降魔への旅立ち
始めに気付いたのは誰だったのか。
ふと。
張り詰めていたような空気がなくなているのに気付いたのは。
そして、ふと気付く。
今まで、使えていた神聖魔法。
それが使えなくなっていることに。
今まで、空気を揺るがすかのように。
拮抗しているその激しい戦いは。
地上にいる全ての者達にも感じ取れていた。
だがしかし・・・。
魔王と自らの力、そして、魔竜王。
その力を全て偶然なのか、はたまた必然なのか。
まるで反射するがのごとくに。
その力加減を失い。
直接的に受けてしまった水竜王。
そのためか。
その力は。
意識と、力・・そして、その知識。
それらに別れて分断し。
力は、その辺りにある、物質や、命あるもの、形在る物に吸い込まれ。
そしてまた。
知識は、数個に別れ、分別し。
やがて。
神と魔の戦いにおいて、できた空間のゆがみに。
その別れた力の大本ともいえる知識は吸い込まれてゆき。
そして・・・・その意識はというと・・・・。
「うーん。・・・・まあ、仕方ないけど・・・。あくあ?どうするの?・・・あなた、滅びたと思われてるけど・・。」
「・・・・それをいうならば、ルナ様の方こそ・・・。」
そういいつつ。
ようやく、歩き始めたばかりの小さな男の子を抱きかかえつつ。
カタート山脈をはるかに望むその一角で、そんな会話をしているとある二人の女性。
きょとんと。
そんな二人を見上げているのは。
金色の髪に紅い瞳の男の子。
「まあ、それは後で考えましょ・・・今はそれより・・。」
「・・・そうですね・・・・。」
とにかく今は。
おそらく、これから。
復興にむけて人々は動き出すであろう。
だが・・その前に・・・。
「・・・・・・・・・側にいるのに・・・気付かないのね・・・。」
そのつぶやきは・・。
ルナのつぶやきは。
ただただ、風にと溶け消えてゆく・・・・。
神と魔の争いは終った。
そう、判断するのはそう遠くない出来事。
今まで、多々といた、デーモン達の力が目に見えて弱体化し。
そしてまた・・・。
逆に魔力などが強まったような気がするのは気のせいなのか。
だがしかし。
どちらがかったのか理解不能。
そんな状態の中で。
竜王がかったのだの。
いや、負けたのだの。
そんなことが原因で。
逆に違う争いが持ち上がり始めていたりする今現在。
「・・・・アクア・・・・力失ったみたいね・・・・。」
「・・・・ま・・・まあ・・・しかたないのでは・・ないか?(汗)」
それでなくても。
さすがに、あの続いた精神ダメージはかなりくるものがある。
遠くにいた彼らですら。
彼らの配下たる、一族は。
今回の戦いで傷つき、体を休めていたりする。
中には、あれより後に、あの地に出向いたものもいるにはするが。
それらの消息は・・・不明。
あの地は。
腹心四人が張っていた結界により。
始めは神の力を弱めるための結界であったそれは。
今では、完全に竜王達などの力を遮断する働きをこうしている。
あの地は、自分達の力・・つまりは、竜王といった、水竜王以外・・つまり、彼ら、地竜王ランゴード、天竜王バールウィン。
そして・・・・火竜王ヴラバザード。
その力が使えなくなっている今の現状。
あの場所に満ちているのは、竜王と魔王の力のぶつかり合いで生じた、力・・。
それは、神魔融合呪文に近い力を創りだし磁場を形勢している。
そこに、くわわった、腹心たちの結界の力と。
そして・・・・。
それを安定させるのに十分すぎるほどの・・金色の残り香・・・・。
「・・・・とにかく、今は・・それより・・・。」
「・・・そ・・・・・そうね・・・・。」
どうやら、アクアの封印により。
目覚めたと思われる魔王は氷の封印に閉ざされた。
それは、彼らの精神感応で理解はできる。
ならば。
今することは・・・。
残りの欠片・・分断された六つの欠片を復活させないことと。
そして。
未だに混乱に満ち溢れている地上を平和にと導くこと。
それが先決。
いくら、神と魔の戦いが終ったといえども。
そんなにすぐに争いがなくなるわけではない。
そもそも。
この戦いは人の世界から広がったようなものなのだ。
