まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
こんにちわ。
さてさて、こちらは、神坂一先生2007年度9月時点の最新作のうちの一つ。
角川スニーカー文庫。定価514円(税別)
「ドアーズ」のお話となっております。
これのスレイヤーズサイドのほうは1のほうにてv
お話は知らないよ?という人は、作品を見てから読むのをオススメしますv
ちなみに、作品の簡単な説明はこんな感じです。
○曾根崎智紗
美袮の一歳年下の妹。
世界がまぜこぜになったときからなぜかリスの姿になっている。
当人はそれをまったくもって不思議とはおもっていない。
○曾根崎美袮。
智紗の姉。
平凡な高校二年生…だったはずなのに。
なぜか世界がまぜこぜになってしまってから後は、
ただ一人だけ、元の状態を覚えている少女となってしまっている。
○シュリン
ドアの向こうからやってきた謎の青年。
奇妙な棒、レンチを使って世界を修繕している。
不思議な力ももっているはずなのに、なぜか智紗と美袮には勝てない。
毎回、乙女の勘?を働かせた美袮によって扉からひっぱりだされている。
○謎の扉たち
ある日、いきなり曾根崎家に出現した無数の扉。
姉妹が暮らしている家の壁という壁が無数の扉でうめつくされてしまっている。
ちなみに、どうやらその扉がすべての平行世界とつながっている…?らしい……
このすべての扉の異変となっている「鍵」みたいなモノを修正することがシュリンの役目。
無数にある扉すべてを修理しなおしたとき…世界は元通りの姿を取り戻す…らしい……?
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■ACT01~新たな始まり~■
○月×日。
今日、また智紗が変な生き物になりました……
何かとある漫画のニョロニョ○を連想する生き物に……
だぁぁっ!!
「ちょっと!シュリンっ!」
がくがくがく。
思わずその場にいた銀髪の男性、シュリンの襟元をぐいっとつかみガクガクゆする。
冗談じゃないっ!
何で…何でこうなるわけよっ!?
『そっか~。そうだよね~。普通はこのかわいい顔がみっつなきゃいけないわよね~』
そんな少女…美袮の後ろでは、声が何かまた人の声でなくなった…だけど言葉がなぜか理解できる、
…妹・智紗の変わり果てた姿が……
ついこの前、ようやく智紗の姿が触手からリスに変化してある意味安心してたのに。
いや、リスの姿も異常だ、というのはわかってはいるけど。
そんな思いがぐるぐると美袮の脳裏をかけめぐる。
曾根崎美袮。
ごくごく普通の学生だった…はずなのに、ある日いきなり理解不能な現実に突き当たり。
あろうことか、自分の妹の姿がある日気がついたらリスになっていた……
という信じられない現実に直面している今日このごろ。
ついでにいえば、その異変はどうやら自分達の世界だけではなくてすべての世界。
というか、いわゆる平行世界…パラレルワールドすべてに起こっているらしい。
どこかの世界の歪みを直したら、別の世界も少しづつ元に戻る……
そう、目の前でがくがく自分にゆすられている男性はいっていた。
いっていた…のにっ!
この現実は何なのか。
少し前までなどは、智紗はあろうことか…触手にその姿が変化し。
そして今は…なぜか頭が三つあるにょろっとした異様な生物もどきと成り果てていたりする。
しかし、その当の妹である智紗のほうはそれを別に不思議とも何ともおもっていないわけで……
「く、苦しいって、美袮ちゃん。とりあえず一度もどらないと。ね?」
いつものように、世界を元にもどすため、鍵となる人物を探し出し。
レンチでその人物を三回たたいた。
そこまではよかった。
いや、よくもないけど……それしか元にもどす方法がない。
というのだから仕方がない。
これでようやく、ニョロニョ○もどきの姿の智紗とおさらばできるっ!
と内心、美袮は喜んでいたのだが…現実は…さらに厳しくなっていたりする……
何で…何で、そのにょろっとした体の途中半分から三つに分断して頭が三つにならないといけないわけっ!?
私がいったい何をしたっていうのよっ!?
