まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

こんにちわ。
祝!神坂一先生最新作。角川スニーカー文庫。2009年9月ドアーズ一巻発売!
というわけで(何が?)
ドアーズ発売を記念して、ドアーズメンバーがスレイヤーズの世界に乱入!
というか、スレイヤーズの世界まであの異変に巻き込まれる。
といったお話をばvv
そのうちに、ドアーズサイドのほうも打ち込みする…予定(多分)
ドアーズを読んでない人は意味不明でしょうから見ないでください(他力本願
では、ゆくのですv

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 Blue Rose~ありえないこと~ ~リナサイド~

■ACT01~始まり~■

えっとぉ……何がどうなってるわけ?
「…なあ?リナ?オレ、夢の中にいるのかな~?」
「んなわけないでしょっ!…といいたいけど、ありえるかも……」
思わず唖然としてしまうのは仕方がない。
絶対に。
いつものように宿にととまり、起きてみたら…こうなっていた。
えっと……
いったい全体何が……
うようよと、ところかしこに普通に見えるゴーストもどきたち。
しかも、普通の人々と一緒になごなかに会話とかしてるのはどういうわけか?
さらにいえば、…動物があの…呪文つかっるてんですけど?
もしも~し?
ガウリイのいうように、もしかしたら夢なのかもしれない。
うん。
絶対にそうだ。
そうにちがいないっ!
「…と、とりあえず。魔道士協会にいってみましょ……」
不思議というかおかしいのは、他の人々がこの状態に何の違和感なく溶け込んでいる。
ということだ。
普通に人間の言葉を話す動物となごやかに会話してる時点でおかしすぎる……
それに対してだれも違和感を感じていないようだし…
あたしとガウリイを除いて……
「動物ってそういえば話せたんだな~。オレ今何か始めてしった」
「んなわけあるかぁぁっ!!」
すぱぁぁっんっ!
懐から取り出したハリセンがガウリイの頭を直撃する。
「と、とにかくっ!この町の魔道士協会にいくわよっ!」
まったくもって、いったい全体どうなっているのやら……
あと少しでゼフィーリアの国境に近い。
というのに……
犬やら猫。あげくは鳥さんまでもが呪文をはなっているこの現状……
誰か、きちんと説明してっ!
夢にしては、痛みとかまであるのよぉぉ!!
…あうっ……

とりあえず、魔道士協会に向かうあたしとガウリイ。
あたしはそこで…世にも恐ろしい…
否、よろこんでひきうけざるを得ない依頼をうけることになろうとは。
…この時点でのあたしは、夢にも…というか、まったくもって想像すらしていなかった……

『リナへ。何かいきなり世界がおかしくなってるから、原因つきとめてきなさい。BY姉より』

魔道士協会に出向いたあたしにと、手紙がきている。
と協会の人にいわれ……みてみると…それは……郷里の姉ちゃんからの…
強制、ともいえる命令のような依頼……
こ…断ったらころされるぅぅっ!
というか、どう調べろっていうのよっぉぉ!姉ちゃぁぁぁんっ!!!!!!!(涙
「……あ…あたまいたひ……」
がくっ。
これをいったいどういえばいいというのだろう?
「お~い?リナ?いったいどうしたんだ?」
思わず頭を抱えるあたしにと話しかけてくるガウリイだけど。
「…ガウリイ。あんた、これみて何ともおもわないわけ?」
泊まっていた宿から魔道士協会はそれほど離れていなかったので気づかなかったのだが。
というか…気づきたくなかった。
いや、本当に…まじで。
「これって。何だ?」
「何で人間がネズミになってるのよっ!!」
判りたくないけど、わかってしまう自分もかなしい。
ネズミがなぜか人間の言葉…らしきもの。
というか、キーキーいってるのになぜか言葉がわかる。
しかも…それらが元々は普通の人間であった。
ということすらも。
「?いわれてみればおかしいのかもな?
  だけど、二番目以降に産まれる子供っていつも人以外の姿じゃなかったっけか?」
ちょいまていっ!
「何それ!?つうか、それ何!?」
がくがくガウリイの襟首をつかんでゆするあたしの言葉に。
「…いわれてみれば、たしかにおかしいかな?
  …でも、リナに言われるまで、それが普通。とおもってたしな~」
「んな普通があるかっ!!」
すばこぉっん!
とりあえずとぼけたことをいうガウリイの頭をはたいておく。
こ…これは、もしかすると…何かものすごく面倒な仕事を姉ちゃんに押し付け…
もとい、依頼されたんじゃぁ……
あうあうあう。
これなら、まだ魔族とかと戦ってるほうが遥かにましよぉぉぉぉ!!

…あたしが協会に出向いた後。
昨日と今日で変わっていることに気づいた点は多々とある。
その中でも…なぜか妹とか弟。
といったような第二子以降に生まれている人たちが…人あらざる姿になっている…
という現実を…なぜかつきつけられているこの現状。
幸運にもあたしにはその現象はおこっていない。
…しかし…あの何かずるずるとした触手のような物体までもが元人っていったい…
も、夢なら早くさめて…くすん……


■ACT02~異変の現状~■

どうやら異変は一つの町だけではないようである。
最も、一番の異変というか異常なのは、この現実を誰もがおかしい。
とおもっていない点にある。
誰もが普通に言葉を話す虫などと会話をしており、また虫がところかしこに呪文をぶっぱなしている。
そんな出来事がさも当たり前のように誰も驚いてすらおらず。
世間話のふりをして食堂などで人の話しをきくにしても。
やはり、みなさん同じ反応。
あたしが何をいってるの?じょ~たいである。
ここまで皆さんが一様に以前のことを勘違い。
というか、常識外なことを常識だ。
と思い込んでいるのは絶対に何か原因があるはずである。
だがしかし、その原因がわからないことにはどうしようもない。
もしかして?
とおもって魔道士協会にとある閲覧所などで文献などを調べてみても、
今までとはまったくことなった記載に変わっているこの現状。
もしかしたら、昔姉ちゃんとか女王様とかから聞いたことがある平行世界うんぬん。
そこに紛れ込んでしまったのでは?
とおもわないでもないが。
だが、そうでないのは姉ちゃんからの依頼の手紙。
それによっても一目瞭然。
とりあえず、一般の人々がそれが当たり前。
とおもっていることが、実は当たり前でなくて……
だけど…どうでもいいけど、街中にあからさまに問答無用で呪文をぶっばなしたい。
そんな格好をしている元人…がいるのはどうにかしてほしい。
いや、まじで……
ずるずるとよくわからないような蔦のような格好のものに服を着ている存在の姿も目にはいる。
…はやくどうにかしないと、ぜったいにあたしの精神がこりはもたないぞ……

数日、いろいろと調べてみて判ったこと。
それは、今までは魔法などといったものは物理的ダメージと、精神的ダメージ。
その二つにと分かれていた。
だがしかし、今のこの異変が起こっている世界においては、その二つは両方とも同一。
つまりは、どちらも物理的ダメージが加わる。
ということで。
もっと簡単にいえば、そこいらにみえているゴーストを退治するのにも、
普通に攻撃するだけで問題ない。
たぶん、この様子だと精神体である魔族とかも普通に攻撃するだけで問題ないような気がする。
最も、好き好んでそんな存在と関わろうとはおもわないが。
「なあ?リナ?…調べるだけムダなんじゃないのか?」
「ガウリイはだまっててっ!…言われなくてもあたしもそうおもうけど…けどっ!
  姉ちゃんの依頼なのよっ!!わかりませんでした。じゃ、すまないのよぉぉ!」
下手をすればそれを理由にどんなお仕置きをくらうかわからない。
それでなくても今回の里帰りはかなりのお仕置き、もしくはお説教覚悟のものだったのだ。
そんなあたしの心からの絶叫に、
「…だから、リナの姉ちゃんっていったい……」
「きかないで……」
あの姉ちゃんははっきりいって人じゃない。
まあ、事実、赤の竜神スィーフィードの力をもってるんだから人じゃない。
といえばそれまでだけど……
そ~いや、昔聞いたことがあるけど、何でも力の一部のみで、記憶とか能力。
そういったものは姉ちゃんはもっていない。
とか永遠の女王エターナルクイーンはいってたっけ?
…あのとき、何か「今は」という台詞がついていたような、そうでなかったような。
そもそも、うちの女王。
というかゼフィーリアの女王も人じゃないとおもう。
絶対に……
…見た目の年齢はず~とあたしがものごころついたころから二十歳前くらいの若い女性。
のままだし……
見た目と実際年齢があわない人。
というのはよくいるけど、あれは絶対に論外だとおもう。
もしかしたら、エルフとかの血が混じっててそうなってるのかもしれないけど。
何しろエルフとかの寿命とか歳のとり方って人のそれとは異なるし……
「と、とにかくっ!いろいろと話しを聞いてまわるしか手はないんだし……」
「…どうもありがとうございました~」
…びくっ。
あたしとガウリイがそんな会話をしていると、何やら目の前のほうから聞き覚えのある声が……
き、気のせいよ。
うん!!
「おう。何かあんちゃん、具合がわるそうだが気をつけなよ?」
「あ…あはは……そ、そうですね……」
くるっ。
何やら目の前のほうからどこかの男性と何やら話している男性の声が。
いや、アレを男性…と特定するのもどうか?
とおもわないでもないけども…
と、とにかく。
係わり合いになりたくない。
こういう場合でなければここはひとつ、文句の一つでもいいたいところだけど……
「あれ?なあ、リナ、あれって・・・」
「ガウリイ。何もみなかった。いいわねっ!さ、いくわよっ!!」
ぐいっ。
とりあえず、そちらに気づかれないようにとくるっと向きを変えて元来たみちを戻ってゆくあたし達。
と。
「…おや?あれ~?リナさんたちじゃないですか~?奇遇ですね~」
き、聞こえない、聞こえない。
あたしはな~んにもきこえないい~~!!
背後のほうから聞こえてくる声は、あたしは絶対に聞こえてないっ!!!
「お~。ゼロスじゃないか~。ひさじふり~」
「って、あんたは話しかけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
…何でこうなるんだろう?
というか、何でこんなところにこいつがいるのよぉぉぉ!?
…いうまでもなく、そこにいるのは…あの迷惑極まりない獣神官のゼロスの姿……
まさか、このたびの異変って…また魔族がらみなわけ?
…何でこうたびたび魔族がらみの事件にまきこまれないといけないのよぉぉ!?
あたしが何かしたってかぁぁ!?


