まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
こんにちわ。
何やらおひさしぶりの漫遊記番外編の打ち込みをしている薫です……
ふときづいたら最新作の小説…どこいった?状態(まて
せめて30巻に突入するまでには今までの全てのお話を掲載したいものです……
さきに、前後編になるまえのお話…全て打ち込みするかなぁ(汗
でも。過去のぶんって、ルクミリだしたほうがたのしそーになりそうのもあるし。
そういうのは以前に考えたのとはかえてそちら優先にする…かも(まて)ですv
何はともあれ、いっきまーすv
今回は、SP20巻。「ランナウェイ・ガール」ですv
時期は、「ゲーム。スレイヤーズワンダホー」が終わった後。
シルフィールをサイラーグの町に送り届け。
んでもってナーガが合流するより前のお話です。
ではではv
ゆえに、登場人物は、リナ、ガウリイ、アメリア、ゼルガディス、ゼロスの五人v
では、いっきまーすv
※今回のこれは95Kあります。長いからいや、というひとは回れ右してください。
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エル様漫遊記・番外編 ~ランナウェイ・ガール編~
トリガルウの一件も完了し。
無事にシルフィールもサイラーグに送り届け。
ひとまずセイルーンに向かっているあたし達。
「…な…何をするんですか!?」
品物が崩れる音と、女の人の悲鳴とが、あたしたちの後ろの方から聞こえてくる。
あたしたちの方にまで転がってきている、道を転がるいくつものオレンジ。
そして、それらを振り向けばあわてて拾い集めている女性が一人。
彼女が手を伸ばすその前で、ブシュっとオレンジの一つが靴に踏まれてはじけてつぶれる。
やったのは、どこからどうみても、自ら『悪人です』といわんばかりの格好をしている男たち。
どうでもいいけど、どうしてみんな同じような格好するのかしらねぇ。
まったくもってひねりがないったら……
「おう。おばはん。あんた、誰にことわってこの商売……」
ごめしっ。
そんな彼が寝言を言い終わるよりも早く。
そんな彼にたいして、しっかりとみぞおちに一撃を叩き込んでいるアメリアの姿が。
そして。
「そこまでですっ!かよわき女性に無体を働く悪党ども!
しかも!食べ物を粗末にするなど言語道断!このアメリア=ウィル=テスラ=セイルーン!
と仲良し四人組はあなたたちの悪事を見逃すわけにはまいりませんっ!」
何やらその場にうずくまる男性にたいして、ぴしっとポーズを決めて言い放つ。
そんなアメリアの言葉にしばし呆然とする男たち。
そして、ふと我にともどり。
「何すんだ!?このガキ…!なめんなっ!」
などと吠えてつっかかっていこうとしているごろつきその二。
だがしかし。
「
どごがぁん!
すばやく術を唱えたアメリアの一撃がそんな人間を直撃する。
「……何か。ぜったいにアメリアのやつ…リナに似てきてないか?」
「……怖いことをいわないでください。ゼルガディスさん……」
そんなアメリアの行動をみつつ、ぽつりとつぶやくゼルにと何やらいっているゼロスの姿。
ほほぉぅ。
「あんたたち。どういう意味かしらねぇv」
にこやかに、そんな二人に微笑みかけるあたしの台詞とはうらはらに。
「……ま…魔道士…か?」
などとぽつりとつぶやくごろつきその三。
「さあ!悪人さんたち!
私達正義の仲良し四人組みが、正義のなんたるかを教えてさしあげますっ!」
そんな彼らに対し、きっとかまえつつも言い放つアメリア。
ま。
面白いからこのまま傍観してる。
というのも手だけど。
とりあえず…っと。
「さってと。あんたたち。オレンジの弁償代なんだけど。
ありがね全部とあんたたちの蓄えている全てのお金。
それでもって真昼間から役にもたたない人間松明か、もしくは人間炭にされるのとどっちがいい?」
ぽんっ。
とアメリアの肩に軽く手をおきつつ、男たちに言い放つ。
そんなあたしの台詞に。
「な…何だと!?」
「てめぇ!あんまり調子に……」
「どっちがいい?」
「もしくは。このまま魔獣たちのご飯にする。という手もありますけど?」
にこやかに、ゼロスがあたしたちのやり取りの間にそんなことをいってきてるけど。
「あ。それもいいわね♪もしくは人間つかったフルコースの料理とかv
魔族とか神族はよくやってるけど。人間はまだだし…ねぇv」
彼らをみつつ、にっこりとゼロスの言葉に同意するあたしの台詞に、
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
なぜか男たちはしばし沈黙。
「…いや。ちょっとまて。『よくやってる。』……って……」
ゼルが何やらいってくるけど。
「ま。リナだしなぁ」
それですませているガウリイ。
「…リ!?」
リナ。
という台詞をきいて。
ざっとあたしの容姿を確認してくるその男たち。
そして、なぜか。
『…ちいっ!』
栗色の髪に、小柄な魔道士姿……
まさか、こいつあのリナ=インバース!?
などとおもいながらも、小さく舌打ちし。
そのままアメリアの放った術によって多少こげている男を一人が背負い。
何やらしたうちしつつも、その場にほうほうお財布を投げ捨て。
なぜか必死になってこの場を逃げてゆく男たち。
「あ!まちなさいっ!」
そんな彼らをアメリアが追いかけようとするけども。
「それより。アメリア。オレンジ拾って、その人の保護ねv」
ほんとは、この女性には保護なんていらないけどv
ま。
それは別に説明することでもないし。
にっこりそんなアメリアに言い放ち。
そして。
軽くパチンと指を鳴らすと同時。
ふわっ。
道にころがっていた全てのオレンジが空中にと浮び。
そして空中にてちょっとした水の球を作り出し、その中で軽くあらっておく。
そして元のとおりに店の軒先にと並べておく。
なぜか、様子を伺っていた見物客がそんな光景をみて唖然としているそんな中。
「さってと。いきましょ」
完全に元のとおりに戻しておいたのちに、アメリア達を促すあたしの台詞に、
「…まったく。あまり目立つまねをしてくれるなよな……」
なぜか、あたしとアメリアをみつつ、つぶやくようにいってくるゼルに。
「どうやらこの人も怪我はなかったようですし。気をつけてくださいね」
にっこりと、先ほどの女性にむかって話しかけているアメリア。
「……何か嫌な予感……」
「同感です……」
そしてまた。
その女性のもつ雰囲気というか力を感じ取り、そんなことをいっているガウリイとゼロス。
あら。
二人とも、よくわかってるじゃない。
ま、まだアメリア達は気づいてないけど…ね。
ふふv
「先ほどはありがとうございました」
かけられた声に、アメリア達が振り向いたのはとある食堂の一角。
午後の軽いおやつをかねて、あたし達はこのあたりのお店をはしごしている真っ只中。
あたしとアメリア。
そしてガウリイとゼルとゼロスがそれぞれ二つの席にと別れ座っているそんな中。
あたし達が座っているテーブルのほぼ中央の向かいにたたずんでいるのは四十前後の女性が一人。
真ん中分けの黒い髪は、そのところどころがほつれており。
一見したところ、何やら疲れている「どこかの主婦その一」といった雰囲気をかもし出している。
きちんと洗濯しているようではあるが、着古した感じのある普段着。
といってもそれもそのように見せかけるようにしている特注の服だったりするのはそれはそれ。
そして見た目、何かを悟ったようなあきらめにもにた笑みを浮かべつつ、
あたし達に話しかけてきていたりする。
見た目、「日々の生活につかれている主婦その一」で完全にまかり通る。
アメリアとゼルの目には、細身なのだが、その全身に漂っている雰囲気…というか、
そのように感じさせるようにしているその雰囲気をうけ、やつれているように見えていたりする。
「?誰だっけ?」
などとのほほ~んといいながらも、その内面の実力を感じ取りながら。
多少警戒しつつ、だがしかし、それを悟られないようにしていっているガウリイに。
「あ。さっきの」
「ああ。さきほどの。何かごろつきさんたちに絡まれてた果物やの人間さんですよ」
アメリアと、ゼロスの声はほぼ同時。
言うまでもなく、先ほどからまれていた果物屋の女性なんだけど。
「いえ。当然のことをしたまでです!」
そんな彼女に対して、きっぱりとアメリアが言い切ってるし。
「いえ。あなたたちに助けていただかなかったら一体どうなっていたことか……」
いって彼女はその場につったったままもじもじしながら沈黙する。
まあ。
一応、周りの人たちには普通のどこにでもいる人。
と思われてるからねぇ。
彼女…というか、彼女の家族は。
「ま。たったままでも何だから。すわれば?」
「――…はい」
あたしの言葉をうけ、そのまま無言であたしとアメリアが座っているテーブル。
すなわち、アメリアのよこにと腰をおろしてくる。
そして、あたしとアメリアを交互にみながらしばし沈黙し。
「どうやら。何か事情があるようですけど。私達に話しがあるんじゃないんですか?」
などと、そんな彼女に問いかけているアメリア。
まあ。
こういうこと。
すなわち、トラブルに関しては、アメリア。
すぐに勘が働くからねぇ。
自分が関わりたいがゆえにv
そんなアメリアの言葉をうけ。
ペコリと頭を下げ。
「……申し送れました。わたしはカーシャ=ライドパークと申します。
隣にあるプラミズの村で小さな果樹園を営んで生計を立てているものです」
「……ライドパーク?」
…まさかな。
そんな彼女…すなわち、ライドの自己紹介をうけて、小さくつぶやいているゼル。
ま。
ゼルは彼女の夫。
すなわち、その人間のことを噂に聞いたことがあるからねぇ。
ガウリイも聞いたことがあるはずだけど、忘れてるし。
「あ。私はアメリアといいます。で、こっちがリナさんに、ガウリイさんにゼルガディスさん。
でもって、おまけでゼロスさんです」
そんなカーシャに自己紹介を改めてしているアメリア。
「…アメリアさん…おまけって……」
アメリアの今の説明に、ゼロスが何やらづふやいてるけど。
ひとまず無視。
そして、こちらも同じくそんなゼロスを完全に無視し、ぽつりと視線をテーブルの上にとおとし、
「……実はその……助けていただいた方々にこんなことを申し出るのは……
その…大変に図々しいことと重々承知してはいるのですが……
どうしても…お力をお貸しいただきたいことがあるのです……」
弱々しくもいってくるカーシャ。
「もしかして。さっきの人たちのことですか?」
問いかけるアメリアの台詞に、ゆっくりと首を横にふり、
「……私には……今年十五になる、マーリーンという娘がいます……
手塩にかけて大事に育てたつもりだたのですが……
退屈な暮らしに嫌気がさしたものか……悪い仲間たちと付き合うようになって……
……とうとう、先日。家をでていってしましました……」
「家出か。」
そんなカーシャの言葉に、よこのテーブルでゼルがぽつりと見もふたもなくいってるけど。
「そんな。娘さんには話しをしたんですか?」
家出。
というのとは違うけど、なかなか戻ってこない姉のことを思いながら、
問いかけるアメリアの台詞に、
「それが……会うことができませんで……話し合う機会すらも得られないんです……」
いって再びうつむくカーシャ。
というか。
このカーシャの子供にも言い分はあるんだけど…ね。
ふふv
「つまり。あんたの娘さんが会ってくれない。というか。
その悪い仲間たちによって娘と会わせてもらえない。ということか。」
カーシャの台詞に、一人納得したようにつぶやくゼルの台詞にこくりとうなづき、
「……そうなると。わたし一人の力では……どうしようもありません……
ですからその……つまり、アメリアさん達には、
わたしと娘が会話する機会をつくるお手伝いをしていただけないか……と。
もちろん。些少ながらお礼はさせていただきますので……」
いって、テーブルに頭をつけんばかりに頭を下げてくるカーシャ。
「わかりました!娘さんのことはこの私達、正義の仲良し四人組に任せてくださいっ!
