降魔への旅立ち


冷たい。
傷は魔法でふさがったというのに。
どうしてこんなことになったのか。
すでに。
他に生き残っている村人は・・・気配からして誰もいなく。
そこにかつて村があったことすら信じられないほどに。
そこにただあるのは巨大なクレーターのみ。
とりあえず。
近くの洞窟の中に避難して。
魔力で編んだ布団に寝かせて。
・・この辺りのアレンジは母から教わっていたもの。
まさかこれが重宝するなど。
母が昔、旅をしている時に、編み出した技らしいが。
「・・・・・レイ?」
ゆっくりとその目を開く。
いつもの母が持っていた輝きが・・今は弱い。
「母さん!?大丈夫!?」
心配そうな顔をして、母であるシルナの顔をのぞきこむ。
そして。
「・・・・・何が・・・あったの・・?」
震える声で問いかける。


「・・・私が無事だったのは・・・ゼラスさんのおかげよ・・・・。」
どこか遠いところをみつつ、そうつぶやくシルナ。
大切なことを息子にいいたいが。
それがいえないもどかしさ。
それもあるが。
今の彼女では、必要なことしかいうことを許されてはいない。
少なくとも。
それを無視すれば。
問答無用で今度こそ、本当の死が待っていることを。
シルナは知っている。





「・・・・ゼラスさん!?」
どしゅ。
突き刺さる槍。
それに完全に貫かれたはずなのに。
「やれやれ、あいかわらずあのものは・・血の気が多いな。」
何でもないように胸を貫く槍を引き抜く。
そして。
「ふむ。ここはやはり、血を流しておいたほうがいいであろうな。」
などといいつつ。
・・・・始め何もなかったそこに傷口が出現し。
地面に伝わる出血が突如として出現する。
「死ね!人間!」
そういいつつ、何も知らないとは恐ろしいとはよくいったもの。
地上の制圧を任されている竜の一群が。
ゼラス達に向かって攻撃を仕掛けてくるが。
「ふっ。たかが竜ふぜいが。」
軽く横で。
ゼラスが笑ったかと思うと。
刹那。
ザシシシシュ!
見えない何かで、まるで鋭い牙か何かで切り刻まれて。
みじん切りの肉塊となしてゆく竜達。
「き・・・貴様は・・・・!?」
その光景を目の当たりにし。
彼等を攻撃しようとしていた竜の一人が震える声を発するが。
「いい、表情だ。冥土の土産に教えておいてやろう。我が名は、ゼラス。ゼラス=メタリオム。
   ああそう、貴様らは我のことをこう呼ぶな。『獣王(グレータービースト)』とな。」
そういいつつ、口元をほころばせて。
にこりと笑うゼラス。
そのとたん。

ザシュ!

辺りを黒い何かが突き抜けて。
そして。

びしゃ!

何かが崩れる音。

視れば。
周りにいた全ての竜などといった生き物が。
一瞬のうちに液体と化し。
辺りの地面にと崩れ落ちて行く様子が目に入る。

「ゼラス、遊びもいいけど。本来の目的を忘れてない?」
そういいつつ、にっこりほほえむ小さな子供。
「これくらいはいいであろうが。
  何しろ貴様の作戦で、最近は人の振りして生活していたために。かなり私もストレスたまってることだしな。」
そういいつつ。
未だに残っている、数十名の人の姿をなしている竜達を一瞬のうちに切り刻む。
「まあ、別にいいけど。僕達が介入しているのが知られなければね。」
くすり。
そう笑う少年・・・フィブリゾの言葉に。
「・・・・フィブちゃ・・ん?ゼラス・・・さ・・ん?」
声が震える。
 一体・・・。
笑いながら、人ではかなうはずもないであろう。
黄金竜を片手も動かさずに。
殺していっている彼等の姿。
今までに感じたことのない威圧感がシルナを覆う。
「ああそう。そういえば、シルナ=ド=ミドガルド=ラグナデス。僕正確に自己紹介してなかったね。
  僕の名前はフィブリゾ。それは事実だけど。そうだね。冥王(ヘルマスター)と呼んでくれてもいいよv」
そういって、未だに何が何だか分からない表情のシルナをみてにっこりとほほえむ。
「・・・・・・・・・・・な!?」
絶句するシルナに。
「レイ様に用事があるものでな。」
「・・・・レイに何をする気!?」
思わず悲鳴が漏れる。
「え?別に何もvただ、覚醒してもらうだけだよ♡僕達のお父様・・・・ルビーアイ様に・・ね♡」
そういってにっこり微笑むフィブリゾの言葉に。
「・・・・させない!レイ!」
あわてて。
レイの元に向かおうとするシルナ。

「・・・いいのか?フィブ?あれ?」
「いいんだよ♡」
駆け出すシルナのその姿は。
すでに動くものもないその大地では上空からよく目立つ。

「目標発見!」


ドススススっ!
ごぉ!
どぉぉぉん!