■ACT03~お約束?のゴキブリ登場~■

「お久しぶりです。リナさん。ガウリイさん。…あれ?リナさん?何か不機嫌ですね~」
にこやかに話しかけたガウリイに乗じて、てくてくとこちらに近づきながらも何やらいってくる黒い物体。
というか、何だってこいつがこんなところに……
「さ。ガウリイ。いこ」
「って無視しないでくださいよっ!あからさまにっ!!」
そんな黒い物体をあっさり無視して立ち去ろうとするそんなあたしに何やら抗議の声をかけてくる。
無視に限る。
うん。
「お。おい、リナ?」
「次の村ではどんな話しが出てくることやら……」
そこにある黒い物体はないもの。
と判断し、話しを進めてガウリイを促す。
と。
「ゼロスさ~ん。やっぱりこの村でも何もわかりませんよ~」
??
何か聞きなれない女の子の声が聞こえてくる。
って…女の子?
思わずなぜに害虫以外の何ものでもないヤツの名前を呼ぶやつがいるのやら。
と思いながらふとそちらのほうに視線をむけると。
神官服に身を包んだ多少カールのかかった髪の長い女の子の姿が目に入る。
まさか…こいつ、人畜無害な女の子をだましてるとか?
いや、こいつの場合だましている、というか利用している。
といったほうがいいだろうけど。
そして、タタタ、とあたし達のほうに走りよってきて、そしてふと。
「あれ?ゼロスさん。この二人、誰ですか?」
きょとん、と首をかしげて何やら問いかけていたりする。
「?なあ?ゼロス?この魔族の姉ちゃん、誰だ?」
……ぴしっ。
首をかしげながらそこにいる黒い物体に問いかけるガウリイの言葉に思わず硬直。
「…え゛?…あ、あの?ぜ…ゼロスさん?…この人って……」
どうやら図星であったらしくあたし同様、その彼女もまた硬直しているのが見て取れる。
「ああ。ヒュレイカーさん。あなたも聞いたことがあるでしょう?
  この二人があの、リナさんとガウリイさんですよ」
硬直しているその女性にとにこやかに話しかけている黒い物体…いうまでもなく獣神官ゼロスの姿。
そんなゼロスの台詞をうけ、
「えええ!?あの魔王様を二度も滅ぼしてくれたあのっ!?ついでに冥王様まで滅ぼした!?」
「って、こらまてっ!それは聞き捨てならないわよっ!!」
叫ぶ、ヒュレイカー、と呼ばれた女性の台詞に思わずつっこみ。
「フィブリゾはあたしが滅ぼしたわけじゃないでしょうがっ!!」
そんなあたしの意見は何のその。
「さらには、覇王様まで弱体化させて、かなり魔族にとって鬼門以外の何ものでもないあのっ!?
  リナ=インバースですかっ!?」
……おひ……
「……あんたら……」
魔族の中でのあたしの立場っていったい……
とりあえず。
青魔烈弾波ブラムブレイザー!!」
パキッン。
ちっ!
無効化された!?
虫などが混沌の言葉を唱えずに魔法を発動させている。
というのがあるので、力ある言葉のみで術が発動する。
というのはこの数日で確認ずみ。
ゆえに、問答無用で術をゼロスたちにむけて解き放つ。
…ゼロスはともかく、何でこのもう一人の女性の魔族までもが無効化させることができるのやら。
…もしかして、こいつもかなり高位魔族なわけ!?
……何で、あたしってまともに生きているのにこんな奴等とばかり関わるハメになるんだろうか??

「……で?」
とりあえず、村の中で話しをする。
というのもはばかれるので近くにある食堂にと入っているあたし達。
…食堂の中の人?らしきものたちの姿は気にしないことにする。
気にしだしたらもう呪文の一つや二つでもぶっ放さないと気がすまなくなってしまう。
それほどまでに、今のこの世界の情勢。
というか人々の姿が変化しているこの現状。
「そういえば。たしかリナさんも第二子でしたよね?」
「そうだけど?」
「よくリナさん、無事でしたね~。さすがというか、何というか……」
思いっきり不機嫌になりながらもゼロスの問いにひとまず答える。
「私たちの調査したところ、すべての世界において、第二子の容姿がすべて変化してるんですけどねぇ」
…ちょいまて。
かなりまて。
「…すると、何?もしかしてあんたたちもこの異変を調べてるわけ?」
何で魔族が??
そんな疑問がふと浮び、思わず問いかける。
まあ、それよりも、世界全て。
というのがかなり気にならないこともないけども。
「ええ。そういうリナさん達もですか?
  ということはもしかしてリナさんは、以前のまともな状態の記憶のまま。ということですか?
  もう、みなさんの話をきいても、会話がすべてちぐはぐで。
  どこからどう調べていいものか僕達も困っていたんですよ」
「あ~。同意したくないけど、その点に関してはあたしもものすごく同意するわ。
  いきなりある日の朝おきたら、こんな状態になってたしね。
  あんたたち魔族側が何かした。とかじゃないの?てっきりあたしはその可能性かとおもったけど?」
そんなあたしの台詞に、
「私たちも戸惑っているんですよ~。あ、そういえば自己紹介が遅れました。
  私はヒュレイカーと申します。これでも一応神官なんですよv」
「…格好みればわかるって……って…神官?」
まさか…?
おもわず、ぎぎっと顔をぎこちなくゼロスのほうにと向けて視線で問いかける。
「ええ。そうですよ。僕の同僚です。このヒュレイカーさんは。
  今まともに動けるのが僕くらいなので、このヒュレイカーさんとこの異変の調査に使わされたんですよ。
  まったく。覇王様たちの部下は覇王様が弱体化してしまったので今はあまり動けませんし。
  といって、冥王様はすでにいませんしねぇ。
  魔竜王さんにしてもすでにその部下の方々からしていませんし」
というか、それはあんたがやっつけたからでしょうが。
そう突っ込みしたいのを何とかこらえる。
「ともかく。僕達もこの異変に関しては正直、とまどっているんですよ。
  何しろ十八番ともいえる精神世界面からの移動や攻撃といったものができなくなってますし。
  というか、普通に移動とかが見えるんですよ…誰にでも……
  挙句は僕等精神生命体には物理的攻撃は通用しない。
  というのが常識のはずなのに、物理的攻撃がおもいっきり通じるのがいまはあたりまえ。
  となってるんですよ。さらにいえば今まであったはずのこの地区を覆っていた結界。
  あれはまあ冥王様が滅んだことにより効力がそがれていたんですけど。
  今はそれすら用をなさなくなってしまってまして……」
って、やっぱりか。
もしかして。
とはおもったけど……
魔族にも物理的攻撃が異変が起こっているこの現状では通用することになっているらしい。
「我が主、海王様が冗談半分に氷を砕いたところ、あっさりと砕けた、
  というのがまあ利点といえば利点なんですけど。
  このままだと、私たち魔族の尊厳にも関わりますので、こうして調べているわけですわ」
……何か、今、ものすご~く聞きたくない台詞を聞いたような?
…気のせいだとおもうことにしよう。
うん。
「念の為にセイルーンとかの様子もみにいったんですけど。
  あのアメリアさんですら姿がかわってましたからねぇ」
……え゛?
「ちなみに。アメリアさんはカラスになってましたけど」
「「…か…カラス……」」
ゼロスの台詞に思わず絶句。
あたしとガウリイの誰にともなくぶやいた言葉がものの見事に一致する。
「今のところ、いろいろ調べているんですけど。どうやら世界中にこの現象は起こっているようで。
  さすがに魔族のほうとしても、神族のほうとしても見過ごせない。
  というのでゼフィーリアで神魔の上層部の方々の会議が開かれる。ということですけど」
「ってまていっ!何でそこでゼフィーリアがでてくるのよっ?!」
というか、その神族と魔族の上層部の会議って何よ!?
ねえ!?
「ゼフィーリアだと何かと都合がいいからなのではないですか?
  何しろ今ゼフィーリアの女王をやっているあのお方って。元々は水竜王さんですし」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?
さらっといわれたヒュレイカー、と名乗った魔族の台詞に、思わず目が点。
……水…竜王って……
そ、そらみみ、もしくは聞き間違いよね。
きっと……

「と、ところで。さっき第二子がどうとかいってたけど…どういう意味?」
とりあえず気になることは聞いておく。
姿形が変わっている、とおもえるものはすべて女性。
それゆえにかなり気にかかる。
「え?ああ。何かどうも第二子にあたる、
  俗世間でいうところの妹さんがすべて容姿が変わってるんですよ。それも、種族とわずに」
しゅ…種族を問わない…って、それはかなり気になるんですけど??
あたしの疑問になぜか紅茶を飲みながら答えてくるヒュレイカー、と名乗った人物。
見た目は何やら人畜無害そうな神官服を身に纏っている女性なのだが。
ゼロスの同僚で、しかも神官…というのならば、おそらくは。
考えられるのは、覇王、もしくは海王の直属の部下ということ。
さらにいえば、さきほどのこの女性の会話から察するに、
この女性の主は海王ディープシーダルフィン。
海神官…ってところだろう。
「しかし。リナさんが元々の姿でよかったですよ。
  というか、それにリナさんは元々の記憶のままのようで何よりです。
  もし、世間でいうところの…いえ、それはまあいいとして」

