたけど……」
一人が応援を呼ぶためにこっそりと建物の外に出てゆくが。
あたしの言葉が言い終わるより早く。
ドゴォォッン!!
「うわぁぁっ!!!」
爆発音と、トッシュの悲鳴が雨音に混じり聞こえてくる。
『何(だ)!?』
その声をききつけ、出入り口の扉を雨が降るというのにガチャリと開ける人々。
出入り口から少し離れた地面の上。
そこに何やら物体が転がっているのが見てとれる。
「
それをみて呪文を唱えているアディス。
アディスの放った光りに照らされた大地の上にその物体もまた照らし出される。
そこに倒れているのはなぜか焦げてその場に転がっている客の一人でもあった赤毛の男性トッシュの姿。
「って!?」
その姿をあたし達の横、すなわちリューシャたちの背後からみて小さく叫んでいるマーリーン。
「あらあら。人の話は最後まできかないとv」
くすくすくす。
くすくす笑うあたしの言葉に。
「リナさん?どういう意味ですか?」
「リナ?」
はじかれたようにあたしをみてくるアメリアとゼル。
そして、
「どういう?」
「あんた、何かしってるのか?」
思いっきり戸惑いとそして警戒心をあらわにしてこちらもまたあたしにと問いかけてくるリューシャとアディス。
一人そのまま食堂の中にと残っていたトレマーはといえば、何やらごそごそと厨房近くでしていたりする。
くすっ。
「知ってるというか。気づかなかったの?さっき宿屋の周りをうろうろとしてた人たちがいたでしょ?
あの二人がこの宿屋の周囲にトラップしかけて不用意に誰も出れなくしてるのよv」
「って、ちょっとまてっ!トラップだと!?」
「冗談じゃないよっ!何でっ!」
あ。
面白い面白い♪
面白いまでに狼狽してうろたえているリューシャ達。
「あの?…リナさん?それってもしかして…お母様たちのことなんじゃぁ……」
考えたくない。
だけど可能性として、気配も感じさせずにそんな行動を起こせるのは両親しか思い当たらない。
そんなことを思いめぐらせつつも恐る恐るあたしにきいてくるマーリーン。
「?何だ?みんな気づいてなかったのか?何かあの夫婦が外で何かやってたの?」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
きょとん、とした表情でその手にはしっかりと骨付き肉をもったままさらっと言ってくるガウリイ。
しばし、そんなガウリイの台詞にあたしとゼロス以外が全員、顔をみあわせる。
「あらあら。気配くらいつかまないとだめよねぇ」
「ですねぇ」
にこやかに言うあたしとゼロスとは対象的に、
「というと何!?この建物からでたらどこに仕掛けられているかわからないトラップにひっかかるってこと!?」
何やら悲鳴に近い声をあげているマーリーン。
「というか、ガウリイ!気づいてたなら早くいえっ!」
「そうですよ。ガウリイさん。何で教えてくれなかったんですか!?」
未だに手にしているお肉を手にし、かぶりついているガウリイに抗議の声をあげているゼルとアメリア。
「いや、だって聞かれなかったし」
『・・・・・・・・・・・・・・・・』
さらっというガウリイの台詞にまたまた無言になる彼らたち。
一方で、
「お~ほっほっほっ!何も問題ないじゃないのよっ!
こんな雨の中、外にでることなんてないんだし!それより、ジョッキのおかわりもらえるかしら?」
完全無欠にマイペースな口調で、ビールジョッキのおかわりを要求しているナーガ。
「…あんた、どうじないねぇ~……」
そんなナーガの姿をみてあきれたような声をだしているトレマー、と名乗っていた男性だけど。
「お~ほっほっほっ!このナーガ様を甘くみないでよねっ!…ところで、リナ?
あの二人が関わっている、ということになると。
もしかして何かの組織とか、もしくは悪党の隠れ家とか関係してるのかしら?
