降魔への旅立ち
あれからどれくらいの年月がたったのであろうか。
かつてそこにあったはずの村はもう跡形もない。
それが、始めからなかったものだと今では分かっているものの。
やはり、人として過ごしていたあの年月は思い出の一つ。
かつては。
人も魔も、全ての生き物全てが互いに争いつつも、共存を果たしていた遠い記憶。
それがふと思い出される。
かつてのように生活するにも。
まだ、この惑星の発展の力はまだ足りず。
いや、惑星における力そのものがまだ足りない。
そんなことは、なかなか知られてない事実ではあるが・・・。
年月を指し示すかのように。
そこにあるのは巨大な湖。
かつてのまだ幼き日のじぶんが創り出した・・結界を施している湖は、まだそのまま健在で・・。
この器となっている人間は。
まあ、もともと人間の体の大半は水分で構成されている。
といっても過言でなく。
それゆえに。
まず水はどの人間も愛称が合う。
大量の水を利用して。
この地に、空気中の水蒸気を利用して薄い結界を張り巡らせる。
そして。
そのまま。
「我が意思によりて・・・・。」
小さく、湖の上に浮かび。
その湖の上に、その水下にある神殿の魔法陣が水面にと浮かび上がり。
そこから。
六つの光が当たりに飛び散ってゆき。
その刹那。
その光が着弾した地点にと。
一瞬のうちに、とある構造物が出来上がる。
この辺りに含まれている大量のオリハルコン。
それを利用した建造物。
つくりはまったく同じであるが。
まあ、内装などは。
これからゆっくりとどうとでもなること。
だがしかし。
彼は細かいところにまで気を配る性格なのか。
水面に浮かぶその手に映像として浮かんでいるのは。
今彼が造ろうとしている搭の模型。
湖を中心に。
六つの搭出来上がるのは。
ほんの一時もしない一瞬の出来事。
「・・・・ちっ。まだるっこしいなぁ。とりあえず、この四つの力のバランスを崩さないと。
力が完全に振るえなくて、俺としてはとっとと、戦いを起こしてほしいんだがなぁ。」
そういいつつも。
「おらおらおらおらぁ!」
ドシドシュドジュ!
その紅い髪の男性が大剣わ一振りするだけで、周りに転がってゆく無数の塊。
体格よりもかなり大きな大剣を振り回しているというのに。
まったく息すらも乱さずに。
戦場の中。
死体の山の中を駆け抜けてゆく一人の男性。
「・・・あいつは化け物か・・。」
仲間である傭兵たちからもそんな声が漏れている。
何しろ、ずっと彼は寝ていない。
まあ、そんな彼を雇っている側としては助かるが。
彼を差し向けられたほうとしてはたまったものではない。
累々と横たわる死体の山の中。
笑みすら浮かべて剣を振るいつつ。
戦いの中に楽しみを見出している、紅い髪の男性が一人。
「・・・・まったく、君は・・・」
ふいと。
そんな彼の後ろに。
この町の生き残りであろうか。
小さな男の子がいつのまにか立っている。
そのこめかみに少し手を当てつつ。
思わず彼らが。
彼の横にいくのは危ないと制しをかけようとしたその直後。
「・・・・何だ、フィブか・・。」
吐き捨てるようにそちらをちらりと一瞥し。
片手に今始末した人の頭をつかみ取り。
そのまま、まるで塵のようにとぽんとその辺りに投げ下ろし。
いきなり後ろから話しかけてきた、そんな少年の方にと目を向けてゆく紅い髪の野性味を帯びている男性が一人。
「『何だ』はないだろ?何君は人間社会の中で。傭兵やって遊んでいるのさ?」
