降魔への旅立ち
「・・・・・・・悪いですけど・・・・死んでもらいます♡」
にこやかにそう宣言される。
その直後に。
ドォォン!
そう宣言した男性の回りに衝撃音が鳴り響き。
そして。
もうもうとした煙が立ち退いたその後には・・。
巨大なクレーターの中に佇んでいる一人の男性の姿のみ。
だがしかし。
仇を討ったところで・・・・。
何も解決している・・わけではないことも十分に把握している。
だが・・・・。
「・・・・戦いなんかする人間が・・いるから・・いけないん・・ですよ・・ね・・。」
そういう自分も人間だが。
だがしかし。
今は少なくとも。
自分の中にある・・ちょっとした力の波動が、それを手助けしてくれるのは理解ができる。
告白はしていなかった。
でも愛していた・・そして。
変わり者といわれていた、自分に訳隔てなく付き合ってくれた・・その兄であるレイを。
だが・・・・。
彼らは・・・もう・・・いない・・・。
人の手によって殺されてしまったのだから・・・・。
今でも覚えている。
その・・・・冷たいまでの体。
そして・・・息をしていない・・・その骸。
その体にこびりついた・・大量の・・・血。
脳裏に焼きついて・・・焼きついて・・離れない。
「・・・・全ての人間を・・・・・・排除・・・・・。」
あのような悲劇を二度と起こさないようにと、一番手っ取り早いのは・・。
人間がいなくなればいい。
どこか・・・狂いはじめているゾイサイト。
その思いのままに・・・・・。
彼は。
今また、混乱をきわみ始めたこの場所に。
新たな戦乱の目を・・・・張り巡らせて行く。
たった一人の人間の暴走。
―力ある人間・・・魔法剣士の。
それが暴走すれば・・・どうなるのか。
身をもって、知ることとなる・・人間達。
いや、この場所にいきる全ての者達が。
その原因を知ったときには・・・。
殆どが絶句する以外の・・・何ものでもなく。
―それはそうであろう。
彼が暴走する原因となったのは・・・・。
彼が愛した人と・・・・・。
そして・・・・彼が唯一、親友。
そう呼べた・・・・男性の・・・死亡。
しかも。
その両人を殺したのは・・・・紛れもない・・・・人間。
だからといって。
こんな無謀が許されて・・いいものか。
すでに彼の手によって・・・。
たったの数週間にも満たない・・・間に。
この地の人間・・・というか。
ここで生きていた者達は・・・その数を。
三分の一以下にまで・・・失っているのであった・・・。
自分が、一体、何なのか。
どうしてこんなことになっているのか。
その原因は・・おそらく。
というか、間違いなく、彼女の薬の影響だと自分で納得しているものの。
「・・・・悪いが・・・俺は死ぬわけには・・いかないんでね・・・。」
いや、覚醒した時点で。
すでに・・・死は、死ではなくなり。
とはいえ。
その封印が解かれたわけでもなく。
人の肉体のまま。
魔族として覚醒を果たしたまで。
覚醒を果たした時点で。
その体が変わって行くのが、自分で分かる。
だが。
どうしても許せない。
「・・・・・・負におちねえな・・・・。」
どうして、自分達が・・・攻撃を仕掛けたら悪呼ばわりされるのに・・。
神族が攻撃を仕掛けたら・・・それは、正義とか、聖戦とかいう奇麗事で済まされるのか。
・・・・それが、どうにも納得がいかない。
そして。
いつものことながら。
・・・・神に使える竜に攻撃された村や・・人がわるいのだ・・と。
人々はいうのであろう。
「・・・・・ちっ!いつも俺達だけが悪者かよ!」
どこか今までは理不尽など・・感じたことはあまりなかった。
だが・・。
人の心が入った今の状態で考えて見れば・・・・理不尽きわまりない。
いきなり、吹き付ける地上からの瘴気の渦。
一体何事かと。
空にたむろしていた竜達が。
気付くより早く・・・・。
ザシュ!!!!