「あ!ちょっと!シュリンっ!」
そんな美袮の抗議の声は何のその。
そのまま、逃げるようにその先にある不自然なまでの扉にふいっとはいってゆくシュリンの姿。
「って、逃げるなぁぁ~~!!!!」
私が思わず叫んでしまったのは…仕方ないとおもう。
絶対に……
■ACT2~きっかけ~■
どきどきどき。
……ほっ。
こういうストレスがたまったときの現実逃避。
現実を直視したくないときには小説とか空想上の物語を読むのに限る。
何しろテレビ画面のすべての妹とおもえし人々が智紗と同じような姿になっているのだから……
ドラマをみても、この異形動物何?状態でまったくもって楽しくない。
ならば、こうした小説とかに走りたくなるのは人の心理だとおもう。
うん。
アニメとかですら、妹設定となっているキャラたちはすべて…姿かわってるもんなぁ……
中には普通に人の姿のまま。
というのもあるにはあるけど、それらは何らかの異変うんぬんでそうなってる…みたいな設定に成り果てている。
まだ、普通ににょろにょろとくねくねうごくだけ…ならまだ、昔みてたムーミ○にでてきたニョロニョ○だ~。
とおもってみれば何とかなるはず…なのであるが。
それにきちんと人の目と鼻と口。
ついでにいえば髪の毛がくっついてたら…もはやそれはもう怪物以外の何ものでもない。
小さければまだ許せるけど…それが、それが元々の等身大であるのだからたまったものではない。
しかも、そんな姿になっているのが自分の妹となればなおさらに……
それゆえに、かなり現実逃避に走りつつ、どきどきしながら家にあった小説を手にとっている美袮。
ちなみに、今美袮が手にしているのは、「スレイヤーズ」というとある小説。
ハチャメチャ、ともいっても過言でない女の子が主人公の小説で。
美袮が一番気に入っているのは主人公のその生き様。
たとえ1%の確率でもその確率があるかぎりあきらめない。
その前向きな姿勢。
こんな状況に陥っても結構どうにか気力と精神を保っていられるのは、
もしかしたら昔からその小説を読んでいたからかもしれない。
まあ、最もそれが原因ではなくて自分がヤケになっても現実はどうにもならない。
というきわめてどうしようもない事実があるから…なのではあるが。
『おね~。何してるの~?』
「って…んきゃぁぁっ!!!!!!!」
いきなり背後からずりずりと近づかれ、さらにはその生暖かく、
ついでにいえば、ミミズをさわったときのような手触りのそれで目隠しをいきなりされれば、
叫ばないほうがどうかしている。
椅子に座って本を開いていた美袮の後ろから、智紗がいきなり目隠しをして話しかけたのであるが。
未だにその姿がニョロニョ○もどきのままなのでそのインパクトは並大抵のものではない。
思わず驚いて持っていた本を放り出す。
本来ならば、そのまま本は床にパサリ…と落ちるのが普通。
…が。
いつまでたっても本が床に落ちた形跡はまったくない。
おもわず椅子から立ち上がり、背後を振り向いた美袮の視線に映ったもの。
それは、にこやかな人の顔をしながらもその肉体的なものはあからさまに体の途中から三つに分かれている、
何ともいわれない白きとあるアニメのニョロニョ○を連想せざるを得ない生物と。
そして……
視線を智紗と合わせたくなくて思わず視線を落とした先にみたものは……
「……ちょっと……」
おもわず絶句。
先ほどまでたしかなかったはずなのに。
この部屋の床には。
にも関わらず、ほんの一時のうちにいきなり新たな扉がいくつか出現しているのはどういうわけか。
「って、何でまた扉が増えてるのぉぉ!?」
思わず美袮が叫んでしまうのは仕方がないであろう。
しかも、その扉はどうやら内開きなのか床に落ちたはずの本がそのまま扉の中にと吸い込まれてゆく。
そんな美袮の叫びに、
『?おね~?何いってるの?この部屋の扉の数はかわってないけど?』
きょとん、とした何ともいえない声なき声でいっている智紗。
今、彼女が会話をしている声は、人のそれではない。
何か、ぎゃ、ぎゃ…というような変わった声となっている。
それでも理解ができるのは、やはり異変の結果なのであろう。
と、とにかくっ!
これ以上、扉が増えるのだけは勘弁っ!
美袮のそんな心の叫びは当然智紗に通じるはずもなく、ただただきょとん、としている智紗。
きょろきょろきょろ……
床に吸い込まれてしまった本は仕方ないけどあきらめる。
そのうちにまた古本屋ででも新しいのを購入しておこう。
そんなことをおもいつつ、きょろきょろと周囲を見渡し立ち上がる。
そして。
「こ…ここだ~!!!」
一、二……
ずぼっ!!
勘をつけて壁の一つにある扉の中にドアノブをひいて、ずぼっと手を入れる美袮。
何となく数字を五回数えてからのような気がする。
そう思いながらいつものように手を突っ込むとどうじに何かに触れたそれをがしっとつかみ、
そのままぐいっとこちらに引き寄せる。
いつも自分でも不思議におもうけど、
だけど何となくできるような気がして実際にできるのだからこの際あまり気にしないことにしている美袮。
「…美袮ちゃん…毎度のことだけど…、もう言うのも疲れるからいわないけど。
それで?今度はいきなり僕をひっぱりだしてどうしたの?」
黒いコートを今日は羽織っているそんな男性。
何でも世界をレンチで修繕しているというシュリン、という男性が疲れたような美袮にと問いかける。
彼がこのように美袮にいきなり前触れもなく、扉がひっぱりだされたのは何もこれが始めてではない。
ゆえにこそ、ツッコンでもムダ。
そう彼は悟っているのであまり文句をいわないのだが。
「どうもこうもっ!何か扉がいきなりまた増えたのはなぜっ?!
智紗の姿が戻る気配もまったくないしっ!!」
「え?扉…また、増えたの?こまったな~。
もしかしてまた新たにどこかの世界がごちゃまぜになってきたとか?」
「…って、かなりまていっ!!」
美袮の台詞に本気で困ったかのようなぶつぶつつぶやくシュリンに対し、
思わずエキサイトして叫び返している美袮。
美袮としてはたまったものではない。
それでなくても日々、よくなっていくどころか世界の異変は悪くなってゆく一方。
そんな気が日々しているのだからして。
「と、とにかくっ!智紗をあのままにしといたらこっちの実がもたないしっ!