かならず、娘さんを悪の道からすくいだしてみせますっ!」
「…ちょっとまて。まだ俺たちは、手伝うとも……」
「きっと。娘さんは、その悪い仲間というひとたちにだまされているか。
もしくは、脅されているのにきまってますっ!」
ゼルの言葉を完全に無視して、自分の世界に浸りつつ、きっぱりはっきりいいきるアメリア。
「ま。別にいいんじゃない?どうせ急ぐ旅でもないし」
ひとまず、食後のハーブティーをのみつつ、にっこりというあたしに対し。
「あ。ありがとうございますっ…ありがとうございます……」
いって再び、カーシャは頭を深々と下げてくる。
というか。
そのほうが楽しいしね。
本当は、彼女一人でもどうとでもなる相手…なんだけど。
それはアメリア達には内緒v
ふふ♪
森に立ち込めているのは、草木の青い特有の匂い。
獣と鳥と、虫たちの鳴き声。
そして、草や木の葉の揺れる音。
「ごめんなさいね。あと少しですから」
足音を、かさりともたてずに草の中を歩みつつ、申し訳なさそうにいってくるカーシャ。
「…というか。それはいいんだが……」
そんなカーシャに何といっていいものか、口ごもりつつも何やらいっているゼル。
アメリアは別に何ともおもってないようだけど。
ちなみに、ゼルが戸惑っているのはカーシャの格好がゆえ。
カーシャの格好はといえば、黒と
顔を草の汁と墨とで緑と黒に染めていたりする。
その手には刃の銀色を墨で黒く塗りつぶした、肉厚、片刃の剣が一振り。
いうまでもなく、俗によくいわれている迷彩色もどき。
「…何か妙に似合ってるな……」
そんなカーシャをみながらも、ガリウイがぽつっとつぶやいていたりするけども。
何か、この格好で疲れたような笑みを浮かべられたら……
『これ以上頃させないでよね。こっちもうんざりなんだから』
というように感じるのは…気のせいか?
などとゼルが思っていたりするのはそれはそれ。
事実、そのとおりだし。
「あ。あのぉ?カーシャさん?その格好って…一体?面白い格好ですねぇ」
そんなカーシャににこやかに問いかけているゼロス。
そんなゼロスの問いに。
「――あらまあ」
多少もじもじしながらも。
「ちょっと似合ってなかったでしょうか?いえね。これ若いときに着ていた服なんですよ。
まだ着られるかどうか心配だったんですけれどね。
そんなにじろじろと見ないでくださいな。恥ずかしくなってしまいますよ」
かるく手を顔に当てつつも、そんなことをいっているカーシャ。
「・・・・・・・・・・・・」
若いときに着てた…って……
ゼルがそんなことを思いつつ、何やら無言になってるし。
そんなゼルの心情にはまったく気づかずに、にこやかに。
「けど。こうしてこの服を着ていると。思い出しますねぇ。」
ずんずん進もうとしているアメリアを手で制し、草にまぎれて張られていた、
細い糸を使ったとある罠を手際よく解除しながら、
「若い頃……わたしがまだ。『ラルティーグのハイエナ』とか呼ばれていたときのこと」
『……何か聞いたことがあるような……』
そうづふやく、カーシャの言葉に、異口同音に声を重ねているゼルとガウリイ。
まあ。
ガウリイもこれでも一応傭兵家業してたから。
そのあたりのことは聞いてるからねぇ。
……きちんと覚えているかどうかはともかくとして。
ゼルはゼルでかつての経験上。
過去の話などもレゾに命じられていたとき、情報収集の最中に聞いていたりするし。
「?ライオンとかひょうじゃないんですか?」
そんなカーシャの台詞に、どこか違うところを疑問に感じ問いかけているアメリア。
「いやですねぇ。昔のことですよ。昔の」
アメリアの台詞に、ぱたぱたと手をふりながら立ち上がり。
そして、あたし達を促すべく、はたはた手を振ってくるカーシャ。
その動きをみて。
「……その動き……」
まさか…あの……伝説の……
とかゼルが思っていたりする。
ちなみに、今のカーシャの動きは。
知っている人は知っている。
一般的な、【トラップ解除。前進可能。】という合図。
人間というのは、面白いことに見た目である程度の第一印象をきめ。
その思い込みによって思考を惑わされたりする。
いい例が、あたしが普通の格好をして歩いていただけで言い寄ってくる男達が後を絶たない…
というような。
「ですが。そういう経歴ならば。町で絡んできていたごろつきさんたち四人など。
どうにでもなったんじゃないんですか?手足の一本くらい消滅させても問題ないでしょうに」
そんなカーシャに対してにこやかに話しかけるゼロスに対し、
「え。ええ。たしかに。別にああいう人たちの手足がなくなろうが関係ないでしょうけど……
ですが、屋台をひっくりかえしただけの人にそこまでするのは、
少しかわいそうな気がしますから……」
「さらっとすごいことをいってるな。この人……」
カーシャの台詞に、ぽつりとゼルがつぶやいてるし。
くすっ。
「カーシャさんは、若いころから正義に目覚めていたんですね。
でも、そういう人の娘さんをかどわかすなんて言語道断ですっ!」
「…どこをどうとったらそ~いう解釈になるんだ……」
きっぱりはっきり言い切るアメリアの台詞にため息まじりに再びづふやくゼル。
「ま。あそこで別に何をしようと。関係ないとおもうけどねぇ。あたしは」
「いえ。ですけど。あそこでもし、昔の自分に返ったりしたら、
それこそご近所付き合いも難しくなってしまいますから」
あたしの台詞に、笑みを浮かべていいきりながら。
そして。
「あ。みなさん。すみませんけどそろそろ頭を低くしてくださいな。そろそろ見えてきますので」
すでに幾度もやってきたことがあるがゆえに、あたし達にといってくるカーシャ。
「何かこの先に城のようなものがみえるなぁ」
カーシャの言葉につづいて、のほほんといっているガウリイ。
「…ガウリイさん。あいかわらずよく見えますね」
そんなガウリイに感心した声をだしているアメリア。
「ええ。昔の砦らしいんですけどね。今はネルローネ・ファミリーの本拠地になってるんですよ」
『……ネ!?』
さらっというカーシャの言葉に、思わず顔を見合わせて短く叫ぶアメリアとゼル。
ネルローネ・ファミリー。
このあたりではなぜか名を馳せている、一応巨大犯罪結社といわれている組織。
あたしからみれば、巨大でも何でもないんだけど。
「…もしかして。あんたの娘のつきあっている悪い仲間というのは……」
恐る恐るゼルがそんなカーシャに問い返してるけど。
「ええ。そこのかたたちです。…あら?もしかして、そういえばわたし。
まだそのことをあなたがたに申し上げていませんでしたわね。
いやだわ。わたしったら。うふふ」
そんな重要なことをそれで片付けられてもこまる(んですが)(だが)。
カーシャの台詞にまったく同じようなことを心でおもっているアメリアとゼル。
だがしかし。
「なるほど!何の穢れもない娘さんを悪の道に捉えるとは!まさに。
噂どおりの極悪非道な組織のようですね!これもきっと天のお導き!
