降魔への旅立ち
部屋一杯に広がる水晶。
それに気後れしつつも手を触れる。
刹那。
水晶から流れてくる記憶の逆流というような感じの膨大なる知識。
それは。
王国が始まってから今までの。
彼らの歴史と、そして知識と力。
その集大成。
部屋にある水晶の全てが、それに呼応するかのように光り。
部屋が青白く光り輝いてゆく。
レイにとってはかなり長い時間に感じられたそれは。
「・・・・はっ!」
ふと。
目が覚めたようにハットなると。
そこは何ごともなかったかなのような。
ただ水晶が部屋一面に広がる部屋で。
思わず周りを見渡すレイ。
「お兄ちゃん?どうかしたの?」
水晶に手を触れたと思うと。
一瞬。
部屋がまばゆいばかりに輝きに飲み込まれ。
だがそれも一瞬のこと。
すぐにその光は途絶えた。
呆然としている兄に向かってくいくいと、服のすそを引っ張るサァイア。
「なるほど、水晶を通じて一瞬のうちに、知識をつ伝える方法・・・ね。」
その伝達方法に覚えがあり、多少苦笑する。
これはかつて。
今はすでに滅びた王国がやっていた方法。
血筋のみにしか伝わらないように。
血を引くものしか触れてもその情報が引き出せないようにしている、特殊な術がかけられている。
くすくすと。
かつて、滅んだある国のことを思い、苦笑するフィブリゾに。
「????どうかしたの?」
「ううん。何でもない。じゃあ、レイさん?外にでようか?」
そういって。
すっと壁を指差すフィブリゾ。
それと同時に。
ただの壁であったはずのそこに。
外の光景が映し出される。
壁に映し出された光景は・・・・。
「・・・・・・・・・・・な゛!?」
思わず目を見張ってしまう。
外では・・・。
空が赤く染まりあがり。
上空から無数に落ちてくる何か。
それと同時に。
地上からも立ち上る・・・・煙の数々。
みれば。
地上、上空、その両方から。
何者かに攻撃を受けているのが見てとれる。
その破壊の衝動が。
映像を通しても見てとれる。
人は、あまりに弱いもの。
ただ、一つの言葉をきっかけに。
あっさりと誰かの手の平の上で踊り、そして行動する。
それは、唯一つの言葉から。
「以前殺されたはずの男性が。まったく生前のまま、生き返って国にて見かけたんですけどねぇ。
あの国・・・本当に人間の国なのですかね?」
旅の神官が。
ぽつりとつぶやいたその言葉は。
この世の中である。
人々に恐怖を与えるのには十分。
そして。
人・・・つまり、自分達とは異なる彼らを殺せ。
そういうように行動するようになるのは時間はかからない。
それが、国という立場の人々に関ってくるとなると。
もはや完全に戦争そのもの。
たった一つのその言葉が。
侵略行為となりえるのには。
そうは時間はかからない。
そして。
今。
そんな国と手を結び。
この国を・・完全にと滅ぼすために。
二つの国が手を結び。
レイたちが遺跡にもぐってしばらくのちに。
そんな侵略者達はやってきているのである。
相手は人でない。
そう思いこんでいる人々にとって。
さして、虐殺行為など何ということはない。
映し出されるのは。
必死でこんな場所でも生きていた人々が。
なすすべもなく、兵隊に惨殺されてゆくその姿。
泣き叫ぶ子供や女達、そして年寄りですら。
容赦なく剣で、槍で・・弓で貫いてゆくその姿。
思わず目をそむけたくなるようなそんな光景が。
壁に映し出されたその先で。
繰り広げられている。
「・・・・・・・こうしてはいられない!いくよ!」
自分に何ができるのか。
そんなことは分からない。
だからといって・・。
こんな行為を見逃すなど、できるはずもない。
顔色を真っ青にして。
その場から、空間転移し。
一瞬のうちにと外に出る。
目に映るは、かろうじて町並みなどを作りかけていた、先ほど親切にしてくれた村ですら。
完全に焼き払われているそんな光景。
そして。
積み上げられた黒い墨の塊が。
あちこちにと積み上げられ。
そしてまた。
辺りにむせ返る熱気と鉄さびのような匂いとが。
風にまじって辺りに漂っている。
「・・・・とにかく、止めさせないと!」
そういいつつ、駆け出すレイのその後ろで。
「まだ生き残りがいたか!」
そういう声が上空から響いてくる。
見上げれば。
そこにいるのは、竜の背にまたがった兵隊らしき人影が数十名。
そして。
その上から、彼らの方にと向かって。
その手にもっている弓が標準を定め。
竜達の咆哮もまた。
彼ら・・・レイ、フィブリゾ、サファイアの方向を向いているのが見てとれる。
「!危ない!」
ドン!