とっとと世界を治しにいくわよっ!シュリンっ!」
『あ、おね~。まって~』
「って、美袮ちゃん、智紗ちゃん、ちょっとま…っ!!」
ずりずりずり。
何か文句をいいかけたシュリンをそのままひこずりながら、
バタン……
そのまま、すぐ近くの扉のドアノプを回してその扉の向こうに消えてゆく美袮たち。
世界を元にもどす方法。
それは、この曾根崎家に出現している謎の扉すべて。
その扉の向こうにつながっているらしい様々な世界の狂いの原点を修正してゆくこと。
それができるのは、今のところシュリンがもっているレンチという棒のみ。
そう、美袮は聞かされている。
だからこそ、だからこそ…ではないが、美袮は自分自身の為に。
世界を元に…そんな大層なものではなく自分自身が平穏に暮らせる世界にもどすため、
未知なる世界に足を踏み入れてゆく……
■ACT3~?何かどこかでみたような??~■
「え~と……」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
扉をくぐったさきにあるのは、かつて見慣れていた景色にどことなく似ている。
だがしかし、違うのは建ち並んでいるビル街がほとんど廃墟と化している。
ということ。
しかも、その廃墟と化しているビル街を覆いつくすようになぜに植物が繁殖してるわけか?
『わ~。何か緑がいっぱいだね~。あ、おね~。みてみて~。かわいい鳥さん』
思わず唖然としてつぶやく美袮と、そしてまたその光景をみて無言になっているシュリン。
そんな二人とは対照的に、にこやかな口調で…といっても、どうきいても、
『ぎゃっ!ぎゃっ!』という声にしか聞こえないが。
それでも頭の中できちんと言葉に変換されているというのがかなり不思議。
それもこれもすべては今起こっている異変ゆえの現象なのであろう。
だがしかし、美袮とシュリンが思わず唖然としているのはそれが原因ではない。
「…な、何あれ?」
「……トリ…じゃないの?」
「……どうみてもあれって巨大なにわとりじゃない?」
「…その後ろには巨大なヒヨコもいるよね……」
緑に覆われた大地とは裏腹に上空にはなぜかビルよりも大きなどうみても鶏。
そしてその鶏の後ろには数匹のヒヨコ…こちらもちょっとしたビルくらいの大きさはあるであろう。
ともかく、そんな鶏が何匹も上空を飛んでいる。
ありえない。
本来らなばありえるはずがない。
呆然としながらもそんなことをつぶやくように話している美袮とシュリン。
「と。とにかく。…えっと、鍵となる人物は……」
とりあえず気にしない、見なかったことにして手にもっていたレンチを地面に立てかける。
そして、そのまま、ぱっと手を離し……
バタッ。
「あ。こっちにいるみたい」
とある方向に先っぽが向いてたおれたレンチをみて拾いながらもそういうシュリン。
「…毎回おもうけど、それってどうみても行き当たりばったりのような行動よね……」
実際は、それできちんと目的の人物が見つかっているのだから、
このレンチ、という物体もかなりあなどれないというのもわかってはきているが。
やはり、こう見ているとそうは思えない。
というのは人として当然、というべきか。
そんな美袮の台詞に苦笑しながら、
「と、とにかく。いってみようか?」
そのまま何ごともなかったかのように歩き始めるシュリン。
ここでのんびりとしていたら、何が起こるかわからない。
という思いもさらさらあるのだが……
進んでゆくことしばらく。
わさわさと緑の木々が多い茂っている。
…のは、まあ判るとして……
「……って、今度はこの世界がかっ!!」
思わずその姿を目の当たりにして叫んでいる美袮。
美袮が叫ぶのは仕方がないのかもしれない。
何しろうねうねと緑の物体らしき触手をくねらせて道を練り歩いている生物?らしきものたちの姿が見て取れる。
それはまさに、ついこの前まで智紗がなっていた姿とほぼ同じ。
「……え~と……」
シュリンにしても何といっていいものか。
見た目的にはかなりきついものがある。
人にまじって触手がうねり歩いているそんな状況では。
さらには町並みが植物で覆われていることからも、どれが植物で触手なのかが判別不明。
そんなかなり困った状況にと陥っているこの世界。
「と、とにかく!とっととこの世界で用事をすませて次にいくわよっ!次っ!」
せっかく忘れようと努力しているのに目の前にあの悪夢が再現されているのだ。
叫んでしまうのも美袮からすれば仕方がないといえよう。
ぞわぞわとわきたつ悪寒や寒気。
それらを押し殺し、ともかくレンチが指し示す鍵となる人物を探す為。
美袮、智紗、シュリンの三人はしばしそのあたりをうろついてゆく……
ちなみに、どこかで覚えがあるようにレンチでとある触手を三回たたいたところ、
その触手がつやつやと輝きを増したことは…いうまでもない……
■ACT4~~■
「…で?今度はいったいどんな所なわけっ!?」
いつものように扉をくぐったら…なぜかそこは深遠の闇。
ともいうべき真っ暗な空間。
それが穴の底だと気付くのは上のほうに見えている光ゆえ。
とりあえず、その場にいただけで何か苦しくなってくるようなそんな錯覚をうけるので、
とにかく、そこにある壁をよじのぼる。
「そもそも!チサがまったく元に戻らないじゃないぃい!どうにかしなさいっ!シュリン!」
「いや、ボクにいわれても……」
先ほど修正した世界で変わったこと。
といえば…智紗の顔のソレらが人間のソレではなくなり、
何かつぶらな普通の点のような目になっている…という変化がある。
それで多少は見た目のインパクトが以前よりは薄れた…とは思うが。
「そもそも!何で元に戻るどころか顔が三つになるのよっ!戻ったのは顔だけじゃないっ!」
「だから、少しづつ元に戻っているわけで……」
「これのドコが元よっ!まだリスだったときのほうがはるかにましよぉぉ!」
思わず美袮が叫んでしまうのは仕方ないであろう。
何しろ、智紗の姿は以前とさほど変わりがなく…否。
少し前までは人の顔立ちのままであったのが点のような目になっている。
という変わりようはあるものの。
それでも、やはり人の姿とはほど遠いことには変わりがない。
壁をよじのぼりきり、そんな会話をしていると。
「って!?あんたたち!?いったいどこから!?」
ふと、ききなれない声が美袮たちのほうにとむけられてくる。
みれば、何か人が彼女たちのほうにむかって走ってくるのが見て取れる。
…あの格好…何?