冷たい眼差しで見つめるその顔は。
幼い子供の瞳とはかけ離れ。
そこにいるのは、確かに十歳前後のかわいい男の子・・多分。
艶やかな少しウェーブの入った黒い髪に、くりっとした大きな瞳。
一見すると女の子のようにも見えなくもないが。
というか黙っていればまちがいなく女の子。
それで通るような文字通り、美少年。
「しかたねぇだろ?何しろまだドンパチがはじまらねぇんだから。俺はこうして動いているほうが性に合ってるんだよ!」
そういいつつ、剣を一閃させると。
その先にいた、彼が今戦っているとある小さな国の部隊そのものが一瞬のうちに、業火の炎にとつまれてゆく。
「・・・・君ってやつは・・・。」
はぁ。
溜息一つ。
いくら、戦いが好きだからといって。
こうも完全に表部隊で戦っていては。
他の神族に気付かれることは必死。
「・・・まあ、君の小さな脳ミソに言ってもしかたないけど。」
そういいつつ、溜息一つ。
まあ、彼らに脳ミソなるものがあるとは思えないが・・。
止めようとしたが。
どうやら知り合いらしいが。
よくもまあ、こんな血と熱気と腐った肉の匂いが立ち込めている中、小さな男の子が狂いもせずに堂々と。
しかも、大人の男性と話しているものだ。
少年の正体を知らないほかの人間達は。
そんなまったく異なるところで感心していたりしているのだが。
そんな彼らには目も暮れずに。
ちらりと。
彼が一緒に戦っているであろうそんな人間達を眺めて。
「でも珍しいね。君が人の味方をするなんて。」
そんな少年のその言葉に。
「いやなに。腹がへったから。そのあたりの食堂に入って何か食べたまではよかったが。
一銭も人のいうところのお金をもってなくてな。たまたまそこにいたこの部隊の隊長が。立て替えてくれて。
代わりに働かないかと言われてな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
その言葉にさらに頭を抱えてしまう。
「おい?フィブ?どうかしたのか?」
返り血を浴びているはずなのに。
目の前で人をミンチと切り刻んでも、まったくそんな返り血などを浴びずに。
にこやかに何ごともないように会話をしているそんな彼の言葉に。
今度こそ。
頭を抱えて思わずしゃがみこんでしまう。
「・・・・・君、魔族としての誇り・・あるの?」
彼の疑問も最もであろう。
何しろ、しかも。
一応、彼らは。
まがりなりにも、魔王、直属の部下であり、人々が恐れるはずである、魔王の腹心。
そのうちの一人。
魔竜王(カオスドラゴン)ガーヴ。
その好戦的な姿は、神族の中でも一目を置かれているほど。
・・・そんな彼が。
よもや無銭飲食をしかけて。
挙句は、人間の手助けをしていようなどとは・・・・。
彼が・・・冥王(ヘルマスター)フィブリゾが頭を抱えたくなってしまうのも当然であろう。
「・・何だ?それ?それより、フィブもやらねぇか?結構おもしろいぜ。人間殺してその断末魔の負の感情を喰らうのも。」
はぁ。
楽しみながらそんな戦いをしている彼をみて。
再び溜息一つ。
「・・・・・・・・・・体力馬鹿。」
その言葉がシックリとくる。
そんな彼の思いっきり皮肉を。
「おう!ありがとな!」
「・・・・・ほめてないってば・・。」
こめかみを押さえつつ、深く溜息をもう一度つき。
「ともかく。これからのことがある程度決まったから。君も早く来ることだね。場所は分かっているよね?
例のヘキサグラムのその中心・・・いいね?
