降魔への旅立ち



何が起こっているのか。
頭が・・思考が回らない。
ただ分かっているのは。
友達が・・・ヘラが。
倒れていっていることということのみ。
そんな彼・・・レイの耳に。

「お、こんな所に子供が・・・というか、これはこれは。」
がさりと音がし。
どうやら声から人間の男性のしかも、大人の声。
助かったの?
そう一瞬思うものの。
「お、この子なんか気絶して、かなりいい値でうれそうだぞ?」
そういいつつ、そこに倒れていた紅い髪をしている少女。
その手を掴む。
「兄貴ぃ、というか、デーモンがいますぜ?」
そういいつつ、周りを見れば。
数体のデーモンがこちらを間合いに見つめていたりする。
「ふん。こんなときのために、先生を雇っているんだ。頼みますぜ、先生。」
「分かりましたよ。」
その兄貴と呼ばれた男性の言葉に従い。
その手にもっている杖を軽く前にと突き出す黒い服を纏っている、一人の大人の男性。
そして。
ふと。
レイを守るように倒れているヘラの姿に気付くやってきた男達。
「お、こりゃ、かなりの上玉じゃないか。」
「へへ。こりゃ、もうけましたね。頭。少しばかり怪我してるようですけど。こんなだと抵抗もできないでしょうしね。」
別にことを遂行するのに問題があるような怪我ではない。
「・・・・・きゃ!?」
無傷な片腕を引っ張り。
彼等の方にと引き寄せる。
「へへ。こりゃ、楽しめそうだな。」
「先生、こっちは楽しんでますから。あ、生き残った子供は売り払いますから、殺さないでくださいよ。」
などと勝手をいいつつ。
ヘラにと群がる男達。
「・・・・な!はな!」
ピリ。
何かが破ける音。

どくん。
何かが、心の中ではじける。

みれば。
辺りに充満するのは、まるで鉄さびのような匂い。
「う・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

カッ!!!!

レイの叫びと共に。

レイの体から。
紅い閃光がほとばしり。

辺りを一瞬赤く染めて行く。



「・・・・・・おやおや、かなりの力を持った子供ですねぇ。さすがは・・・・。」
ぱさりと。
その黒いローブをまとって顔を隠していた男性が。
その顔を覆っていたフードを外した音が聞こえたような気がした。


視界の隅に入るのは。
紫の瞳。
何処かで見たことのあるような・・・。


それは、無意識の領域。

その身に眠る魔力を、友達と、そして、ヘラの危機という、かなり追い詰められた状況で。
レイが発揮した始めての力。


く゜らり。
そのまま、力を始めて使った彼・・レイ=マグナスは。
・・・・・・・・・その場にと昏倒してゆくのであった。




まず男達の視線に飛び込んできたのは。
燃えるような紅い瞳。
そして。
年端もいかない少年から、ほとばしる紅い光。
そこまでであった。


光に貫かれ。
その光に貫かれた場所が。
どろりと。
まるで液体のようにと崩れだし。
『う・・・・うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!?』
悲鳴を上げるものの。
意識のあるまま、体が解けてゆくのが分かる。
『―愚かな人間どもよ・・・・。』
子供とも思えない声が。
佇む子供の口から発せられている。
何が起こっているのか。

そこには。
腕が確かに片腕炭と化していたはずであるというのに。
確かに今。
服を破られて、男達に組み敷かれていたはずのヘラが。
ふと視線を向ければ怪しく笑っていたりする。
その笑いと同時に。
ドシュ。
飛び散る紅いもの。

くすり。
「どうやら、第一の封印はとけたようだね♡」
ふと。
視線を上げれば。
何もない空中にふわふわと浮かんでいる一人の子供。
・・・・いったい。
笑い声が聞こえたので、溶けてゆく体をどうにか、何が起こっているのか。
理解不能なままに。
「・・・・とりあえず、君たちには、まだ活躍・・・してもらうから・・・ね♡」
くすりと笑い。
その手に数個の金色の球を取り出し。

・・・・バキィィン・・・・。


その球をこともなげに壊しているのは。
ここにいるはずもない、少年・・・フィブリゾの姿。

だが、レイはその姿を視ることなく。

一瞬の閃光を放ったのち。
一気に力を使った慣れないことをしたために。
そのまま、昏睡し。
その場に卒倒してゆく。

そんな彼を受けとめたのは。

一瞬その周りの空間が揺らめいたかと思うと。
今までそこに全身黒尽くめの魔道士が佇んでいたはずの場所に。
いつもの神官服を纏ったニコニコ顔の神官が。
そっと。
倒れこむレイを支えているのであった。

あの光は周りには漏れてない。
ここは、すでに。
彼の・・いや、彼等の力を総動員して結界を施しているのだから。



ぐがぁぁぁぁぁ!!!!!