そして・・・・。
また・・。
かろうじて復興を目指し、行動する生き物もいれば。
・・・・・・・・・だが・・しかし・・・・。
すでに、魔王が氷の封印に閉ざされて、アクアがこの地にいないというのは。
唐突に特定などもされていなくて。
下された神託により、漠然と理解している生きとしいける者達。
― 永遠の凍れる塊のおくに閉ざされし赤き力 力は分たれし水の記憶疎は汝らの記憶の彼方に・・ ―
意味がよくわからない神託ではあったが。
だが。
すくなくとも。
使えなくなった神聖魔法。
そして・・・・。
人々が。
魔王が竜王の手により、封印されたのだと理解するのにそれほど時間はかからない・・・。
未だに、闇に生きる魔物たちがいなくなったわけではない。
だがそれでも。
すくなくとも、今までのような大量発生するような闇の生き物たちの攻撃は・・・ない。
混乱と化したそんな状況の中でも。
人間というか、生きる力をもっている者達は結構しぶとい。
主だった戦いが終ったことを確認するや否や。
未だに混乱はあるにしろ。
復興にむけて、先を歩き始めてゆく。
ざしゅ。
あたりに転がるのは・・・・ただの破片。
いや、元、人であった者達のただの肉の塊・・・・。
「・・・・まだだ・・・まだ・・・・。」
暗い光を宿し。
剣を振るう一人の男性。
そんな彼の横では。
―お願い・・・気付いて・・・・・カウリイ・・・・。
涙を流しつつ、すでに実体のない、栗色の髪の少女が。
ずっとそんな彼に語りかけているが。
悲しみ、怒、そして・・・憤り。
そんなものに縛られている彼にはその声は届かない。
「ルシフェルさん!」
「カウチェリイ!?」
ようやく復興を始めた、そんな人々の耳に。
今まで、魔の動きにさえぎられるかのように。
ただ、耳に入らなかっただけ。
金色の死神の噂が聞こえてくるのは・・・・それほど時間はかからない。
噂を聞きつけて。
彼を止めるべく行動を開始した彼の友人たち。
一人は、彼が結婚する前・・つまりは、まだ一人旅をしていたころから知っている。
そして・・・・。
彼らが・・・・二人が結婚する前からの友人関係でもあった。
だが・・・。
彼の・・・・・ルシフェルの最愛たる、妻であった・・・リスティナは、人の・・・盗賊の手にかかり・・・。
だが。
彼らには。
そんな彼の横によりそうようにいる、魂となっている、そんな小柄で華奢な女性の姿を認めることができた。
・・・・・・女性・・・・・リスティナ・・・愛称、リナは・・泣いていた。
自分のために・・・闇に落ちて言っている愛する人の行動に・・・・。
それでなくても。
自分は・・・・カウリイに何もしてあげれなかったようにおもう。
だがしかし。
あのとき。
・・・・・操を守ることで、彼想ったつもりであった・・・。
だが・・・それは・・・・。
自分のために、その力を捨ててまで。
人として、同じく生きる道を選んでくれた彼。
・・・本来ならば死んでいたはずの自分をその力で生きながらえさせ。
育ててくれた・・・そして・・・・愛している、もっとも大切な人・・。
―お願い・・・・・彼を・・・・カウリイを・・・とめ・・・・て・・・・・。
「後、一つ・・・・これさえ壊せば・・・。」
すでに。
彼の手により。
この結界の中にあった、国々は、魔族の戦いの中で滅んだものもあるにしろ。
すくなくとも。
そのうちの大半は・・・彼の仕業であることは。
あまり、知られていない・・・。
後、
国らしき形を残しているのは・・・・。
「あと、この地さえ・・。」
この地を後回しにしたのは・・・別に理由はない。
いや、あったのかもしれない。
・・・・彼女と・・・・リナと。
本当の意味で、将来を誓い合ったこの地だからこそ・・・。
これが終れば・・・リナ・・・・俺は・・・・・・。
「リナさんが悲しみますわ!?ルシフェルさま!?」長い黒髪の巫女らしき女性の言葉も。
今の彼には届かない。
「・・・・邪魔するな・・・すれば・・・・・・殺す!」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんな・・・・。』
