降魔への旅立ち


全てがまるでスローモーションのように。
「・・おに・・い・・ちゃ・・・。」
がぼっ。
その小さな口かにレイを呼ぶ声とともに。
大量の赤い何かが吐き出され。
ゆっくりと倒れてゆく小さな体。
「あ・・あ・・・・ぁ・・・・・・、サファイアぁぁぁぁぁぁ!!!」
ただ夢中だった。
夢中でその小さな体を受け止め。
「・・・・ちっ。小さい人間が。邪魔をしおって。」
だんだんと冷たくなってゆく小さな体。
上空から聞こえてくる・・・人の声。

―とくん。

ゆるさない。

―とくん、とくん・・とく・・ん。

たかが、人間風情が。


―とくん、とくん、とくん・・とくんとくんとくん・・。」


心の奥底からわきあがる何か。



手をかざし、回復の術をあわててかける。
間に合わないほどに深い傷。
ふさがらない・・・・傷と、止まらない・・血。

青くなってゆく小さな体。

必死で回復をかけているレイの上空から。
「ふん。まあいい。とにかく、これで!」
そういいつつ、魔力を繰り出す。


魔力の光球が、一気にレイに向かってつきすすみ。
その光球などに飲み込まれ。
それで・・。
終るはずであった。

だがしかし。


―――パキィィィン・・・・・・・・。



『な゛!?』


思わず驚愕の声が漏れる。

確かに直撃したはずなのに。
術が・・・・・・無効化されたのか。
はたまたきかなかったのか・・・・・。


レイの周りではじけ・・・・消滅する魔力の束。


「・・・・んっ・・・。」
小さく身じろぐ小さな体。
どうにか間に合ったことに安堵する。
そして。
ゆっくりと視線をめぐらせる。
その瞳は・・・いつもよりさらに紅く、紅く怒りで染め上がっていた。


「―消えろ。下種が。」
小さくレイが吐き捨てるとともに。


ごぉぉぉぉぉ!!!

『ぎ・・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?』


彼等を襲った竜の大群の群れを。
黒い炎が包み込む。
それを冷ややかに見ているレイ。

「―プラスト・アッシュ!!!!」


どこからか、レイの耳に。
懐かしいような。
聞き覚えのある声が聞こえ。

炎に包まれつつも、黒いその力に蝕まれ。
消滅してゆくそれらを・・・ただ、タンタンと見つめていたレイは。

そのまま。
やがて、崩れるように、妹を守るようにその場にと崩れ落ちてゆく。




「・・・・冥王様?どうやら、最後の枷もそろそろのようですわ?」
倒れたレイのまわりに突如として出現する。
黒い髪を一つにみつあみしている少女が一人。
「うーん。やっぱ、お父様には、家族が怪我を負うのが。一番覚醒への近道だよねv」
そんなことをいいつつ。
そんな少女の横から。
ふいと現われる一人の少年。
少し異なるのは、以前の十歳前後の姿ではなく。
それから少し成長を遂げているその姿。
歳のろころは、14か5程度の姿であろうか。

彼等にとって、姿などはどうとでもなる。
そのまま、いつもの姿でもよかったのだが。
それだと、あまりに不自然のような気がしただけのこと。
そしてまた。

「じゃあ、シェーラ?作戦通りにいくよ?」
にっこりとその少女に微笑みかけ。
「はい。冥王様。」
「・・・・・僕のことは名前で呼んでね?作戦・・失敗したらどうするの?」
うなづく少女の言葉に。
くすりとわらってその口にその自らの人差し指を押し当てて。
にっこりと微笑む彼のその言葉に。
「は・・・はい!もうしわけありません!」
あわてて、謝る少女の姿が。
レイとサファイアが倒れているその前で。
そんな光景が繰り広げられていることをレイは知らない。



彼をたきつけたのは、他ならない自分。
というか、あの生き残りがいるということを伝えただけ。
・・・・・最終的な決断を下したのは、人間に過ぎない。
ただ、ちょっと手を加えただけのこと。





「・・・・・・う・・・ん・・・。」
―・・・・・ちゃん。
「・・・・・母・・さん・・・・サファ・・・・。」
―・・・・・・・に・・い・・ちゃん。
「・・・・・サファイア!」
「お兄ちゃん!」
がばっ!
「・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

チチチ・・・・。

「・・・・・・ベットの・・・中?」
窓から差し込んでくる朝の光。
柔らかなベットに横になっている自分。
・・・一体?
確か・・・・目の前で・・・。
あれが全て夢だったのか?
などとも思うが。
「よかった!お兄ちゃん、目がさめたの!?あのね?私達を助けてくれた人がいたんだよ!?」
戸惑う彼の耳に。
聞き覚えのある声が響いてくる。
「・・・・サファイア!?」
確かに目の前で・・。
冷たくなりかけていた大切な大好きな妹。
その彼女が今。
彼の枕元にいるのはどういうわけか。


「サファイア?気がついた?」
どこか聞き覚えがあるような。
そうでないような声が聞こえてくる。
起き上がるその体に。
見覚えのない服が着せられている。
思わず自分の服装をみつめてから、今聞こえた声の方を振り向くと。

