降魔への旅立ち




「・・・・・断る。」
剣を片手に完結に述べるその言葉に。
「・・・何をいっているのだ?ガーヴ?そもそも、今回の行動は・・・。」
覚醒したのはすでに分かっている。
いくら、その体が人のまま・・というか。
その精神が人の心と混じってしまっているのは。
・・・・それはおそらく間違いなく。
・・ダルフィンの薬の影響もあるであろう。
・・・そのこともよくわかってはいるが。
「わぁってるよ。けどな?俺は死にたくねえ。そもそも、魔族の望みは、自分と世界を道ズレに、混沌にと還ること。
   でもな?それっておかしくねえか?なら・・・何で、自らを高めろという法もあるんだ?」
確かに。
彼らは自らを高める。
という約束事ももっている。
戦いにおいて。
「・・・ガーヴ!それは!」
考えてはならないこと。
それはそもそも。
自分達の本質を覆すというか、あの方への疑問に他ならない。
そんなことを考えること。
すなわち。
逆をいうと、反旗を翻すことにもなりかねない。
「・・なあ?ゼラス?俺達・・・魔族って・・何なんだ?」
「・・・ガーヴ!!!!?」
純粋な魔族であったときには思わなかったこと。
・・・・どうして神と魔は戦い続ける?
確かに、互いを高めあいつつ、戦いをする。
というのが基本のはず。
・・・・ならば、どうして。
魔族は・・・・滅びを・・望む?
考えてみれば矛盾していることに気付く。
まあ、確かに。
生を望むものと、死を望むもの。
相対する光と闇。生と死。滅びと再生。
それらは全て一つのまるでコインの表と裏。
今まではそんなことを一度も考えたことはなかったが。
気付いてみれば不思議なこと。
その言葉に驚愕の目を見開くゼラス。
その考えは・・危険すぎる。
「・・・・俺は無意味に滅びたくはねえ。それに・・・だ。滅んじまったら。自らを高めることなんて。無理だろう?」
「・・・・ガーヴ!!」
悲鳴に近い声を上げるゼラスを前に。
「・・つーことで、俺、少し離れてみるわ。」
「ガーヴ!?本気なのか!?」
その悲鳴に。
「・・・なあ?ゼラス?俺は死にたくねえ。・・・なら、離反するしか・・ねえだろ?」
「・・・・ガーヴ・・・・本気・・なんだな・・・。」
震える声でそういうゼラスに。
「わりいな。」
そういって姿をかき消すガーヴに。
「・・・・ガーヴぅぅぅ!」
ただただ。
その場にゼラスの声がこだましてゆく。

きっかけはほんの些細なことなのかもしれない。
だがしかし・・気付いてしまったからには・・。
もう・・・戻れない。


「・・・・・そうですか。」
テントの中。
報告をうけ、うつむくレイ。
「・・・・お父さま・・・僕が・・・。」
そういいつつ。
すでに真夜中ということもあり。
ここには、レイとサファイアしか存在していない。
・・まあ、兄妹だからという理由で一つのテントで休んでいるのであるが。
この二人は。
そして。
回りには、敵襲などに備えて。
空には、竜族などの陣営が。
大地というか陣地の回りには。
人々やエルフ達の混合部隊が、陣営を張り巡らせて。
交代で見張っている・・というのにも関らずに。
一番奥深くにある、そのテントに。
この場に・・そぐわない、黒い髪の男の子がテントの中でレイと話していたりする。
「いや、いいですよ。フィブリゾ。私がいきます。
   ・・サファイア、影武者というか影を置いておきます。・・・人間達などに気付かれないように、しておいてください。」
その言葉に。
「分かりました。」
すでに。
もう・・その身は・・・いや、すでに小さいころに彼女は死んでいたのだ。
だが・・・冥王の力で生きながらえ。
そして・・今では。
レイ=シャブラニグドゥ仕える部下として。
今・・彼女、サファイアは、紅神官サファイアとして。
レイに仕える神官として活動している今現在。
「・・・あ、魔王様・・。」
いいかける少年・・・フィブリゾの言葉をさえぎり。
「とりあえず・・・フィブ?今はこのたびの戦い。・・・おそらく、私も・・ルナ・・いや、スィーフィードも。
  全力を尽くします。・・・・あの地にいるラグラディアも関ってくることは。間違いないでしょう。
  ・・あなたたちは、とりあえず。他の介入がないように・・結界の強化を・・。」
いくらなんでも。
・・・・とりあえず。
今回のことで。
力は・・・互角になるのは間違いがない。
だからといって。
下手に・・・他の介入があれば。
全力でできるか否か・・・それは・・・・・不安定。
できうるかぎり、やれることはやっておかないと。
・・・・・・後でどのような目にあわされる・・もとい。
お仕置き・・・でなく、どんなお言葉がまっていることか。
そう思い、レイは少し身震いするが。
「分かりました。」
それだけいって。
そのまま、来た時と同じように虚空に溶け消えてゆくフィブリゾ。