何をこいつはいいかけたんだろうか?
何やらゼロスがいいかけて、はた、と口をつぐみ、そして。
「と、ともあれ。ここ数日の探索や、上層部の方々の探索によって。
  その原因の一端がサイラーグにあるらしい。というのを受けて僕達はむかってたんです」
にこやかにホットミルクをすすりながらいってくるゼロスの姿。
さ…サイラーグって……
何か、とことんあの町って…ついてないことない?
「あ。何でしたらリナさん達もご一緒しませんか?
  私たちだけでサイラーグに向かっても、たぶん警戒されるでしょうし」
「って!ヒュレイカーさん!?何を恐ろしいことを!?」
ほほぉぉう。
にこやかに意見してくるヒュレイカーの意見に、さっと起用にも顔色を変えて叫んでくるゼロス。
そういうこというか。
こいつは。
青魔烈弾波ブラムブレイザー!!」
間髪いれずにそんなゼロスにと呪文を叩き込む。
「って、んきゃぁぁ!?」
あ、珍しい。
無効化されるものとばかりおもったけど、何かかすってる。
ちらっと何やら黒い三角錐のようなものが視界に見えなくもないけど。
……何で?
ゼロスの実体化してるのはここにあるし。
たぶん…あれって、ゼロスの本体もどきだよなぁ?
「ほんっと。リナさんっと噂どおりですわね。
  でも、リナさんにも利点はあるとおもいますわよ?
  こんな現状の中、二人で調べ物をしててもラチがあかないでしょう?
  旅は道ずれ、世は情け。類は共を呼ぶ、といいますし」
「って!その最後の格言はあてはまらないわよっ!」
すかさず、にこやかにいってくるヒュレイカーの台詞に突っ込みはいれておく。
だけど…
ふむ。
たしかに。
あたしだけで調べていてもたしかに今まで何の収穫もない。
というのも事実。
というか、周り全部の記憶というか常識が変わっているらしく、どうにも話しを聞いてもわからない。
というのもある。
こいつらは、どうやら元のままらしいし……
何か裏があるかもしれないし、まだ魔族の陰謀。
という説もなくなったわけではない。
「…ま。たしかに。別々に調査するより、一緒のほうが能率はいいかもね……
  よっし。とりあえずサイラーグまでは一緒にいくことにするわ」
「で?リナ?結局オレ達はどうするんだ?」
「って、だから!あんたは人の話しをきちんときいとけぇぇ!!!」
すぱこぉおっん!
横に座っているガウリイの頭にハリセンが炸裂する。
まったく。
こいつは相変わらずというか……

ともあれ、あたしとガウリイのこの異変の調査は。
ゼロスと、そしてその同僚だというヒュレイカーを伴って。
ともあれ、ゼロスたちがいっていた、サイラーグへと向かって移動することに。
さてさて…あの地で今度は何がおこっているのやら……

■ACT04~気分転換~■

「…火炎球ファイアーボール!!」
どごぉおっん!!
闇夜に炎が炸裂する。
「な…何事だ!?」
何やらわめく盗賊たち。
「まさか、三つ頭の盗賊殺しロバーズキラー!?」
…まてこらっ!
思いっきりコメカミが引きつるのがわかる。
「このかわいいあたしのどこが三つ頭よぉぉ!」
盗賊殺しというのは、あたしのあだ名の一つ。
だがしかし、この反応はかなり頭にくるのは当然で……
「まあまあ。リナさん。仕方ないですわよ。何しろ今のリナさんって……」
「だからよっ!余計に腹がたつのよぉぉ!!」
にこやかにいってくるヒュレイカーの台詞に思わず絶叫する。
「そうですか?でもかなり的をえている……いえ、何でもないです。はい」
横にてにこやかにいいかけるゼロスを思わずぎろりとにらむ。
あたしに睨まれてあわててゼロスが言い直してるけど。
サイラーグにとゼロスたちと共に向かい始めてはや数日。
その間に判明した驚愕すべき事実というか…世の中の変化。
変化というか、何というか……
はっきりいって、ゼロス達が元々の間隔でなければあたしは絶対に切れている。
こういっては何だが、ゼロス達がいて始めて少しは役にたった。
と思う今日このごろ。
何しろ感覚的にいえば、数日間を境にして、ほぼ少しづつではあるが世の中が変わっていっている。
だが、一番もんだいなのは……
このあたしに関する噂というか伝承というか……
なぜか、三つ頭があるドラゴンの頭をもつ栗色の髪の盗賊殺し。
って…いったい何よっ!?
ねえっ!?
それとなく、魔道士協会によってあたしの情報。
すなわち、リナ=インバースに関することを調べてみたものの。
…特徴としてやはり、ドラゴンの頭をもつ三つ頭の妹族…とかかれていたりした…
というか、妹族ってなに!?
ねえ?!
じょ~たいである。
様々なストレスがたまる一方のここ最近。
異変の原因は未だに解明されないまま。
サイラーグにいっても解明されて、元に戻るかどうかも不明。
そんな中でストレスがたまらない。
というのがおかしい。
ゆえに、毎晩のように盗賊を退治してストレス解消をしているここ最近。
「お~い。リナ。ほどほどにしとけよ~?」
そんなあたしに対してあきれたようにいっているガウリイ。
とりあえず、荷物運びかかりにガウリイとゼロスを任命し。
ヒュレイカーとあたしとで毎日のように盗賊退治にいそしんでいたりするのだが。
さすがはこのヒュレイカー、というのも腐っても魔族。
手加減、というのもをあまりしないらしい。
ま、あたしは別にいいけどね。
どうせ相手は悪人だし♪


■ACT05~新たな異変~■

えっと……
「…ねえ?あれ、何に見える?」
いつものように、盗賊いじめ…もとい、盗賊を退治して。
そのまま宿屋に戻り、一眠り。
そして次の朝起きてまず目にはいったものは…異様な光景。
「何いってるんだ?リナ?あれでの移動手段は当たり前だろ?」
宿からでて、唖然として空を見上げるあたしにとキョトン、とした表情でいってくるガウリイ。
ちょいまてっ!
何それ!?
当たり前って…何!?
「ガウリイさん。あんな交通手段は元々ありませんでしたよ?」
「そうだっけ?…言われてみれば、なかったかな?何で当たり前、とおもったんだろ?」
『・・・・・・・・・・・・・・』
首をかしげるガウリイの台詞にあたしとゼロス、ヒュレイカーの三人で思わず無言。
どうやらこのガウリイ。
他の人たちと同じように今までの記憶変化は起こるものの、
何らかの理由で完全ではないらしく、こちらがかつてのことをいえばそちらが正しい。
その判断は可能らしい。
ゆえに、このガウリイの間隔というか視点である程度、毎回かわる世界の変化。
というか常識の変化などがつかめているこの現状。
そんなガウリイが、アレが当たり前。
と言い切った…ということは……
「もしかして…今度は…あれ?」
「…どうやら、そうみたいですねぇ~……」
「ほんっと。この世界に何が起こってるのでしょうか?」
呆然としつつ、空を見上げてつぶやくあたしに続いて珍しくゼロスが同意し。
横にいるヒュレイカーもまた同じようにつぶやいている。
あたし達が見上げる空にあるのは。
いくつも浮んで移動している…なぜか石人形ゴーレムたちの姿……
「おかしいなぁ?たしか移動するのに術がつかえる人たちは、
  石人形ゴーレム作り出して移動してたはずなんだけど?
  この記憶って何なんだ?リナ?」
「あたしにきかないでよ……」
昨日まではこんなモノは空を飛んでいなかった。
ということは、おそらくは、昨夜のうち、もしくは朝方。
何か異変が起こる原因が起こった。
ということに他ならない。
「と、とりあえず…上の方々からの報告では、サイラーグに何かがある。
  とのことですから、そこを調べてみるしかないんですけどね……」
ゼロスもまた溜息をつきながらいってくる。
そう。
何やらゼフィーリアで執り行われているとかいう会議の結果。
神魔の上層部の存在達が導きだしたという結論の一つに、なぜか原因はサイラーグ。
という案が浮上したらしい。
その報告があたし達、というかゼロス達にもたらされたのは、
あたし達と共に行動しだしてしばらくしてからのこと。
最も、海王や獣王はサイラーグが何か関係しているかもしれない。
というのでゼロス達に調査を一応初めに命令していたらしいが。
「と、とにかく!サイラーグまでもう少しだし、急ぎましょ」
「ですね」
サイラーグまではあと少し。
これ以上あまりのんびりとしていたら、精神的にもかなりくる。
というか、毎日のように何かが変化していたら気がおかしくならない。
というほうがどうかしている。
何であたしも他の人たち同様に記憶ごと変化する。
とかいう現象にならないのやら。
元々の状態の記憶があるあたしとは対照的に他の人たちはまったくもってその記憶はなくなっている。
だから余計に感じる疎外感。
しかし、この変化の法則って…一体何かあるのかな??

