降魔への旅立ち
「・・・・・では、どうしても?」
彼はかなり優秀な人材であった。
人に対して、その概念を覆すがごとくに。
人の身でありながら。
その魔力の高まりは。
人は努力をすればどんなにも上り詰めることができる。
というその典型を彼は示した。
あまり人とは関りを持たなかった、彼ら、神族といえども。
こういう人間もいるのだと。
彼をほめていたその矢先。
彼が住んでいた町が、人の手によって襲撃され。
そして。
彼のは母親が死亡し。
不幸中の幸いというか。
妹は生き残ったらしく。
これよりは、妹の側で今度は下界で・・つまりは。
人の世の中で。
今まで習った知識と力を役立てたい。
そういうレイの言葉に。
どうして反対が出来ようか。
「そうか、だが、いつでもまた来るがいい。レイ=マグナス殿なら。喜んでこの神殿は迎え入れよう。」
そういって、いってくる、神殿に仕える黄金竜達のその言葉に。
「ありがとうございます。」
レイはそういって、深くお辞儀をし。
今日、彼は、水竜王の神殿を優秀な成績と実績を治め。
再び彼らが住む人間世界にと戻ってゆく―。
「わぁぃvお兄ちゃんと一緒v」
しっかりと兄の腕を掴んで喜んでいるサファイアに。
「君と一緒だったら、僕の記憶も戻るかもしれないしね。」
そういいつつ、彼の旅にと同行している、フィブリゾという名前の少年に。
そして。
「フィブリゾ様を一人で旅出させるなんて、そんな!」
といいつつ。
付き従うようについてくるシェーラという少女。
レイ、サファイア、フィブリゾ、シェーラ。
神殿から戻ったレイは。
この四人で。
とりあえずは。
彼の父の出身地だという、かつて巨大な王国があったという。
ユグラシドル元王国に向かって。
その日。
彼らは旅たって行く・・・・・・・。
ユグラシドル王家。
それは、あまりにも有名でもあり。
そしてまた。
その力ゆえに、神族などからも目を付けられていた王国でもある。
かつて。
この王家の始祖は。
あの、黄竜の一族が元だともいわれ。
一族がもつ、その深層心理における本来の力は。
かるく、黄金竜などを上回り。
そして、もしかすると、腹心や竜王などよりも強い力をもっているのでは?
とかつては言われていた種族の末裔。
そんな彼らが作った王国。
滅んだ理由は。
人は力あるものを恐れ。そして迫害する。
そしてまた・・・・。
力があるゆえに、恐れられ、一時は虐殺すらもされていた彼の一族。
そんな彼らが集まって一つの国と成したのは・・。
それは当然の成り行きであったのかもしれない。
だがしかし。
争いを避け、平和に暮らそうとする一派と。
そしてまた。
自分達を迫害した世界そのものを取り込んで。
自分達が栄光の地位につくべきだ・・・という、同じ一族の間から対立が起き。
そして。
ユグラシドル王国同様に。
つくられた、ラグナデス王国。
争いを基本的には好まない彼らである。
ユグラシドルの血を引くものは。
だがしかし。
その結果が仇となったのか。
そしてまた。
この地に紅の瞳や髪をもった人間が多々といたためか。
・・・・まっさきに。
正義の名前のもとに。
竜王の手によって。
被害が広がり始め・・・。
そして。
その王室の中枢に、よもや魔族が入り込んでいようなどと。
誰が想像できたであろうか。
争いを止めるべく、命を落とす覚悟で国に戻ったレイの父。
その願いもむなしく。
今では。
完全に自分達に刃向かえるものがいなくなったとばかりに。
ラグナデス王国は。
その力をもってして、世界に侵略を開始して、久しい事実。
力のバランスが。
ここ、人間世界で崩れているので。
今までは、光がバランスをとっていた世界の均衡が崩れていることは。
少しでも精神世界とつながりをもち、その力を使える人間や、生き物であれば、それは確実に捕らえられる事実に他ならない。
何かこのバランスを元に戻す・・。
いや、今のでの状態が。
光の力が強すぎたその反動が。
今になって表に現われているというのが正しいのかもしれない。
普通、人の心でもそうではあるが。
光と闇。
互いにバランスよくあってこそ。
それで一つとみなされる。
だがしかし。
今まで、この世界は、光のみの力が目立ち。
闇の力は失われていたようにも見えなくない。
何でも、かつての戦いにおいて。
魔王が竜神に負けたのが原因でないなだろうか?