「・・・・やれやれ・・・。」
いつのまにか。
それぞれの意思をもち、自らの生きる意味を探しているガーヴ。
大切な部下でもあり・・そして、我が子にも等しい。
自らが創った存在である。
溜息を一つつきつつ。
「・・・・まあ、あの子がどういう生きる意味を見つけるのか。見守るもの私の役目・・なんですかねぇ・・・。」
そういいつつも。
空間を渡るレイ。



「・・・・・ガーヴ?これは選別です・・。」
そういいつつ。
いきなりガーヴの前に出現したレイは。
しっかりとガーヴを抱きしめていたりする。
「・・・お・・・・おい?」
いきなり出現したと思えば。
自分の名前を叫びつつ。
いきなりしがみついてくるのは・・・間違いなく赤瞳の魔王その当人。
「・・・・いいですか?目的を持つのは、悪いことではないですけど・・・・。
   ・・・・兄弟で仲たがいはしないでくださいよ?ガーヴ・・うう・・・。」
などといいつつ、いい大人が・・・なきつつ、しがみついているその様子は・・。
かなり違和感丸出しではあるが・・・。
「・・・・あ・・あのなぁ・・・・そうおいおいなかれても・・・・。」
さすがに。
抱きつかれておいおいと泣かれては・・・。
バツの悪いものがある。
「あ、ガーヴ?何かいるものはありませんか?あ、服とか・・。」
「あ・・・あのな・・・・どうして服とかがいるんだよ・・。」
「うっうっ、嫁にだしたくないです・・・。」
「誰が嫁にいくんだぁぁ!?」
混乱して何をいっているのか分からないレイ・・魔王のその言葉に突っ込みをいれているガーヴであった・・・・・。



国を壊滅している人間の目的が、カタート山脈であることはすでに明白。
そして・・・その目的は。
誰もが口にださずとも・・・・理解はできる。


― 即ちは。

数年前の戦いにおいて・・・・封印されたといわれている魔王を復活させ・・全てを滅ぼす・・・という目的。


魔王が復活したらどうなるのか。
そんなことは分からない。
だがしかし・・すくなくとも。
かつての復活において・・・・水竜王は滅び去り。
大打撃を受けたのは・・記憶に新しい。
人々は。
ようやく、平和に少しなれ。
また同じ過ちを繰り返していたことに今さらながらに気付くが。
すでに。
もはや、取り返しのつかないところまで、状況は進んでいる。



「久しぶりですね?ゾイサイトさん?♡」
にっこりと。
その場で微笑みかけられて。
その場にいた・・・全員が、思わず。
そこにいる・・・・氷の中にいる彼と。
そして・・・彼らの横にいる人物・・そして。
にこやかに話しかけているレイに思わず視線を向ける。


魔王復活を阻止すべく。
カタート山脈に入り込んだまではいいものの。
なぜかすんなりと。
何の抵抗もなく、一番最上部にまでたどり着き。
そして・・そこで彼らがみたものは・・・・。