■ACT06~サイラーグにて~■

「大分復興してますね~」
「ですね。ここは二度ほど瓦礫と化しましたしね」
元々サイラーグのあった位置。
といってもそのシンボルであった神聖樹フラグーンの姿は見えないが。
この地にあった瘴気もすべて、おそらくはすべてアレの力で掻き消えたらしく、
かつての名残りはまったくない。
「…何でこっちをみるわけ?」
「いえ。別に他意はありませんよv」
にこやかにヒュレイカーと話しながらも、ちらっとあたしをみて何やら意味深にいっているゼロス。
言いたいことはまあ、わかるけど……
「いっとくけど!あたしのせいじゃないからねっ!
  そもそも、そのうちの一回はあんたのせいでしょうがっ!!」
一度目は…まあ、あたしにも原因がない。
とはいえないけど、あれもでも、暴走してしまったコピーレゾの行為が原因だし。
絶対に!
あたしのせいではないっ!
新たな復興しかけているサイラーグの入り口付近にて立ち止まりそんな会話をしているあたし達。
と。
「あら?…もしかして…ガウリイ様!?」
何やら背後のほうから聞きなれた声が。
こ…この声って……
「って、シルフィール!?」
振り向くと同時思わず叫ぶあたしとは対照的に、
「あれ?シルフィールじゃないか。ひさしぶり~」
きょとん、としながらもにこやかにいっているガウリイ。
振り向いたその先には巫女服を着込んでいる長い黒髪の女性が一人。
「やっぱりガウリイ様!お久しぶりです!」
たたっとこちらに向かって走ってくるのはこのサイラーグの元神官長の一人娘でもあるシルフィール。
「シルフィールじゃない。久しぶり。ってサイラーグにもどってたの?」
たしか、シルフィールは今はセイルーンの叔父さんのところにいたはずである。
それがどうしてこの地にいるのやら。
そんなあたしの言葉に、きょとん、と首をかしげ、
「あ、あの?どちらさまですか?」
ごけっ!
思わずずっこけそうになってしまう。
「あ、あのねぇっ!冗談にもほどがあるわよっ!ガウリイじゃあるまいしっ!」
ガウリイなら忘れてる。
というのはわかるけど。
シルフィールが忘れるはずもなく、ならば冗談、の可能性が大。
性質の悪い冗談だったら……
「?あの?ガウリイ様?こちらのかたは?何か声があのリナさんに似てますけど。
  ですけど、リナさんは妹族で、ヒドラの頭が二つあるはずですし……」
おひ……
「ちょっとまていっ!何よそれっ!?ヒドラの頭って…いくら何でもシルフィール!冗談がすぎるわよっ!」
そりゃ、たしかに世の中の噂では、あたしこと、リナ=インバースの容姿がそのように伝わっている。
というのはこの地にくるまでわかってはいるが。
よもや、あたしをよく知っているシルフィールにまでそんな冗談を言われるとは思わなかったぞ……
「?それで?ガウリイ様?こちらの方は?いったい?」
……もしもし?
何やら本気で首をかしげながらシルフィールはガウリイに問いかけてるようなんですけど……
な…何か嫌な予感……
「何いってるんだ?シルフィール。リナにきまってるじゃないか」
きょとん、としながら答えるガウリイに、
「え…えええっ!?嘘でしょぅ!?この人があのリナさんなんですか!?
  たしかに声は同じですけど、リナさんはでも妹族じゃぁっ!?」
「だからっ!その妹族って何よっ!」
相手がシルフィールでなければ問答無用で呪文をぶっぱなしているところである。
「あ。でも、たしかに胸はないですね。リナさん。何か悪い病気にでもかかったんですか?
  なら、妹族専門のお医者さんのディオルさんに見てもらったほうが……
  万が一、そんな悪い病気がガウリイ様に感染でもしたら大変ですわっ!」
「…ほほぉう。シルフィール。そういうこというかなぁ?…って…でぃおる?」
その名前は嫌な思い出しかないんですけど……
「ディオルさん。てたしか、合成獣専門の魔道士さんですよねぇ。何か一時捉えられていたようですけど」
「あの人のコピーの作成はけっこううまくできているとおもいますけどね」
そんなあたし達とは対象てきに、にこやかにそんな会話をしているゼロスとヒュレイカー。
いや、そんなことよりもっ!
「それより!何よ!?その悪い病気うんぬんって!あたしは何ともないわよっ!」
「だって、リナさん。普通の女の人と同じ姿になってるじゃないですかっ!妹族なのにっ!」
「だ・か・らっ!その妹族うんぬん。というのがおかしいんだってばっ!
  こんなキュートでかわいい女の子をつかまえて、おかしいとは何事よっ!」
「リナさんの元々の姿は、二つのヒドラの頭に人の顔。
  ついでに体は竜のもので、その三つの口からは炎を吐いては人々に放っていたじゃないですかっ!」
「何よそれぇぇ!!」
至極当然のようにいってくるシルフィールの台詞に思わず叫ぶしかないあたし。
というか、どういう状況…もとい、記憶変化がおこってるのよっ!!
言い合いをしているあたしとシルフィールとは対象的に、
「…って、リナさんの姿って…変化がおこってたらそうなってたんですね……」
「それも面白そうですけど、それはそれで被害がかなり多くなりそうですねぇv」
…おひこらまて。
しみじみというヒュレイカーとは対照的に、にこやかに何やらいっているゼロスの姿が視界に入る。
「リナさん。とうとう頭までおかしくなってるんですか?!
  やっぱりガウリイ様に感染したら困りますっ!リナさん。はやくディオルさんにみてもらってくださいっ!」
「だ・か・らぁぁ!病気とかじゃないってばっ!
  そもそも、シルフィールのほうこそ、おかしいとおもわないわけっ!?」
とてつもなく理不尽極まりない、というかおかしいことをいってくるシルフィールに対し、
ぴしっと空にと指を突きつけ言い放つ。
空には…やはりというか、大小の石人形ゴーレムが飛び回っていたりする。
何か他よりこの場所は空に飛んでるアレの数がおおくない?
「何がですか?おかしいのはリナさんですっ!」
「んふふふふ…まだそういうこというわけ?爆裂陣メガブランド!!」
だがしかし、あたしの放ったその術は、何やら薄い壁のようなものに阻まれ霧散する。
「……え?」
思わず目を点にして、斜め後ろにといるゼロス達にと視線をむける。
こんなまねができるのは、ゼロス達以外に考えならない。
「なあ?シルフィール?今のどうやったんだ?」
「……はいっ!?」
そんなあたしの思いはいざしらず、きょとんとしながらもシルフィールに問いかけているガウリイの姿。
そんなガウリイの台詞に思わず目を点にして叫んでしまうのは仕方ないとおもう。
絶対に。
「ガウリイ様。何いってなさるんですか?
  魔道というか魔法を使えるものならば、その呪文の性質を知っていれば。
  それが高度な高位魔法でないかぎり誰でも防げるのは常識じゃないですか?」
「「「……は!?」」」
にこやかに、ガウリイに答えるシルフィールの台詞に思わずあたしだけでなく。
ゼロスとヒュレイカーの台詞も一致する。
というか、何それ!?
「…普通は今までそんなの誰もできませんでしたよね?」
「人間はそこまで魔術の本質を理解してませんでしたしね……」
ぽそぼそと何やら話しているヒュレイカーとゼロスだし。
それはあたしも同感。
というか、そんな方法があるならば是非ともマスターしたいものである。
そんなあたしたちの戸惑いは何のその。
「それはそうと。そちらの方々は?お見受けしたところ、そちらの男女も神官のようですが?
  ガウリイ様?ガウリイ様のお連れですか?あ、もしかして病気のリナさんのために?」
「だから!誰が病気よぉぉ!」
叫ぶあたしとは対象てきに、
「始めまして。えっと。元サイラーグの神官長エルクさんの一人娘のシルフィールさんですね。
  私は、ヒュレイカーと申します。以後お見知りおきを。こちらは同僚のゼロスさんです」
にこやかに笑みを浮かべてシルフィールにと挨拶しているヒュレイカー。
そして。
「どうもv謎の神官ゼロスといいますvシルフィールさんv」
こちらもまた、いつものように笑みを浮かべてシルフィールに挨拶しているゼロス。
そういえば、あたしが知っている限り、シルフィールとこいつは面識ないはずだし。
「え?あ。どうも。始めまして」
相手につられ、思わずぺこりと挨拶しているシルフィールの姿が目に入る。
……この二人が魔族だ、ということは黙っていよう。
絶対に話しがややこしくなるだけだしね……
理不尽なことをいってくるシルフィールに対してのハライセにゼロス達の正体を教える。
というのもフェアじゃないし。
「あの?こんなところで立ち話も何ですし。どこかに移動しませんか?」
ヒュレイカーに言われて、ふと周りをみてみれば、いぶかしげな表情でこちらをみている人の姿が数名目に入る。
どうやら、このサイラーグはこの前あの一件のときに来たときと同じく、
復興に携わっている人々が常に出入りしているのでこんな町の出入り口付近で立ち話。
しかも、叫びまくっていればかなり目立つらしい。
「それもそうですわね。とりあえず、今わたくしが滞在している借りの教会へ案内いたしますわ」
シルフィールもたしかに、このままここで話していたら他の人たちの迷惑になる。
とおもったらしく、ヒュレイカーの提案をあっさり受け入れる。
とりあえず、たしかにヒュレイカーの言うとおり、この場でずっと立ち話をするわけにもいかない。
「……教会のシンボルまでかわってませんように……」
ここまで常識とかが変わっている。
というのなら、教会のシルボルとなるべく神像まで変化している可能性はある。
…以前のあのラギアソーンもどきの像みたいなのだったら間違いなくあたしは切れる自身がある。
絶対に。
ともあれ、あたし達はシルフィールに連れられて。
ある程度復興を始めているサイラーグの町の中にと入ってゆく。
さて…この地で何が判明するのやら………


■ACT7~謎の扉?~■

「え?この町で有名なこと…ですか?」
なるほど。
そうきたか。
シルフィールにつれられて、再建された教会の奥の部屋の一室にとやってきているあたし達。
たしかに何かかわった出来事がなかったか?
と聞いても、あたし達以外は、『変わった出来事=当たり前の出来事』
と記憶変化が起こっているこの現状においてたしかに無難な問いかけではある。
以前きたときも思ったけど、あの何もなくなったこのサイラーグの跡地がよくここまで復興してる。
と思わず感心してしまう。
これに神聖樹フラグーンでもあればここは紛れもなくサイラーグであった。
という証明にもなるけど、今はおそらくあの樹を手にいれるのは難しいような気がする。
もしかしたら、ミルガズィアさんあたりにいえば苗のありかとかはわかるかもしれないけど。
彼らと会うときって…少なからず魔族がらみの事件がらみだしなぁ~……
それにルークのことを思い出して多少気分が沈みかねないし。
ヒュレイカーに問われて、きょとん、と首をかしげながら言っているシルフィールの姿が目に入る。
一応は、ゼロスもヒュレイカーも神官服を身にまとっているので教会にあまり違和感なく溶け込んでいる。
とはいえこの二匹…もとい、二人?は魔族だけど。
この場に移動するまでに、何かが起こったのは確からしく。
シルフィールのあたしに対する認識が、今度は三つ頭。
というのではなくて、数個の口と目をもつ妹族…というのに変換されていたりする。
…どっちもいやだってば。
しかも、ご丁寧に昔の手配書をシルフィールはガウリイが載ってるから。
という理由でご丁寧に保管というか持ち歩いていたらしく、
そこに書かれているあたしの姿すらもが変わっている。
というこの徹底振り。
どこから突っ込みしたらいいものか。
しかも、その記憶変化などが起こった。
というのを誰も不思議に思っていない。
というのもまた怖い。
「そうですわね。まあ、たぶんリナさんがヒドラの頭をもつ容姿をしてる。
  というのは以前みたあるモノがわたくしの記憶にあったんでしょうね。
  リナさんの本来の姿は、目が八つあって、口が頭の後ろと顔とについて、腕は四本あるのが普通ですし」
いや、それはかなり普通じゃないってば。
もはや、突っ込みする気力すら失いかけているあたしがここにいる。
とにかく、とっととこの異変を解決して、元通りの世界の様子にしなければ、
こんな状態ではあたしの精神力が絶対にもたない。
「それで?シルフィールさん。何かお心あたりございませんか?」
にっこりと、なぜかお茶をすすりながら、その長い少しカールのかかった髪を少しいじりつつ、
にこやかにシルフィールにと再び問いかけているヒュレイカー。
「この町で有名だったのはあの神聖樹フラグーンですけど。
  とあるかつての一件で神聖樹フラグーンは消滅していますし……
  あ、でも。最近は神聖樹フラグーンがあった跡地にできている漆黒の大穴が人気ですけど」
「「…し、漆黒の大穴…?」」
少し考えたのちに、いっくてるシルフィールの台詞に思わず顔を見合わせて同時につぶやくあたしとゼロス。
ま…まさか?
…き、気のせいよ。
きっと。
だって、あのとき、あの場所はあの『死の入り江』みたいにはなってなかったし。
うん。
「最近では、その大穴の中に見えている扉に誰が一番先にたどりつけるか。
  というちょっとした賭け事まではやりだしていますけどね。
  賭け事、というのは神に使えるものとしてあまり褒められたものではないのですけど。
  ですけど、この地の復興費用にもなりますし……」
…何をやってるんだろう?
ここサイラーグでは……
そういや、この地の地名はやっぱりサイラーグのままで復興させるのかな?
何ともおもってもいなかったから、聞いてもいなかったけど。
まあ別に自分で調べるようなことでもないし。
そういう噂というか情報はそのうちにいやでも耳にはいっくてることだし。
…以前の常識からいえば。
「と。とにかく。その場所にいってみましょう」
「え?でもリナさん?もう夜も遅いです…って。そういえばリナさんは本来、夜活動する妹族でしたわね」
「だからっ!その夜活動するうんぬんって何!?」
ぼんっと手をうちながらいってくるシルフィールにおもわずつっこむ。
「?でも、リナ?シルフィールのいうこともあたってるじゃないか?
  おまえ、いつも夜に盗賊イジメにいってたし。
  ここ最近なんかそこのえっと、ゼロスの同僚と一緒になってやってたろ?」
「あんたはっ!そういういらんことをいうなっ!」
「リナさん!こんなか弱き女性の神官までそんな危ないことにお誘いしてるんですかっ!?」
ガウリイの言葉に、目を見開いて、なぜかあたしに突っかかってくるシルフィールだし。
「…か弱いって……」
このヒュレイカーの実力は確かにあたしも知らないけど、だけども確実に腹心や魔王。
果ては、ゼロス以外だと絶対に勝てない実力の持ち主だとおもうんですけど……
何しろ、どうやらこのヒュレイカーって海王神官プリーストらしいし……
そんなことは口がさけても絶対にいえない。
それでなくても、シルフィールはこの地において、
かつて冥王ヘルマスターフィブリゾに死んだはずの父親を復活させられて操られる。
という苦い経験をしているのだから。
しかも、ただの操られている状態。
というのではなくて、その記憶はそのままに。
ただ、冥王ヘルマスターフィブリゾのいうがままに行動するしかできない木偶として……
「何やら僕、ものすごく嫌な予感がするのは気のせいでしょうか?ヒュレイカーさん……」
「私は主から話ししか聞いていませんし。……でも、たしかに。何となく嫌な予感がいたしますわね……」
どうやら、今のシルフィールの台詞に、ゼロスとヒュレイカーは思うところがあったらしく、
それぞれに顔を見合わせて小声で何やらいっている。
「と、とにかくっ!時間がおしいしっ!いくわよっ!ガウリイっ!」
「リナさん!ガウリイさまにその病気を感染させないでくださいよ!?
  ガウリイ様のそのすばらしい姿がおかしくなったら世界の損失ですしっ!
  どうやら感染するものとかではなさそうではありますけど……」
だ・か・らっ!
あたしは病気じゃないいっ!!
シルフィール!
あんたたちの記憶のその歪みがあるいみ病気みたいなものなのよっ!!
そう叫びたいのを何とかこらえ、とりあえず今シルフィールから聞いたその『扉』がある。
という、かつて神聖樹フラグーンが生えていた場所にあたし達四人は移動することに。
…無理難題いってくるシルフィールはひとまずゼロスが呪文で眠らせていたようだけど。
ま、そのほうがたしかにいいかもね……


