降魔への旅立ち




前にも同じ光景が。
かつては、まだ幼いあの日。
あの村で・・・・。
あのときは、神族に組するという、どうして神側に続するそんな存在が、無意味に大量虐殺するなど信じられなかった。
あの村の出身であることを隠して。
水竜王の神殿にて。
知識を学んでいたときに。
あの竜王がかなり好戦的であると、そのように知ったのは・・・。
そして、あれから。
人の手により、母は殺され。
唯一残っていた・・・血のつながりは何にしろ。
大切な妹まで・・・。
よく似ているとは思っていた。
唯一の、かつての彼が生まれ育った村の生き残り。
その彼もまた・・・・。
今、レイの目の前で。
再び人の手によって。
赤い海の中にと沈んでいる。

―どうして、人は愚かなのであろうか。

争いとは・・・。
こういうものではないというのに。
本来、争いとは。
互いに互いを高めるために、儲けられた手段。
そのためにこそ創られしもの。
本来の意味を成さぬまま。
その衝動に駆られて行動する存在達。
それは、神族においても、魔族においても、そして。
人、エルフ、竜、ドワーフ等などにおいても同じことがいえる。



―理を乱すものには、消滅を・・・・・。


とくん。


レイの中で何かがはじける。

突如として、脳裏によみがえる。
様々な知識。

そして・・・・・・



ゆっくりと。
サファイアを地面に降ろしながら視線を向けるレイ。

「ちっ。まあいい。この国の者は・・・全て・・。」

この国にいる者達は。
人でない。
そう上から聞かされている彼らにとっては。
別に罪悪感などない。
それがたとえ、あいてが子供であろうとも。
そういいつつ、武器を構えなおす人間達。


ゆっくりと。
視線を向けて立ち上がるレイの様子が、先ほどまでとまったく違うことにすら彼らは気付かない。

「・・・・・・・・滅びよ。」

すっ。


立ち上がりつつ。
手を伸ばす。
先ほどサファイアを貫いた人間に対して。


その刹那。


ごうっ!


『う・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!?』



レイのまわりにいた数十名の人間達が。
そのレイの言葉とともに。
黒い炎にと包まれる。
いや、赤黒い炎といったほうがいいものか。
黒い炎のその中に。
絶え間なく浮かび上がる赤い炎。
だがしかし。
一気に燃え尽きるのではなく。
じわじわと。
肉体が焼けただれ。
それでもしかし死ぬことは出来ない苦しみにもがいてゆく。


「こ・・・殺せ!こいつは化け物だぁ!」
誰かがそう叫ぶや否や。
いっせいに。
レイをめがけて。
攻撃呪文と槍や弓といった武器の数々が飛んでくる。

―が。

バシュ。

レイの目の前で、それらはことごとく消滅し。

ゆっくりとそんな彼らに対して目を見開く。
開いたその瞳は・・・・今までの紅い瞳・・・それだけでなく。
瞳孔からその全てが・・・紅。

「汝らは、汝らの心のままにその姿を変えたもう・・・。」


静かにレイがつぶやく。


その瞬間。


ごばぁぁぁぁ!!


この地にと侵攻を仕掛けていた人間達は。
その心の示すまま。
闇の部分が表に出て。
刹那、人の形ではなく、異形のものにと変化を遂げゆき。
その地のいたるところで。
直前まで人であったそれらが。
いきなり、目の前で変化するのを目の当たりにして。
無事であったほかの兵士達は。
その精神に異常をきたしたりとしているのは。
当然の結果といえば言えること。

『う・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!』


その日。

その場に居合わせた全ての生き物という生き物は。

二度と。
日の目を見ることもなく。

そのまま、混乱の中にて、混沌にと沈みゆいてゆく光景が。
繰り広げられてゆくのであった・・・・・・。




「・・・・フィブ、いつまで死んだふりをしているのですか?」
冷静に、それでいて、落ち着いた口調で話しかけるレイ。
その言葉に。
ゆっくりと。
顔に血をこびりつかせて。
白い手でそんな血をぬぐいながら起き上がる。
そしてまた。
倒れているサファイアに手をかざし。
「・・・・・すでに死んでいたのですね・・・・サファイアは・・・。
   まあ、感謝しますよ?フィブ?この子の魂をそのまま留め置いてくれて。」
そういって。
魂がそこにまだあるサファイアの体に手をかざす。
刹那。
ふわりと。
サファイアの体が紅い光に包まれる。
その刹那。
いや、レイの雰囲気が変わったその直後に。
この国全体が、ある特殊の結界に覆われているのに誰が気付いているであろうか。
その魂の奥底に眠る力。
それこそは・・・。
「お父さま、お目覚めですか?」
そういって、にっこりと。
血にまみれた体で起き上がり。
・・・・この血は彼のものではなく。
他の人間のものであるのだが。
あの一瞬。
近くのどうでもいい人を殺して、自分の身に降り注いだのである。
彼・・・フィブリゾは。
「ええ。感謝しますよ。・・・・・すっかり人の暮らしになじみかけてましたからねぇ。」
しみじみと感慨深げにつぶやくその姿は。
今までのレイのその雰囲気ではない。