あと。
この地で、残るは。
まだ出来て、数年にも満たない・・・。
ここ。
ゼフィーリア・・・・・。
ふと。
その気配に気がついた。
ふいと。
国の入り口にと移動する。
そして。
二人の女性と一人の男性と向かい合っている、金髪碧眼の男性の姿を認める。
すでに。
神族・・・いや、黄竜族としての力は、あのとき・・。
リナを本当の意味で人として生き返らせるのと引き換えに。
その力の全てをリナに与えたのだからして。
その力は残っていないにしろ。
だがしかし。
異界の魔族と・・・そして、この世界の神族。
それによって生まれ出ている彼にとっては。
奥底に眠っている、神魔融合という、一番、混沌に近いとも目されている、その力を使いこなせる彼にとっては・・・。
今や関係ないことなのかもしれない。
「・・・・・・・・ルナさん・・・か・・・。」
その瞳に映るのは。
この世界の竜神・・・・赤の竜神(フレアドラゴン)その転生体。
ルナティック=トゥエル=ドナ=インバース。
その当人・・。
紫がかった青い髪がさぁと風になびく。
すでに。
その髪は。
肩よりも長くのび。
どこか大人の女性らしさの雰囲気をかもし出している。
目の前にいる男性・・・ルシフェルのその声をきき。
「・・・・・悪いけど、ルシファー?この国はあなたに壊させるわけにはいかないわ?・・・・もう、わかっているんでしょう?」
そう。
わかっているはずである。
こんなことをしても、無意味なのだ・・・と。
「くっ!だけど!!!!俺は!!!」
誰も信じられるものは・・・いなかった。
母は・・・・その力を失い、何も話しかけてはくれない。
そして。
自分を育ててくれていた一族の全ては。
同じ仲間であるという、他の一族から、迫害を受けかけていた。
それも・・。
母の・・・・カノンの力を得たいがためだけに・・・・・。
「・・・・後・・この国で・・・終りなんだ・・。国が・・・大きな町などがなくなれば・・・・。」
これが間違っているのは分かっている。
だがしかし。
この戦いを始めたのは・・・・。
他ならない、国と・・・そして、権力と富に捉われた人々であるのは・・。
ならば。
国という国。
町という町。
全てを無に還して、一からはじめれば。
あのような悲劇は・・・もう・・二度と・・・。
「・・・・・だめだよ?おにいちゃん?」
「・・・って!?こら!?ルリファス!?」
いきなり。
そんな説得を試みようとする、ルナの足元からちょこんと顔をだし。
そして。
とてとてと歩いてゆく一人の子供。
歳のころならば、一歳か少し上くらいであろうか。
そして。
ふと。
一瞬、その子供に・・懐かしい気配を感じ取り。
ルシファーのその殺気が緩む。
「・・・ねえねえ?ルナお姉ちゃん?このおんなのひと・・・・ルリのママ?」
ふと。
カウチェリイにとっては何もない空間を指してにっこりと微笑む。
物心ついたときから。
あなたの本当の父と母よ。
と。
その姿は・・・少年にとってはよく見知った姿。
そして。
「ね?パパ?どーして、ママ?姿がうすいの?」
きょとんとした顔でそんなルシファーの姿を見上げてくるその姿に。
「・・・・・・・・・・・まさ・・・か・・・・。」
―カウリイ・・・・・気付いて・・・・・。
気配を感じる。
この子から。
自分と・・・そして・・・リナの気配を・・・・。
それに気付くと同時に。
ふと。
まるで風にのるように。
ふわりと。
そんな彼の回りに暖かい風が包み込むように感じられ。
「・・・・・リ・・・・・・・・ナ・・・・?」
「ママ!」
そこにいたのは。
あれほど、側にいくことを望んでいた・・・。
最も愛する人の姿であった・・・。
「あんた、あのとき。私の話も聞かずにいなくなったでしよ?
リナの中にいた子供は・・まだ無事だったのよ。まあ、賭けではあったけどね。」
そういうルナの声が、どこか優しく感じたのは彼の気のせいであろうか。
「・・・・リ・・・・」
側にいる、魂となっている愛しい女性に手を伸ばそうとして。
スババァァァァァン!!!!!!