平野にただ一つ動く物体。
それをめがけて上空から。
いっせいに射撃などが繰り出される。
もちろん魔力の攻撃も。


「・・・レ・・・・・イ・・・・。」


無数の光に貫かれて。
シルナはその場に崩れ落ちた。




次に気づいたそのときには。
自分がすでにもう死んでいる。
そう確信が持てているのだから余命に性質が悪い。
「ふふ。君には、僕達の役にたってもらうよ♡まだ魔王様は覚醒のときではないからね♡」
いくら、魔王の転生体とはいえ。
この世の中。
保護者もいない七つの子供が生きてゆくには少し無理がある。
このまま、魔王として教育していってもいいのであるが。
それだと。
魔王に申し訳ないような気もしなくもない。
時がくれば・・間違いなく。
彼等の主は目覚めるはず。
というのは、身に染みてよくわかっている。
何しろ・・・・命令が『上』から出ている限り。



冥王(ヘルマスター)フィブリゾ。
その【死を操るもの】。
その称号の通りに。
死んだはずのシルナの魂をその手のうちにいれ。
シルナを彼の僕として・・・・。
彼は扱うためだけに。
・・・わざとゼラスに言って。
ゼロス達にここの村の存在を。
彼等にほのめかしたのであるからして。



自分の息子が・・・・魔王だと聞かされたシルナの真情は計り知れない。
だがしかし。
わかってはいても・・・・。
・・・・・・・・まだ幼い我が子。
・・・・覚醒するとは限らない。
人として、その命をまっとうしてほしい。
それが母の願い。
そしてまた。
幼い我が子を残してまで。
・・・・・冥王に逆らってまで。
一人、残して逝くことは・・・したくはない。


葛藤する心とは裏腹に。
選択の余地なく。
そのまま。
村の唯一の生き残りの家族として。
一度死んだこともいえずに。
息子であるレイと共に。
生活するよりすべのないシルナであった。





ざぁ・・・・・。
外には、彼等・・・・村人の死を悼むかのごとくに。
雨が、大量に降り注いでいる音が。
洞窟の中にとこだましてゆく・・・。





神族なんて信じられない。
そう、レイが思うのも・・当然の仕打ちであった。




母を守るのは自分の役目。
そしてまた。
二度とあんな悲劇を起こらせないためにも。


「・・・・・・僕・・・もっと・・もっと強くなる・・・・。」

そう決意を秘める。
レイ=マグナス。
十歳になって二日目の朝のこと。








母から聞いた知識と。
そして。
かつて習った知識の積み重ね。
自分でいろいろとアレンジして。
いろいろな術を編み出した。
雨がいくらふあれから降り注いでも。
クレーターと化したその場所には雨水も溜まることなく。
地面の熱さで全て蒸発しているこの現状。
それが村人の無念さを象徴しているようで。
「・・・・・・ここに、村があったのは・・。絶対に忘れさせない・・・。」
そうつぶやきつつ。
意識を集中し。
辺りの大地の精霊に干渉し。
とあるオリジナルの術を繰り出す。


ゴガァ!!!!


音を立てて。
クレーターと化した部分が盛り上がり。
やがて。
レイの指示するままに。
それらは形を成してゆく。
大地の精霊に干渉した術のアレンジ。
アレンジ方法で、それは。
様々な物質すらをも作り出すことが可能だと気付いて、そのコントロールになれるまで。
さしたる時間はかからなかった。


「・・・・ここに神殿を・・。」

それがレイの思い。
願い。


レイの魔力によって。
ただのクレーターと化していたその場所に。
やがて。
立派な神殿が出来上がるのは・・。
そうさして遠くないことであった。




「・・・・二度と、この場所には誰も入らせない。」
その言葉とともに。
風の結界でその神殿を多いつくし。
その上から、大量の水を作り出し注ぎ込む。



やがて、後に。
その場所は・・・・レグニア湖。
と呼ばれるようになるその場所に・・・・。


                             -第22話へv-


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まえがき:

世間では、世の中、ゴールデンウィークのまっ最中(まて!)
しかし私は関係ないのさ。
というか・・・・寝たのが二時過ぎで・・起きたの六時って・・・・。
・・・・・・精神的にダメージが残っているんだろうなぁ・・・。
ふっ・・・・。
只今2003年の5月3日。
さて・・・・。
一時間たったら仕事に出勤だけど。どこまでいけるかな?(笑)


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あとがきもどき:

薫:レグニア湖。それを知らない人は、スレイヤーズRPG。
  スレイヤーズロイヤル2をプレイしましょう(まて!)
  ふふ・・・。ようやくレイの幼年時代の終了ですv
  ・・・・・・な・・・・何話しになるんでしょうか?これ?(まてぃ!)
  まだまだ降魔戦争への道は・・とおいなぁ・・・(滝汗)
  とりあえず。また、次回で・・・・。
  ではではvv


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