一瞬、美袮はそう思うが、だがしかし。
これまで非現実的なことを散々みてきているがゆえに、すぐさまその思いは打ち消す美袮。
『わ~。みてみて。ミヤ。何か人がこっちにくるよ?聞いてみたらいいんじゃない?』
キュイキュイといっているにも関わらず、智紗の言葉は理解できる。
言葉すら元に戻らずこの容姿…ほんと、どうにかしてよ。
まじで。
心の底から美袮がそんなことを思っているとは当然智紗は知る由もない。
そんな美袮の思いとは裏腹に、
「あ、あのぉ?あなたたちは…いったい?」
「というか…あの?そちらの人…?ですよね?
気配は人間なんですけど……何でニャラニャラの姿なんですか?」
栗色の髪の女の子に続いて、…なぜかラーメンどんぶりの紋様なような襟をしている男性が話しかけてくる。
「「…ニャラニャラ?」」
それって、何?
いや、どこかの某小説の中では最強食材云々…と何か言われてたようなきもしなくはないけど。
だけどもこの世界でその言葉が何を意味しているのかは当然美袮たちには判らない。
「あ。すいません。この世界で何か変わったこと…といってもわかりませんかね?
えっと、今何か起こっていることとかあります?」
とりあえず、この世界がどんなところなのか。
または何が起こっているのか。
それを把握しないことには、先に勧めない。
それゆえに、言葉を選びながらも話しかけてきた少女たちにと話しかけている美袮。
「いや。何かおこってるって。今あんたたちがそこからでてきたし……」
そんな美袮に対して戸惑い気味の栗色の髪の女性。
ま…まさか…ね。
美袮は頭の中に浮んだ可能性をどうにかこうにか否定する。
だが、そんな彼女の思いを知るよしもなく、
「あの?ところで?あなた方はいったいどなたなのですか?」
栗色の髪の女性の斜め後ろにいる神官服を着ている女性が話しかけてくる。
それは、こっちがききたいんですけど……
おもわず、美袮たちが心の中で突っ込んだのはいうまでもないが。
「いや、どなた。といわれても……そういう、あなたたちはいったい?
あ、ちなみに、私はミヤ。こっちがシュリン。…で、一応こっちが妹のチサ」
「「「…は!?」」」
美袮の淡々とした、それでいて完結な説明にその場にいる全員が目を丸くする。
たしかに、普通に考えてどうみても人ではない智紗が妹、と紹介されてもピンとこないだろう。
…普通ならば。
「なあ?あんたたち何か感じが普通の人とちがうけど、何なんだ?
ゼロス達みたいな魔族でもなさそうだし……」
金髪の男性がそんなことをいってくる。
「…ゼロス?…魔族?」
……って、魔族!?
いやそんな、まさか絶対にありえないっ!
美袮の心の葛藤はそのままぽそっと言葉に表れる。
ゼロスに魔族。
それで想像というか思い浮かぶのは、やはりあの小説しかない。
まさか……ものすっごく嫌な予感がするんですけど?
そんな美袮の心は何のその。
「そ、それよりっ!今、あんた。えっと…ミヤ、とかいったわよね?
そのニャラニャラもどきが【妹】って……?」
恐る恐る、といった表情で問いかけてくる栗色の女性の言葉に続き、
「確か。今現在の様子では、妹族とかなぜか言われてる人間さんたちは、
外見上はあくまでも人のはずですけど?報告によれば」
にこやかにそんな彼女たちにと説明しているニコ目のラーメンどんぶり柄の神官服の男性。
おもわずそんな彼らの会話に顔を見合わせる。
そして。
「あ。あの?もしかして。もしかしなくても、あなたたちも元の状態…覚えてる口ですか?」
意を決したようにと問いかけるシュリン。
シュリンは今までに元の状態を覚えている人物、というのはあまり見たことがない。
いや、幾人かは今までの世界にも多少はいたが。
その中で今一緒に行動している美袮が一番例外中の例外であろう。
ゆえにこそ、美袮の常識外もいいところの現状を知っているがゆえに多少びくつきながらも問いかける。
「もしかして、あんたたちも元の状態覚えてるの!?」
シュリンの言葉に反応してか、ばっと身を乗り出すようにして話しかけてくる女性。
「あの~?もしかして、あなた。この異変の理由を理解してらっしゃるんですか?