ふっ。よめたわよっ!リナ=インバース!
あなた、この私に何もいわないのはそれらのお宝を独り占めにする気ねっ!」
びくくぅっ。
面白いまでにナーガの台詞にまともに硬直しているこの宿に元からいた客たち。
というか、自分達がそれらに関わっています。
とあからさまにいってるようなものよね。
これって。
ほんっと、人間って面白いわよねぇ。
ふふv
「ええ!?リナさん、本当に悪人が関わっているんですかっ!?どうしていってくれないんです!?
それなら、ここはやはり、正義の仲良し四人組、プラス姉さんとおまけ一人でこらしめないと!」
「アメリアさぁぁん、そのオマケ、というのはいい加減にやめてください……」
ナーガの台詞に、ぴっと指をこちらにつきつけて、片手を腰に当てて言ってきているアメリア。
そんなアメリアの姿をみて、溜息ひとつつき。
「…また始まったか……」
こうなったら誰にも止められないしな。
こいつは……
そんなことを思いながらも言っているゼル。
「え。えっと?いったいどういうことなんだい!?」
多少声をうわずらせながらリューシャがあたし達にと問いかけてくる。
「ちょっとまってくださいっ!リナさんっ!すると、何ですか!?
もしかして、お母様たちが、私にテストをかねて。
そのどこにいるかわからない悪人を見つけ出せということですか!?」
一方で顔面蒼白になりながらも、いまだにびしょぬれのままであたしにと聞いてきているマーリーン。
声がかなり悲鳴に近く悲壮な声になっているのが何とも面白いv
「あら?ただ。この近くにいると思われる、とあるゲリラの一味。
確か名前は【クラッシャーズ】だったかしら?ね。ゼロスv」
びくっ。
あたしのそんな問いかけに、なぜかびくり、と反応し。
「え。ええ。たしかそうですね。まああの人たちは僕達にとっては面白いのでほうってますけど」
などといいつつ、あたしのほうをみてくるゼロス。
というか…エル様…わざわざ僕にそういってくる…ということは……
……何かたくら…もとい、考えておられますね……
そんなことを思ってるけど。
「あら?あたしは別に何もたくらんでなんかないわよvそれはそうと、ゼロスちゃん?
何、そんな『あたしが何かたくらんでる』なんていうのかしらね~♪」
ぐしゃ。
なぜかその場につぶれるゼロスはおいとくとして。
「…いやあの?なんでその人、いきなり倒れたんですか?」
なぜか震える声でつぶやいているトレマーはおいておく。
「気にしないでください。いつものことですから」
「だな。あんたもこんな些細なことを気にしてたらやってられないぞ?
それより、リナがいうんだから間違いないだろうが。この近くに本当にあのクラッシャーズがいるのか?」
ゼロスがその場に倒れているのはいつものこと。
それゆえにあまり気にせずにさらっというアメリアに、
腕を組みながらもこの宿の女主人であるリューシャに問いかけているゼル。
玄関先の出入り口の横でなぜかつぶれているゼロスの姿があったりするけど。
ま、別にそれは関係ないしv
「さあ?どうかしら♪」
「というか、見つけ出さないとお母様たちに…お母様たちにぃ~……
そもそも、何でお母様たちはこの宿の周りにトラップを!?」
確認を込めて宿の外にお皿を一つ投げた後になぜか悲鳴に近い声をあげているマーリーン。
お皿が地面についたとたんに爆発が起こるものの、その音は雨音にと掻き消される。
「じ…冗談じゃねえっ!この宿から逃げ出すこともできないのかよっ!