でに、誕生するその前に。
このもの・・つまり、この『レイ』という人の魂そのものは。
自らが吸収して我が物にしているという事実。
それが、ここまで覚醒が遅れたのは・・。
「うっかりしてましたよ。人の思いはかなり強いという事実を。」
母を思い、家族を友達を思うその心・・つまり。
表に利用して出していたレイの心が。
それらによって強くなってしまった結果。

もし、このまま。
あまり長いこと、覚醒しなかったと思うと。
少しばかりぞっとする。
何しろ、今回は覚醒を果たすために行動しているはずなのである。

「とりあえずは・・・・。サファイア?貴女の中にある、その欠片。戻していただけますよね?」
にっこりと。
今、生き返らせたサファイアに向かって微笑むレイ。
おずおずと。
「・・・・・・まだお兄ちゃんって・・・呼んでもいい?・・・・・・・・・・レイお兄ちゃん?」
どこか。
すでに。
生き返らされた時点で。
兄が一体誰なのか、理解しているサファイア。
いや、理解はもう一度死亡した、レイたちと出会う前・・そのときに。
してしたはずである・・。
自分が選ばれたのは・・。
他ならぬ、その魂のうちに眠る魔王の力を見出されてのこと。
「それはかまいませんよ?サファイア?」
その言葉に。
ぱぁ!
目を輝かせ。
「わぁぁぁぃ!お兄ちゃん、ありがとー!だから好き!」
いくら相手が魔王と呼べる存在であろうとも。
大切な兄であることには、まだ幼い彼女にとっては代わりがない。
「こら!サファイア!」
慕われるのは心地よい。
今では、もう、彼にこうして甘えてくる子供達など・・・。
はっきりいって皆無。
昔は子供たちも全員甘えてきたのに・・・などとそんな魔王らしからぬことを思っているレイ。
そういってたしなめるその言葉が。
微笑つつ言っているのでは。
魔王の威厳も何もあったものではない。
「そうですねぇ。とりあえず。サファイア、貴女は。私の見回りの世話をする役目でもやってみますか?」
「うん!」

周りは、すでに累々たる、何かの山。

その山から、無数に飛び立つ異形の何か。
死体を器と化して、具現化した下級魔族達のその姿。


彼らの回りでは。
そんなほのぼのとした会話が繰り広げられるほどに。
平和な光景が広がっているわけでもなく。
無造作に具現化して飛び立ってゆくレッサーデーモンたち。

ざっ。

そんな会話を繰り広げているレイとサファイアのその二人の前に。
突如として、数名の人影が浮かび上がり。
それが人形と成すのはほんの一瞬のこと。

赤い髪に野性味を帯びた体格の男性に。
その長い淡い金髪を後ろで結んで短くまとめている女性。
その目つきは多少鋭く、まるで肉食獣の目を連想させる。
銀の髪を少し長く肩の辺りまで伸ばし銀の瞳の。
歳のころは20代前半くらいであろうか。
騎士のような格好をしている若い男性。
漆黒の長い髪を肩の辺りまで伸ばし。
青いドレスに、その首や手には、真珠の装飾品や、服の胸元に。
いかにも高級そうなカメオがあしらわれた、
珊瑚のブローチをあしらっているものをつけているまだ若い見た目二十代前後の女性。
そして。
そんな現われた四人の前についと前にでる少年。
そして。
五人が五人とも一斉にひざまづき。
ざっ。

音を立てて、その場にと膝をつき。

『お帰りなさいませ。魔王(赤瞳の魔王)(お父)様。』

女性二人。
男性二人。
子供一人。
計、五人の声が。
完全にと重なってゆくのであった。


                             −第29話へv−


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まえがき:

ふっふっふっ♪
やってきました、覚醒時!(まて!)
ではでは、いくのですvv


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あとがきもどき:

薫:・・・・・・・・出てきましたのですv腹心五人v
   これから戦いが本格的になって・・会議(ん?)して・・んでもって、どこかの馬鹿が先走った結果・・
   ・・あーなってこーなって・・んでもって、結界張って・・・・。
   ふぅ。とりあえず、幼少偏の覚醒偏までは終り・・かな?(まて!)
   次からは役目を果たすべく。がんばる(だからまて!)彼らの話し・・かな?
   (でも約数名は完全にその本質を勘違いしているけど・・・こらこらこら!)
    んではではv

    ・・・・・ああ、また父が猫を外に出した・・(怒)
    まだ今年はフェラリアの予防薬・・貰いにいってないのよぉぉぉ!
    それに、予防接種も!!!
    出すなぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!!!!(絶叫!!)



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