第一の封印が解かれたことにより。
各地で召喚されていた、デーモン達は。
今までより少しほど力をつけて。
より、争いは・・・・さらに激化を増してゆく。



かつて、赤の竜神が。
赤瞳の魔王を人の心に封印した際。
その条件がいくつかあり。
その大元の部分はすでに。
もう、生まれる前に彼は満たしている。
何しろ、生まれる前に、レイそのものの、魂は。
すでにそれに飲み込まれているのだからして。
つまり。
今ここにいるレイは、レイであってレイではない。
魂の色からそのことはすでにもう分かっている冥王。
だからこそ。
彼を守るために。
こんな村までこしらえて。
そしてまた。
カモフラージュのために。
近くの町の重役を操って。
そして、ここの国の国王の側室に部下を当てがい。
権力と富の欲望の塊に仕立て上げているのだからして。
その富を得るために。
数十名以上の魔道士などを雇い。
彼に反対するような人間達は闇から闇へと葬リ去り。
そしてまた。
高すぎる献上金を納めない町などには。
なぜか、頻繁に盗賊やデーモンなどの被害が多発する。
という仕組みと為っているこの辺り。



虚ろな目で気がつくと。
溶けていたはずの体はすでに元通り。
だがしかし。
違うのは・・・もう、心臓が動いてないということ。
生きている屍。
「ゼロス、赤瞳の魔王様を村に連れて戻ってくれる?僕はここの後始末をしておくから♡」
にっこり笑い。
パチンと指を鳴らす。
それと同時に。
そこに転がっていた、村の子供達の姿が。
そのまま、塵と化してゆく。
そして。
「あ、ヘラ、君はそうだね。隣の国とこの国の争いを激化させるように。隣の国に入り込んでねv」
「はい、わかりました♡」
腕が消失していたはずの、ヘラ。
だがしかし。
その腕はきちんとあり。
そしてまた。
大怪我を負っていたはずの背中もまた。
何も傷跡すら見受けられないのは・・・・。

冥将軍(ジェネラル)ヘラ。
今はヘラ=マグネットと名乗っている。
彼女は…実は、冥王の直属の部下の一人であるからして・・・・・・・




それは作戦のうち。
人間の誰でもいいから、利用できそうな盗賊か何かを。
ここにつれてくるという。
盗賊達が雇った魔道士風の男性は・・。
そのフードをのけたその下の顔は。
にこにことしたいつもの笑顔。


・・・・・・獣神官(プリースト)ゼロスの姿が。
そこには現われているのであった。






・・・・・イ・・・・レイ・・・・レイ・・・・・。
「・・・・・レイ!!!」
目を開けると。
顔を真っ青にしている母であるシルナの姿が。
「・・・・・・・・母さん?」
背中に感じる柔らかな感触。
見覚えのある天井。
「・・・よかった・・・・この・・・・・馬鹿!!!!どうして村の外に内緒で出かけたりしたのよ!・・・・無事でよかった!」
そういいつつ、涙を湛えたまま抱きしめる。
未だにぼんやりとしている息子であるレイに。
「・・・・あんた、十日も目を覚まさなかったんだからね・・・」
涙交じりでいいつつ、涙をぬぐい。
「あ、何か食べたいもの・・ある?」
「・・・・・・・・母さん・・・・皆・・・・・は?」
どうして自分が・・・・家のベットに寝ているのか。
さっぱりと思い出せない。
その言葉にびくりとなり。
「・・・・・・・・・・・・・助かったのは・・・・・あんただけよ・・・。」


仕事を得るために、村から出ていたゼロスが戻ってきたとき。
その手に抱きかかえられている、血まみれの少年。
話しを聞けば。
村の外で盗賊やデーモン達に襲われていたという。
村の大人たちがそこに駆けつけて目にしたものは。