今、この姉ちゃんがお皿を投げただけで爆発したぞ!?人間なら吹っ飛ぶぞ!?ありやっ!?」
ずざっと建物の中に後退きながら、額に汗をびっしょり流しながら叫んでいるアディス。
「何でオレ達がこんな目にあわないといけないんだ!?えっ!?」
「あら?それはあなたたちのほうがわかってるんじゃないの?」
くすっ。
びくっ。
にこやかにいうあたしの言葉に、面白いまでに動揺している彼らたち。
「?リナさん?いったい、それって?」
意味がわからずに首をかしげているアメリア。
「それより。まだまだ雨はやみそうにないしv食事の続きしましょv
ほら、ゼロス、いつまで寝てるのよv」
その場に固まる元々いたこの宿兼食堂の客たちをそのままに、とりあえず席にと戻る。
「それもそうだな。メシ、メシ~。あ、おばちゃん、メニューの追加たのむな~」
「おまえ。どうじないな……ほんっと」
あたしの言葉をうけ席にともどりながら、
その場に硬直しているリューシャにと追加注文を言っているガウリイ。
席につくガウリイをあきれてみつつもつぶやくゼル。
ま、ゼロスがいきなり倒れるのはいつものことだし。
ほんっと、あの程度で情けないわよねぇ。
たかがちょこっと精神世界面において彼にとかかる負担を少々増やしただけなのに。
これはもっと鍛える必要があるわよね。
ふふv
ガタッ。
席に座りなおすあたし達にと、
「それで?リナ?いったいあなたが独り占めしようとしているお宝はどこにあるのかしら?
いわないならこのナーガ様にも考えがあるわよ?
はやくいったほうが身のためよっ!お~ほっほっほっ!」
片手にジョッキを掲げたままで問いかけてくるナーガ。
「そういえば。姉さん。クラッシャーズ。って何なんですか?姉さんは知ってるようですけど」
ナーガの横に座り、きょとん、と首をかしげてナーガに問いかけているアメリアの姿。
和やかに席につくあたし達とは対照的に、
あからさまに殺気と戸惑いを含んだ視線を向けているあたし達以外の客たちの姿。
ちなみにすでに、あの二人はこの建物の中にこっそりと隠れて様子を伺ってるようだけど。
ま、別に皆に説明する必要もないしv
「おまえ、知らないのか?」
アメリアの素朴な疑問に驚いたようにといっているゼル。
ちなみに、ゼルもまたあたし達以外の客の反応に気づいて警戒を強めていたりするけども。
「いったい全体なんなんですか?」
「その手の世界ではけっこう名前がとおっている、メンバーもわからない密売組織だ。
たしか様々な組織などに武器や防具、挙句は人身販売をも担っている奴等だ。
そういえばかつてこのあたりにあいつらのアジトの一つがあるとか聞いたことがあるが……」
そんなゼルのつぶやきに、顔を見合わせている数名の人物たち。
というか、あたし達がこの建物に入ってきた時点でゼルがあの『白のゼルガディス』だ。
と気づかなかった彼らもうかつよねぇ。
ほんっとうにv
「ふっ。アメリア。こういう世界情勢はしっておかないとだめよ?それよりっ!!
リナ!!いったいお宝はどこにあるのよっ!早くいわないと……」
ぐびっ。
ドッン。
手にしていたジョッキ中のビールをすべて一気に飲み干しテーブルにと押し付ける。
そして、
「よめたわよっ!リナ!!あなたどうでもこの私にお宝をよこさないつもりねっ!」
「…って、誰もそんなこといってませんよ~?もしも~し?」
こちらが何もいってないにも関わらず、一人で勝手に決めて、ぴしっと指をつきつけてくる。
そんなナーガにむかって、ぽそっと突っ込みをいれているゼロスの姿。
「ふっ!そうはさせないわよっ!」
「…あ、姉さん、ちょっとま……」
ナーガが何をしようとしているのか瞬時に把握し、止めようと声をかけるアメリアだけど。
それよりも早く、
「
どごぉおっんっ!!
面白いちょっとした爆音と同時、ナーガの放った術が炸裂する。
バギャ…グシャッっ!!
