降魔への旅立ち



ぎゃぁ・・・・・。
うわぁ・・・・。
いやぁ・・・・・・・。

耳に聞こえてくるのは・・・。
断末魔の叫び。
そこから出ようにも。
何らかのおそらく術がかけられているのであろう。
彼の力ではどうしようもなく、外にすらでられない。
力がない自分がもどかしい。
もっと力があれば・・・・。

そんなレイの想いとは裏腹に。


やがて。
外から聞こえてくる声がぱったりと途絶え。

― ヴラバザード様!村人全員駆逐しました!
― ご苦労。だが、念には念だ。ここを完全に破壊しろ。
― はっ!

レイの耳に届いてくるそんな会話。

ぎり。
竜王とは・・・・・人を助ける神ではないのか?
こんな無謀が許されてもいいのか?
レイの中に、ある種の怒りが巻き上がる。

・・・・・とくん。
彼の中で何かが息づく。


――違う。
――あれは・・・・間違えている。


何かが、そう、深層意識の中でそんな言葉がふとよぎる。
何かをいおうとしたその刹那。


どぉぉぉぉん!


「うきゃ!?」
何かのすざましい爆発の音とともに。
彼・・レイの体は、その部屋の壁にと叩きつけられていた。






ごぉ・・・・。
炎が広がる。
累々と横たわる死体を見るのは、好きではない。
いや、好きという誰かがいたら見てみたいものであるが・・。
横たわる死体を目の毒と捉えて。
その手から出現させる炎で全てを焼き尽くしてゆく。
空からは、口からブレスや炎をはきつつ。
村全体を焼き尽くし、壊しつくしていきつつ。
彼等の目的は・・・ただ一つ。
即ち。
族が何か此村でたくらんでいるのは明白。
であれば、疑わしきものは全て排除する。
という、上司の教えを忠実に・・命令に忠実に従っているのみ。
中には、こんなのは彼等が主張する、『正義』ではないと。
他の竜王に告げ口に行こうとするやからもいたりするが。
そんな彼等は反逆者とみなされて。
その場で処刑されてゆく姿が見てとれる。

― 別にこの村にいる人間は・・。一部を除いてすでに生きてない。
それが余計に、彼等の行動に拍車をかけているのに他ならない。

そう。
この村は・・。
フィブリゾの・・・・冥王の力によって全ての村人が、一度は死んだ身。
つまりは。
村人そのものが、冥王の力によって生きているように生活していた。
という事実。

まさか、そんな高位魔族が関っているとは夢にも思わないが。
少なくとも。
この村で魔族が何かたくらんでいるのは明白。
そんな上司・・・・火竜王の指示のもと。
人の世界には干渉を直接的には許されていないはずの竜王は。
この村に総力をあげて奇襲を仕掛けているのである。


一番心配なのは・・・。
かつて、竜神が人の身に封じたという、魔王の欠片。
それに関連するのでは?
それが一番の心配。
それゆえに。
まずその欠片が封印されている人間には。
少なからずどこかに影響を受けている。
― そう、たとえば髪の色が赤くなったり。
   または瞳の色が赤くなったり・・。
   あとは、魔力容量が著しく高かったり・・と。

ともかく、紅い色をしたものは全て、排除せよ。

― そういう、命令・・・・・。



相手はどうみても・・・・生きている、普通の子供。
だがしかし。
この村で・・・・唯一といっていいほどに。
生きている子供など・・・彼ひとり。
そしてまた。
普通の人間は、此村には数名しか存在しない。
ならば。
彼等が何らかの魔族にとって有利な結果をもたらす存在であるがゆえに。
彼等を守るべくこの村を隔離している。
そういう考えにたどり着いても不思議ではない。


健気に、魔法を繰り出しつつ。
抵抗してくる少年・・・・黒い髪に紅い瞳の少年を見下ろし、そして、地上からも。
そんな彼に向けて・・。
槍、剣、弓・・・・エトセトラ。
そして、限りある魔力の全てが注がれてゆく・・・。


ゆっくりとその場に・・・・崩れてゆくその姿は・・・。

その小さな口から紅い血を吐き出しつつ。


だが。
人を殺したというのに。
彼等にとって、これが正義だと。
そう信じているのであるから性質が悪い。



最後の一人・・。
紅い瞳をしている少年の命の火が消えたのを確認し。

リーダーが上司に指示を仰ぐ。
上空に浮かび上がる、火竜王の立体映像。
その指示を受けて。

彼等の魔力を総がかりにして。


村のあった場所に。
今はもう、瓦礫と血の匂いに充満し。
人影一つみあたらないそこにむけて。

一斉に、彼等、竜達の咆哮が。

上空から、そこに向けて注がれてゆく・・・。



大音響とともに。
その場にあった村そのものは。
周りの森や山そのものと一緒に。
完全に無と化してゆくのであった。







ガラ・・・・・・。
「・・・・う・・・・・。」
どうやら無意識のうちに。
風の結界を纏ったらしい。
かなりの衝撃でも、傷は受けていない。
多少の切り傷のようなものはあるが。
目をあければ。
周りはすでに真っ暗で。
そこにあったはずの自分がいた部屋は。
微塵もその原型すらも留めていない。
「・・・・・何があったの?」
分かるのは、彼が纏っていた結界のおかげで。
彼の回りにできた結界による隙間が、彼を守っているということのみ。
辺りを見渡せども全て真っ暗。
手を伸ばせば、ひやりとした感覚。
麻痺する思考の中で。
その手の感覚から。
手に当たるのが、土だと理解する。