■ACT8~魔血玉デモンブラッド~■

キラッ。
真っ暗な空間の中にキラリ、と赤く光る何かが目に入る。
ゼロス達とともに、元フラグーンが生えていた場所に出向いてきたはいいものの。
案の定、というか予想通り…というか。
いつのまにこんな状態になったのか?
という疑問がかなり尽きなくはないが……
かつては、ちょっとしたクレーターのみでしかなかったその跡地は、
今では先のみえない漆黒の大穴のようになっている。
モノを投げ込んでも地面にたたきつけられる音がまったくしない。
どこまで続いているのかすらもわからないような、そんな大穴。
この穴をみたとたん、ゼロスとヒュレイカーはおもいっきりダメージをうけたらしく、
ヒュレイカーにいたっては、何やら姿が透けかけ、ゼロスにいたっては色素が完全に抜けていたりする。
最も、ゼロスにいたっては少したつと回復していたようだけど。
この気配…というか、この力の波動って…やっぱりというか、何というか。
シルフィールの話しから予想はしていたものの、例のパツ金大魔王のものだし。
あたしがさほどあまり悪寒や違和感を感じないのは、あれの力を使い慣れているからだろう。
周りにはちらほらと、
何やら『肝試しにこの一品』とかかかれた屋台や露店も少し離れた場所にでてるのも気にかかる。
ともあれ、あたしが『リナ=インバース』である。
というのを知られないかぎり、別に病気だとか何だとか言われることもない。
なのでとりあえず、名前を聞かれてもフルネームでは名乗らないように気をつけてはいる。
この場所につくまで、また変化が起こっていたのはお約束。
…それまで空を飛んでいた石人形ゴーレムが、今度は巨大なムカデになったのはどういうわけか……
しかも、色とりどりの……
そのあたりにいた通行人を捕まえて恐る恐るきいてみれば、
ムカデが空を飛ぶのは当たり前。
とのこと。
…左様ですかいな……
ともあれ、あまり使いモノにならないであろう、ゼロスとヒュレイカーには聞き込みをお願いし、
あたしはあたしで、ガウリイとともにこの穴の調査。
その穴の中に、よくよく目を凝らしてみれば壁?というか穴の横の部分の一角に何やら光るものが。
「?何だろ?」
さすがにこのあたりまでこれるものはそうそうはいないらしい。
他にもいるであろう観光客もどきの人々は少し離れた場所からこの場所を見て、
その何ともいえないゾクゾクする感覚を楽しんでいるようである。
夕日に反射して光っているにしても、何なのかがきにかかる。
「よっしっ!」
気になるものはとにかく確認。
浮遊レビテーション
ふわり。
風の術を体に纏い、ふわりと飛び上がり移動する。
深遠の闇ともいえる穴の中にはいってゆくと、一気に力が吸い取られるような脱力感。
そもそも、アレの力を使っているときの状態によくにた感覚。
最も、魔血玉デモンブラッドがなくなってからというもの、あれの術は使うことができなくなっているのが玉に傷。
そんなことをおもいながらも、ゆっくりと下降してゆくことしばらく。
真っ暗でしかありえない穴の一角にキラリと光っている何かの元にとたどりつく。
というか、この魔力がぐんぐんと吸い取られていっている感覚からしてこの場は何らかしらの影響がでているらしい。
でも、何で今さらなんだろう?
【影響】というのはいうまでもなく、かつての完全版を唱えたときの暴走の影響のこと。
何しろ、ここってカルマートの死の入り江とまったく同じ感覚だし。
それに、この中にはいったとたんに感じた感覚は、
よく使っていた神滅斬ラグナブレードなどの術をつかったときの特有のもの。
「……あり?」
そこで光っているものの正体をみて思わず目が点と成り果てる。
いや、何でこんなものがここに?
…それはどうみても、あたしがなぜか噛み砕いた…
そ~いや、あのとき。
よく噛み砕けたよなぁ。
あれってかなりの硬度あったはずなのに……
あの空間だったからかな?
ともかく…そこにあったのは…見間違えようのない、感じる感覚もまったく同じの【物質】そのもの……

「で?結局、何があったんですか?リナさん?」
あたしが穴からでて、ゼロス達がいる場所に戻って開口一番ゼロスが聞いてきたこと。
それは、あの【穴】の中で何があったか。
ということ。
「それなんだけどね…なんでか奥のほうに扉がみえたわ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
「「「……は?」」」
戸惑いながらもひとまず答えるあたしの台詞に、なぜかゼロス、ヒュレイカー、ガウリイの声が一致する。
とりあえず、見付けたアレのことはまだ伏せておく。
まあどこまでごまかせるかどうかはわからないけど。
波動からして…アレには違いはない…とはおもうのよねぇ~……あれって……
「だから。扉。でもそこにいくのにはちょっと……」
さすがのあたしでさえ、あまり深く降りてゆくのははばかられる。
そこまで異質な違和感というか自身が無に還ってしまうような、そんな感覚。
なので、あたしもそこそこに切り上げたのだけど……
「リナさんでも無理。というのでしたらどうにもなりませんね……」
「わたくし達では近づくこともままなりませんし……」
穴から少し離れた場所にとあるとある店。
その店先のテラスの一つのテーブルにと座りはなしこんでいるあたし達。
「でも、何であんなところに扉なんてあるんだ?」
「それはあたしが聞きたいわよ……」
そう。
ありえるはずのないものだ。
もしかしたら、あの扉が今回の異変の原因の元なのかもしれないけど。
ガウリイの言葉に溜息まじりに答えながらもそんなことを思いめぐらす。
「と、ともかく!しばらくこのサイラーグで調査したほうがいい。というのは間違いなさそうね……」

そんなあたしの無理やり、ともいえるまとめの言葉に。
こくり、とうなづくゼロスとヒュレイカー。
ガウリイの意見は…ま、聞くまでもないし。
というか、こいつは絶対にわかってないんだろうなぁ~……


■ACT9~扉の力?~■

サイラーグで調査を始めてはや数日。
正確には三日と少し。
シルフィールの口利きもあり、何とか宿も確保できてはいる。
だが、収穫というのもははっきりいってあまりない。
そもそも、一日、早いときには半日で何らかの変化が起こっているこの現状。
その変化に気づいているのはあたし達のみで、それ以外の人々は。
その変化がおこってもずっと変わりなかった。
と口々に口をそろえて言い切っている。
つまり…誰も変化というか異変が少しづつ起こっている。
ということにすら気づいてないのである。
調べれば調べてゆくほど意味がわからないこの現状。
とにかく、何となくだけどもあの扉が何か関係している。
くらいは理解はできた。
何しろよくよく観察していれば、異変がおこるときにあの扉がほのかに光りを発しているのだ。
ゆえに、たどりついた結論は一つ。
あの扉をどうにかすれば、元通りになるのではないか?
ということ。
「ドラスレで吹き飛ばしたらだめなのかなぁ?」
もはや脱力。
先日みつけたアレを使ってギガスレ不完全バージョン。
といってみたいところだけど、アレの気配が強い場所でんなもんつかって後がどうなるか。
考えるだけで後が怖い。
脱力してしまうのも仕方ないとおもう。
絶対に。
…何で椅子やら木々が歩いているんだろうか?
今朝方おきれば、椅子やら建物…しかも木造に限る。
が手足が生えて動いていたりするこの現状。
何か日に日に異変がひどくなってない?
ねえ?
「いや。リナさん。それはやめといたほうがよろしいかと……」
そんなあたしの脱力したようなつぶやきにこちらもまた脱力したような感じで突っ込みをいれてきているゼロス。
建物の中の椅子ですら手足が生えて歩いている。
そんな状態で平常心を保って座っていられるはずもなく、
とりあえず広場となっている場所の広い空き地にて会話をしているあたし達。
周囲の草木に手足が生えてうごきまわっているのはこの際、見えていないことにする。
少し先にと見えている真っ黒い穴のほうを眺めつつもそんな会話をしているあたし達。
絶対に、あの穴に原因があるとおもうんだけどなぁ……
にょき。
……ん?
何か今…あっちのほうから何かがのぞいたような?
漠然とみていた穴のほうに何やら白っぽいものが目にはいる。
気のせいかな?
そんなことを思っていると、

「…で?今度はいったいどんな所なわけっ!?」
何やら女性の声らしきものが……

??
思わずゼロス達と顔を見合わせる。
いや、あの場所に普通の人がいるとは到底おもえないんですけど?
もしもし?
そんなことを思っていると、
にょきにょき、にょろにょろ。
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
思わず目が点。
なぜか穴のほうから這い出てきた…としか見えない人影が二つ。
それだけならまだしも、何やらゆらゆらとした某高級品食材のような物体が見えるのはどういうわけか?
しかも、歩いてるし!?