会議があるのはこれから物質世界の時間でいうところの。3日後。遅刻は許されないよ?ガーヴ?」
そういいつつ、くるりと向きを変えて。
振り向きざまに。
「あ、そうそう、もし一秒でも遅れたら。話し合いの結果。
ダルの新薬の実験体になってもらうことが決定してるから。じゃ、用件はそれだけ。あまり派手にしないようにね。」
ひらひらと手をふりつつ。
瓦礫の死角にと消えてゆくそんな少年・・フィブリゾに。
「・・・・・・・・・・・・・な゛!?おいこらまて!フィブ!」
その言葉に多少顔色を変えつつも。
あわてて追いかけるが。
すでに遅く。
そこは行き止まりというのにも関らず。
そこに入ったはずの少年の姿は何処にも見えずに・・。
まあ、当然といえば当然なのであるが。
人前でいきなり空間移動をしないだけ。
・・・・彼より考慮があるであろうが。
誰もいない、廃墟と化している瓦礫のスミの一角で。
「・・・・・・ダルの実験体だとぉぉ!?こら!フィブリゾぉぉ!時間帯くらいきちんと説明しろぉぉぉ!」
彼の叫びが。
ただただ。
その場にと響き渡ってゆく。
「悪いが、3日後から、俺自由にさせてもらうわ。」
突如として。
いきなり。
どうやって入ってきたのか。
彼が寝室にしているテントのその奥深くに入り込んでいる紅い髪の男性に。
かなり驚きつつも。
その日の深夜。
ここ、数週間。
彼をスカウト・・・。
まあ、食堂での食べっぷりに惚れてみていたら。
何でもかなりの量を食べたというのに一銭ももっていないという。
体格のいい、野性味を帯びている紅い髪の男性。
かなりの使い手だと一目でわかったので。
その食べっぷりをみて。
そこの勘定を支払うということで。
彼を自分達の部隊にとスカウトすることに成功した。
とある男性。
確か名前をガーヴとかいったが。
よく彼は。
いきなり現われては消えることがある。
だがそれは。
移動が早い奴だ。
としか認識していない、彼ら達。
・・普通。
目の前で、いきなり掻き消えたりして、空間移動とかされれば、おかしいと思うであろうが・・・。
幸か不幸か。
彼らは空間移動という言葉も。
そして・・・魔族が空間移動をする。
という事実も。
そして・・また。
まさか、魔族が人の姿をしているなどとは。
誰一人として思いついてもいないのであった。
「うーん、それは難しいですね。とりあえず、あなたとの契約は。今戦っている国を落とす。それまでのはずです。
3日後にまであの国を陥落させられれば。話しは別ですけどね。」
ベットに上半身を起こしつつ。
そんなことをいっているのは。
彼を・・ガーヴをスカウトした、その当人。
この部隊の隊長を任されている将軍サラス。
その白い髪がさらりとなびく。
元々、黒い髪であったらしいが。
いきなり、こんな討伐隊にと借り出されて。
部下達などの気苦労からか。
一夜にしてその髪が真っ白になったという、人物でもある。
その紫の目が彼を見据えてのんびりと言い放つ。
「・・・・つまり、3日後までに。陥落させれば、契約は終了・・というわけだな?」
そんななぜか寝室としているテントの中にと、深夜というのにやってきているガーヴをみつつ。
「そうですね。でも、ここ数ヶ月我々が手をこまねいているのは・・。あなたも短いながらも了解しているでしょう?」
今回の任務は。
少し面倒。
何しろ、自然の要塞に立てこもっている彼らが相手なのだから。
その言葉に。
にっと笑みを浮かべて。
「つまりは、どんな形であれ。陥落させればいいってわけだな?よっしゃ!」
それだけいってぱんと拳と開いた手を叩き合わせて。
にんまりと笑って。
その次に。
「ならば、早いところ行動あるのみ・・・だな。おい!いくぞ!ラーシャート!」
なぜか。
いきなり虚空に向かって叫びつつ。
なぜか、無銭飲食をしていたにも関らずに。
・・・・彼には仕えている部下がいるところから。
おそらくどこかの偉い人の子供か何かなのであろうが。
そんなことをサラス将軍は思いつつ。
・・・・まったく、違っているのであるが・・・。
いきなりそのテントの中に別の男性・・・。
なぜかいつも彼に付き従っている二人の男性のうち一人。
その彼が出現し。
「ガーヴ様?どちらに?」
「きまってるだろうが!ダルの実験体にはなりたくねえからな!」
「??????」
主語、述語があべこべである。
というか。
これだけで理解ができたらすばらしいと思うが・・。
「じゃあな。サラス、今晩中には。陥落させてやるよ!行くぞ!」