・・・・どうやら、土のなか・・つまり、生き埋めの状態になっているらしい。
そのことに気付くのに。
しばらくの時を要する。


「・・・・とにかく!外にでなくちゃ!ベフィスプリング!」
地の精に干渉し。
ともかく、外と思われる方向にむけて、術を繰り出す。
ぽごっ!
それと同時に穴の開いたそこから、光が差し込んでくる。
「浮遊(レビテーション)!」
風の結界を纏いつつ、さらには精霊魔術をつかい。
そしてさらには。
浮遊の術を用いて、穴の開いた場所から外にと出てゆくレイ。


あまりの明るさに思わず目を細める。
だがしかし。
「・・・・・・・・・・・・な・・・・・で・・・・」
思わず声が漏れる。
目に入ったのは。
村の姿ではなく。
地面の奥深くにできているクレーターのくぼみの奥に、一人佇む自分だけの姿。
かつてそこにあったはずの村は完全に影も形も見えずに。
ただむき出しの地面がそこにあるのみ。
「・・・・・・母さんは!?皆は!?」
ともかく。
このクレーターから出て。
誰か少なくとも助かった人はいないのか。
なぜこんなことになったのか。
理解ができない思考の中で。
ともかく。
心配なのは・・・・母とそして、友達たち。

軽くみつもっても、
数キロ程度の深さはあろうかというそのクレーターの底から。
浮遊の術をつかいこなして外にでる。
周りの木々も影響を受けたのであろう。
完全にただの燃え尽きた木と化している。
「・・・・・何か気配がする!」
気配の捉え方は。
フィブリゾたちや母たちに習って。
それを捉えることはすでにできるようになっている少年、レイ。


その先に残っている森の中に。
すくなくとも、一つの気配を掴み取る。
混乱している思考の中では。
その気配が誰のものかつかめないが・・


がさり。
地面に降りると。
まず目に入ったのは。
真っ赤な海に横たわる・・・・一人の子供の姿。

その黒い髪が血に濡れて。
赤く染まりかけている。
全身を傷もぐれにし・・・。

「・・・・・・・・・あ・・・・!」
思わず叫びつつ、駆けつける。
だが。

触れただけで分かってしまう。

その冷たい体・・。

脈のない・・・・小さな・・小さな・・・・。


「フィブぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅう!!」

それは紛れもなく。
先ほど、彼と共にいて。
彼の姿に魔術を用いて姿を変えて外にでていった・・。
彼の友達の一人。
フィブリゾの姿であった。




がさり。
その冷たい体を抱きかかえつつ。
泣き叫ぶ彼の耳に。
何かを踏み分ける音。
「・・・・・・・レイ?その声・・・・・レイ・・・・?」
よろりと。
辺りの木にもたれかけながら。
その漆黒の髪は真っ白にと変化し、開いているその紅の瞳の視界はさまよっている。
どこか目がうつろ。
「・・・・・母さん!!?」
髪の色がかわっていようとも。
どうして母親の姿を見間違えることができようか。
「・・・・レイ・・よかっ・・・。」
その声を聞いて安心したのか。
そのまま、崩れ落ちそうになってゆくレイの母親・・シルナ。
「母さん!」
あわてて抱きとめる。
背中にぱっくりと開いた傷・・。
あわてて、治癒呪文をかけてそれを塞ぐ。
「と・・・ともかく!ここは危険だから!どこかに身をかくさなくちゃ!」
術で地面に穴を掘り。
フィブリゾの体をそこにうめ。
母親を背中に負ぶさりつつ。
急いでその場を離れるレイの姿が。


いきなり奇襲をかけてきた竜達の姿が消えたあと。
そこには見受けられているのであった・・・。






『何を考えているんだ!!!貴様は!!!』
ヴラバザードが人の村に奇襲をかけたことは。
あの結界の中では知られるはずがないと踏んでいただけに。
他の同僚に気付かれて。
彼等の叱咤を受けて・・・謹慎処分となったのは。
彼にとっては、かなり憤慨な事実・・・。


―― 火竜王、ヴラバザード。人の村を無断で襲撃、破壊し、惨殺したがために。反省を促すためにしばらくの謹慎処分と成す ――


神族側では。
そんな決断が成されているその事実を。

当然のことながら。
レイは・・・知らない・・・・。



                             −第21話へv−

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まえがき:


しばらく打ち込んでなかったなぁ・・。
とゆーか・・・・気力がまだ戻らない・・。
未だに夢みているような感じの今の状況・・・・。
・・・・30日の出来事が・・・今日2日に新聞にのったなぁ・・・(遠い目・・)
何はともあれ、只今2003年の5月2日。
んではでは、いくのです・・・。
どうしてああいう、放火、なんてする人がいるのやら・・・あぅ・・・
目が冴えて寝られない日があれから続いてます・・・・・・・・・・
目をつむると、真っ赤に燃える光景が・・・・・ふぅ・・・・・・・


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あとがきもどき:
 
薫:・・・・え?生き残ったのは・・・レイだけじゃあって?
  そうですよぉ?ふふふふふふふふふv
  シルナ?・・・・・・・・・・・・ふふふふふふv
  何しろフィブリゾがらみですからv(笑)
  ちなみに。フィブリゾの死んだまね・・。
  原作のあの巻と同じよーな感じと捉えてくださいなのです(まて!)
  ではではでははv
  少しばかり目覚めたシルナに触れて・・・それでもって。
  年月突破!(まて!)
  フィブ・・・ふふ。当然vまたまた出てきますv(笑)
  今度はシェーナもね(だからまて!)


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