ナーガの放った一撃によって、この宿を支えていた支柱ともいえる大黒柱。
それが壊され、建物全体を支える力が半減し、天井ともども落ちてくる。
ついでにいえば、この宿は木製。
ゆえにそのまま乾ききった室内すべてに炎が引火し崩れ落ち始める。
それと同時。
ザァァァ……
壊れた建物の隙間から雨が瞬時に入り込み、そのまま一気に建物そのものが炎と雨に包まれ瓦解する。
「って!?なっ!?」
「に…にげろっ!!」
アメリアやゼルはとりあえずナーガの行動を予測して二人して防御結界を張っている。
ゆえに、あたし達の周りには瓦礫などは落ちてこないものの。
他にいた客や、元々いた宿の従業員や女主人などが何やら叫んでいたりする。
今ナーガが使った術は、
普通の人間の魔力容量程度でも家一つくらいはかるく完全燃焼させるだけの威力をもつ。
ついでにいえば、一応ナーガはそこそこ魔力容量はあるほうなので威力的には面白いことになってるし♪
この場から、というか建物の外に逃げるのは不可能。
そう判断し、即座に地下室にと続く扉のむこうに飛び込む彼らたちの姿が見て取れる。
彼らが扉の向こうに飛び込むのとほぼ同時。
グシャァァッ…ン……
面白いまでに炎に巻かれ、
そして雨によりその炎が鎮火された建物を構成していた柱という柱が崩れ落ちてくる。
「お~ほっほっほっ!…って、んきゃぁぁぁ……」
くすっ。
みれば、お約束のごとくにナーガは瓦礫の下敷きとなり瓦礫の中にと埋もれていたりする。
毎度のことながら、このナーガって楽しませてくれるわよね♪
「姉さん……やっぱり、やっちゃいましたね。毎回自分の術で自分も巻き込まれてますけど」
簡単な防御結界を張っていたがゆえに、瓦礫からは逃れていたアメリアが、
そんなナーガの姿をみてしみじみといっているのもまた面白い。
ま、いつものことなのではっきりいって動じてないようだけど。
「というか。何でおまえの姉さんは、自分まで巻き込む技をつかうんだ?毎回、毎回……」
さらにいえば、俺たちまでおもいっきり巻き込む術をつかいまくるが……
その後半部分の台詞は何とかこらえながらも、あきれたようにつぶやいているゼル。
そしてまた。
「ああっ。オレのメシがぁぁ~……」
がくっ。
宿屋が壊れたことよりも、テーブルに届けられるはずの料理を気にしてがくっとうなだれているガウリイ。
「ま、そんなことより♪面白いもの発見~♪」
先ほどまで建物の中にいた。
というのに今は綺麗に瓦礫と燃えた柱のみとなった元宿屋。
そんな瓦礫の中に佇みながら、にこやかに軽く足元の瓦礫をふわりと浮かす。
雨に濡れてゆく瓦礫の下に垣間見えているのはちょっとした地下室。
そこには、びっしりと並んでいる槍や鎧。
つまりは、ちょっとした武器屋や防具屋の風貌。
元々は台所の奥にとある暖炉の近くにあった小さな扉。
そこが入り口だった場所。
地下室だったがゆえに、地上の破壊行為に影響されることなく残っていたりするこの現状。
「…なるほど。な」
むき出しになった地下室の姿をみて思わず苦笑まじりにつぶやくゼルに、
「え?いったい、これって??」
未だに理解していないアメリア。
そしてまた。
「お~ほっほっほっ!」それで?そろそろ出てきたらどうかしら!?
フェーン=ライドパークとカーシャ=ライドパーク!」
瓦礫の山と化しているその中で今だに瓦礫の中に埋もれたままで高笑いをしながら言っているナーガ。
そして、そのまま高笑いをしながら、瓦礫を頭にのっけたまま、その場に何事もなかったかのようにすくっと立ち上がり、
「そこにいるのはわかっているのよっ!