無残に転がる、死体の山・・・・ではなく。
地面にこびりついたどす黒い血。


「・・・・・・何かの動物に食べられたか・・・。」
そうつぶやく村人の言葉が耳から離れない。

シルナも一緒にいく。
そういわなければ。
問題はなかったのであるが。

そこかしらに転がる、腕や・・・・肉の破片。

こんな時代だからか。
食人鬼なるグールと呼べる生き物が。
どこかしらにも闊歩している今の世の中。
まあ、確かに。
食べ物には不自由もしないが。

唯一生き残ったのは、レイのみ。



「・・・・う・・・・ひくっ・・・・・うっ!」
自分が何か母にプレゼントをしたかったぱっかりに。
・・・・そして。
無謀にも町に買い物に出ようと。
子供達だけで大人たちに内緒で出かけた結果が・・・これ。

一人だけ生き残ったのを知ったレイは。


・・・・・しばらく、そのまま。
ベットの中で泣き伏していた。







「・・・・・・え?呪文を?」
どうにか起き上がるまでに回復したレイがまず決意したのは。
「・・・・うん。僕、強くなりたいの。」
この村で・・・実力があるとすれば。
まず母とそして、ダイアナ。
そして。
フィブリゾとゼロスとゼラス。
この五名くらいであろう。
だけど。
大人に・・・特に母になど言おうものならば、反対されるのが目に見えている。
シルナは・・・・今のこの世の中。
必要以上に力をもつと、いろいろと利用されてしまうことを。
身に染みてよくわかっている。
だから。
自分の身を守る程度にしか、彼に剣や術の指導を施してないのであるからして。
「うーん。別にいいけど。」
「レイさんは魔力容量がかなり高そうですから。そうですねぇ。黒魔法の最高峰を習得できるかもしれませんよ?♡」
にこにこと。
なぜかかなり似合いすぎているのであるが。
白いエプロンをして、かちゃかちゃと家事をいそしんでいるゼロスの台詞。

ここは、村はずれに位置している、フィブリゾ、ゼラス、ゼロスが住んでいる、とある一軒屋。

ここにいるとなぜか落ち着く。
というか。
彼等と共にいると、
懐かしいような不思議な感覚に襲われるのはどういうわけか。
出されたゼロス特性、手作りタルトを食べながら。
友達でもある、フィブリゾに頼んでいるレイ。

「黒・・・・魔法?」
「ええ、つまり、簡単にいうと、魔の力を借りた術ですね。」
「僕はよく使うのは、この世界の腹心の一人、冥王の力を使うよ。僕の資質にあっているから。」
「私は獣王の力を使うな。」
・・・・・・というか。
他の存在の力を借りて使うなどと。
彼等にとっては、別にできないこともないのであるが。
それは自身の弱体化をも招く行為。
というか、使う必要がまったくない。
という事実がそこにはあるのだが。
「ゼロスは?」
「僕ですか?僕は、自分で考え出したオリジナルの術と。そうですねぇ。あとは便利のいい精霊術でしょうかね♡」
「・・・それ、全部基本から教えてくれる?」
その言葉に三人は顔を見合わせて。
「別にいいよ。」
「ま、強くなるにはこしたことがないからな。」
「楽しみですねぇ。きっとレイさんはすばらしい使い手になりますよ♡」
口々に賛同してくる三人のその言葉に。
にっこりと。
その言葉に微笑むレイ少年。


レイ=マグナス。
只今、三歳を迎えようとしているある日のことであった。




                             -第17話へv-

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まえがき:

ふふふふふ。
今回は、レイ=マグナスが、力をつけるのを決意するのですv(そーか?)
・・・ふっふっふっ。
ようやく戦争への道に進んでいる・・・かも?(まて!)
ではではvv


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あとがきもどき:
薫:ふふふふふふふ・・・・・・。
  少しばかり特訓に触れてv
   そーして、レイが10になったとき・・・?(まて!)
   ま、作戦通りといえば通りだけど・・・・。
   さて・・・・・。ルシファーとリスティナ。
   ・・・・・・・・・・・出すか出さざるか・・・。
   とゆーか、レイには関らないんだよなぁ・・・・。直接的には・・・・・(まてこら!)
   んではではではvv


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