私達正義の仲良し四人組に与えられた天命ですっ!」
逆に一人さらに張り切りだしているアメリアの姿が。
「…そういう問題か?というか……普通、そんなやつらに喧嘩吹っかけようとするのか?」
親というのもは、子供がからんだらよく無茶なことをする。
というのは知っているつもりだが……
そんなアメリアとは対照的にぶつぶつつぶやいているゼル。
くすっ。
「で?どうする?あの右側の塔のあたりに呪文でも叩き込む?」
にっこりと問いかけるあたしの台詞に。
「ええ。そうですわね。ここからみて右側の塔の下から二番目の窓に、
威力の高い
にこやかにさらっといってくるカーシャ。
そんなあたしたちの会話をききつつ、
「…ここからだとゴマ粒くらいの大きさにしかみえないぞ。
……普通、できんとおもうぞ…そんな技術。……まあ、リナなら絶対に可能だろうが」
ゼルが何やらいってるけど、それはそれ。
「塔自体は、老朽化が激しくて、今は使われていないらしいんですけどね。
あそこの内部で
それで、わたしが集めた情報によりますと。その崩れ落ちる下のあたりに、
あちらの人たちの生活施設が密集しているはずらしいんですよ。食堂とか。
ちょうどこの時間に塔を崩せば、
あの人たちの戦力の六割がたは減らせるんじゃないかとおもうんですよ。
素敵なアイデアだとおもいません?」
「それはとても楽しそうなアイデアですねぇv」
にこやかに、さらっというカーシャの意見に同意しているゼロスだし。
「…ちょっとまて。その作戦だと。もしその下にあんたの娘がいたら危険なんじゃぁ……
というか。そもそもその情報はどこから……」
あたし達。
というか、あたしとゼロスならばやりかねない。
と思っているらしく、ゼルがあわてていってくる。
別にやってもどうってことないでしょうにねぇ。
それくらいv
「あらあら。心配してくださるんですね。でも大丈夫です。
情報は信頼できる情報屋さんからのものだし。
それによると、この時間。娘はあの区域にはいないはずですから」
「なら問題ないですね!さ!リナさん!さくっといきましょうっ!」
「ってまてぃっ!アメリア!お前まで賛同してどうするっ!」
「正義が守れればそれでよし。ですっ!」
「そ~いう問題じゃないだろうがっ!」
「はいはい。二人とも。夫婦漫才しないの。とりあえず。あそこに炎を叩き込むから。
あとは、アメリアやゼルは、時々あちこちに攻撃呪文をしかけたり。
石人形を作り出して暴れさせてみたりとかすればいいとおもうわよ。
でもって、ゼロスは多少遊んでもいいわよ?」
何やら言い合っているアメリアとゼルの言葉をさえぎり、にこやかにいうあたしの言葉に。
「ゼロスのやつの遊びって…洒落にならなくないか?」
なぜか多少顔色を悪くしていってくるゼル。
「あら。別にどうってことないわよ。どうせ相手は悪人たちなんだし。」
そんなゼルに言い放ち。
そして。
ぽいっ。
軽く指の先に炎の球体をつくりだし、塔のほうにむけて投げ放つ。
と。
ごんっ!
ごががっ!
どすぅぅんっ!
何やら、爆発、崩壊といった音響が周囲にと響き渡り、そして。
周囲に立ち込める、ちょっとした土煙。
その煙に紛れ、カーシャはすばやく行動を開始してこの場から立ち去っていたりする。
「それでは。僕もちょっとぱかりv」
あたしの許可がでたこともあり。
嬉々としながらも、ふいっとこの場から掻き消えているゼロスがいたりするけど。
ま。
ゼロスは放っておくとして…と。
とれと同時にあたりの地面を利用していくつかの石人形を作り出し、
それらもそのまま塔のあるほうにと移動させておく。
「さって。それじゃ、いきますかv」
なぜか未だに何やらいいあっているアメリアとゼルはそのままに。
ガウリイと二人、いまだに土煙がたっている方向にと進んでゆくことに。
「――何ものだ?」
天から降り注ぐ銀光の残像。
いうまでもなくそれらはあたし達のほうにたどり着くまえに霧散していたりするけども。
それをみてなぜか多少驚きながらも声をかけてきているのは、
一振りの長剣をもっているとある女性。
「あら。別に誰でもいいじゃない♪」
相手が誰だかわかっているがゆえに、わざと微笑みながら返事を返す。
そんなあたしの台詞に。
「目的は?」
などと警戒を崩さずに問いかけてくるこの女性。
実は、この女性こそがカーシャの娘だったりするんだけどv
「そういうあなたは何なんですか!?みたところまだ若い女の子のようですけど!
遅くはありません!今すぐに改心して悪の組織から足を洗うのですっ!」
少し遅れてついてきたアメリアが、そんな彼女に対してぴしっと指をつきつけて言い放つ。
くすっ。
「あら。アメリア。この子がカーシャの娘のマーリーンよ。マーリーン=ライドパーク♪」
そんなアメリアにひとまず説明するあたしの台詞に、
「…何者だ?なぜ…なぜ私の名前を?!」
なぜかこの程度のことであきらかに動揺してくるこのマーリーン。
「なるほど。たしかにこの姉ちゃんとあの人の気配似てるなぁ」
などとのんびりとそんなことをいっているガウリイ。
「…この子が…か?」
目の前にいる女剣士を目にして、ゼルが彼女を確認しつつもつぶやいてるし。
マーリーンの見た目は十五・六歳。
短くまとめている髪は黒。
そして。
「俺たちは、カーシャという女性に頼まれたんだ。娘のあんたと話がしたいから手伝ってくれって。」
ゼルが腕をくみつつも、マーリーンに向かっていったそのとたん。
がくっ。
がくがくっ。
がくがくがくがくっ!
「おかっ!おかっ!!?おかかかかかぁさまがきていらっさるのか!?ここにっ!?」
面白いまでにがくがくと全身を震わせつつもどもなりがら視線をさまよわせるマーリーン。
「?カーシャさんならきっと。そのあたりにいるとおもいますけど?」
そんなマーリーンの反応を多少疑問に思いつつも、丁寧に説明しているアメリア。
そんなゼルとアメリアの台詞をうけ、
「う…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
面白いことに、手にもっていた剣をそのまま放り出し、草むらの上にとうずくまるマーリーン。
「?」
「…おい?」
そんな彼女の様子に首をかしげるアメリアに、戸惑いながらも問いかけているゼル。
「?なあ?リナ?何でこの姉ちゃん。こんなにおびえてるんだ?」
理解しておらず、あたしにのんびりときいてきているガウリイ。
「ああ。カーシャが来てるからよ」
とりあえず嘘ではない回答をガウリイにはしておくとして。
そんなあたしたちの会話をさえぎり、
「き…きさまらぁ!何でそんなことをしてくれたんだ!?
にくいか!?そうか、そんなにわたしがにくいか!?ちくしょうっ!いっそ殺せ!今すぐにっ!」
面白いまでに泣き叫びながらもいってくるマーリーンの姿。
「?あの?いったい……」
反応がおもっていたのとは異なっているがゆえに、問いかけるアメリアの台詞に続き、
「?とりあえずおちつけ。いったい何だっていうんだ?」
この怯えようは…まさか…な……
あのカーシャがあの当人だ。
というわけではないだろうし。
などと思いつつも、アメリアに続き問いかけているゼル。
くすっ。
「何ってことをしてくれたのよっ!あなたたちっ!あなたたちはいいわよっ!
お母様のことをしらないんだからっ!必死でお母様のもとをとびだして、
組織にかくまってもらっていた私の気もしらずっ!」
面白いまでに涙目になって叫ぶマーリーンの言葉に思わず笑みがもれる。
「かくまってもらっていた?それって……?」
戸惑いながら問いかけるアメリアの台詞に、
「またはじまるのよっ!あのお母様の手による教育の日々がっ!
動物とふれあう情操教育という名目で眼力だけでヒグマを退散させる訓練やら、
自然とのフレアイ。という題目で冬の山中十日間サバイバル訓練とかやらされる日々がっ!」
何やら泣き声でそんなことをいってくるこのマーリーン。
というか、その程度。
どうってことないでしょうにv
「わかるかっ!あんたらにそんな日々が続くというのがどういうことかっ!」
「というか。その程度、些細なことよねぇ」
「リナの側にいたらそんなの日常茶飯事だぞ?」
「まあ。ガウリイの言葉にはものすごく同意するがな」
「ですね」
さらっというあたしの台詞に、なぜかしみじみというガウリイ・ゼル・アメリアの三人。
「まあまあ。そうはいいますけどね。えっと、マーリーンさん。でしたっけ?