もしそうならできれば教えていただきたいのですけど……
僕達も正直、戸惑っているんですよ。状況が状況なだけに……」
戸惑い気味に話しかけてくる神官服の男性。
それでも目を細めたままのその表情から何を考えているのかとらえどころがない。
という感覚は否めない。
「え。えっと…説明しても判らないかとおもうんだけど……」
「まあ、私たちもあまり知ってるわけじゃない。というかこっちも必死。というか。
それより、えっと。ひとまずあなたたちの名前教えてもらえます?」
シュリンが申し訳なさそうにつぶやくが、だがしかし。
美袮からすればそんなのはどうでもいいこと。
まず、自分の中に沸き起こっている疑問をはやく解決させたい。
…どうかそうではありませんように。
そう心の中でしっかりと願いつつ。
「えっと。あたしがリナ。んでこっちがゼロス。
このどうでもいい黒い物体がゼロスと、こっちがヒュレイカー」
「…は?!」
『…は?』
想像していた、とはいえまさかその名前がでてくるとは!?
「えっと…今、リナに…それにゼロスっていわなかった?」
おもわず確認をこめて問いかける美袮。
『わ~。まるで小説の人物の名前と一緒~』
何やら…三つの頭をくねくねさせつついっている智紗……
せめて、せめて初めのリスの姿であってくれたほうがよほどまし……
心から美袮はそうおもうが、智紗のほうは今の姿が当たり前。
とおもっているので何とも思わない。
「なるほど。この世界には魔族とかがいる世界なのか~」
ぽん、と手をうちながらも何やらいっているシュリン。
シュリンのほうは様々な世界を修正してきているがゆえにあまり動じることはない。
「?魔族とかいるのあたりまえじゃない?というか。あんたたち、あたし達をしってるの?」
リナ、と名乗った…美袮の考えが正しければ間違いなくこの栗色の髪の女性は、
リナ=インバース。
様々な二つ名をもっている魔道士。
「え。えっと。それより。あの?ここどこか教えてもらえます?」
「復興しかけてるサイラーグだけど?」
がくっ。
さらっといわれたリナの台詞にがくりとなる美袮。
冗談であってほしい、とおもっていた可能性がことごとく否定された瞬間。
サイラーグにリナ。
しかも復興しかけている。
ここまでくればもはや疑いようはないであろう。
「なるほど。ここはサイラーグ、という場所なんですか。
…とりあえず、レンチでたたかないといけない人を探さないと…近くにいるはずなんだけど……」
そんな美袮の心情は何のその、はやくここの鍵となっている人物をみつけないと。
そうおもいつつつぶやいているシュリンの姿。
と。
「あの?ガウリイ様?みなさん?いったいどうなさったのですか?」
そんな彼女たちの背後から黒髪の長い巫女姿の女性が何かいいつつ近づいてくる。
…その背後に、何でか手が四つあり、目が五つある人物がいるのは見なかったことにしている美袮。
と。
「あああっ!!!」
「「「??」」」
いきなりシュリンがなぜか叫びだす。
そして。
「いたぁぁ!!」
ぴしっと後からきた黒髪の女性を指差して叫んでいるシュリン。
「って、シュリン!?あの人がそうなわけ!?」
『わ~。今回はすぐにみつかったね~』
世の中、ここまで狭いとは。
いままでで最短記録のような気がする。
美袮がそう思っている最中、
「あ?あの?ガウリイ様?リナさん?その人たちは…いったい?」
戸惑い気味に金髪の男性に話しかけている女性。
…えっと…
ガウリイ…様って…もしかして、この女性って……
「あ、あの?」
まさか、この人…あのシルフィール=ネルス=ラーダ?
その可能性しか思い当たらずに、確認しようと声をかけようとする美袮であるが、
だけどっ!
「えっと。ちょっとすいませんっ!」
ばっ!
その前にやらなければいけないことがある!
そう心に固く近い、近くにいたシュリンからレンチを奪い取り、
そのままシルフィールとおもわしき女性にとむかってゆく美袮。
そして、そのままシルフィールを殴りつけるようにしてレンチを振り下ろす。
「って、何するんですかっ!?」
さすがにそんな美袮の行動に抗議の声をその女性は上げてくるが、
「お願いだから私のためにもたたかれてっ!!」
シュリンが指し示した鍵なる人物がこの女性ならば。
この人を三回たたけば、今の智紗のあまりといえばあまりの姿から開放されるっ!
とにかくはやくこの三つ頭の白き物体の姿とはおさらばしたいっ!
固く心に誓っている美袮にそんな彼女…シルフィールの抗議の声が届くはずもない。
「ちょっと!いきなり人に何してるわけ!?…
ドゴガァァッン!!