一体何が起こったのか。
次の瞬間には。
ドススススッ!
鈍い音。
そして。
・・・・ドサ・・・・・。
何かが崩れ落ちる音。
突き飛ばされ、ふらつくその体を起こしつつ。
振り向いたレイの目に飛び込んできたのは。
今までレイがいた場所。
そこに無数に上空から降り注ぐ光と武器の嵐。
そして。
レイを突き飛ばしたフィブリゾが。
その攻撃に貫かれてゆくその姿。
―ぱしり。
デジャヴ。
以前にもこんな光景があった。
何もできずに・・・・。
「・・・・!フィブリゾさま!?」
あわてて、どこからか駆けつけてきたシェーラが、そんな彼に覆いかぶさるように。
そのまま、同時に光にと貫かれ。
ゆっくりとその場に崩れ落ちてゆく。
こ゜ぷっ。
その口から吐き出される真っ赤な血。
「フィブリゾ!?今呪文を!」
あわてて、駆け寄るレイの言葉をさえぎるように。
「・・・・・よかった・・・君は・・無事だったんだね・・。
僕は・・・・・そう・・・思いだした・・・あのとき・・・・シェーラ・・・・に助けられて・・・・。」
「しゃべったらだめ!」
真っ青になりつつ、回復の術をかけてゆく。
が。
一行に止まるようすのない血。
「レイ、君のことも・・思い出したよ・・。シルナの一人息子の・・・・・。」
そういって手をレイの頬にと当てて。
「・・・・君は・・・逃げ・・・・て・・・。」
ぱたり。
冷たくなってゆくその体。
「駄目!死んだら!」
回復の術をかけようにも。
冷たくなってゆくその体はどうにもならずに。
そんな彼の目の前で。
その体が一瞬揺らめき。
その姿は。
今までの青年の姿ではなく。
まるで揺らめくようにと。
その姿が変化してゆく。
そこに残るは。
歳のころなならば、十歳くらいであろうか。
いや、それより少しした。
記憶の彼方にある・・。
少しウェーブの入った黒い髪の少年。
・・・それは、紛れもなく。
彼の幼馴染でもある。
あのとき。
確かに記憶の中では、死んだはずの・・・。
ハーフエルフの、『フィブリゾ』
その彼の姿であった・・・。
ハーフエルフである彼は人であるレイとは成長速度が違うがゆえに、昔のままの姿だ・・・ということは。
知識の中でレイは知っている。
「あ・・あ・・・・・ああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
確かに気配は似ているとは思っていた。
だけど。
まさか、はっきりと確信するのが。
まさかこんな形でなどと・・。
ぐるぐると回るその思考の中で。
「お兄ちゃん!!!!後ろ!!」
悲鳴のような声が。
レイの耳にと届いてくる。
振り向いたその視線の先で・・・・。
どすっ!
いつのまにやってきたのか。
その手にパルバートを持った人間が。
それの切っ先を突き出して。
今まさに。
・・・・・・サファイアが。
その小さな体を・・。
貫かれた瞬間であった。
「おに・・・・・・い・・・ちゃ・・・ん・・・。」
小さな手を自分に向けて伸ばしてくるその手。
血に濡れた真っ赤な服。
こ・・・ふっ・・・。
そのかわいらしい唇から、溢れる大量の・・・紅いもの・・・・。
―どくん。
「あ・・・・あ・・・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
――――ぷつん。
倒れてゆく妹の体をわめきつつ抱きしめて。
叫ぶレイの中で。
何かがキレる音を。
彼ははっきりと・・自覚してゆくのであった・・・・。
−第27話へv−
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まえがき:
ようやくこのときがやってきました!
今回でレイが覚醒する前ぶりです!
くぅぅぅ!これから本格的に、戦争が広がってゆくのです・・。
あははは・・・・・(汗)
んでは・・。
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あとがきもどき:
薫:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・次回。レイの覚醒・・ですね(汗)
しかし・・・・・・自らの首を絞める人間・・。愚かですねぇ(おいおい・・・)
でもまだ。
完全には気配などは神族側には知られません。
さて・・・その理由は?(まて!)
んではでは・・・また・・・・・。
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