逃げてばかりでもどうにもなりませんよ?逆にそれは被害が拡大するのでは?」
うんうんとうなづいている三人とは対照的にそんこなとをいっているゼロスの姿。
「?ゼロスさん。やけに拡大する。というのを誇張してません?」
ゼロスのそんな台詞をうけて、アメリアがふと問いかける。
「リナさんとのがまさにそれ。ですからねぇ」
『なるほど』
ほほぉぉう。
「あんたたち、一度死んでみる?」
まあ、殺してもまた生き返らせればいいし。
もしくはしばらく性根を入れ替えるために死んだままで肉体のみを生かせておいて楽し…もとい、
修行させてみる。
というのも手よねv
「「「「え…遠慮します……」」」
なぜかきっちりと、アメリア、ゼルガディス・ガウリイ・ゼロスの声が一致する。
そんな会話をしている最中。
「――いたぞ!」
「あそこだ!」
「殺れ!!」
何やら声がしてくるし。
みてみれば、崩れた建物のほうからこちらに向かってかけてくる組織の男達。
その数たったの五・六人程度。
「すいません。今はどうやら取り込み中のようなのでv」
にっこりとゼロスがいい錫杖をかるく一振りすると同時。
『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!』
何やら悲鳴らしきものが周囲にと響き渡る。
たかが足元から噴出したお湯に触れた程度で情けない……
「…ゼロスさん。今何やったんですか?」
「いえ。別に。ただこの地下にあるちょっとしたお湯を表にだしただけですよ?」
「ちなみに、温度はどれくらいなんだ?」
「さあ?あ、でも触れれば人間程度なら瞬時にゆであがりますよv」
「「・・・・・・・・・・・」」
にこやかにいうゼロスの言葉になぜか無言になるアメリアとゼル。
そしてまた、
「んで?リナ?この姉ちゃんどうする気だ?」
別にいつものことだし。
そんなことを思いながらもあたしに聞いてくるガウリイ。
「あら♪面白そうだし♪カーシャからの自立を含めて協力する予定よv
マーリーン。あなただってカーシャに怯えてくらす。というのは面倒でしょ?
なら手っ取り早く力をつけて対等になればいいんだしv
もしくは、カーシャさんのだす試練を乗り越えて認めさせればいいわけでv
ねvそうよねvカーシャvv」
にこやかにいいながら、横手にある森の草木のほうにと視線をむける。
なぜかそれに気づいていたのは、あたしのほかはゼロスとガウリイだけのようだけど。
アメリア達にいたっては、そこに人の気配すら感じていなかったりするこの現状。
まったく。
普通わかるでしょうにねぇ。
アメリア達にも特訓ひつようかしらねv
あたしの言葉に応じて茂みが動く。
正確にいうならば、茂みに擬態しているそれが。
ゆっくりとそれは立ち上がり、にこやかな笑みをうかべ、
「あら。さすがですわね。リナさん。わかっていましたか。
でも、そうですわね。たしかに。この子に対しては今まで甘やかしていましたし。
試練を与える。というのはいい手かもしれませんわね」
「って、…お…おか~さま……」
にっこりと笑みを浮かべるそんなカーシャの表情になぜか凍り付いているマーリーン。
「あ…あの?話し合いはいいんですか?」
そんなカーシャの表情に多少固まりながらも、恐る恐る問いかけるアメリア。
「え?ああ。そうでしたわね。それじゃ、マーリーン」
「は…!はいっ!お母様!」
カーシャに呼びかけられて、直立不動となり固まっているマーリーンが何とも面白い。
「始めましょうかね。話し合いを」
いいながら、カーシャはにこやかに手にした剣をマーリーンにむけて構えなおす。
「って、ちょっとまてっ!」
そんなカーシャの姿をみて思わずまったをかけているゼル。
「何ですか?ゼルガディスさん?」
「『何ですか?』じゃないとおもうんだが?どうしていきなり『話し合い』で剣を構えるんだ?!」
そんなゼルの指摘に、少し驚いたかのようにカーシャは小さく息をのみ、
「…そう。そうよね。いきなり母さんの得意な剣で勝負。なんていうやり方がまちがっていたのよね」
「…そういう問題じゃないと思うんですけど……」
そんなカーシャの言葉に突っ込みをいれているアメリア。
「なるほど。エ…もとい、リナさんが首をつっこまれたわけ。よぉぉくわかりました……」
そんな様子をみながら、ぽそっとつぶやいているゼロス。
「ごめんなさいね。マーリーン。母さん。今やっとわかったわ。
自分の何が間違っていたのか。…じゃあ、あなたの好きな武器を選びなさい。それで勝負よ」
「あ…あのなぁ……。そもそも、会話せずになぜに戦う?」
リナが首をつっこんだわけ…今さらながらにわかったぞ……
そんなことを思いながら、コメカミに手をあててあきれたようにつぶやくゼル。
「え?ですけど。『親子の対話に言葉はいらない』といいますし……」
「そうそうv」
「「…それは、リナ(さん)と(あんた)カーシャさんのみの言い分かと……」」
カーシャの言葉に同意するあたしに、なぜか視線をむけて異口同音でいってくるアメリアとゼル。
まったく。
「あら?でも別に言葉とかかわさなくてもいいたいこととかはわかるんだしv
別にこういうのは力で解決うんぬん。というのでなくてたんなるスキンシップだしv
火山の火口の中に放り込んだりするのも楽し…もとい、ちょっとしたスキンシップだしね」
「あら。それいいですわね。是非ともこんど、マーリーンにも火山の中に……」
「…って、まていっっ!」
「…って、まってくださいっ!!」
「…というか、それ、普通の人間ならば絶対に死ぬぞ……」
にこやかにいうあたしの言葉に、ぽんっと手をうち同意してくるカーシャ。
そんなあたしたちに対してなぜか同時に突っ込みをいれてきているゼル・アメリア。
そしてガウリイの姿が。
「まあまあ。ひとまずは普通に言葉での話し合いをされて。それから。というのでどうですか?
リナさんはともかく。死んだ人を生き返らせたりする。というのは滅多とできないですしねぇv」
さらっと何気ないようにゼロスがいってくるし。
「それもそうですわね。それじゃあ、まずは先に言葉での話し合いをして…からでいいかしら?
マーリーンもそういうのがいいの?」
「そういうのがいいです。お母様。むしろ言葉だけのほうがありがたいです」
おもいっきり不満そうにいうカーシャに対して即答しているマーリーン。
「…仕方ないわねぇ……」
即答してきたマーリーンの言葉にため息まじりにつぶやく。
そんな会話をしている最中。
「何を悩んでいるのかは知らんが……」
何やら割り込んでくる声が一つ。
多少なぜか声に怒りが込められているけど。
「もう考える必要はないぞ」
振り向いたその先の茂みの外には、紳士然としたような身なりの男性。
その後ろにたかが数十人程度の剣を構えている男達の姿。
その姿をみて身構えているゼルガディスに、そして。
「あなたたち!さては悪人ですねっ!」
みたままのイメージでそう言い放ち、
「リナさんに酷い目にあわされないうちに改心してまっとうな道をあゆむんですっ!」
「あらvアメリアちゃんvどういう意味かしらねぇv」
「…リナさん。目が怖いですぅ……」
びしっと指をつきつけて男達に言い放つアメリアににっこりと微笑みかける。
「…ネルローネさんっ!」
その姿をみて叫んでいるマーリーン。
「マーリーンのお身内かな?」
ねちりとした声でそんなことをいってくる。
「お初にお目にかかる。私はクラマッド=ネルローネ。このファミリーを束ねるもの……」
まったく……
「邪魔v」
ポシュv
さってと♪
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
なぜか無言になっているアメリア達はひとまずおいとくとして。
カーシャたちはといえば。
「でもねぇ。マーリーン。身近に目標になる人がより成長できるんじゃあないか。
って母さんはそう思うのよ」
ほっぺたに片手をあてて小首をかしげていうカーシャ。
「ほら。リナさんのお仲間さんたちをみてごらんなさい。
きっとリナさんっていうかたをみているからこうやって少々のことにも動じないようになってるんでしょうし」
言いながらカーシャが指差した先にはちょっとした虚無の空間が広がっていたりする。
何やらいちいちどうでもいいようなことを言ってくるようなので、
ちょぴっと男達がいる場所に虚無の塊をなげただけだ。
というのに。
「…あああ……また……」
「…たしか。あの空間って草木も一本も生えない…とかいいましたよね……」
「…というか…あれってたしか『あの』力だろう?…あっさりつかえるリナって……」
なぜかその空間をみて頭をかかえてうなっているゼロスに。
呆然としながらつぶやくアメリア。
そして、リナってやはりあの金色の王とのかかわり…絶対にあるような気がする…
などと思っているゼルガディス。
ま、そう呼ばれているのはあたしそのものだし。
別に説明したらしたで面白くないから彼らが気づくまではいわないけどねv
なぜかぽっかりと開いたちょっとしたクレーター。
そこから少し離れた場所にて会話しているこの母娘。
ちなみに、話が長くなりそーなのであたしとしては椅子を創造りだしてソレに座っていたりする。
アメリア達はそこいらにあるきりかぶにと腰かけて様子伺いしているようだけど。
「母さんがあれこれやらせたのも、みんなあなたのことを考えてるのことなのよ?