そういいつつ。
いきなり。
その場から掻き消えてゆくガーヴ。
それをあわてて追いかけつつ。
「あ!待ってください!ガーヴ様!」
あわてて。
出現したときと同様に、いきなりそこから姿をかき消してゆくガーヴに仕えているという、将軍らしき武人の男性。
ラーシャートとかいう男性。
そんな二人をみつつ。
「うーん、相変わらず、移動するのが早いですねぇ。あの人達は。」
そんなことをつぶやきつつ。
・・・・・・・・・普通、おかしいと思うのが通常と思うのであるが。
何しろ、ここに来るまでは。
かなりの警備兵などもいる。
普通ここにたどり着くまで。
そんな彼らの制止が入ることはまず必死。
しかも。
現われたときも、出て行ったときも。
テントの前に詰めている兵士から何の連絡もないのである。
・・・・・普通その時点でおかしい。
と思うのが、常識であるでなかろうか。
だがしかし。
「うーん、本当にあいかわらず。テレやな人達ですよねぇ。
人に気付かれないようにただ照れくさいというだけで。
素早く人に姿を見られないように移動するとは♡」
・・・・とことん。
どこかかなりずれている将軍サラスであった・・・・。
「ひるむな!ここにいる限りここは陥落などはしない!」
周りに崖と岩肌で覆われているその場所。
その地質には、オリハルコンが大量に含まれており。
魔道士などの魔法なども。
ここでは皆無。
ここに要塞をつくっていくはばか経過していることか。
ここに拠点を構えてから。
争いなどにも耐えられている。
国が滅びても、その国民などの殆どは。
この山の中に作っている簡易的な町にとすでに全員、避難は完了している。
ここに群生していた太陽苔。
それが、彼らの恩恵すらももたらしている。
そしてまた。
ここには、豊かな自然の湧き水などもあり。
それゆえに。
山の洞窟を利用して作られているこの簡易的な町は完全にと機能を果たし。
この町では、自給自足が成り立っている。
だからか。
こんな世の中でも。
食べ物などには困らずに。
それゆえに、他の町や国などから。
目を付けられている今の現状・・・・・・・。
「・・・・まったく、フィブの野郎・・。」
自分がいないときに。
一体どんな約束をしているのやら。
・・まあ、彼が人間の中で遊んでいる最中。
彼の同僚でもあるダルフィンが。
覚醒した魔王を使って。
どこまで覚醒した人間の体が耐ええられるか。
などといった実験をしようとして・・・。
必死にフィブリゾや、そしてゼラス、グラウシェラーが止めていた。
・・・・という事実を・・・・彼は・・ガーヴは・・知らない・・・・・・・・。
-第32話へv-
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まえがき:
せっかくのお休みなのに。
猫が脱走して打ち込みする気力がなくなって。
結局六時間ほどゲームの世界に現実逃避をしていた私です(こらまて!)
さて・・・そろそろいい加減に六時ですね(こらこらこら!)
ちなみに。
今日アップしたのは午前中の闇の行方とこの一本のみ。
・・・・いやぁ。はっはっはっ・・・(汗)
ああ!ごめんなさい!怒らないでぇぇ!(滝汗)
・・・・何はともあれ。
・・どれを重点的に打ち込むかナァ・・(おいおい・・・)
・・・・・うーん・・・。
何か漫遊記というリクエスト・・・・あるにはあるけど・・・・。
あれは気力が乗らないとあばれっぶりが足りなくなる・・(こらまて!)
(つまりは当初に作っているのよりかなり省かれるシーンが多くなるという・・汗)
ではでは・・・・。
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あとがきもどき:
薫:・・・・・何か主人公が・・・ガーヴ?(爆!)
ちなみに。体力馬鹿で戦闘馬鹿。
それの前ぶりを言いたかっただけです。はい(こらまて!)
・・・・サラス将軍・・。
・・・・・・・・・・・・・・・気づけ!(汗)
目の前で何回、ガーヴは空間移動したとおもってる!?(笑)
・・・・・・・・・いーのか?そんなのが将軍で?ねえ?グリムガルド?(こらまて!)
(何一回も出してない、サラス将軍が属している国の名前を言っている!?汗)
んではではでは。また、次回でv
・・・あ、風呂いかないと・・それとご飯・・・。
2003年5月17日・・・・。
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