降魔への旅立ち



確かに。
この数年以上における戦いの中。
人々は・・・確かに、魔との戦いに勝った・・・のかもしれないが。
だがしかし。
始めの数年は・・人々も。
復興に追われて・・ただ、がむしゃらに何かしていた。
だがしかし・・。
簡単にいうと、無からの出発で・・。
すでに、豊かな場所があるのをめにすれば。
それを欲しくなるのが人というもの。
復興にむけ、確実に進んでいる、王国を。
その豊かさを我が物にすべく戦いを始めるのは・・・・それは。
混沌とした時代であるがゆえの、仕方のないこと・・なのかもしれないが。
どうして、人は。
すぐに争いにもってゆくのか。
それでなくとも。
先の戦いにおいて。
人々は・・・いや、世界そのものが疲弊している・・・というのにも関らずに。


魔と対抗するために。
生き残った人々が協力し。
ある組織を立ち上げようとしていたその矢先・・・・。


「ふふ、力が溢れてますわ♡」
再び、別に自分達が手を下したわけではない。
だがそれでも。
戦いにその身を置き始めている人間達。
こんな状態を・・・利用しない手はない。
先の戦いにより。
彼らとて・・・戦力を失っている今の状況。
少しでも、力は・・・・あったほうがいい。
そのために。
生き残り、動ける魔族達は。
こぞって、さらに負の感情により、力を蓄えるために世の中に出て行っている今の現状。
「おや?お姉ちゃん?こんなご時世に一人旅かい?」
店にただ一人・・・このご時世に。
女性の一人旅などとは。
かなりの実力をもってなければ無理なこと。
それでなくても。
人々の争いだけでなく。
まだ、今は・・。
俗にいう、闇に生きる者達もまだ闊歩している今現在。
先の十数年前の戦いにおいて。
あまり力のある生きとしいけるものはあまり生き残ってはいない。
にも関らずに。
このほど、再び土地を巡って争いが始まっている今現在。
そのことばに。
少しカールの入った髪を丸くして、その横髪を整えて、その頭には、どうやらどこかの神官らしく帽子がかぶられている。
ちなみに。
服装もまた、その帽子と同じデザインの印があることから。
おそらくは・・どこかの神殿に仕えている神官か何かであろうか。
そんなことをおもいつつ。
店にいる女性に話しかけている店主。
「あら、一人ではありませんのよ?」
その言葉に。
「ああ!遅くなりました!ヒュレイカーさん!」
そういいつつ。
あわてて。
入り口から入ってくる、一人の黒い服を着ている神官。
「あら、ようやく来ましたの?ゼロスさん?」
ヒュレイカーと呼ばれた女性がそちらを振り向けば。
そこには。
どこにでもあるような錫杖をもって、にこにことした顔立ちの、おかっぱの男性が。
・・・・こちらもまた神官の姿である。
おそらく、どこかの神殿に仕えている人物が何らかの事情で旅をしているのだと、勝手に店主は判断し。
「まあまあ、せっかくだし。おつれさんも、ここ、特性のランチセットをどうだい?」
そのことばに。
「あ、頂きます♡」
「それはそうと、あの報告、間違いないんですの?」
そういいつつ、目の前に座る黒い神官・・・ゼロスに話しかけている、ヒュレイカーという女性。
「ええ。間違いなく波動を感じたらしいですよ?♡」
その言葉に。
くすりと笑いつつ。
「ダルフィン様の市販した薬が功を奏した・・というところですわね♡」
くすくすと笑っているその言葉に。
「・・・・あれを人間の中で売る・・・という思想の転換・・できるの・・。ディプシー様くらいなものですよ・・・・・。」
その言葉に、なぜか深い溜息をつくゼロス。

もし、今ここで。
この店主が、その名前が意味するところを・・理解していれば恐怖におののいたのであろうが。
幸せなことに・・・この男性は。
そのような知識は・・・・あまり持ち合わせていなかったのであった。



「・・・・・・・・我々と・・・同じ・・・か・・・・。」
ぴちゃぴちゃと。
ただ、意思があるわけでもなく・・。
おそらくは、両親から生れ落ちたまではいいものの。
その育てるはずの両親が死亡し。
この赤ん坊は、誰も育てるものがいない。
というのは見てとれる。
すでに。
ラグールの死体は食べつくし・・というか溶かして吸い尽くし。
今は、残ったカルナの左足を溶かしては食べている赤ん坊。
そんな、その小さな顔を血で真っ赤に染め上げたその子を抱き上げ。
「お前も我らと・・・同じ・・だな。」
すでに。
一族はばらばらになった。
潜伏している彼らを根絶やしにするために。
・・・・手段を選ばない彼ら・・・黄金竜達。

だからといって。
彼らが戦うと、大変なことになるのは・・目に見えている。
このまま・・・じっとしていれば。
彼らも間違いに気付いてくれるのではないか?