きっといつか貴女にも謎の秘密結社に攫われて自力脱出したり。
偶然国家的秘密組織の存在を知って付けねらわれたりする……そんな日がやってくるのよ。
もしそうなっても、あわてたりしないように日ごろから訓練しなくちゃあ」
傍らではカーシャがマーリーンに至極もっともな説明を踏まえて話し合い。
「いえ…たぶん、そういう日はこないと思います。お母様」
「あら。何をいってるのよ。この子は。母さんがあなたくらいの年頃にはね。
小さいころ母さんをサラって育てた謎の組織を壊滅させて逃げ出したりる
素手でしとめたヒグマのお肉を食べて生き延びてたりしたのよ?」
硬直しながら答えるマーリーンににこやかに答えるカーシャ。
「…ずいぶん。カーシャさんって波乱万丈な生き方されてたんですね」
「というか。普通じゃないだろ……」
そんな会話を小耳にはさみ、ぽそぽそと会話しているアメアリとゼル。
ガウリイはといえば、話が長くなりそうなのでこくり、こくりと居眠りをはじめてるし。
いつものこことはいえ……ま、別にいいけどね。
「そ…そんな過去があったんですか!?お母様!?初耳なんですけど!?」
カーシャの言葉に面白いまでに驚いて引きながら叫ぶマーリーンに対し笑みを浮べ、
「ええ。よくあることだからとりたて話したこともなかったけど。
ともかく。人によって早いか遅いかの違いはあるけど、そういうことって必ずあるものなのよ。
たぶんそれがよくいう、『大人への階段』というものだって思うのよ。
リナさん達にもあったでしょう?そういう時期が」
「うちはよく昔から暗殺者とか出入りしてましたけど」
「…お前の家は事情が事情だろうが…って、昔からなのか?」
さらっというアメリアに思わずつっこみをいれているゼル。
「母さんを殺したのも暗殺者ですし。…その暗殺者は姉さんが倒したらしいですけど…
私はまだ小さかったからあまり覚えていないんですけど……」
そういうアメリアの表情は暗い。
「俺のほうは曽祖父があれだったからな……」
レゾのことを思い浮かべて顔をしかめていっているゼル。
「ほらごらんなさい。どこの人もそのようなことがあるのよ。マーリーン」
「いや、ゼルガディスさんやアメリアさんは特別だとおもうんですけどねぇv」
にこやかにマーリーンに話しかけるカーシャの台詞に、にこにこといっているゼロス。
「まあ。あたしのほうはそれらをやるほうだしv」
「…リナさん。それ洒落になってません。いくら冗談でも……」
「いやまて。アメリア。リナのことだ。どうも冗談じゃないような気がするぞ?」
いいながらため息をひとつつき、
「と…とにかく。だ。あんたは娘のことを心配している。一方娘であるマーリーンのほうは、
自分ひとりで大丈夫だからあまりかまわないでほしい。と感じているようだし。
もし今、むりに彼女を連れ戻したとしてもまた家出するだろうしな」
「そうなると。またカーシャさんがマーリーンさんを連れ戻しにでてくる。
堂々巡りですね。ここは一つ、双方が納得する方法を二人で話し合ってみればどうでしょう?」
なにやらそんなことをいってくるゼルとアメリア。
「あら。それじゃ、テストっていうのはどうかしらv」
そんなあたしの意見に、
『テスト!?』
母娘の声が綺麗に重なる。
「そ。用はマーリーンが一人前なのか。そうでないのかがはっきりすればいいわけだし。
方法については今アメリア達がいったようにじっくりと二人で話し合えばいいわけだし。
二人が納得するまで話し合う、というのも一つの手だとおもうけどv」
その話し合いをしてもらったほうがあたしとしては楽しくなるしv
「なるほど」
「そういうことでしたら納得いきますわ」
そんなあたしたちの意見に二人してうなづくマーリーンとカーシャ。
「ま、そういうわけで後はがんばってねv」
「って、リナさん?このままほっとくんですか?この二人?」
「あら♪なるようになるわよvこれは母娘の問題だしねv」
「たしかに。依頼の内容は娘を連れ戻して欲しい。ということだったしな」
これ以上この母娘に関わっていたら…何かとんでもないことになるような気がする。
そんなことを思いながらもあたしの言葉にうなづくゼル。
アメリアのみが多少不服そうだけど。
「たしかに。リナさんのおっしゃるとおりです。ありがとうございます。娘と再会させていただいて。
些少ですがこれはお礼の礼金です」
「そんなものはいりませんっ!正義の前には金額など必要はありませんからっ!」
革袋を手渡そうとしてくるカーシャにきっぱりとそんなことをいっているアメリア。
ま、お金が必要ならば、ゼロスのやつにオリハルコンとかとらせてくればいいだけだしねv
そんな会話をかわしつつ、ひとまずあたし達はその場をあとにすることに。
さってと♪
これで今後がたのしくなるわねv
ふふふ♪
さくさく、シャキシャキ新鮮の野菜サラダ。
じっくりと煮込んでいるらしきオニオンスープ。
数種類のスパイスのかかったポークリブ。
注文した品々が次々にテーブルにと運ばれてくる。
「しかし。あのカーシャさんってかわってましたね」
「あのマーリーン、という子も気の毒ではあるだろうな」
そんな会話をしなからがらも料理にと手をつけているアメリアとゼル。
くすっ。
「危ないっ!」
どがしゃぁぁっ!!
そんな二人は横から唐突にタックルをくらい情けないにもそのまま椅子ごとひっくり返る。
とりあえず料理がダメになってはもったいないのでお皿ごと空中に浮ばせているので、
アメリアとゼル以外には被害はなし。
ちなみに、あたしも巻き込まれないようにふわふわと空中に浮んでいる今現在。
「おやおやv」
ゼロスはゼロスでのんびりと椅子に座りながらその様子を眺めてにこやかにいってるし。
「あれ?さっきの子じゃないか。どうしたんだ~?」
そしてまた、机ごとひっくりかえった。
というのに動じることなくアメリアたちにタックルをしかけてきた人物に話しかけているガウリイ。
いうまでもなく、アメリアたちにタックルをしてきたのは先ほどのマーリーン。
「ふう。間一髪。危ないところだった……」
そんなあたし達の声は何のその。
ちらり、ととある場所に視線をうつしてふうっ、と息をついているマーリーン。
店の壁。
さきほどまでアメリアとゼルが座っていた真後ろの壁。
そこに手の平ほどの長さをした針がそれぞれ一本づつ、
ぴったりアメリアとゼルが座っていた位置どおりに突き刺さっていたりする。
「だが、油断するな。まだお母様は近くにいるはずだ」
「って!?どういうことなんですか!?」
「…どういうことだ?」
アメリアはマーリーンの方にむかって。
そしてまたゼルはあたしのほうにむかって顔を上げて問いかけてくる。
ふわっ。
ひとまずそのまま浮んでいた体を床にと下ろし、そのまま軽く指を鳴らす。
それと同時。
マーリーンによってひっくり返された机や椅子が瞬時に元通りにと再生される。
それをみて、なぜか額に汗を一筋ながしつつ、
「…な、なるほど。お母様がいわれてたのも一理あるのかも……」
などとつぶやいているマーリーン。
「それはそうとして。どういうことなんですか!?というかカーシャさんがどうかしたんですか?」
「…ものすっごくいやな予感が俺としてはするんだが?」
マーリーンに問い詰めているアメリアに、つぶやくようにいっているゼル。
「え?ああ。ただ、マーリンとの話し合いで、アメリアとゼル。
二人をマーリーンが三日間守りきることができたら一人前として認める。
って話し合いの末に条件がだされただけよvね?マーリーンv」
にこやかに説明するあたしの台詞に、
「…私はまだ説明してないが?…ともかく。今リナさんが言われたとおりだ」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
さらっというあたしとマーリーンの台詞になぜか二人して顔を見合わせ思わず無言となり、
そして。
「ええ!?ということは私達、あのカーシャさんに狙われているっ。てことですか!?なぜ!?」
「…どうりでリナがあっさりとさっき退いたわけだ……」
何やら叫ぶ二人に対し、
「お母様は別にお前たちに対して殺意を抱いているわけではないはずだ」
いともあっさりと言い放つマーリーン。
「というか。あんなのが普通刺さったら…死にますよね……」
「こ…この俺に気配もかんじさせなかったとは…ガウリイ。貴様はきづいてたんじゃないのか?」
「いや、動こうとしたらリナにとめられてたし」
「…やっぱしか」
何やらほのぼのとした会話をしているゼルとガウリイ。
一方で。
「というか。こちらの断りもなく一方的にきめたんですか?」
「相談したらきっと拒否されるのはみえてるからな。やもなく」
「「や…やもなく…って……」」
アメリアの問いにさらっと答えるマーリーンに面白いことにゼロスとアメリアの声が重なる。
「それはそうとして。どうしてアメリアさんとゼルガディスさんなんですか?」
どうやら多少興味があるらしくにこやかに問いかけているゼロスだけど。
「ああ。そのことでしたら。先にお母様のほうからは私がターゲットになってやりすごす。
という意見はでたんですけど。それはもう、それとして。
その場合、いろんな感情で実力が正確に発揮できなくなる。
とどうにか言いくるめ…もとい、説得しまして。
それで、別人の護衛という形が望ましいのでは?例えばリナさんとか。
という私の意見が採用されたはしたんですけど。お母様曰く、
『ゼルガディスさんとアメリアさんのほうがいい』という意見でお二人になったわけで」
そういえば、カーシャはあたしにちょっかいかけようとした輩が多少、
いなきり大地から吹き上げたマグマなどに飲み込まれたりしてる。
というのを知ってるからねぇ。
彼女の情報網で。
それに、アメリアとゼルのほうがどちらに転んでも彼女をたしかにいろんな意味で頑張らせるはずだし。
「って、何で私とゼルガディスさんのほうがいいんですか!?」
「さあ?私にきかれても……」
アメリアの台詞に戸惑いを隠せないマーリーン。
「あら。簡単じゃないの?一応ゼルは白のゼルガディスとして、その筋では有名だし。
アメリアはアメリアで家柄的にいろいろと…ね♪
暗殺に失敗しても、成功してもどちらに転んでも一応は名前が売れるしv」
「って、そういう意味ですかっ!?」
「……リナ?もしかしてとはおもうが…あのカーシャって…あの『カーシャ』…なのか?」