記憶の片隅に残る、幼いときからずっと仲良しであった、友達の姿。
その姿が一瞬その現われたその姿にダブり。


「―フィブ!?」
思わず、ベットから身を乗り出して叫ぶレイ。

あのまま。
あのまま、死亡せずに成長すれば。
きっとこうなっていたであろう。

そのつややかな少しウェーブの入った長い髪。
肩よりも少しながいその髪に大きな瞳。
一瞬女の子と見紛うばかりの・・・。
歳のころは、14か5くらいか。
レイよりは少し年上であるらしい。
「あれ?確かに僕の名前はフィブだけど?君、僕を知っているの?」
きょとんとして問いかける。
その耳が少し尖っているのが印象深い。
そして、少し顔を伏せて。
「僕、昔のこと、おぼえてないんだよね?」
そういって、ベットの方にその手にスープをもって入ってくる。
「あのね。お兄ちゃん。フィブリゾさんはね。
  子供の姿だったら、殺害されかねないからって。何でも、術で体を成長させているんだって。」
そういって、ぴょんとレイに抱きつくサファイア。
「・・・・・・・・・・え?」
その言葉に。
ふと。
ここまで同じなのだから。
同一人物ではないであろうか。
などと思うレイではあるが。
だがしかし。
あの当時、自分達以外に・・
・・生き残った村人はいたのであっただろうか・・。
捜しても・・・その痕跡すら見つからなかったというのに。

「あら、気がつかれました?まったく。最近は本当に物騒ですわね。」
そういいつつ、なぜか、エプロン姿の、歳のころは、14か5・・いや、それより少し上程度か。
その長い髪を一つにみつあみにしている女の子が。
そういいつつ、部屋の入り口である扉の方向から。
レイのいる部屋にと入ってくる。
「あ、シェーラ。レイさん、気づいたようだよ?」
「それは何よりですわ。それより・・・フィブリゾ様ですわ!力を使われてお休みになっておられないと!」
そういう少年の言葉に。
心配したように言っているその女性。
シェーラと呼ばれたその女性は。
真っ白いエプロンをし。
どうやら、食事を作っていたのであろう。
その手に食事を持っていたりする。
「僕なら大丈夫だよ?」
「いいえ!油断は禁物です!」
そりゃ、大丈夫なのは分かっている。
わかってはいるが・・・・。
いくら、精霊魔術とはいえ。
いくら、高位魔族だとはいえ。
自分以外の力を使うことは。
その自分自身を否定することになりかねなく。
多少のダメージを受けることをシェーラはよくわかっている。
・・・まあ、彼等にとっては、微々たるというか、些細にも満たないダメージではあるが。
「あのね?このフィブリゾさん。昔ね?シェーラさんのお母さんに。どこかの森で拾われたんだって。
  ・・・今シェーラさんのお母さんもすでにいなくて。今はフィブリゾさんと暮らしているんだって。」
そういう妹の後ろにある、窓から。
立ち上っている黒い煙がふと目につく。
その視線に気付いたのか。
「ああ?あれ?今までレイさん達が住んでいた町の成れの果て。
  ちょうどシェーラと買出しにでてたんだよね。僕達。」


話しをきけば。
どうやら、買出しにいっている最中に、この二人。
シェーラとフィブリゾは。
あの襲撃に巻き込まれたらしく。
まだ子供ともいえる年齢であるのに。
呪文を使いこなせる彼等は襲撃者を駆逐していっていたらしい。

そして。
偶然、レイたちを助ける結果となった。

どうやら、話しを総合するとそういうことらしい。

今いるここは。
二人が住んでいる。
町からかなり離れた辺境の林の中にある、一つの屋敷。

鬱蒼とした林に囲まれているからこそ。
ここは、自然の防壁に守られて。
どうやら、戦火を免れている・・ということ。



そんな今。
自分が置かれている状況を確認し、認識しつつ。

「ほら、お兄ちゃん、まだ体力完全でないんだから。しっかりと栄養とって寝て?ね?」
「・・・・サファイア・・。」
ぎゅっと自分の手を握ってくる妹の手を握りつつ。

レイは深い眠りに落ちてゆく。


― 強くなりたい。

― 何者も守れる強さを・・・・。

                             −第25話へv−


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まえがき:

ふふふふふv
今回、二度目の登場vフィブ。
・・・・ま、エル様に攻撃しかけた、情けない彼だけど。
しかもガウリイを捉えてリナを利用しようとした彼だけど。
その後を考えると・・どこかキノド・・いやいや。憎めない・・。
・・・たぶんあっさりと・・・・滅ぼされても・・・・こきつかわれているんだろうなぁ・・。
エル様に・・(汗)そー思うのは・・私だけ?(まてやこら!)
フィブ&シェーラ。
これは、ただ。消去法です(笑)
覇王神官(プリースト)グルゥはもってのほかだし。
冥王の直接の部下達はおもいっきり争いになる(笑)ので却下。
海王の所の神官&将軍は・・・主に似てるし・・。
ロスは当然レイと知り合いなので却下。
んでもって、ラルタークとラーシャートにいたってもこれまた却下。
・・・使えそうなキャラ・・・シェーラだけだもん(笑)


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   あとがきもどき:
         薫:・・・・・・この当時は、純粋なお子様だったのねぇ。
           S・・・・(こらこらこら!)
           さて。
           この話から隠しを解除v
           いやぁ、申告ないけど(まてこら!)
           一応、7万ヒットしたのでその区切りでv(かなりまて!)
           さて。
           はっきりいって、オリキャラオンリーのこの話。
           一体誰が読んでくれるのか・・・おそらくあまりいないはず!(まて!)
           でもでも、いくのさv
           ・・・・今のところこの話が・・・打ち込む気力があるのよね・・・。
           ・・・・・何か闇・・・・打ち込みする気力が・・・あはは・・。
           あと神託も・・・・・(汗)
           何はともあれ、んではではv
           また次回でvv


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