「そもそも!チサがまったく元に戻らないじゃないぃい!どうにかしなさいっ!シュリン!」
「いや、ボクにいわれても……」

茶髪の女の子…見たことのないような服を着ているけど、たぶん女の子…だとおもう。
そんな少女に答えているのは、何とも気の弱そうな銀の髪の男性。
かわった服きてるなぁ。
ゼルの全身真っ白のフード服に似ていなくもないけど、やはりこちらもみたことがないもの。
しかも、何でか銀色の髪の男性らしき人物の手にはよくわからない長い棒らしきものが握られている。
はて?

「そもそも!何で元に戻るどころか顔が三つになるのよっ!」
「だから、少しづつ元に戻っているわけで……」
「これのドコが元よっ!まだリスだったときのほうがはるかにましよぉぉ!」

えっと……?
痴話げんか??
「なあ?リナ?あの三つ首の子って…知り合いか?」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
いや、ガウリイ。
ちょっとまて。
「って!?あんたたち!?いったいどこから!?」
とりあえず、とにもかくにもそんな彼女たちの元に走りよる。
今、何か元に戻るだの何だのといってたようだし。
もしかしたら何かの手がかりをもっている…人?なのかもしれない。
人かどうかはかなり怪しいけど。

『わ~。みてみて。ミヤ。何か人がこっちにくるよ?聞いてみたらいいんじゃない?』

「「・・・・・・・・・・・」」
さらに思わず無言というか目が点というか……
どうみても、等身大…巨大ニャラニャラ。
しかも、頭が三つある、というものはかなりの高級品の証。
そのニャラニャラが…人の言葉を話してるし。
いや、というか、何やらキュイキュイいっているのだけど、それが言葉、であると理解できるのが怖い。
「あ、あのぉ?あなたたちは…いったい?」
とりあえず、無難というか、一番気になることを聞いてみる。
どうやらみたところ変わった服を着てはいるものの、残りの二人は普通の人間のようだし。
…まあ、見た目が人間。
というだけかもしれないけど。
「というか…あの?そちらの人…?ですよね?気配は人間なんですけど……
  何でニャラニャラの姿なんですか?」
あたしの素朴な疑問をまるで代弁するかのようにゼロスが二人にと問いかける。
「「…ニャラニャラ?」」
ゼロスの問いかけに、まとも?な人の姿をしている男女が顔を見合わせ、
そして。
「あ。すいません。この世界で何か変わったこと…といってもわかりませんかね?
  えっと、今何か起こっていることとかあります?」
茶髪の少女らしき人物がしばし、あたし達のほうをじっと見つめて何やら驚いたような表情を浮かべ。
だけども、何か思い浮かんだ考えを振りほどくようにしたように頭をかるく振りながら聞いてくる。
「いや。何かおこってるって。今あんたたちがそこからでてきたし……」
最も、変わったことどころではない異変が世界に起こってるけど。
「あの?ところで?あなた方はいったいどなたなのですか?」
あたしの斜め後ろにいたヒュレイカーがそんな二人にと問いかける。
まあ、たしかにそれはあたしも知りたい。
「いや、どなた。といわれても……そういう、あなたたちはいったい?
  あ、ちなみに、私はミヤ。こっちがシュリン。…で、一応こっちが妹のチサ」
「「「…は!?」」」
いやあの…今、妹とかいわなかった?
その等身大ニャラニャラもどきが?
いや、まずそれよりもこの人たち…いったい何?
思わず異口同音で目を点にしながらも間の抜けた声をだすあたしとゼロス、ヒュレイカー。
そんなあたし達とは対象的に、
「なあ?あんたたち何か感じが普通の人とちがうけど、何なんだ?
  ゼロス達みたいな魔族でもなさそうだし……」
…おひこらまてっ!
さらっと何やらいきなりといえばいきなりな爆弾発言をしているガウリイ。
いきなり初対面の人に魔族とかばらすなっ!
というか、騒ぎになるでしょうがっ!
ま、冗談…で普通の人はたぶん聞き流すだろうけど……
「…ゼロス?…魔族?」
ガウリイの言葉になぜかニャニニャラもどきと顔を見合わせているミヤ、となのった女の子。
歳のころはあまりあたしと多分かわらない…とおもう。
…だけど、あたしより胸あるけど…何か腹立つ……
「そ、それよりっ!今、あんた。えっと…ミヤ、とかいったわよね?
  そのニャラニャラもどきが【妹】って……?」
まさか妹族とかいわれていた異変というか容姿が今度はこうなったわけじゃあ……
「確か。今現在の様子では、妹族とかなぜか言われてる人間さんたちは、
  外見上はあくまでも人のはずですけど?報告によれば」
…えっと。
どこから報告を手にいれているのかはまあきくまい。
腐ってもこいつら一応上位魔族なわけだし、下級魔族とかでもこきつかえるだろうし。
ちなみに、今現在の【妹族】となぜか言われている妹、という立場にいる存在たち。
あたしも含むけど。
そんな彼女たちの容姿は目がいくつにもなったり、手足が増えたり…とかなり奇抜な姿になっているらしい。
…つくづくあたしは元のままでよかったとしみじみおもう。
最も、世間一般の認識でのあたしの姿も…いや、思い出すまい。
ともかく、なぜか一様に、妹、と呼ばれる存在達が同じような形で変化している。
というのは今までの情報収集からして理解はできている。
そんなあたし達の言葉にしばし、シュリン、と呼ばれた男性と、ミヤ、と呼ばれた女の子は顔を見合わせ、
そして。
「あ。あの?もしかして。もしかしなくても、あなたたちも元の状態…覚えてる口ですか?」
何やら恐る恐るといったような感じでおどおど、びくびくしながも男性のほうが問いかけてくる。
うや?
そういうってことは……
「もしかして、あんたたちも元の状態覚えてるの!?」
今のこの現状で、元の状態を覚えているのはあたし達のみ。
正確にいうならばたぶん一般人の中ではあたしだけ。
ガウリイのほうはあたしが突っ込みしたら『そうだったっけ?』という程度だし……
ゼロス達にいたっては、たぶん精神生命体だからか関係ないだろうし。
あたしの言葉は何のその。
「あの~?もしかして、あなた。この異変の理由を理解してらっしゃるんですか?
  もしそうならできれば教えていただきたいのですけど……
  僕達も正直、戸惑っているんですよ。状況が状況なだけに……」
戸惑い気味に話しかけているゼロス。
ゼロスにしてはこんな声をだすのは珍しい、としかいいようがないけど。
ま、気持ちはものすっごく判るし……
「え。えっと…説明しても判らないかとおもうんだけど……」
「まあ、私たちもあまり知ってるわけじゃない。というかこっちも必死。というか。
  それより、えっと。ひとまずあなたたちの名前教えてもらえます?」
気の弱そうな銀髪の男性がつぶやくと同時、ミヤ、となのった女の子がこちらにと話しかけてくる。
そういえば。
まだなのってなかったっけ??
「えっと。あたしがリナ。んでこっちがゼロス。
  このどうでもいい黒い物体がゼロスと、こっちがヒュレイカー」
「…は?!」
『…は?』
こちらが名乗ったとたん、なぜか同時に何ともいえない声を出しているミヤ、と名乗った女の子と、
そしてニャラニャラもどきさん。
あたしの噂話でも聞いたことがあっての反応…にしてはどこかが違う。
「えっと…今、リナに…それにゼロスっていわなかった?」
何か戸惑ったようにいってくるミヤ、となのった子に、
『わ~。まるで小説の人物の名前と一緒~』
何やら…三つの頭をくねくねさせつつ、
そのニャラニャラの体をくねらせつつもいっているチサ、と紹介されたニャラニャラもどき。
小説?