という伝説じみた説も残っている。
― ここでなら。
「ここなら、何か、いい方法が得られるかもしれないし。」
それは、直感。
ここでは、何かを知っていたはずという。
今や完全に瓦礫の廃墟と化した城跡で。
ごそごそと物色を続けているのは。
レイたち四人。
さすがに、四人で旅をしている最中。
盗賊や、どこかの無差別兵隊のチームなどを壊滅させては身包みはがし。
そのまま下着一枚で縄で結んでおいて。
お金にならないが役人にと突き出して・・・・。
などとやりつつ、ここまで進んでやってきた彼ら四人。
辺りはすでに廃墟というより荒野。
かつてそこにあったはずの町並みは、すっかりとなくなっている。
ここにくるまで聞いた噂によると。
何でも。
お家騒動を発端に。
いきなり、竜などの襲撃をうけ。
ほんの一週間にも満たない間に、この王国は滅んだらしい。
かつて、王城があったあたりにあるのは。
巨大なクレーター。
パ・・・キ・・ン・・・・。
歩くたびに壊れた瓦礫の山が音を立てる。
こんな場所でも、故郷を離れるのがいやなのか。
はたまた何処にいっても同じと捉えているのか。
完結な家を建て、集落を形成している町の人達がいる。
「王家の者しか入れない、場所があるんだよ?」
そう集落で情報を得たのは。
レイから・・・・どこか、その雰囲気が出会ったことすらないのに、懐かしい感覚を受けたから。
といってきた、集落に住むとある女性から。
年配でもあるその女性は。
「・・・・・ほんと・・・・よく似ておられる・・・。」
そういいつつ、レイの髪をさらさらとなでてくる。
親切にも、彼ら四人を無条件で止めてくれたその女性は。
かつて、城に使えていたことがあるらしく。
王室最後の王子・・・レイのことを知っているらしく。
そして、目の前にいるレイが。
その王子と瓜二つなのを見てとり。
他人のような気がしないらしい。
並べられた食事は。
豪勢とはいえないが。
心がこもっているのがよくわかる。
暖かいスープにおかゆ。
この辺りでは米などを手にいれることすら難しいというのに。
「そうなんですか?それでそこには何があるんですか?」
そんな女性にシぇーラが問いかける。
「何でも、私が聞いたところによると・・。魔力を高める何かの知識と。
そして・・・・意味がわからないけど。『安定をはかるもの』の知識があるらしいけどねぇ。」
そういいつつ、サファイアの口についたスープをぬぐう。
それにくすぐったそうに目を細めているサファイア。
「そうですか。」
そううなづくフィブリゾに。
「よかったな?サファイア?」
「うん!」
大人の女性に構ってもらうことは。
彼女にとって、どうやら母親を思い出すらしく。
その顔が綻んでいる。
レイの言葉に笑みを浮かべてうなづくサファイア。
「ここにいても、何だし?いってみる?多少の結界とかなら、僕無効化できるし?」
などとさらりというフィブリゾのその言葉に。
「そうだね。何も見つからない・・というのも何だしね。」
どうやらそこは。
山の麓にあるらしく。
どんな結界が張ってあるのかしらないが。
唯一といって、かつて、ここに王国があったことを指し示す、遺跡と成り果てているらしい。
夕飯の会話の中で。
彼らはそんな知識を得てゆくのであった。
「・・・・ねえ?お兄ちゃん・・側で・・ねても・・いい?」
ごそごそと、布団にもぐりこんできた妹に。
「ああ、いいよ?おいで?」
「うん!」
顔をほころばせて。
兄の・・レイの布団に入ってくる大切な妹。
この子は・・絶対に守ってみせる。
そう決意を新たにするレイに。
「・・お兄ちゃん・・・。」
くぅ・・・。
兄の胸にすっぽりと顔をうずめるように。
サファイアはそのまま、眠りに落ちてゆく。
「―もう、誰にも誰かを・・・僕の前から消させたくない・・・。」
神族を信仰したり、尊敬する思いという概念は。
もう、彼の中では薄れ掛けて久しい。
いや、全員がそうでないのは分かっている。
いるが・・。
自分の村をかつて襲ったのも、神族に組する竜の一族。
そしてまた。
父の故郷でもあるこの国を滅ぼしたのも・・・。
また同じ神族に組する竜などの一族。
そう聞かされて。
どうして今までのように尊敬などできようか・・・・・
深い眠りに落ちてゆく彼の夢の中で・・・・
「・・・・・・姉さん?どうして・・・・か・・・は・・・・・・。」
「・・・・・レイ・・それ・・・・わたし・・・・まち・・・・え・・・・。」
どこか懐かしく。
そしてまた。
どこか見たことのある。
黒い髪に紅い瞳。
艶やかな紫に近いその黒い髪。
・・・・どこかで出会ったことがある。
・・・・そう。
どこかで・・・・・。
やがて、光にその髪が照らし出されると。
その黒い髪が実は、紫がかった青い髪であることがわかる。
・・・・・・僕・・・・は・・・・・。
何か大切なことのような感じをうけつつ。
レイは深い眠りにと落ちてゆくのであった・・・・。
−第26話へv−
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あとがきもどき:
薫:ふふふふふ。
そろそろ、レイの覚醒に近くなりましたv
え?夢の中の人は誰かって?
あははははははv
この設定は・・・今までとは多少(いやかなり)異なりますからねぇ。事実は闇の中?(こらまて!)
ま・・・彼がそう思ってしまうのも。しかたがないかと・・・(だからまて!)
それではvまたvv
2003年5月9日
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