面白いまでに叫ぶアメリアに、そして恐る恐るなぜか聞いてきているゼル。
「そうだけど?」
「って、やっぱりかっ!ってお前しってたなっ!?」
「当然v」
「・・・・・・・・・・・・」
あ、だまったv
「ま、いいじゃないv若いころの苦労はかってでもしろ。ってことわざにあることだしv」
にこやかにいうあたしの台詞に、
「リナといたらいつも苦労じ…いや、何でもないです。はい」
ぽそっと何やら言いかけているガウリイだけど、すぐさま黙っていたりする。
「まあまあ。とりあえず三日間だけの辛抱ですから。お二人とも、協力してくださいね?」
「…うう。何でこうなるんですかぁ!?カーシャさんを説得…」
「あのお母様は一度きめたら絶対に人の意見はきかないぞ?」
「……やっかいなことになったな……ふぅ……」
にこやかにまったく悪びれた様子もなく二人に言い放つマーリーンに対して、
なぜかアメリアが泣き言のようなことをいい。
ゼルはゼルであのカーシャが『誰』かあたしの台詞で気づいて盛大にため息をついていたりする。
「さってと♪楽しくなってきたわねv」
「…って、リナさんっ!絶対に知っててあの場を離れたでしょう!?そうでしょう!?」
「そうだけど?」
「いうな。アメリア。リナに何をいっても無駄だ……」
しばしそんな会話をかわしつつ。
ひとまずあたし達は今後の対策を話し合うことに。
「ふわぁぁぁ……」
「アメリアさん。盛大なあくびですねぇ」
街中を歩きながらあくびをするアメリアににこやかに話しかけるゼロス。
「昨夜はカーシャさんのことを考えてたら少しばかり夜更かししてしまいましたので」
てへっと笑いながらいうアメリアに、
「必要最低限の防壁などは張っておいて寝る。というのは常識だぞ?アメリア?」
「まあ、アメリアは一度ねたら中々おきないからねぇ」
そんなほのぼのとした会話をしているあたし達。
「大丈夫ですよ。アメリアさん。あなたたちは私が守っているんですし。
まあゼルガディスさんはその体なのですぐに殺される。ということもないでしょうし。
それに眠っている間なら苦しまずにすみますよ?」
にこやかに、そんな二人にと話しかけているのは当事者であるマーリーン。
そんなあたし達の会話にはまったく気にも留めず、通りには人があふれている。
はしゃいで走っている子供たちの姿も多少みうけられているほのぼのとした日常風景。
道の両脇にたった露店には様々な品物が並んでいる。
小物に肉にオレンジに、野菜に服に装飾品。
「――おや」
「…ちっ!」
カンキンキンっ!
ゼロスがそれに気づいて面白そうな声をだし。
ゼルもまたそれに気づき、ガウリイと剣を抜き放ったのが同時。
オレンジの屋台から数本の槍が突き出してこちらにと向かってきていたりする。
それらをガウリイとゼルが剣にてなぎ払ったのだが。
『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ?!』
なぜかこの程度のことで周囲にいた通行人たちから沸き起こる悲鳴の数々。
「…って、だ…大丈夫ですか!?」
一瞬何がおこったのか理解できずに戸惑いながら、はっと我にもどって問いかけてくるマーリーン。
「というか。気づいてなかったの?マーリーン?あの屋台、表に誰もいなかったし」
「そういえば。マーリーンさん、以前オレンジの屋台開いてましたよね……」
あからさまに判りそうなものなのに。
いるはずの店番の売り子もいなければ屋台の後ろに誰もおらず。
ただただオレンジの屋台がそこにあるだけ。
という状況だったというのに。
しかも気配からしてもその屋台の中に人が隠れている。
というのが丸判りだった、というのに。
そんなあたし達の会話は何のその。
「…けど、よかった…本当に……」
マノーリーンは額にじっとり浮んでいる脂汗を拭きながら、
「一瞬。これでお母様の特訓をうけなければならないかとおもったが……」
「というか。そういう問題じゃないだろうが?…とりあえず。
どうにかあのカーシャに会ってこんなのはやめてもらったほうがいいのは事実だな……」
自分ひとりならばまだしも。
アメリアまで巻き込んでるし。
万が一のことがあれば国際問題確実。
そんなことを思いながらもつぶやくようにいっているゼル。
カーシャはそれもわかってて、あえてアメリアも、と指定してるんだけどねv
そういえば、まだマーリーンはアメリアのフルネーム、知らないしねぇ。
面白いからあたしも教えてないけどv
「って…あの?マーリーンさん?あのカーシャさんって何をかんがえてるんですか?
いくらマーリーンさんの独り立ちの訓練、とはいえ…これってどうみても……」
本当の暗殺者とかの攻撃に似てるんですけど……
「お母様はやるときにはやるからな。訓練。といっても本気でくるだろう。
まあ、たぶん。二人が万が一死んだりしてもそれは私の力がなかったせい。
ですませるだろうな。私はそしてお母様のもう特訓をウケルハメに……」
「そうじゃなくて!ですね。まずは。きちんとカーシャさんと話し合いをする。
というのはできないんですか!?」
「あの~?どうでもいいですけど。こんなところで騒いでいたら、みなさん。怯えてますよ?」
あからさまに狙われていたのはあたしたち一行であるのは明白。
さらにいうならば、繰り出されてきた槍は剣に叩き落された状態で地面に転がっている。
面白いまでに遠巻きにあたし達をみている街の人々。
『……あ』
ゼロスのにこやかに指摘にその事実にようやく気づき、小さく声をあげているアメリアたち。
まったく。
まだまだよねv
とりあえず、未だにざわめいている通行人たちをそのままに、あたし達はその場を後にしてゆく。
「も、疲れました……」
「ガウリイのやつがいなかったら絶対に俺たち死んでたな……」
何やらものすっごく情けないことをいっているアメリアとゼル。
「そうか?気配わからないゼルたちのほうがオレ的には不思議なんだけど?」
きょとん。
としながらも、注文したステーキをきこきこときっては口にと運んでいるガウリイ。
街の片隅にとあるちょっとした食堂。
なぜか疲れたようにといっているアメリアとゼル。
たかが、朝からこの昼過ぎにいたるまで、カーシャの試練が百七十二度ほどあった。
というだけなのに。
ゼルも神経を尖らせているものの、やはりほとんどの回数が気配を捉えそこね。
繰り出されてくる物理的攻撃はことごとくガウリイの勘でどうにかなっていたりする。
ちなみに、ときどき呪文攻撃らしきものもあったりするけど。
それらはすでにゼルたちはなれているので何事も問題ないし。
「マーリーンさん。どうにかしてもう一度話し合う。というのはできないんですか?お母さんと?」
ダメもとでマーリーンにと意見するアメリアの台詞に、
「それは無理だ。一度きめたことを覆しでもしたら。それこそ。
『やっぱりまだまだ独り立ちは無理ね』とかいわれて私は再びお母様の訓練を受けるハメになるだろう」
「というか。無関係な俺たちを巻き込んでいる時点で独り立ち云々、というのは無理とおもうが?」
きっぱりと言い切るマーリーンにため息まじりにつぶやくゼル。
「でも、僕としては面白いから別にこのままでもいいとおもいますよ?」
アメリアさんとゼルガディスさんのものすごくおいしい負の感情が喰べられますし。
こんなことは滅多とありませんしね。
アメリア達の会話を手にしたミルクを飲みながらにこやかにいっているゼロス。
「ま。今日が終わればあと二日だしv二人ともこの程度のことは成し遂げないとv」
今回、あたしは完全にほぼ傍観する予定だしv
「リナさんにとってはたしかに。『この程度』でしょうけど……」
「とりあえず…だ。相手はあのカーシャだ。…宿の中でも油断は禁物だな。
ひとまず、アメリア。お前はリナと同室で寝たほうがいいだろう。
俺はガウリイと同室にする。あとは俺たちの部屋の上下の部屋を借りて……」
カーシャをどうにかやりすごすために、面白いまでに計画を練りながら言ってくるゼル。
「って!?ゼルガディスさん!?僕は?!」
「きさまは別に宿に部屋をとる必要はないだろうが?」
「あら。ゼロス。必要だとおもえば自腹でねv」
「って、いつも代金は僕がはらっ……」
ぐしゃ。
何かつぶれたような音がしたけど、とりあえず関係ないし。
ゼルガディスの作戦はいたって単純。
まずは、外に面した部屋と、その横の部屋。
外側には上れるような木がない日当たりが悪い部屋。
即ち、崖に面している部屋を一つとり、その部屋にあたしとアメリアが泊まり、
そしてその横にゼルガディスとガウリイ。
ちなみに、あたし達の部屋の下の部屋にひとまずゼロスが部屋を借り、
ゼルガディスとガウリイの隣の部屋と、その下の部屋は無人でひとまず借り受ける。
というもの。
天井裏うんぬん…という意見も出そうではあるが、そこはそれ。
この崖に面している宿屋の特徴は天井裏がない。
ということ。
すなわち、すべてがレンガ作りであるがゆえに、少々の攻撃ではびくともしない。
まあ、あたしは簡単にこの程度は壊せるけどv
ちなみに、この建物、ある種の呪がかけられており、
攻撃魔法など、というものは壁が反射するようにつくられていたりする。
つまりは一種の防火設備をかねていたりする。
そのあたりの知識はかつての経験から持っているがゆえのゼルの判断。
でも、ゼル♪
あのカーシャにはそんな小手先の技は通用しないわよv
とりあえず、ひとまずあたしたちはゼルの意見もあり。
今日のところは、崖の側の宿屋にて休むことに……
「……しかし…本当に大丈夫なのか?これで?」
何やらびくびくしながらもいってくるマーリーン。
ちなみに、マーリーンはあたしとアメリアが泊まる部屋。
つまりは同じ部屋にて眠ることにしてるけど。
何しろ宿屋などにあるベットとかってあまり寝心地とかよくないからねぇ。
それゆえに、部屋にはいり簡単に自分用のベットを創造りだしてそこで寝ることにしているあたしだけど。
ゆえに、あまったベットの一つをマーリーンに提供している今現在。
「マーリーンさん。リナさんのこんな程度でびくついてたらこの先やっていかれませんよ?」
マーリーンがびくついているのは、カーシャのこともあるにしろ。
あたしが指を軽くならしただけでベットを出現させたのにかなり驚いているかららしい。
まったく。
たかがこの程度で驚いてほんっと、どうするのかしらねぇ。
「アメリアちゃん?どういう意味かしらね?ひとまず。大丈夫。ということはないわよ?