おもいっきり。
何かでしばき倒される音が。
その場にと響いてゆく。
『あんたねぇぇぇぇ!このあたしがいないからって!今までなにやったのよぉぉぉお!!?』
かつての、生きていたときと同じ輝き。
「・・・・う・・すまん・・・。でも・・・・俺は・・・。」
そんなしゅんとなるそんな彼を抱きしめて。
『・・・・あたしは・・・側にいつでも・・いたよ?馬鹿・・・・。』
そっと。
実体のないまま彼を後ろから抱きしめる。
「・・・・俺は・・・・・・・。」
「・・・・リナさん・・・・死んでてもかわりませんね・・・・。」
「・・・まったくだ・・・。」
そんないつもと・・まったく生前と変わりないリナの動作をみて。
思わず溜息をついている、巫女風の格好をしている女性と、剣士の格好をしている黒い髪の男性。
そして。
「!!!!ルシフェル様!?何を!?」
ふと。
長いストレートの黒髪をした女性が何かに気付く。
ドシュ・・・・。
それと同時に。
辺りに鈍い音が響き渡り・・・・。
「・・・もう・・・どこにも・・いかな・・で・・・く・・・・れ・・・・・。」
『カウリイ!!?』
思わず叫ぶと。
ふと気がつくと。
すでにもう肉体から離れたそんな彼の魂が側にいるのに気付く。
『やっと・・・・・お前に会えた・・。』
『こ・・・この馬鹿ぁぁぁぁ!早く肉体にもどりなさい!』
『いやだ!!!お前が生き返らないのなら!!!』
『だぁぁぁぁ!あんたは子供かぁぁぁぁぁ!?』
「リナママ?ルシファーパパ?何でパパが二人もいるの?」
きょとんと。
まったく意味を解してないまだ幼い男の子。
魂となった父親と、そしてただの屍となっている肉体をみて。
すでに。
どうして、パパ・・ここにもいるのに。
ママの横にもいるのかな?
などと。
今父親でもあるという、ルシファーが自らの命を絶ったことにすら気付いてない。
「・・・・あいつは何を考えてるんだ・・・・。(汗)」
「・・・・・・ま・・・まあ・・・・ルシフェルさんですし・・・。」
まさか。
リナのことに気付いたら。
自分の胸を剣で突き刺して。
無理やりに魂を離脱させようとは・・誰が想像できようか・・・。
そんな彼をみつつ。
思わず頭を抱え。
「・・あのねぇ・・・あんたら・・。あんた達の子供・・残されたこの子のとこを考えなさいよ・・。」
思わずあきれた声を出す以外に方法はない。
まあ、それ以上何といっていいものか。
ルナとしては。
ルシフェルにリナとの子供を手渡すつもりであったのである。
『でも、ルナさんがいるだろ?』
『あーうー//いい加減にはなせぃい!//』
じたばたと。
互いに肉体のない、魂同士でじゃれあっているそんな二人の夫婦。
「・・・・・・ま・・・まあ・・・・いいけど・・・。まさか、このまま、二人して・・あの御方のところに還るつもり?」
『俺はリナと一緒なら何処にでもv』
『だからって、このあたしがあんたの側に魂として側にいるのに。気付いたからって自ら死ぬやつがあるかぁぁぁぁあ!!!!』
魂となり。
ずっと。
彼の側についていた彼女・・リナは。
・・・彼を心配していたことを。
このとき。
すこしばかり激しく後悔し。
・・・・一人で成仏しとくべきだったかも・・・・。
などと想っていたりするのだが。
その事実に、この場では。
ルナ以外、誰も気付いてないのであった。
そんな光景が繰り広げられているそんな中。
「・・・・・・・・・あああああ!?」
「ど・・・・どうしたの!?アクア!?」
いきなり、叫んで出現してくる水色の髪の女性に思わず驚く。
「わわわわわわたし・・お・・おそろしいことをしてしまいましたぁ!?ガーヴの・・彼の封印が!?」
「・・・・・・・・・・・は?」
そんな言葉に。
全員が首をかしげているそのころ・・・・。
滅びの砂漠の中にある。
とある神殿の中の一室で・・・。
ピシピシピシィィィン・・・・。
思わず。
その光景を・・。
どうやら、転生したらしい。
水竜王の封印をうけて転生した魔竜王の気配をおって探っていたフィブリゾは。
映し出された映像の前に。
完全に石化してゆくのであった・・・・。
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あとがきもどき:
薫:・・・・・・ふっ。18KB以上打ち込んでて・・。
パソがフリーズして、保存してなかったので全て一度消えたのさ・・。
何かもう、ど〜でもいい感じ?(こらまて!)
ふふふふ・・・・・・・・・・・・(涙)
ちなみに。S・・・・・・・・かなり、吐血?(笑)
違う意味でね・・・さすが・・親ばか?(こらまて!)
んではでは・・・・。
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