氷の中にいる・・・・なぜか。
自分達と共に行動していたのではないのか?
レイ=マグナスの姿と・・。
そして。
なぜか知り合いのような口調で話しかけているレイ。

一体、全体どういうことなのか。
何があるのかわからない。
という理由で。
この場には、少数精鋭で乗り込んでいる。
いるのだが・・・・。



「・・・・・な゛!?レイ!?生きていたのか!?」
そんなはずはない。
彼を見取ったのは・・あきらかに・・自分。
そして。
「ゾイサイト、久しぶりね?」
ひょっこりとそのレイの後ろから顔を出す・・その顔に思わず絶句する。
・・・自分が愛していた人。
・・・・サファイア。
一体、全体どういうことなのか。
混乱する、彼。
黒い髪に紅い瞳。
そんな彼にむかって。
「いやぁ、ゾイサイトのおかげで。あなたの中の私の残留力、かなり力を蓄えたことですし?
  ・・そろそろ、戻してもらうとしましょうか?」
にっこりとわらい。
そのまま、すたすたと。
彼の側に近づいてゆくレイ。

一体、全体どういうことなのか理解不能。

この場にきちんと状況を理解しているものは・・・・・。

誰一人としているはずもなく。


そして。
レイが今回の一連の原因となったであろう、男性・・・ゾイサイトに手を触れた、その刹那。


―ピシッ!!!


ゆらり。
一瞬、その場の空気全体が・・揺らめき。
いや、空間そのものが揺らめいた・・といったほうがいいであろうか。


彼ら・・・人間、エルフ、ドワーフ、竜・・・などといった、その目の前で・・・。

今まさに。

目の前にあるであろう・・・氷が。

音を立ててはぜ割れていき。

次の瞬間には。


ドォォォォォン!!!!!


すざましいまでの衝撃音と共に。
ぽっかりと大地が裂け。
そこから無数に吹き出るマグマの数々。



辺りに悲鳴と怒号と・・・・叫び声が響いていき・・・・。


そこにあった氷の全ては。
まるでなかったかのように。
その場全体は・・まるでマグマの海の中にいるように。
完全にもはや。
そこに形あるのは・・・・レイと・・・そして。
空にと舞い上がっていた数名の竜達のみ・・・・。


「・・・・・ふむ。この程度なら・・いいでしょう。」

すっと、手を一閃させると。
そこに、少しばかり異なる空間が出来上がり・・・・。
その手に握られているのはまるで骸骨のような杖。
何がどうなったのか。
先ほどまで・・いた、氷の中の人物が。
掻き消えて・・・レイ=マグナスと融合したように見えたのは気のせいであろうか?

そんなことを思っている暇もなく・・・。

「・・・・さて、少しばかり・・・ストレッチでもしますか・・ね?」
どこまで力が戻っているのか。
あの、ゾイサイトが集めた力は・・・かなりのもの。
だがしかし。
今から行われる行事には。
万全の体制で臨まねば・・・後が怖い。

にっこりと笑いつつ。
未だに何が起こったのか理解不能の存在達に視線をむけ。


そして、あくまでにこやかに。
何でもないように。
「すいませんけど、あなたたち?この私の少しばかり相手をお願いしますね?いやぁ、完全に力が振るえないと。
  これから始まるアネウ・・もとい。スィーフィードとの。戦いに何かと支障がありますのでね♡」
にっこりと。
本当に何でもないように言い放ち。