そんな淡い期待をもちつつも。

彼ら・・・エンシェントドラゴンの生き残りたちは。

その身を隠して、今回の出来事が過ぎ去ることを選び。
その身を・・人間の世界の中におき、隠して生活することを選んでいる彼ら達。


・・・・このまま、時間が解決する・・・。

彼らは、戦いを好まない。
・・・いくら、理不尽な襲撃を受けようとも。

・・・・それは・・ただ。
時間が解決してくれることだと・・・そう信じて疑わない。




「・・・・確かに、感じますね♡」
「でしょぅ?ふふv海王様の特性、欠片発見薬は、必見ですわv」
のんびりと旅をしつつ・・・ではなく。
精神世界から、人の世界のとある場所を覗いている二人。

今。
彼らの上司たる、海王・・・・は、ともかくとして獣王などは動けない。
今は。
封印に閉ざされた、魔王に。
他の竜王がチョッカイかけれないように。
この結界の強化に全力を注いでいる今の現状。



「・・・・・確かに、報告があったとおりですねぇ。」
くすりと。
思わず笑みがこぼれる。
もう、彼の姿を・・・知っているものは誰一人としては生きてはいない。
あの戦いにおいて。
全て死に絶えたのだからして。
そして・・・・・。



「せめて、欠片ではなく、残留した力の回収にでもいそしみますかv」
にっこりと笑ってそう言っているのは・・。
あきらかにレイ。
レイ=マグナス・・・・シャブラニグドゥ。
・・・その当人。
魔の力を少しばかり氷の中にと封じ込めていれば。
こうして、覚醒する前の人程度の実力をもったまま・・・封印の外でも活動が・・できる。
「とりあえず、あと一人は、覚醒してくれたら、楽なんですけど・・・・ねv」
その・・・・残りの欠片・・・・分断されている、六つのその力。
その一つが・・・見つかったと。
先日・・報告をうけ。

そして・・・今。

その魂の奥底に・・自らの力の一部・・つまりは精神の一部を封印している人間に。

今まさに。
レイは接触を果たそうとしているのであった。



「・・・・お兄ちゃん?」
「・・・すいません。旅のものなんですが・・・・。」
疲れたように自分にもたれかかっている、妹の、サファイア。
彼女を抱きかかえるように・・・。
そこに住んでいる・・一人の人物に・・。
宿を頼むべく・・・接触を果たしてゆく・・・・・。




ようやく、竜王がいなくなり・・・だがしかし。
混乱した仲間たちをどうにか集め・・・。
そして・・みつけた。
水竜王の・・・その知識。
各地に散らばっているであろう、その力の波動を頼りに。
それが悪用されなうように、分担をきめ。
そこを守ってゆくことにした、かつての水竜王に使えていた者達。
彼らは知らない。

・・・・・本体たりえるといっても過言でない、水竜王本人が。
今、唯一国として機能を成しているゼフィーリア王国にいる・・ということを。





国を一から創るには・・・それなりの被害は免れない。
そんなことをいったのは、どこの誰だったのか・・・。

その大地を血と悲鳴とで染め上げつつ。


やがて。

この地に。

いくつかの王国が・・・出来上がってゆく・・・・・・・・。





数十年後 ―・・・・・・・・・。




すでに、かつていた英雄と呼べる者達はことごとく・・・・死亡し。
今では。
争いに争いを重ね・・・。
ようやくいくつかの国が形を成してきている。


そんな中で・・・。


呆然と。
小さな墓石の前で佇む一人の男性。

ぽつぽつと。
その彼の頭から雨が落ちてくる。

・・・・一体、何がどうなっているのか・・・・。

分かっているのは・・・・。

・・・・いきなり、人間が。
彼らの住んでいる町を焼き払い・・・・虐殺したこと・・・・。

彼が愛した人ですら・・・・。
そして・・・大切な親友ですら・・・・。


「・・・・ユルサナイ・・・・。」
その心から、その思いがわきあがる。

―ならば、復讐を・・・・。

とくん。

怒りに駆られた、そんな彼の脳裏に。
ふと。
・・・・自分でない言葉が響く。

―憎いのなら・・・復讐を・・。

・・・・・視えるのは・・・・紅い・・・・・闇・・・・・。


その声にしたがって・・・・。
彼は・・・・・・・レイスは。
その光に・・・・手を伸ばし・・・・・・受け入れる。



ドン!!!!!!