さあ!観念してこの私にもお宝の分け前をよこしなさいなっ!お~ほっほっほっ!!」
少し先にと見えている川に向かっていい放つ。
そんなナーガの台詞とほぼ同時。
ざばっ……
水かさの増している川の水が盛り上がり、そこから出現する二つの影。
そして。
「……お…お父さま…お母様…その格好って……」
迷彩服にと身をつつみ、頭にはちょっとしたヘルメットらしきかぶりもの。
ついでにいえば、体全体に水草をつけているのはお約束。
出てきた二人の正体に気づき、ぴしっと固まりつつもつぶやくマーリーン。
「あれ?カーシャさんじゃないですか」
「…新月のグールもいるぞ……」
二人の姿を認めてあまり動じることもなく、にこやかに話しかけているアメリアに、
疲れきった表情で溜息まじりにつぶやいているゼル。
「あの~?僕はいつまで雨をとめてればいいんでしょうか……」
そんなアメリア達とは対照的に、ぽそっと何やらいってきているゼロス。
「あら?別に誰も『雨をとめておいて』なんていってないわよv」
最も、雨を止めるというか壊れた建物ゆえに、
降り注ぐ雨をどうにかしなければそれはそれでお仕置き確定だったけど。
「お久しぶりです。アメリアさんたち。まさかあなたたちがこの場にいるなんておもってみませんでしたわ」
にこやかに、笑みを崩さずに川から上がりながらいってくるのはいうまでもなく、
マーリーンの母親でもあるカーシャだけど。
そしてまた、
「やあ。またあなた方にはお世話になったようですね。しかし。さすがですねぇ。
さすがはあのリナ=インバースさんだ。それにお連れの方々も。
気づいてなかったのは私たちの不詳の娘だけだったようですねぇ」
びくくぅっ!
にこやかにあたし達にと挨拶しながらいってくるフェーンの台詞にあからさまに硬直しているマーリーン。
「あら?だってここが彼らのアジトってわかっててよったんだしv」
「「やっぱりかっ!!」」
なぜかあたしの台詞に同時に突っ込みしてくるゼルとガウリイの姿があったりするけど。
「ええ!?それならそうと何で早くリナさん、いってくれなかったんですかっ!?
もしかして、この壊れた宿にいた人たち全員悪人だったんですかっ!?」
「って、アメリアさん…突っ込むところはそこですか?」
ものすごく残念そうに言ってくるアメリアにぽつっとつぶやきをもらしているゼロス。
「リ…リナさん。どうしてそれをもっと早くに……」
震える声でづふやくそんなマーリーンの台詞をさえぎり、
「ん?何だ、あんたきづいてなかったのか?ほら。あの宿の中にいた人たち。
何か雰囲気が普通と違う仕事をしてるな~。というくらいわかるだろ?普通?」
「わかりませんっ!」
「…まあ、たしかに。普通の一般人ではない雰囲気をもってはいたのは事実だが。
まさか…あの一味だとは……で?この瓦礫と化した下にとある地下倉庫が奴等の隠し倉庫か?」
きっぱり言い切るアメリアに、そんなアメリア達の会話を無視してかが見込んで地面を調べているゼル。
そんな彼らの会話は何のその、
「さあっ!観念してお宝のありかをいうのねっ!お~ほっほっほっ!!」
未だに雨の中、高笑いを延々と続けているナーガの姿が見て取れる。
ザァァ……
周囲には絶え間なく雨が降り続いてはいるものの、あたし達にはまったくもってあたっていない。
ゼロスが薄い膜をあたし達の上空に張り巡らせ、簡易的な傘代わりとなしている今の現状。
そんなナーガの問いかけというか台詞はあっさりと無視し、
「なるほど。さすがはリナ=インバースさんですわね。
それにしても、マーリーン。あなた結局何もわかっていなかったのね?」
「いけないなぁ。マーリーン。何が起こっているのか、というのもわからずに。
ただただ戸惑っているだけだったみたいだしねぇ。
行き当たりばったりなことしかやってなかったようだし。
これはやっぱり帰ってしっかりと鍛えなおす必要があるようだねぇ」
「ひょどげぅえっ!?いや、でもお父さ……」