「なるほど。この世界には魔族とかがいる世界なのか~」
しみじみとシュリン、と呼ばれた気の弱そうな男性が何やらつぶやいてるし。
だから、いったい何なわけ?
「?魔族とかいるのあたりまえじゃない?というか。あんたたち、あたし達をしってるの?」
まあ、あたしの名前は知られていてもおかしくないけど、ゼロスの名前はあまり知られてないとおもうし。
あたしが知らないだけかもしれないけど。
「え。えっと。それより。あの?ここどこか教えてもらえます?」
いや、ドコって……
「復興しかけてるサイラーグだけど?」
あの空間から出てきたので記憶がこんがらがってるんだろうか?
この人たち?
そんなあたしの言葉になぜかしばらく唖然として口をあけているミヤ、と名乗った少女と。
そして。
「なるほど。ここはサイラーグ、という場所なんですか。
  …とりあえず、レンチでたたかないといけない人を探さないと…近くにいるはずなんだけど……」
はい?
何やらぶつぶつといっているシュリン、となのった男性。
と。
「あの?ガウリイ様?みなさん?いったいどうなさったのですか?」
何やら聞きなれた声が背後のほうから聞こえてくる。
見れば、いつのまにかやってきたらしきシルフィールがこちらを見ながら首をかしげていたりする。
気づけばいつのまにか日が暮れかけてきており、どうやらシルフィールが心配してやってきたらしい。
…その背後に、何でか手が四つあり、目が五つある人物がいるのは気にしないことにする。
うん。
…たぶん、きっとあの背後の人も…【妹】…なんだろうなぁ……
ゼロスがいってたけど、今現在の【妹】と呼ばれる人たちはみんなあんな容姿になってるらしいし…
ほんっと、つくづくあたしは無事でよかった……
何で無事なのかはわかんないけど。
だけど!
あんな姿には絶対になりたくないっ!
と。
「あああっ!!!」
「「「??」」」
いきなり、シュリン、と名乗った男性がなぜか叫びだす。
そして。
「いたぁぁ!!」
いや、いた…って、何が?
意味がわからずきょとん、とするあたし達とは対象てきに、
「って、シュリン!?あの人がそうなわけ!?」
『わ~。今回はすぐにみつかったね~』
いやあの…はい?
みつかった…って?
「あ?あの?ガウリイ様?リナさん?その人たちは…いったい?」
さすがに戸惑いの声をあげてその場に立ち竦んでいるシルフィール。
「あ、あの?」
こちらが話しかけるよりも早く、
「えっと。ちょっとすいませんっ!」
ばっ!
…あれ?
みれば、シュリン、となのった男性がもっているレンチ…とかいった何かをいきなり分捕り、
そのままだっと駆け出しているミヤ、となのった女の子。
そのまま、そのレンチ…とよばれた品物をシルフィールにむけて振り下ろす。
「って、何するんですかっ!?」
そりゃそ~だ。
「お願いだから私のためにもたたかれてっ!!」
いや、だから何で?
というか、普通見知らぬ人をいきなりたたく?
おもいっきり力任せに振り下ろしてるのが見て取れる。
シルフィールもあわててよけるが、そのあまりの雰囲気に呑まれたのか、
完全によけきれずに少しばかりかすったようである。
必死の形相をして、しかもいきなりシルフィールをレンチを振りかざして追いかけているミヤ…となのった女の子。
……何かものすごく鬼気迫るものを感じるんですけど?
必死の形相でシルフィールを追いかけているミヤ。
だんだんその表情が、まるで死を覚悟した人のような感じで何ともいえない怖い雰囲気になっている。
声をかけるのもはばかられる。
…姉ちゃんが怒ったときとかの雰囲気に何となく似ていなくもないような……
と…とりあえず…必死に逃げているシルフィールは当たり前の行動だとして。
えっと…ほうっておくわけにもいかないし。
「ちょっと!いきなり人に何してるわけ!?…炸弾陣ディルブランド!!」
ドゴガァァッン!!
よっし。
とりあえず足止めするために呪文を一つとなえて大地もろとも吹き飛ばす。
「…リナぁ。シルフィールまで吹き飛んでるぞ?」
あり?
あ。
…えっと、ま、見なかったことにしよう。
うん。
みれば、ミヤと名乗った子と一緒にシルフィールまで吹き飛ばしているようだけど。
とりあえず。
「まったく。いきなり人をあんなの振り回して追いかけるなんて。いったい全体何なわけ?」
なぜか吹き飛ばされたのはシルフィールだけで…ミヤ、と名乗った子は平気で立ってるし。
だけどとりあえず隙はできてるようなので、ばしっと相手の手を掴みながらはなしかける。
「え…えっと。すいません。えっと…事情をお話いたします……
  それはそうと。そちらの人、大丈夫なんですか?」
恐る恐る、といった感じで申し訳なさそうに話しかけてくる、シュリン、となのった人物。
一方で、
「シルフィールさん?大丈夫ですか~?」
「というか。これってこの世界のものじゃなさそうですね……」
何やら倒れているシルフィールの横に転がっている物質をみてつぶやくようにいっているゼロスに、
そしてまた、シルフィールを心配したようにいっているヒュレイカー。
いや。
というか、ヒュレイカー。
あんた、一応魔族でしょうが…人を心配してどうするのよ……

とりあえず。
ぶつぶつ文句をいうシルフィールを伴って。
あたし達は、シュリン、と名乗った人物たちか事情を聞くことに。

いったい、何が何だっていうんだろうか??


■ACT10~何ともいえないむなしさが……~ ■

うにょうにょうにょ。
やっぱ、どうみてもニャラニャラ…だよね?
これって。
目の前に…たぶん座ってる…んだとおもう。
とにかく、等身大の頭が三つあるニャラニャラもどき。
それの頭がうねうねと動いている。
「…な…なるほど…にわかには信じがたい話ですね……」
シュリンから説明をうけて、多少かすれるような声でつぶやいているゼロスの姿。
ちなみに、シルフィールはといえば、また叩かれてはたまらない。
というのもあってしっかりと、例のレンチとかいうのを握り締めてその場に座っていたりする。
たしかに。
シュリン、と名乗った人物から語られたのはにわかに信じられない内容。
ある日、いきなり世界に少しづつ異変が生じ、レンチで世界に一人づついる鍵の存在。
その存在を三回ほど叩くことによってその異変は少しづつではあるが元通りになってゆく。
何でも似たような世界がいくつもあるらしく、それらが変に交じり合ってこんなになったらしい。
そういわれても実感ないし。
しかも、その異変に関しては普通ならばそれが異変が起こっているのが当たり前。
と通常の人々は思い日々過ごしているらしい。
「それで。この世界での鍵になってるのが、そこの人なわけで。
  レンチが鍵の人物を教えてくれるんですよ」
いや、だから、何でモノが教えられるわけ?
そもそも、そのレンチって何?
突っ込みどころは山とあるものの、
「…で?さっき、そこのミヤさんが必死になってたのは、ソレを治すため?」
「だって…だってっ!
  この前ようやく触手に変化してたのがリスになって少しはましになったとおもったのにっ!
  今度は…今度はこれなのよっ!?毎日一緒に暮らしてる私の気持ちわかるっ!?」
「し…触手…って……」
何か想像したくないんですが……
「ですけど。信じられませんわ」
シルフィールがしっかりとレンチを抱きかかえながら突っ込みをいれてくる。
「と。とりあえず。別に叩くとかでなくても、三回、そのレンチに触れればいいだけなんですけど……
  とにかく、鍵となっている人物に三回、そのレンチを当てれば少しづつですが回復するわけです」
シュリン、となのった人物が申し訳なさそうにシルフィールに向かって話しかける。
「…とりあえず。シルフィール。だまされたとおもってやってみたら?」
というか、もしシルフィールに三回、アレを触れさせることができれば今の現状が治るかも。
その可能性があるのならば、あたしとしてはおもいっきり試してみたい。
「まあまあ。シルフィールさん。そういわずに……」
ひょい。
「って、いきなり何するんですかっ!?」
ばっ!
にこやかに話しかけながらも、シルフィールの手からするっとレンチを奪うヒュレイカー。
そんなヒュレイカーからばっと再びレンチを取り戻しているシルフィール。
「「…あ」」