現にゼルたちのほうでは面白いことになってるしv」
「「……え?」」
にっこりというあたしの言葉になぜか二人して顔を見合わせるアメリアとマーリーン。
あたしが説明するまでもないけどねv
二人が顔を見合わせたのとほぼ同時。
ドスッ!!
鈍い音が隣室のほうから聞こえてくる。
そして、
「……なっ!?」
何やら叫んでいるゼルの声。
「何かあったんでしょうか!?」
「まさ…か!?」
その尋常ではなさそうなゼルの声を耳にしてそのまま部屋から出てゆく二人の姿。
まったく…隠れてるのに気づきなさいよねv
くすっv
バタン!
隣室に駆け込んだアメリアとマーリーンが目にしたのは、
黒い刃がマットレスを突き破り貫通して二つに割れている様子。
そしてまた、壁際ににこやかにたっている全身くろづくめの人物が一人。
手にした刀身はもとより、顔までもご丁寧に墨で黒く塗りつぶしていたりする。
「って…カーシャさん!?」
「お…お母様!?ど…どうして!?」
その姿をみて驚きの声をあげているアメリアとマーリーン。
そんな二人とは対照的に、
「あら。マーリーン。それにアメリアさん。こんにちわ。
いえね。さすがにあの白のゼルガディスさんのことだけはありますし。
どう考えても場数を踏んでいらっしゃるでしょう?
先にリナさん達の部屋にもいこうとしたんですけどなぜか息苦しくなりまして、
それゆえに先にゼルガディスさんのほうを仕留めようとおもいまして」
にこやかに笑みを崩さぬまま、
「おそらく。昼間の数々の仕留めそこないをうけて、この宿にくるのはわかってましたし。
なので先に部屋に忍び込んでずっとまってたんですよ」
「…何か違和感感じてベットにははいらなかったんだが……」
にこやかにいうカーシャとは対象てきに、疲れたようにいっているゼル。
「いや。オレは何か女の人がベットの下で寝てるし、かわった趣味だな~。っておもったけど」
「だから!気づいてるなら先にいえっ!おまえはっ!!」
何やらほのぼのとした会話をしているゼルとガウリイ。
「おやおや。何か随分と楽しそうなことになってますねぇv」
ふわふわふわ。
ふわふわと窓の外。
つまりは道側のほうの窓の外にと浮んで窓の外から言っているゼロス。
何か楽しそうなことがおこっているみたいなので、下からふわりと上がってきたようだけど。
別にそんなことしなくても、移動してくれば早いでしょうに……
「とにかく。これで決着をつけさせていただきますわね」
いいつつもその視線をアメリアに向ける。
「アメリア!外に逃げろっ!」
「はいっ!」
ガウリイ達がほのぼのとした会話をしている間にすでにカーシャはあたしたちの後ろ。
即ち、出入り口でもある扉の前にと立ちふさがっており、進路をふさいでいる。
まあ、あたしも面白いのでほっといた、というのもあるにしろ。
ゼルにいわれて、そのまま三階の窓からそのまま外にむかって、
「とうっ!」
呪文も使わずにいつものようにと飛び降りるアメリア。
ヒュッ!
それと同時、カーシャの放った短剣数本がそんなアメリアが降りた窓に向かって放たれる。
カーシャの技の一つ短剣の曲芸、【自在の円舞】。
つまりは、窓まではまっすぐに飛ぶものの、そのまま垂直にとムキを変えて地面に向かって落ちてゆく。
多少、短剣に気を込めることによって自在にその方向性を操る技。
実際はこんなのは技とも何もいえないけど。
なぜかこの程度でこの世界、【技】として通用しているのが面白い。
「あらあら……」
相手が相手である。
ならば先手必勝とばかり、
「
ゼルの放った蒼く輝く光球がカーシャの足元にと着弾し、
そのまま普通ならぱカーシャを飲み込んで氷の彫像にと変化させるであろうが。
それを何なくふわりと飛び上がり、そのまま天上にて体制を整え、くるりと向きを変えて、
再び床にと降り立つカーシャ。
そしてそのまま。
「ひとまずはアメリアさんが先ですわね」
いうなり、カーシャもまたそのままアメリアを追いかけるようにと三階の窓から飛び降りる。
「ってまずいっ!」
そんなカーシャの姿をみてこちらもまたあわてて窓から飛び降りているゼルの姿。
「?何かみんなせちがらいな~」
「……あんたはどうじない人だな……」
そんな光景をみながらのほほんといっているガウリイに対し、
あきれたようにいっているマーリーン。
「ま。ガウリイだし。ひとまず、あたし達もおりましょv」
とりあえず、アメリアとゼルが外にでたこともあり。
あたし達もまた、そのままのんびりと宿の階段をきちんと降りて外にでてゆく。
ギィィン!