悲鳴をあげ、どうにかこうにかかすれる声で抗議の台詞を言おうとしたマーリーンであるが、
その台詞は言い切るまえにさえぎられる。
「…というか。いつのまに移動したんでしょうか?この人たち?」
ふとみれば、さきほどまで目の前にいたはずの二人がマーリーンの横に移動しているのをみて、
きょとん、としながらつぶやいているアメリア。
マーリーンが言いかけるよりも早く、マーリーンの横に移動している彼女の両親。
そしてそのまま問答無用で彼女の両脇から、がしっとマーリーンの肩や腕をつかみ、
「さ。それじゃ、帰ろうか。マーリーン。リナさんたち。うちの不肖の娘がお世話になりました」
「マーリーン。せっかくお母さんたちがこの壊れた宿が彼らのアジトだと突き止めて、
あなたをこの場に送り込んだというのに。力試しも何もあったものじゃないわねぇ。
やっぱり、マーリーンには一人で何かする、というのは早いみたいね」
両脇からにこやかに、マーリーンに話しかけているフェーンとカーシャ。
そんな二人の会話をききつつ、
「ふっ。なるほど。な。
つまりあんたたちはこの場所がクラッシャーズのアジトの一つと突き止めたはいいものの、
宿屋もかねているこの場所で誰が客で誰が一味の仲間かわからなかた。
だから、娘であるそのマーリーンを腕試しをかねて送り込んできた。というわけか……」
一人、腕をくんで考え込むようにといっているゼルだけど。
「ええ。そのとおりですわ。でもうちの娘はまったくもって何もできませんでしたわねぇ」
「まったくだ。マーリーン、これからはびしびしとさらに鍛えるからな」
「え?え?あ、あのお父様、お母様……っ!!」
マーリーンの声が擦れてゆくのが何とも面白い。
「おやまあ。これは結構な食事ではありますねぇ」
そんなマーリーンから発せられる負の感情を楽しみながらもそんなことをいっているゼロス。
ちなみに、あたし達の周りのみにゼロスが張っている傘代わりの結界はまだ生きているので、
あたしの周辺にはまったくもって雨は一つも落ちてきてはいない。
最も、雨のほうからあたしをよける。
というのもあるにしろ。
「まあ、よしとしましょう!これで悪が一つ滅びたわけですしっ!」
「そういう問題か?」
何が何だかよくわかりませんけど、確実にいえるのは悪が滅びた。
ということですから何も問題ないですしっ!
そう思いながらもぴしっと言い放つアメリア。
そんなアメリアにあきれつつもつっこみをいれているゼル。
アメリア達のそんな会話をききつつも、
「それでは。私達は、これにて。お世話になりました。リナさんたち。さ、マーリーン。かえろうか」
言葉の終わりとともにマーリーンをがっしりと掴んだまま、
ずるずるとひこずるようにしてその場を歩き出す二人の姿。
「ひ…ひぃぃっ!」
ザァァァ……
マーリーンの面白いまでの何ともいえないか細い叫びは雨の音に掻き消される。
そのまま、ずるずると雨の中、ひこずられてゆくマーリーン。
「ちょっと!まだ話しはおわってないわよっ!お宝はどこ!?」
そんな彼らの姿を見送りつつも、未だに何やらわめいているナーガだし。
「というか。この瓦礫の下にあるんじゃないのか?」
「ええ!?ガウリイさんがまともなことをいってますっ!!」
「なるほど。それで雨が降り止まないのか」
すでにこの場に本来いたはずのクラッシャーズの一味たちは地下の収納庫にあけていた穴。
そこからすでにカーシャとフェーンが運び出しているがゆえにこの場にはいない。
術の応用で彼らを完全に動けなくして特定の場所にすでに飛ばしていたりする。
最も、そのままだと面白くないのでちょぴっと干渉して別の場所に移動するように仕向けてはいるけどv
「なあ?リナ?そこかしこにある金色のやつ、何なんだ?」
地下から溶け出すかのように広がっている金色の何か。
何となく、これって金に見えるというか、そう思えるんだけど。
何でこんなに広がってるんだ?