次の瞬間には。

ポシュ。

まるで何かがつぶれるような音とともに・・・。
そのままドサリと。
今まで空に浮いていた一人の竜が。
頭と胴体を吹き飛ばされて・・・・。

バシュ・・・・。

その浮力をうしなったその体は。
そのまま。
マグマの海に落下していき、完全にその体を蒸発させてゆく。

「・・・さて、少しはトレーニング相手になってくださいね?」
にっこりとそう言い放ち・・・・・。
くるくると杖を回しているレイ。

未だに何が起こっているのか・・・・理解ができない。
・・・出来ないが・・・・。

そのふと気付くと・・・レイの瞳が・・・・。
燃えるまでに真紅一色に変化しているのを・・数名が捕らえ。


次の瞬間には。

その場に。
断末魔が・・響き渡ってゆく・・・・。




「・・・・あーあー・・・・ずいぶんと派手にやったものね・・。」
あきれて思わずつぶやくいきなり出現した一人の女性のその言葉に。
「おや?姉上?もうそちらもいいのですか?」
にっこりと。
 一瞬のうちに、そこにいる全ての生きているものを消滅させて、いっているのは・・レイ。
「まあ、あっちはもう大丈夫よ?・・・それに。いい加減でしょ?」
そう。
確かに。
・・・・・・・あの命令をうけて・・・いったいどれほどたっているのか・・(汗)
そう思えば身震いするより他にはない。
何しろ・・・・あれから。
・・・命令がでて・・・・もはや、かなりの年月が経過している。
「う・・・・確かに。それでは、姉上?いきますか?」
「・・・そーね。」
確かに。
今まで・・・・最近、二人して、本気でぶつかったのは・・・。
・・・・約四千年前が・・・最近の出来事。

二人同時に。
彼らが絶対主である金色の母のことを思い浮かべつつ。
なぜかその額に一筋冷や汗を流し。
「・・・・レイ?手加減しないわよ?」
「こちらもですよv姉上v」
にこやかに。

神と魔。

・・いや、姉と弟の喧嘩が・・・。
今まさに。
ここ、カタート山脈で・・・繰り広げられようとしているのであった・・・。




ちょうどそのころ・・・・。

「いたぞ!!!!!?」
くっ!
どうしてこんな・・・・。
同じ神族ではなかったのか?
同じ種族ではなかったのか?

目の前で次々に虐殺されてゆく同族たち。

そして。


結界の中での出来事は。
この場所には何が起こっているのかは届かない。

だがしかし。


上空には、無数に・・・彼を捜している黄金竜の姿が。

すでに、羽をしまう気力もなく。

ここ、数日・・いや、数年といってもいいかもしれないが。
ろくにきちんと食べてはいない。


そのまま。
だがしかし、殺されるわけにはいかなくて。
逃げるように・・・かくれつつ。

逃避行をしていた彼は。


やがて。
その場にと崩れ落ちてゆく。



そんな少年・・というか青年の目に入ったのは・・・・。
むせ返る砂漠の嵐の中。
近づいてくる一人の人影・・・・。

「・・・・ふっ・・・・魔族までもが俺をころしにきたか・・・。」
「ざまぁねぇなぁ?おい?」

魔も、神も。
もうどうでもいい。
だが、死にたくはない。
彼の出現に伴い。
何か違和感を感じて、その場から逃げてゆく上空の竜達。

「ふっ。俺の死に様を見物しにきたってか?所詮・・神も魔族も同じ・・だな・・。」
「・・似てるな・・・俺に・・・・。俺も魔族に追われる身・・・・・。」

まだ正式に追ってがかかっているわけではないが。
遠からずそうなるのは目に見えている。

「・・・・間違っているのはこの世の中なんだ・・。どうだ?俺と手をくまねえか?」
「・・・わるく・・ねえ・・・な・・・。」


今ここに。
新たな同盟を結んでいる二人の姿が。
砂漠の一角で・・見受けられているそのころ。




ドォォン!


大地を揺るがす轟音に。
いたるところから噴出すマグマ。


・・・・すでに。
カタートで行われているであろう、その衝撃で・・。

その余波なのか、それが原因なのか。
地殻変動なども勃発し。
大地震なども多発、そしてまた、海岸線では高波が押し寄せ・・・。
山の全てからはマグマが吹き出し・・・・。


魔王、腹心四人が張ったこの結界の中の土地では。
今まさに、地獄絵図・・・といったような光景が。
自然災害などによって・・・・繰り広げられているのであった・・・。


                             -第47話へv-


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   あとがきもどき:
         薫:さて・・・・次回でアクア・・かな?
            一度封印とけているけど・・。
            再び封印・・・・その原因は?(まてこら!)
            ではでは・・・・・。
            ・・・・あ゛・・・・23時・・・(汗)
         2003年6月3日

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