「…って、んきゃぁぁ!?」
リナ、と自己紹介した人物の呪文らしきものによってそのまま吹き飛ばされるシルフィール。
だがしかし、美袮のほうはそのまま持ちこたえていたりする。
つまりは、今の術で吹き飛んだのはシルフィールのみ。
巻き込まれたのは確実に二人とも巻き込まれたのであるが……
「まったく。いきなり人をあんなの振り回して追いかけるなんて。いったい全体何なわけ?」
さすがに呪文というものを目の当たりにしたことはない。
それゆえに一瞬の隙ができる。
そんな美袮の手からぱしっとレンチを掴み取り、ぽいっと地面にと放り投げる。
「え…えっと。すいません。えっと…事情をお話いたします……
それはそうと。そちらの人、大丈夫なんですか?」
そんな彼女たちにむかって、恐る恐るといった感じで話しかけているシュリン。
一方で、
「シルフィールさん?大丈夫ですか~?」
「というか。これってこの世界のものじゃなさそうですね……」
何やらかがみこんでそんな会話をしている神官服をまとった男女の姿。
「だけど、はやくアレを何とかしたいのにっ!」
「美袮さん。先にまずは説明のほうがいいとおもいますよ?」
美袮の気持ちも十分に理解はできるが、そんな美袮をなだめつつ、
ひとまず状況を説明するためにとシュリンが溜息とともにリナ達にと話しかける……
結局のところ、彼女たちにきちんと説明するべく少し離れた場所で話し合いをすることになる彼らたち。
一方の智紗といえば、
「何かおもしろ~い!ひょっとして、あの世界!?」
一人、三つの白い頭をうねうねさせつつぴょんぴょんと飛び跳ねていたのは……
美袮は見なかったことにした……
■ACT10~何ともいえないむなしさが……~ ■
うにょうにょうにょ。
やっぱ、どうみてもニョロニョロにしかみえない。
ムーミ○、という漫画にでてきたとある生物。
まともに妹の姿が凝視できない、というのは結構つらい。
以前の蔓のときにもかなり精神的にくるものがあったが……
「…な…なるほど…にわかには信じがたい話ですね……」
シュリンから説明をうけて、多少かすれるような声でつぶやいているゼロスと名乗った神官服の男性。
ちなみにシルフィールと名乗った女性のほうはといえば、また叩かれてはたまらない。
というのもあってしっかりとレンチを握り締めてその場に座っていたりする。
たしかに普通は信じられないであろう。
それは美袮たちとて同じこと。
だがしかし、実際にソレは起こっているわけで……
ある日、いきなり世界に少しづつ異変が生じ、レンチで世界に一人づついる鍵の存在。
その存在を三回ほど叩くことによってその異変は少しづつではあるが元通りになってゆく。
何でも似たような世界がいくつもあるらしく、それらが変に交じり合っておかしくなっている。
しかも、その異変に関しては普通ならばそれが異変が起こっているのが当たり前。
と通常の人々は思い日々過ごしているらしい。
その中でも美袮はモトの状態をしっているので余計に神経を使う。
「それで。この世界での鍵になってるのが、そこの人なわけで。レンチが鍵の人物を教えてくれるんですよ」
困ったように説明しているシュリンであるが。
「…で?さっき、そこのミヤさんが必死になってたのは、ソレを治すため?」
「だって…だってっ!
この前ようやく触手に変化してたのがリスになって少しはましになったとおもったのにっ!
今度は…今度はこれなのよっ!?毎日一緒に暮らしてる私の気持ちわかるっ!?」
「し…触手…って……」
思わず美袮の台詞に想像してしまい、顔を曇らせるリナ。
かなり想像したくない。
まさかその触手のままで下着をきてウネウネとうごめく…などとまでは想像してないが。
そんな光景を美袮は目の当たりにしているのもまた事実。
だからこそ、妹を少しでもはやく少しでもましな姿にもどそうと必死になっている美袮。
「ですけど。信じられませんわ」
シルフィールがしっかりとレンチを抱きかかえながら突っ込みをいれてくる。
いきなり見知らない女性から固いもので叩かれそうになればその反応もいたし方がないであろうが。
「と。とりあえず。別に叩くとかでなくても、三回、そのレンチに触れればいいだけなんですけど……
とにかく、鍵となっている人物に三回、そのレンチを当てれば少しづつですが回復するわけです」
シュリンが申し訳なさそうにシルフィールに向かって話しかける。
「…とりあえず。シルフィール。だまされたとおもってやってみたら?」
そんな彼女をなだめるかのようにいっているリナ。
リナとすればシルフィールにアレを三回触れさせればこの現状がどうにかなるかも。
そう聞かされて試さないわけはない。
「まあまあ。シルフィールさん。そういわずに……」
ひょい。
「って、いきなり何するんですかっ!?」
ばっ!
にこやかに話しかけながらも、シルフィールの手からするっとレンチを奪うヒュレイカーと名乗った女性。
美袮たちの記憶が確かならば、この女性もまた魔族であり、
そんなヒュレイカーからばっと再びレンチを取り戻しているシルフィール。
「「…あ」」
?