そんなことを疑問に思いながらもアメリアとゼルの台詞をさらっと無視してあたしにと聞いてきているガウリイ。
「そういえば。これって金みたいですね」
「…大方、おまえの姉さんが呪文つかったから、あれで溶けたんじゃないのか?」
かがみこみながら、そこかしこに広がっているそれをみつつ言うアメリアに、
溜息まじりにいっているゼル。
「あら♪ゼル、正解v」
このあたりに広がっている金色の塊はナーガが先ほど使った炎の術により溶けたもの。
金の融解度は千百五十℃。
ついでに一般的な火災現場の温度は八百℃から千二百℃。
さらにいえば、地下室はおもいっきり密室であったがゆえにその温度はさらに上昇していたりする。
ゆえに、地下に隠してあった金の延べ棒や金塊すべてが溶けて周囲に溶け出しているこの現状。
そんなアメリア達の会話を小耳に挟み、ぴたっと今の今までわめいていたナーガがわめくのをやめ、
がばっとそのあたりにしゃがみこむ。
そして、周囲の瓦礫などにくっついている金の残骸を確認し、
「わ…私のお宝がぁぁ~~!!!」
などとわめいていたりするけど。
「炎の術なんて使うから♪さってと。とりあえず、このまま。というのも何だし。
そろそろ日も暮れて暗くなってきてるしね~v」
未だに雨は降り止まないものの、周囲は夜の闇が落ち始めている。
このあたりに他に宿屋とかはなく、この一件のみ。
自分で作り出したり、簡易的な建物を出してもいいけど、元があったのだからそれを使わない手はないしv
おもむろにいいつつ、ふわっと指先に光りの玉を出現し、上空にと放り投げる。
それと同時。
かっ!!
あたし達がいる上空の中心にその光りの玉が停滞し、一瞬まばゆいばかりの光を放つ。
そのまぶしさにアメリア達が目を瞑ったその一瞬。
瞬時にして焼け落ち崩れ、原型をまっくたとどめていなかった宿が瞬く間にと再生される。
ついでに初めのときよりは多少居心地がいいように作り直していたりするのはそれとして。
「さってと。これで今晩の宿は確保だしvとりあえず食事の続きしましょv」
「…だから。リナ。おまえはなんでこんなに簡単に再生とかできるんだ?」
「ま、リナさんですし。それはそうと、食事を作る人がいないのでは……」
じと目であたしをみながらもいっくてるゼルの言葉をさえぎるように、あわてていい。
そして、先ほどまで張っていた雨をしのぐための結界を解除してあたしにと問いかけてくるゼロス。
「あら?そのあたりは問題ないわよv」
再生させると同時に、ついでに食べ物も作りだしておいたし。
ゆえに、再生された宿の中の一室のテーブルには所狭しと食事がすでに並んでいる状態。
「おお!めし、めし~~!!」
「おまえは。こんな状況なのにおどろくとかしないのか!?」
「お~ほっほっほっ!愚問ね!ゼルガディス=グレイワーズ!!