周囲に響き渡るちょっとした金属音。
金属音とともに、地面にカランと落ちるカーシャのもっていた刀身の刃。
そしてまた。
「って、何をしてるんだい?こんなところで?」
のほほんとそんなカーシャにと話しかけている、とある男性。
どうでもいいけどそのはやした無精ひげくらいは剃りなさいよね……
建物から飛び降りざまにアメリアに向かって放たれたカーシャの攻撃は、
いつものアメリアの着地失敗であっさりと失敗におわっているものの。
着地失敗しているアメリアにとカーシャが繰り出した刃はといえば、
その直後にカーシャの横にたった男性がひとまずそんなカーシャの刀身をへし折っていたりする。
そんな男性にようやくきづき、目をぱちくりさせ、
「おや。お父さん。お帰りですか?」
にこやかにそんなことをいっているカーシャ。
「……った~…って、誰ですか?」
どうにかこうにか、建物から飛び降りたときの着地失敗の体制から起き上がり、
そこにカーシャ以外に人がいるのにきづいてきょとん、とした声をだしているアメリア。
「……どうやら、あのカーシャの夫らしいな……しかし…マーリーンのやつ…気の毒というか……」
父親に多少面識があるがゆえに、ため息とともにそんなことをいっているゼル。
そういえば、ゼルはレゾの元で働いていたときに彼と多少なりともかかわりもってるしねぇ。
それゆえにかなり同情の視線をマーリーンにむけていたりするし。
「お…お父様……」
呆然とつぶやくマーリーンとは裏腹に、
「あらあなた。随分と出張にしては早かったんですねぇ」
にこやかに、折れた剣をしまいながらも話しかけているカーシャ。
「ああ。ゲリラたちがあんまりにもたいしたことがなかったもんでな」
いいながら、自身も持っていたカーシャの剣を折った短剣をしまいつつ、
「けれど。かえってみればお前たちが家にいないし。探してようやくみつけたら、
何やらお前がそこの娘さんに攻撃をしかけようとしてるし。
その娘さんってあのドワーフ殿下の娘さんだろ?」
ちらり、とアメリアをみただけでさらっといっているのはカーシャの夫であり、
そしてまた、マーリーンの父親でもある人物。
ちなみに、彼の裏の世界での通り名が『新月のグール』と呼ばれていたりするのは知る人ぞしる事実。
「ええ。そうですわ。実はマーリーンがまた家出をしちゃいましてね。
連れ戻すのに力をこの方たちに貸してもらったんですけれど。
『マーリーンが一人前かどうかをテストしてあげなさい』っておっしゃられましてね。
で、今はその護衛兼任務テストに協力してもらっているところなんですよ」
「というか。俺たちは『テストに協力する』とはまったくいってないんだが……」
そんな夫婦の会話にぽそっと突っ込みをいれているゼル。
「あらあら。そうなんですか?マーリーンは、
『リナさん達なら必ず協力してくれる。自分が説得してみせる。ダメだったらダメだという』
なんていって、その後何もいってこなかったからてっきり許可してくださったのかとおもったんですけど」
そんなゼルの台詞に、目を丸くしてにこやかにいうカーシャに、
「う~ん。マーリーンは相変わらずのうっかりさんだなぁ」
苦笑を浮かべてにこやかにいっているカーシャの夫であるフェーン。
「まあ、忘れる。というのはよくあることだよな。うん」
「それはお前だけだ」
「ですよ。それはガウリイさんならありえるかもしれませんけど」
うんうんうなづくガウリイに、突っ込みをいれているゼルとアメリア。
ま、ガウリイは自分に関係ないことはあまり覚える気がないし。
「あの?それより。
テストの時にそういう大事なことを言い忘れるって、多少問題があるとおもうんですけど」
私なんか重要なことを忘れてたりしたら国交に関わることもありえるので、
なるべく重要なことは忘れてても時間がたてば行うことにしてますし。
自分の立場とあわせながらも意見するアメリアに、
「まあ。たしかに。そういうのを忘れている。というのはわざとでないかぎり、
独り立ちするのにいろいろと問題があるでしょうねv」
結構楽しませてもらいましたし。
それにエル様もここで止めない。
ということは今回のコレはこのあたりでひとまずおいておく。
ということでしょうし。
そんなことを思いながらもにこやかに言っているゼロス。
「おや?例の謎の神官さんもリナさん達とご一緒でしたか」
「確かフェーンさんでしたよね。そのセツはどうもv」
「いえいえ。しかしあれから十数ねんたつのにかわってませんねぇ」
「いやぁ。それほどでもv」
そんなゼロスににこやかに話しかけているフェーン。
「って、ゼロスさん?お知り合いなんですか?」
和やかにフェーンと話しているゼロスに対して問いかけるアメリアに対し、
「ええ。以前彼が潜入していたとある組織に写本がありましてvそのときにちょっとv」
「なるほど。そういえばゼロスさん。昔も今もお役所仕事でしたっけ?」
「アメリアさぁぁん……」
ほのぼのとした会話はまったく耳に入っておらず、
「お…お父様?ど…どうしてここに?」
ようやく我にと戻り硬直しつつフェーンにと問いかける。
声が完全に裏返っているのが面白いv
そんなマーリーンに向かい、カーシャはにこやかに笑みを浮かべたまま、
「そんなことより。マーリーン?あなた、このゼルガディスさん達はテストの相手を引き受けてくれる。
とはおっしゃってくれなかったらしいじゃないの」
そういうカーシャの台詞に、ぴしっと再び石化し、
「……え゛…いや…それは……でも、リナさんは引き受けてくれる。みたいなことをいってたし……」
「あら?リナさんなら人の考えてることは何でもわかる。というのは常識ですわよ?
それに確か死人をも生き返らせたり、消滅した街を瞬時に再生させたり。
とかいろいろまさかそんなことすらも知らない。というんじゃないでしょうね?」
そういうカーシャの笑みがとても面白い。
「ま。リナさんですしねぇ」
「だな。」
「ですね」
「やっぱ有名なのか……」
そんなカーシャの台詞をきき、うんうんうなづいているアメリア、ゼル、ゼロス。
そしてガウリイにいたってはしみじみと何やらいってるし。
ほほぉぅ。
後でちょっぴりおしお…もとい、話し合いしておくとしますかねv
笑みを崩さぬまま、
「そんなんじゃ、母さん。まだまだあなたのことを一人前だなんて認められませんからね。
テストは中止よ。帰ってしっかりと今まで以上に鍛えますからね」
「え…ええ!?ちょ…ちょっ!?お母様!?」
にこやかにいうカーシャの声に面白いまでにあわてて叫ぶマーリーン。
ほんっと、みてて楽しいわよね。
こういうのってv
母親にがしっと手をつかまれ、救いを求めるように父親のほうに視線を向けるものの、
「あははは。ダメじゃないか。マーリーン。作戦遂行途中の情報伝達はしっかりとしておかないと。
そうだ。今まではお前の教育は母さんにまかせっぱなしだったけど。
今度からは父さんも手伝ってやろう。いっとくけど父さんは母さんほど甘くないからな。はははは」
彼もまたマーリーンに歩み寄り、カーシャが掴んでいるほうの手とは逆のほうの片腕をつかむ。
そんなほほえましい親子の姿をしばし唖然として眺めているアメリア達。
マーリーンはといえばなぜか両親に両手を掴まれて完全に固まってるし。
マーリーンの腕をそのまま掴んだまま、カーシャはあたし達の方に向き直り軽く会釈をし、
「それでは。みなさん。これで失礼いたしますわね。
いろいろとご迷惑をかけまして、ほんとうにすいませんでした」
それだけいって、ずるずるとマーリーンをひこずりながら立ち去ってゆく親子の姿。
「けど、これからはもっとかんばららなくちゃね。マーリーン。
母さん、今までちょっと甘やかしすぎたから、これからはびしびしいくわよ。
お父さんといっしょに」
「はっはっはっ。いいかい。マーリーン。父さんがお前くらいの年頃にはな。
攻めてくる一個中隊に一人で夜襲をしかけて隊長クラスみんなの寝首をかいたりしたんだぞ。
よく新月のグール。なんて呼ばれてからかわれたもんだ」
ほのぼのとした親子の会話が済んだ夜風にのって周囲にと響き渡る。
そんな親子三人をしばし眺めながら、
「…マーリーンさん…大丈夫でしょうか?」
「あいつもやっかいな両親をもったもんだな。しかしこちらにとばっちりはやめてほしいな」
しみじみといっているアメリアとゼル。
「とりあえず。早く宿屋にいこうぜ。お腹すいたし」
ごけっ。
ずるっ。
「ガウリイさんらしいですねぇv」
お腹を押さえながらいうガウリイの台詞に面白いリアクションをしているし。
そんなガウリイに対してにこやかにいっているゼロス。
「さってと。とりあえず。このたびの一件はおわったことだし。それじゃ、宿屋にでもいきますかv」
ひとまず、今回のこれは一応おわりだしv
「とりあえず。…というのがきになるんですけど……」
「同感」
あたしの言葉になぜか顔を見合わせてつぶやくようにいっているアメリアとゼル。
「あら。気のせいよv」
「それより、早く、メシ、メシ~」
ほのぼのとした会話を交わしつつ、あたし達はひとまず今日の宿をとるために、
街中にともどってゆく。
さってと。
次にあの親子に会うときがまた楽しいんだけど。
それはまだアメリア達には内緒にしておきますかねv
ふふふv
―――ランナウェイ・ガール編終了――
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あとがきもどき:
薫:さてさて。原作ではでてこなかった、カーシャの夫であり、マーリーンの父親。
通称『新月のグール』彼の名前はかってにこちらがつけましたv
ちなみに、流れとしては。
【新月のグール→月→狼→ケルベロス→フェンネル→フェーン】
という感覚ですv
エル:何か今回…あたしの活躍なくない?あんた?
薫:あはは…今回、エル様は傍観主義…ということで~
エル:まったく。せっかくカーシャ用に部屋の中の空気を綺麗に抜いてたりしたのに。
ひっかかってくれなきゃさみしいわよねぇ…それとか……
薫:…え、え~……いくらカーシャさんでもそれらは絶対に死ぬかとおもわれるのですが(汗
エル:あら?あの程度で死ぬなんて情けなすぎるわよv
薫:…エル様の基準でいわないでください……
エル:ま、あんたへのお仕置き…もとい、説教はあとでするとして。
薫:い、今お仕置きとかいいませんでした!?
エル:きのせいよvところで、この続きのもやるんでしょ?
薫:は…はぁ……次はナーガ合流後。ですね。
余計にややこしくなりまくってますけど……
エル:たのしければいいのよv
薫:…ど、努力します…
エル:さってと。とりあえず。大体な説明がおわったところで♪
薫:って、まってくだ……んきゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!
エル:さってと、何やら排水溝から流れている液体もどきはおいとくとして。
それでは、またあいましょうねvそれじゃ、まったね♪
2007年7月18日(水)某日
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