その・・・・彼の叫びによる・・咆哮が。
精神世界より・・・今、この村を襲った彼らにと襲いかかり。
そのまま、業火の炎に包まれ・・・・。
骨も残さずに掻き消えてゆく・・・竜達の姿が・・・・。
「・・・・・・・・・滅びこそが・・・魔族の・・望み・・・か。」
だがしかし。
全てをともに滅ぼして。
後に・・・何が残るというのだろうか。
少なくとも・・・・。
それが、完全なる崇高の高みに上り詰めることだとはとうてい思えない。
それに・・・・。
「・・・・わるいが俺は。しにたくねえんでな。」
いや死は・・・確かに今の彼ならば存在する。
それが・・・死しても、また。
人の体に封印される結果となり、転生するだけのこと。
「・・・・・離反・・する・・・か?」
漠然と。
彼が・・・・魔族から離反を決める・・・・その一瞬であった・・・・。
なかなか、人はもろいようでしぶとくて・・・。
「・・・・・てっとりばやく・・・・北にいるという・・。魔王を開放・・してみます・・・か・・・。」
いくら、町を消滅させようとも。
絶えずに、這い上がってくる人間達。
いくら、叩きのめされようとも・・・。
まったく滅びる気配は・・・見当たらず。
すでに。
なぜか手出しできないある一つの国を除いて。
もはや、完全に・・・荒野と化しているというのにも関らずに。
そう思いつつ・・・。
悲しみに捉われ、全てを破壊しようとしているゾイサイトは。
その足取りを・・・・数十年前に封印されたと噂されている。
・・・元、霊山。
カタート山脈に・・・足を伸ばしてゆく・・・・。
「・・・・・いきていたのか!?レイ=マグナス殿!?」
見覚えのあるその姿に。
思わず驚愕の声を漏らす。
それは、いくら人の・・・暴走とはいえ。
彼らにも影響がない・・というわけでもなく。
今はもう。
この地には・・・水竜王は・・・今はいないのである。
すくなくとも。
この地を守ってゆく義務は・・・彼ら・・・水竜王に使えていた存在達には残っている。
そして・・・・そんな中。
・・・・あのとき。
精鋭部隊を率いて。
・・・あの地、あの場所、あの地域に。
・・・・もう、誰も生き残ってはいないと思っていた。
・・・・事実。
あそこから生きていた存在は誰一人としていなかったのだからして。
「ええ。ご心配おかけしましたが・・・。
とはいえ、かなりの痛手をうけまして・・動けなかったのも。事実なんですけどね・・・。」
その記憶に・・・・数十年前に。
最後にみたのと・・同じ笑顔。
その笑顔にほっとしつつ。
「・・・・それで?他のものたちは?」
その言葉に。
ただただ、首を横にふるその姿に。
―あの場所で、生き残ったのは彼だけなのだと理解する。
話をきくと。
今まで、かなり治療に追われて。
動けなかったというか連絡すら取れなかったとか何とか。
「・・・・ところで?ミルガズィア殿?どうなさる気ですか?
あのまま?彼?カタートに向かわせると・・。封印・・溶けるかもしれませんよ?
噂では・・彼。神魔融合呪文使えるそうですし?」
懐かしい顔ぶれ・・・。
かつてともに手合わせもした。
学びもした。
・・・魔道士レイ=マグナスのその生還に。
ただ。
かつての戦争を生き延びた・・・竜やエルフ・・といった者達は。
・・・こころから。
レイの生還を・・・・心から歓迎してゆくのであった・・・・。
今ここに。
後の世には・・・。
その事実は・・・・歴史に埋もれ。
そして・・・・誰にも話されないこととなる・・・。
・・・・第二次降魔戦争なるものが勃発しようとしていることに。
まだこのとき。
誰一人として・・・気付いてもいなかったのであった・・・・。
彼ら・・・・黄金竜の代表者。
ミルガズィア達は・・・知らない。
彼らが歓迎し・・・生還したのだ・・・と。
信じてやまない・・・レイ=マグナスが。
・・・・・北の地にと封印されている・・・・・魔王・・赤瞳の魔王当人・・である。
ということをー・・・・。
「・・・・ふふ。本当に計画通りに動いてくれますよ・・。」
あのとき。
自分は・・・まあ、あれを聞いてしまったのであるからしかたないにしろ。
今のままでは。
純粋なる、力と力のぶつかり合いは望めそうもなく・・・。
今は・・光の力が勝っている状態である。
だがしかし。
・・・・ぶつかる・・というか、喧嘩・・・というか。
・・・じゃれあい・・もとい、仕事をこなすにあたっては。
・・・・まったく同等の力でぶつありあわないと・・・・。
・・・・・・・【あの御方】からどんなお仕置きを受けることか・・・。
そんなことを思いつつ。
彼の目論見どおりに。
この地に恐怖という名前の負の感情を定着させていっているゾイサイトに。
一人、内心ほくそえんでいるレイ。
そして・・・・また。
「・・・・か・・・考えた・・というか・・何・・・というか・・・。」
確かに。
今戦ったのでは。
【力が安定していない!】だの。
【手ぬるい!】と。
間違いなく・・・呼び出されるのは・・・必死。
確かに・・手っ取り早い方法では・・・あるかもしれない・・・が。
「・・・・・人をあおるのは・・・上手なのよね・・・・レイは・・・。」
そういいつつ。
空を見上げて・・溜息をつくルナの姿が。
ゼフィーリアの王城の中。
見受けられてゆくのであった。
-第46話へv-
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まえがき:
うーん。
何かどんどんギャグからシリアスに逆戻りぃ・・(こらこらこら!)
・・・さて・・何処までいけるかなぁ?
はてさて??
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あとがきもどき:
薫:・・・・・・短いなぁ・・。
・・・ま、いっか(よくない!)
・・・・さて。次回で・・・・スィーフィード・ナイトと、ルビーアイの戦い・・・。・・・になるか・・・と。
そーしてそんな混乱の中。出会うガーヴとヴァル(こらこらこら!)んではでは・・・・・。
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