それをみてシュリンと美袮が同時に声をあげる。
そしてそのまま、ばっと視線を智紗へとむける。
「「「「……嘘!?」」」」
そんな彼らにつれられ、そちらに視線を移したリナ達もまた同時に絶句。
「変わった手品だな~」
場違いなことをいっている金髪の男性、ガウリイがいるのはともかくとして。
シルフィールがレンチを再び握り締めるとほぼ同時。
ぐにゃり、とニョロニョロもどきの姿が歪み。
次の瞬間。
そこには七つの尻尾のある茶色いちょっとした大きさのリスが一匹……
「ち…チサぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その姿をみて瞳におもいっきり涙をためて、ばっとリスとなったソレを抱きしめている美袮。
この姿は初めて異変がおこったときに智紗が姿をかえていた姿。
そんなことはリナ達は知る由もないが。
「……あたし…今度は変なモノになってたよ……」
何やらリスの姿でそんなことをいいながら、どんよりと落ち込んでいる智紗。
先日の蔓といい、こんどはニョロニョロもどきといい……
それでも、まだ自分が本来は人の姿である。
というのに違和感を感じている。
そんなキモイことあるわけがない。
そう思っている智紗。
感覚はいまだに元の現状には戻ってはいない。
先ほどまで何ともいえない姿だったその姿はもシルフィールが三回レンチに触れたとたん。
その姿は瞬く間にゆらりと変化し、今の姿に変化した。
いや、初期の状態にもどった…というほうが美袮にとってはしっくりくるかもしれないが。
「いやぁ。今のでどうやら三回、シルフィールさんがレンチに触れたことになったようですね。
これでこの世界の鍵の修正は完了ですね。しかし、この世界でチサさんがリスになってよかったですよ」
そんな姿がかわった智紗をみて、にこやかにしみじみといっているシュリン。
また蔓だったらどうしよう。
という思いがあっただけに、その言葉にはしみじみと感無量の意味合がこもっている。
「…え?…あ、わたくし?……あれ?」
一方の、三回レンチに触れたシルフィールのほうは戸惑ったような表情をしリナのほうを見ていたりする。
そして。
「あ、あの?リナさん…ですわよね?…何変わった姿なさってるんですか?
人間の姿をしているなんて、ひどい病気か何かですか?
あの真っ白な平らな突起もまったくない白いひょろっとした体はどうしたんですか?」
ものすごく驚いたように、リナのほうにむかって語りかけるシルフィール。
「って、なおってないじゃないのよっ!」
がくがくがくっ。
おもわず突っ込みをいれつつも、シュリンの胸元を掴んでがくがくゆするリナ。
「い。いや。そういわれましても。でも少しづつはなおってゆくはずですので……」
「うう。ようやくチサが初めのころのリスの姿になった…でもいつになったら元にもどるの?
…何か修正してゆくたびにかなり怖いことになってるのは気のせい?」
困ったようにいっているシュリンと、そして何やら涙目になりながらもいっている美袮。
「えっと…とりあえず。信じざるを得ない…のでしょうか?
普通は呪文とかを人間が防げるなんて常識的にありえませんしね……
何でさっきまでは、それが防げて当たり前。とわたくしおもっていたんでしょうか??」
一方でシルフィールはシルフィールで一人、何やらぶつぶつといっている。
「と。とりあえず。まあそういうことです。僕達はではこれで……」
「って、まていっ!」
がしっ!
そのまま、逃げるようにこの場をたちさり、例の穴のほうにむかってゆくシュリン。
そんな彼の服のすそをがしっとつかむリナ。
「というか!その説明をきちんと姉ちゃんたちにもしてから帰るなら帰ってよねっ!!」
しっかりと服を掴んで叫ぶリナの台詞に同調するかのように、
「たしかに。そうですわね。わたくしも上司に説明しようにも説明しにくいですし。
ここはやはり、多少事情に詳しいあなた方に説明してもらうのが無難かと存知ますが?」
「それもそうですね。あ。それじゃ、空間つなげましょうか?」
「ですわね。まだたしか、上の方々はゼフィーリアにいらっしゃるのでしょう?」
にこやかにそんな会話をしているヒュレイカーとゼロス。
「あ?あの?それって……?」
二人の会話から察するにかなりいやな予感がひしひしする。
おもわず美袮がつぶやくと同時、
「それじゃ。そういうことで♡」
くるっん。
ゼロスがいうと同時に、手にもっていた錫杖をくるりと一回転させる。
そして、回転させると同時に何もないそのあたりの空間に何やら円を描く。
と。
ぐにゃ。
「「え!?」」
それと同時にゼロスが今錫杖を振った空間が何やら歪み、まるで水鏡のように変化する。
誰ともなく驚きの声が発せられると同時。
「というわけで。えっと。シュリンさん。そしてミヤさんにチサさん…でしたっけ?
申し訳ありませんが説明のご協力お願いしますね♡」
いうが早いが、いきなりぐいっと三人をひっぱるゼロス。
「ってまていっ!」
がしっ!
「「んきゃぁ~!!??」」
まだ肝心なことをきいていないっ!
それゆえに、ゼロスにひっぱられそうになっている美袮の足をがしっとつかむリナ。
それと同時に何か転がるように悲鳴をあげながらこちら側に倒れこんでくる美袮と智紗。
みれば、空間の渦に飲み込まれるかのごとくにシュリンはゼロスに連れられて掻き消えている。
「ちょ!?いきなり何するんですかっ!?」
そんなリナに美袮が抗議の声をあげるものの、
「何か。ってこっちの台詞よっ!このままあんたたちがいなくなってあたし達にどうしろと!?」
リナのそんな叫びに、
「そういわれましてもっ!というか、私だって必死なんですよっ!?