それをみて、なぜかシュリンさんとミヤさんが同時に声をあげ、
そのまま、ばっと視線をチサ、と呼ばれているニャラニャラもどきにむけていたりする。
「「「「……嘘!?」」」」
あたしもつられるようにそちらを振り向き、おもわず目が点。
あたしとシルフィール、そしてゼロスとヒュレイカーの声がものの見事に一致する。
「変わった手品だな~」
一人、何かものすっごく違うことをいっているヤツがいるのはほうっておく。
みれば、シルフィールがレンチを再び握り締めるとほぼ同時。
ぐにゃり、とニャラニャラもどきの姿が歪み、次の瞬間。
そこにはなぜか七つの尻尾のある茶色いちょっとした大きさのリスが一匹……
「ち…チサぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その姿をみて、瞳におもいっきり涙をためて、ばっとリスとなったソレを抱きしめているミヤさん。
いやあの…えっとぉ……
ミヤさんに抱きしめられながら、
「……あたし…今度は変なモノになってたよ……」
何やらリスの姿でそんなことをいいながら、どんよりと落ち込んでいるチサ、と呼ばれているリスもどき。
そう。
先ほどまでニャラニャラもどきだったその姿は。
シルフィールが三回、レンチに触れたとたん。
その姿は瞬く間にゆらりと変化し、今の姿にあいなっている。
「いやぁ。今のでどうやら三回、シルフィールさんがレンチに触れたことになったようですね。
 これでこの世界の鍵の修正は完了ですね。しかし、この世界でチサさんがリスになってよかったですよ」
しみじみと、そんなことをいっているシュリンさん。
いったい、この人たち…
目の前でこのチサ、と呼ばれているモノがどれだけ変化しているのを目の当たりにしてるんだろう?
言葉からものすごく安堵したような感じをうけるのは多分気のせいではないとおもう。
絶対に。
先ほどの触手になってた…云々、というのもかなり気になるし。
「…え?…あ、わたくし?……あれ?」
ふとみれば、シルフィールもまた何か戸惑ったような表情をしてこちらをみているけど。
だがしかし。
「あ、あの?リナさん…ですわよね?…何変わった姿なさってるんですか?
  人間の姿をしているなんて、ひどい病気か何かですか?
  あの真っ白な平らな突起もまったくない白いひょろっとした体はどうしたんですか?」
…おひっ!!
か…かわった姿って……
「って、なおってないじゃないのよっ!」
がくがくがく。
おもわず突っ込みをいれつつも、シュリン、と呼ばれた人物の胸元を掴んでがくがくゆする。
「い。いや。そういわれましても。でも少しづつはなおってゆくはずですので……」
「うう。ようやくチサが初めのころのリスの姿になった…でもいつになったら元にもどるの?
  …何か修正してゆくたびにかなり怖いことになってるのは気のせい?」
困ったようにいってくるシュリンと、そして何やら涙目になりながらもいっているミヤさん。
「えっと…とりあえず。信じざるを得ない…のでしょうか?
  普通は呪文とかを人間が防げるなんて常識的にありえませんしね……
  何でさっきまでは、それが防げて当たり前。とわたくしおもっていたんでしょうか??」
一方でシルフィールはシルフィールで一人、何やらぶつぶつといってるし。
「と。とりあえず。まあそういうことです。僕達はではこれで……」
「って、まていっ!」
がしっ!
そのまま、逃げるようにその場をたちさり、例の穴のほうにむかってゆくシュリン。
そんな彼の服のすそをがしっとつかむ。
このまま、はいそうですか。ご苦労さまでした。
といって素直にどこかに行かすことは絶対に許されない。
なぜならば……
「というか!その説明をきちんと姉ちゃんたちにもしてから帰るなら帰ってよねっ!!」
そう。
あたしが問題にしているのはその一点。
何しろ今回の異変の調査は郷里の姉ちゃんがらみである。
意味のわからない説明をあたしからして、姉ちゃんの怒りをうけたくないっ!!
「たしかに。そうですわね。わたくしも上司に説明しようにも説明しにくいですし。
  ここはやはり、多少事情に詳しいあなた方に説明してもらうのが無難かと存知ますが?」
「それもそうですね。あ。それじゃ、空間つなげましょうか?」
「ですわね。まだたしか、上の方々はゼフィーリアにいらっしゃるのでしょう?」
いやあの…?
何かヒュレイカーとゼロスってとんでもない話してない?
「あ?あの?それって……?」
どうやら、そんな二人の会話を疑問におもったのか、ミヤ、と名乗った子がふとつぶやく。
それと同時。
「それじゃ。そういうことで♡」
くるっん。
ゼロスがそういうと同時に、手にもっていた錫杖をくるりと一回転させる。
そして、回転させると同時に何もないそのあたりの空間に何やら円を描く。
と。
ぐにゃ。
「「え!?」」
それと同時にゼロスが今錫杖を振った空間が何やら歪み、まるで水鏡のように変化する。
さすが高位魔族。
こういう技もこいつできたんだ……
誰ともなく驚きの声が発せられると同時。
「というわけで。えっと。シュリンさん。そしてミヤさんにチサさん…でしたっけ?
  申し訳ありませんが説明のご協力お願いしますね♡」
いうが早いが、いきなりぐいっと三人をひっぱるゼロス。
「ってまていっ!」
がしっ!
「「んきゃぁ~!!??」」
まだ肝心なことをきいていないっ!
それゆえに、ゼロスにひっぱられそうになっているミヤさんの足をがしっとつかむ。
それと同時に何か転がるように悲鳴をあげながらこちら側に倒れこんでくるミヤさんとリスもどき。
みれば、空間の渦に飲み込まれるかのごとくにシュリンさんはゼロスに連れられて掻き消えている。
ちっ。
あっちは逃したか。
「ちょ!?いきなり何するんですかっ!?」
ミヤさんが何か文句をいってくるけど。
「何か。ってこっちの台詞よっ!このままあんたたちがいなくなってあたし達にどうしろと!?」
姉ちゃんたちに説明してほしい。
というのはかなりあるけど、とりあえずこの現状をどうにかしてほしい。
というのがそもそも実状。
どうにかしてほしい、というかどうにかしないとあたしの命はないのだからして。
何しろ今回の一件の調査…姉ちゃんの依頼だし……あうっ……
とりあえず、今までの会話を総合してみれば、このミヤさんという子は元の状態。
即ち、異変が起こる前のことをしっかりと把握しているらしい。
ちなみに、彼女の世界では彼女のみが正常らしいのだが……
つまりは、こちらであたしだけで元の状態を覚えており、正常な状態。
というのとよく似ている。
「そういわれましてもっ!というか、私だって必死なんですよっ!?
  よく気が狂わないな。と自分でおもうんですからっ!」
ま、その気持ちはかなりわかる。
「と、とにかくっ!少しでも何か手がかりになるようなことないわけ!?」
がくがくと襟首をつかんでゆするあたしの台詞に、
『手がかりかどうかはわからないけど。この前、お姉ちゃん。
  小説よんでて何かにたまげて放り出したよね?あのときあの小説が扉に入り込んだけど。
  あれって、たしかスレイヤーズの小説よね?』
「?スレイヤーズ?何それ?」
リスもどきのチサと紹介された…未だに声が多少沈んでいるのは、
先ほどまでの自分の姿にかなりショックをうけているためらしい。
ともあれ、リスもどきのそんな台詞におもわず首をかしげながらその場にいるガウリイと顔を見合わせる。
といっても、ガウリイのやつはどこまで現状を把握しているかどうかは不明だけど。
「え?で、でもまさか……だけど…もし、あれが原因だったとしたら……」
何やらぶつぶつといってるし。
「だ・か・らっ!きちんと説明してよねっ!」
叫ぶと同時に呪文詠唱を開始する。
「わ、わかりました!わかりましたから、その呪文ってたしか竜破斬ドラグスレイブじゃないですかぁっ!」
…おや?
何でそんなことをこの子がしってるんだろう?
あたしの呪文詠唱を聞いて何やら叫んできているミヤさん。
「リナさん。いくら相手がなかなか的を得ないことをいうとしても。
  いくら何でも竜破斬ドラグスレイブはやりすぎだとおもいますわ」
そんなあたしに戸惑ったかのようにシルフィールがいってくるけど。
ちなみに、シルフィールがあたしをみる視線はいまだに何か気妙なものをみるような視線のまま。
本気であたしが人の姿をしている。
というのが奇妙で仕方がないらしい。
「え。えっと。それがですね……」
恐る恐るミヤさんが話し出したのは到底信じられないこと。
最も、今のこの現状からいえばもはや何があっても動じることはないかもしれないが。
何でも彼女たちの世界には、あたし達と同じ名前のメンバーがでてくる小説があるらしく、
その小説を読んでいたときに、いきなり驚かそうとしたチサの動作でかなり驚愕し、
おもいっきり叫ぶと同時に持っていた本を放り出してしまったらしい。
そのとき、たまたまその手にもっていた本の一冊が部屋の中にある無数の扉の一つに吸い込まれたとか何とか。
名前が同じ…って、かなり気になるけど、ここは想像通りだったら怖いので深くは追求しないことにしよう。
「もしかしたら、それが原因…とも考えられなくもないですけど…ですけど……」
戸惑いぎみにいってくる。
「…その、扉。って、あんなやつ?」
ふとみれば、不自然なまでに例の穴の中の空中にぷかぷか浮んでいる扉が一つ。
ありえないって。
いや、本当に。
「え?あ。あれです。…そ、それじゃ、私たちはこれで!」
「え?あ。ちょっ…っ!」
いうなり、がっとリスもどきをひっつかみ、だっとかけだすミヤさん。
そのまま、穴に跳び入り、空中に浮んでいる扉のほうにと手をかける。
そのまま、ミヤさん達の姿はその扉に吸い込まれるかのように消えてゆく。
「……え…えええっ!?」
おもわず叫ぶあたしとは対象てきに、
「?リナ。何叫んでるんだ?扉は普通、すり抜けられるものだろ?」
「そうですわよね。ガウリイ様」
きょとん、とした声をだしているガウリイとシルフィール。
…おひこらまて。
世間一般の常識が…さっきよりもっと悪くなってない?
ねえ?
と…とりあえず!
たぶん、間違いなくきっとあの扉がすべての現況!
となれば、話は早いっ!
…あの扉ごと、呪文で無と還してやるぅぅっ!!!!


■ACT∞~そうして新たな道が?~■

「闇よりもなお昏きもの 夜よりもなお深きもの
  混沌の海にたゆたいし 金色なりし闇の王  我ここに汝に願う 我ここに汝に誓う  
  我が前に立ち塞がりし すべての愚かなるものに 我と汝が力もて 等しく滅びを与えんことを!
  重破斬ギガスレイブ!!」
完全版はかなり怖いので、とりあえず不完全版を。
あの空間に近いものにまたあの力を上乗せしたらどうなるか。
なんていっている場合ではない。
もし、アレの力が原因ならば、絶対に赤眼の魔王ルビーアイの力くらいでは話しにならない。
「って、リナさん!?それはっ!!」
「って、リナ!?」
「んきゃぁぁっ!リナさん!?どうしていきなりあの御方の呪文をぉぉ!?
  しかも不完全版のほうをっ!!?」
何か同時に叫んでいるシルフィールとガウリイ。
そしてゼロスについていかなかったヒュレイカーの三人の姿。
完全版だと絶対にまたアレに体を乗っ取られる可能性はかなり高い。
だけどこちらならばあたしの力でも制御はできるし。
魔力の消耗が激しいとか、そんなことをいっている場合じゃないっ!
ヒュドォォッン!!!!!
復興しかけているサイラーグの街外れの一角に、ちょっとした音が炸裂する。
ぜいぜいぜい……
さすがに不完全版でも魔力の消費は相変わらず激しい…か。
「…って、リナ?…あの数字、何だ?」
…数字?
みれば、先ほどまで扉があった場所に数字がぽっかりと浮んでいたりする。
数字?
何で?
「…まさか、扉の残りの数…とかいいませんよね……?」
ひゅぅぅ……
かすれるようなヒュレイカーのつぶやきに、ただただ全員、おもわず無言。
ま…まさか…まさか…ね……

とりあえず、あの呪文で扉は吹き飛んで消滅したものの。
それで人々や世界が元通りになったかといえば…そうはうまくは事は運ぶはずもなく。

結局のところ、再び戻ってきたゼロスが話してくれたのは、
…やっぱり、というか案の定。
いくつかこの世界に謎の扉が出現しているらしい…ということ。
つまりは…あのぽっかりと空中に浮んでいる数字は残りの扉の数…ということらしい……

「だぁぁっ!とにかく!全部扉を消滅させるわよっ!」
今あたし達にできることと。
といえばそれしかない。
なぜか気を失っているシルフィールをそのまま新生サイラーグに残し、
あたしとガウリイは再び、ゼロス達と共に出発することに。
残りの扉…いったい全体、どこにあるんだろう??


…ちなみに、世界が元どおりになったのは。
いくつかあった謎の扉すべてを髪金大魔王の呪文で吹き飛ばした後であったことをのべておく……
世間にはいつものように日常が訪れている。
まるで、あんな出来事がなかったかのように……
いったい全体、こんかいのコレは何だったんだろう?
…考えれば何やらものすっごく嫌な予感とかするので気にしないでおこう。
うん。

                                   -おわりv-

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あとがきもどき:
薫:ようやく完了!けっこう時間かかりました……
   ドアーズ発売って…何月よ(汗
   ともあれ、一応、普通のドアーズバージョンも打ち込み予定ですv
   しばらくは、このまま下の続きをやっても中身はありません(まてこら
   この続きでドアーズ編をいく予定v
   何はともあれ、長々(?)とお付き合いありがとうございましたv
   ではまたvv

?:あ・た・し!の出番はっ!?

薫:ぎくっ!そ…それで…ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!

(後にはただ、どすぐろい水たまりが一瞬出来て蒸発してゆく・・・・)

2007年11月10日(土)某日

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