結界の内側を。
すざましい・・・・瘴気の渦が・・・・溢れてゆく・・・・。



確かに。
これくらいでは、何もしてないと同じ。
「・・・うーん、考えたわね・・・・。」
思わず感心した声を上げてしまう。
確かに。
そろそろ、潮時かもしれない。
そして。
「私が死んだら・・・・あなたたちの血の中に。転生してゆくから、後はよろしく。」
そうかるく言い放ち。
すっと。
その場から掻き消えてゆく一人の女性。


すでにもう。
この国は国として機能を果たし。
もう、彼女の手を離れても・・・・十分過ぎるほどに。


そしてまた。


――時が満ちるその前に・・・・少しでも互いのブリジングを・・・・。


だがしかし。
自分が動けば、逆に、それは、結界の外にいる竜王達に気付かれる。
あくまでも別の欠片・・・・でなければ。

そして。
人の世界に恨みを持つように仕向けたのは・・他ならない自分達。
まだ、力が足りない。
この世界が・・・進化を遂げてゆくのには。
小競り合いなどの力ではなく・・・・純粋なまでの光と闇の力が・・・・。



・・・・ブリジング。
それは、力と力の融合。
高まりにと上り詰めてゆくための・・・・大切な儀式。


そう。
創られたときに・・・もう、根底から決まっている決定事項。


そんなことはどうでもいい・・・。
・・・彼女を・・・・彼を殺した・・・・・人間世界は・・・・許せない・・・・。
全ての世界を道づれに・・・・世界に終焉を・・・・。



そのように思考を仕向けて言ったのも・・・彼ら。
・・・・そして、目の前で・・・死んだようにみせかけたのも。
彼ら・・・・いや、レイとサファイアの思惑通りに。
彼らが人に殺されたと思い込み。
・・・・やがて、レイスと呼ばれていた人間は・・・。
その身の中にある、魔王の欠片と・・融合を果たし。

・・・・世界を闇にといざなってゆく・・・・・・・。





すでに。
いくど・・・・転生を果たしたのであろう。
一度はまだ幼い日に。
そしてまた・・・。
その死体の中から赤ん坊が出現し・・・。
そして・・・・今。


普通に生活していた。
だがしかし。
いきなり、このほど力をつけてきた、デーモンや・・・そして。
最近というか、数年以上前から、いきなり上空から、攻撃が繰り出され。
町や国が壊滅したのは・・もはや、一つや二つ・・ではない。


そして。
そんな状況だからなのか。
竜王の加護域にあるはずの・・この地でもまた・・魔がうごめきだしているのは・・・・。


「・・・・・おい!?」
バタン!
あわてて、仕事から戻り・・・家に戻ると。
そこは・・すでに、血の海で・・・・・・・。


そして。

背後から貫かれる何か。

その焼け付くような痛みの中・・・・。


「・・・あな・・た・・・・いき・・・・て・・・・・。」
最後の力を振り絞り。

・・・・・・夫に回復の術をかけている・・・彼の妻。

「う・・・・う・・・・うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!!!!!!」



ようやく生まれた我が娘。
そして・・・・最愛の妻。

・・・・彼の手から・・・・全てが・・・砂のようにと・・・。
壊れて・・・掻き消えてゆく・・・・・・。


・・・・・・・死んだら・・・・また・・・会える?
否。
そんなことはない。


「貴様らには、死が幸せであろう?」
不適に笑っている一人の竜に。
きっと、視線をむけて。
そのまま、目の前にいる、年をある程度食っているであろう。
黄金竜にと向かい合い。
「・・・・貴様だけはゆるさねえ!」
湧き上がる怒りの感情は・・・。

やがて。

彼の中にと残っている・・・・・。
ある、効果を・・・・完全にと・・・消し去ってゆく・・・・・。

― 滅びこそが喜び?
― 否。
― 生きてこその・・・・生。



・・・彼、ガーヴにかけられている封印と。
そして。
かつて、ダルフィンが彼に飲ました薬の影響か・・。

完全に・・人の心がその魂そのものに・・・・融合されてしまっている・・・・魔竜王ガーヴ。

ゆっくりと、目を開く。


・・・・・・思い出したぜ。
― 俺様が一体、誰なのか・・・・を・・・な。

不適にいきなり笑い出した、そんな彼をみつめ。

「死ね!!!!」


少しでも、力のあるもの・・・そしてまた。
紅い、印を何でももっているものは・・・・全て殺せ。
それが・・・彼ら・・・・火竜王の命令であるがゆえに・・・・。
忠実にその命令に従っているこの竜は・・・。


相手が誰かも知らないままに・・。
魔力をためてガーヴにと攻撃をしかけてゆく・・・・・。



                             -第44話へv-


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あとがきもどき:

薫:・・・・・ガーヴ、覚醒。
  ちなみに。火竜王。
  これ以上魔王が目覚めてはいけないから。
  力が少しでもあるやつは殺せと命令していたり(おひ・・・汗)
  つまり。
  ヴラバザードの暴走によって。ガーヴの薬の効力が切れたも同然ですな(汗)
  ちなみに。ダルフィンの薬の影響です。
  自分がガーヴだとずっと覚えてなかったのは。何回転生しても(こらまて!)
  んではでは・・・・。
  また・・・・次回で・・・・。

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