リナと関わっていたらこんなのは些細な日常的なことよっ!それより、私のお宝はどうしたのよっ!!」
「リナさん!さすがですっ!これで今日は野宿をして濡れずにすみますっ!」
「だから!アメリアも順応するなっ!!」
三者三様。
そんな会話をかわしつつ、ひとまず復活した宿の中にと入り、用意されている食事をとることにするあたし達。
このたびは、面白いのでここに立ち寄っただけなのであたしはほぼ傍観。
たまには傍観して楽しみながら他の存在の反応をみるのも面白いし…ね♪
「さあ!クラッシャーズのアジトにむかっていきましょぅっ!正義の仲良し組みの出番ですっ!!」
次の日の朝。
からっと晴れた空をみて、高らかに空に指を突きつけて言い放っているアメリア。
「こうなったらとめられないな…こいつは……」
はうっ。
そんなアメリアをみて溜息をつきながらつぶやいているゼル。
「お~ほっほっほっ!私のお宝、まってなさいよ~!!お~ほっほっほっ!!」
そんなアメリアの横では、いつものごとくに胸をそらせて高笑いをしながら言っているナーガ。
結局のところ、再生させた宿屋で一晩過ごしたあたし達。
壊れた建物などを再生させたりするのは別に誰でもできること。
ナーガは未だに『どうしてそんなことができるのかしら?』といっていたりするけども。
とりあえず、何事もなかったかのようにあたし達しかいない宿屋にと泊まり。
そして、今朝というか今。
昨日までの雨は綺麗にやんで、空気は澄み切っている。
溶けていた金はこの宿の内装に使ったがゆえにすでに残っていない。
「しかし、よく降ったな~」
昨日までの雨の影響で未だに川の水は増水しているまま。
だがしかし、だからといって別にわたれないことはない。
川の渡し船は未だに欠航しているが、空を飛ぶ。
もしくは橋をかければ何なく通れる。
宿の内装で余った金の残りは昨夜、宿を再生したと同時にこの川に橋を作るのに使っている。
金で出来ている。
と判れば騒ぐ人間などもでてくるので、
その上にコーティングとして別の素材をかぶせているがゆえに気づかないはずである。
人間というものは結構見た目に惑わされる生き物。
しかも、それが初めからあったかのように古ぼけたように見えるのならばなおさらに。
「お~ほっほっほっ!まってなさいよっ!私のお宝~!!お~ほっほっほっほっ!!」
「ああ。まってください!姉さんっ!!」
そこに橋があるのをまったく気にもとめずに駆け出してゆくナーガと。
そして、そんなナーガに続いて駆け出してゆくアメリアの姿。
さってと。
しばらくは、密売組織クラッシャーズをからかって楽しむとしますかね♪
ふふふふ♪
――雨の人情宿場編完了――
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あとがきもどき:
薫:はい。ひさかたぶりの漫遊記、番外編ですっ!
L:ちょっと!!
薫:・・・びくっ。
L:あたしがこの度、まったくもって活躍してないじゃないのよっ!!
薫:いや、あのでも…それはエル様が傍観される、ときめたのでは……
L:問答無用っ!!!!!!!!
薫:いやあのっ!?その手にもたれてるそのカプセルは何ですか!?
L:さあ?何のことかしら♪
パリッ…ン……
何かが割れる音……
薫:んきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……
L:さってと。何だかアメーバもどきがいるのはなぜかしら?
とりあえず、えい♪
バシュッ。
L:さってと。なぜか薫の変わりに出現したアメーバもどきは消滅させたし♪
まったく。あたしの漫遊、というわりにこのあたしが活躍してないっ!というのはどういうわけかしらねぇ。
ほんっと…もう少しお仕置きしとかないと……
まあ、それはそれとして。
それでは、改めましてv薫の変わりのエルですv
さてさて。今回はランナウェイガールのその後の雨の人情宿場編をお送りいたしました♪
このたびはまったもくってこのあたしが活躍していませんっ!ゆるせませんっ!
というわけで、さっきの人間をアメーバに変化させる小動物。
とある世界では、微生物ともいうけど。空気感染で煮沸消毒もまったくきかないv
これをひとまずランダムにふりまくとしますかね♪
それでは、また次回にてv
みなさま、ごきげんよう~vv
2007年10月5日(金)某日
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