よく気が狂わないな。と自分でおもうんですからっ!」
思わず反論している美袮。
本来ならば気が狂ってもおかしくない状況に幾度もぶちあたった。
理不尽な妹文明とかいう世界に紛れ込んだこともあった。
しかも、ハチがビームを出したりする…という、とんでもない世界異変も…・・・
「と、とにかくっ!少しでも何か手がかりになるようなことないわけ!?」
がくがくと襟首をつかんでゆするリナの台詞に、
『手がかりかどうかはわからないけど。この前、お姉ちゃん。
小説よんでて何かにたまげて放り出したよね?あのときあの小説が扉に入り込んだけど。
あれって、たしかスレイヤーズの小説よね?』
智紗の声がまだ沈んでいるのは先ほどまでの自分の姿にショックを受けているがため。
さすがにこのリスもどきの姿が普通だ、と思っている現状で、
あの姿はかなり応えているようである。
「?スレイヤーズ?何それ?」
そんな智紗の台詞に思わずガウリイと顔を見合わせているリナ。
「え?で、でもまさか……だけど…もし、あれが原因だったとしたら……」
その台詞に、はたっと思い当たり、ぶつぶつとつぶやく美袮。
ありえない。
絶対にありえない。
だけども現実にありえないことが今現在起きている。
そんな中で、ありえない、と片付けてしまうのは……
様々な思いが頭の中で混乱する。
「だ・か・らっ!きちんと説明してよねっ!」
叫ぶと同時に呪文詠唱を開始しはじめるリナに対し、
「わ、わかりました!わかりましたから、その呪文ってたしか
おもわず反射的に叫ぶ美袮。
美袮とてあの小説やアニメを幾度もみているのでこの呪文が何かくらいはわかる。
まあ、
「リナさん。いくら相手がなかなか的を得ないことをいうとしても。
いくら何でも
そんなリナに戸惑ったかのようにシルフィールが話しかける。
シルフィールがリナをみる視線はいまだに何か気妙なものをみるような視線のまま。
つまりは、この世界の異変もまだ完全に直っていない、という証拠ではある。
「え。えっと。それがですね……」
さすがに、万が一、これ以上とんでもない術などをされてもたまらない。
そう観念し、美袮は簡易的に状況をリナ達にと説明はじめる。
彼女たちの世界に、この世界と同じような世界を元にした小説がある。
ということ。
その小説を読んでいたときに、いきなり驚かそうとした妹|智紗の動作でかなり驚愕し、
おもいっきり叫ぶと同時に持っていた本を放り出してしまったこと。
そのとき、たまたまその手にもっていた本の一冊が部屋の中にある無数の扉の一つに吸い込まれたこと。
しかもその登場人物の名前すべてがリナ達と同じであること。
「もしかしたら、それが原因…とも考えられなくもないですけど…ですけど……」
戸惑いぎみにつぶやく美袮。
「…その、扉。って、あんなやつ?」
リナが指差した先には、暗い穴の中にぽっかりと浮んでいる扉が一つ。
「え?あ。あれです。…そ、それじゃ、私たちはこれで!」
「え?あ。ちょっ…っ!」
いうなり、がっと智紗をひっつかみ、だっとかけだす美袮。
そのまま、穴に跳び入り、空中に浮んでいる扉のほうにと手をかける。
美袮の考えが正しければ、これで元の自分の部屋にもどれるはずっ!
そんな彼女の思いを証明するかのように、そのまま美袮たちの姿は扉の中にと吸い込まれる。
■ACT∞~もどってきたはいいものの?~■
どさっ。
「…も、もどった~……」
きょろきょろと見渡せば、幾つもある無数の扉がある自分の家のリビング。
「はっ!?智紗!?」
おもわずばっと智紗の姿が元にもどっているかどうか確認する。
人の…本来の妹の姿にもどっているかも。
という淡い期待を抱きつつ。
だがしかし、そこにいるのは七つの尻尾があるリスもどきの妹の姿。
「おね~?もったいなくない?いきなりもどるなんて?」
みれば、たしか自分達がすいこまれたはずの扉がきえている。
何か床に黒いしみのようなものができているようなきがするのは気にしないことにする美袮。
「いいのっ!…と、とにかく!次いくわよっ!次!!」
結局のところ、あの世界に紛れ込んだ?はいいが、智紗の姿は以前リスのまま。
ならば、美袮は元どおりになるまで幾度も扉をくぐるしかない。
もう、今度は何があっても驚かないけど…けど!
たのむから、智紗の姿は今後は変なものになりませんようにっ!
そう、美袮が心の底から願ったのは…いうまでもない……
-番外編終了v-
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あとがきもどき:
薫:さてさて。ようやくドアーズ版のほうも完了ですv
長かったな~。
まあ、ドアーズ版はあくまでも美袮視点のほうが多いのは原作でもだし?(笑
ドアーズの原作完結が楽しみな今日このごろv
とりあえず、ここまでお付き合いくださいまして、まことにありがとうございましたv
ちなみに、やはりこの異変…やってるのはエル様、だと思うのは私だけではないはずです♪
ではでは、皆様、また別のお話で~vvv
2007年11月11日(月)某日
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