降魔への旅立ち
「ジャンケン・・・・・ポン!」
「あいこで・・・しょ!」
「あああ!またひきわけぇ!?」
なぜか、夜の闇に。
ヘラとダイアナの叫びがこだまする。
しんと静まり返った夜の闇。
すでに家々などに灯りなどともるはずもない時間は深夜。
すでに、虫の声なども聞こえなくなり。
ただただ、静かな夜の闇が広がっている。
そんな中。
狭い村ではあるものの。
ただ一つの家を覗いて。
その全ての家々の中に、人々の気配がないのはどういうわけか。
「くぅ・・・。」
抱きこむように眠りに落ちる。
健やかに、村人達に囲まれて。
すくすくと成長してゆく赤ん坊。
ようやく、自ら歩けるようになり。
只今、二歳。
シルナがこの村に落ち着いて。
約二年と少しが経過しようとしていた。
静かに静まりかえった村の中。
すでに生き物が寝静まっている時間帯。
そんなはずの深夜の中。
村に一つしかない、外の広場。
そこに。
とある一家族というか、母息子以外。
その広場にこの村人全員が集まっているのは。
どういうわけか。
全員がその場に立ち尽くし。
「くすくすくす・・・・誰にしようかな♡」
そんな立ち尽くしてただ立っている村人達の間を。
十歳にも満たない見た目美少年としかいいようのない、少年が。
くすくすと。
口に手を当てて、笑いながら。
そんな村人達の前を練り歩いているのは。
どうしてこんな夜中に?
と第三者が見れば確実に疑問視するであろう。
彼等・・・村人達は、少年に逆らうことなどできはしないのだ。
そのように、彼等は形作られいるのだからして。
そして、ぴたりと。
一人のまだ押さない少女・・・といっても。
年齢的には、彼と同じくらいの年齢か。
ぱっちりとした緑の瞳が印象的。
「うん、君に決めたvいいかい?確実に死んでね♡」
「・・・・・・・・はい。フィブリゾさま・・・・・。」
その言葉に。
ただ、淡々とうなづく少女の姿が。
深夜の村の広間にて見受けられ。
そして、横にいる両親にぎゅっと抱きつく少女の姿が。
逆らえない、逆らえるはずもない。
―本来ならば、彼等は・・・・すでに・・・・もう・・・・。
そんな村人達の横では。
いまだに。
『じゃんけん・・・・・ぽん!』
未だにあいこを繰り返し、ジャンケンしているヘラとダイアナの二人の姿が。
「・・・・・・どっちでもいいんだけど・・・。早くきめてよね。お前たち・・・。」
そんな二人に冷ややかな視線を向けている少年。
「ああ!ほら、ヘラが負けてくれないから!フィブリゾ様に怒られたじゃない!」
「ひどい!ダイアナ姉様こそ!」
・・・・・・・・・ぷちり。
こめかみに青筋が立つ。
「どっちでもいいから、早く決めろ!」
言い争いに発展しそうになっている。
二人の女性に。
どうみても、少年の方が年下であるというのに。
そんな二人に、少年・・フィブリゾの怒号が飛び交ってゆくのであった・・・・
「ねえねえ?いいのかなぁ?かあさんたちに、ないしょで・・・。」
そういいつつも、うきうきとした表情をしているのは。
先ほど二歳を迎えたばかりの。
黒い髪に紅の瞳をしている少年。
「大丈夫よ。それに、ヘラさんも一緒だし。それにね。町に出たほうが。いいプレゼント買えるし!」
何処の世界でも、子供というものは大人の意見など聞きはしない。
いくら、危ないから、子供達だけで村から出ては駄目。
そういわれていようとも。
子供というものは、どちらかというと、駄目といわれたことは。
進んでやりたくなる性質。
未知なるものに、何でも興味を示す。
ある意味一番危ない時期でもある。
まあそんな、様々な経験を得て、大人への階段を上ってゆくのであるが。
何か用事があるとかで。
何でも畑の収穫があるとか何とか。
いつも遊んでいるフィブの姿は。
大人たちに内緒で村を出た子供達の姿の中には見当たらない。
七歳程度の女の子に、十歳程度の男の子。
そして。
一応、子供達だけでは、品物を売ってもらえない。
という可能性があるので、言いくるめて一緒についてきてもらったヘラ。
そんな仲のいい、村人の子供の言葉に。
「そうだね。」
何しろ、初めて、村から出る。
そのことが異様にうれしくもあり、楽しみでもある。
彼はうまれてこのかた。
あの村から一歩もでたことがないのである。
「町かぁ、いろいろ人が多いんだろうね。」
村人から、町のかつての様子などは聞いたことがある。
きらびやかな大きな町。
大人が子供に話す言葉には。
村の外・・つまり、世の中の情勢がどうなっているかなど。
話すはずもなく。
ただ、いい箇所だけを子供に話して聞かせている状況。
そろそろ母親であるシルナの誕生日が近いので。
何かプレゼントをあげたい。
そう、まだ幼い少年・・・レイ=マグナスが。
そう仲のいい、いつもよく遊んでくれる村の子供達に相談したところ。
― じゃ、大人たちに内緒で町に買いにでかけようよ!―
誰ともなくそんな意見が出たのは。
さすがに子供ながらといっても過言でない。
とりあえず、町に続く道に、デーモンなどがでる。
という噂くらいは聞いたことがある。
それゆえに、レイの家に一緒に住んでいる、ヘラに同行を求めたのである。
同居しているダイアナに求めようものなら。
間違いなく延々と説教が起こるのは必死。
それゆえに。
子供達と一緒になってよく悪戯などもしでかすヘラに、彼等は同行を求めたのである。
かさり。
「兄貴ぃ、本当にいくんですかい?」
森の中。
数名の男達の震える声。
「なぁにいってやがる!それにな。俺達には心強い味方がいるだろ?」
そういいつつ。
彼等の後ろにいる、黒いマントとローブを着こなしている。
紫色の髪の男性にと目を向ける。
「へへ。旦那。よろしくたのみますぜ。」
「約束ですからね。」
そういいつつ、淡々と短く言い放つその男性。
それは、偶然といっても過言ではなかった。
いつものように、旅人を襲っただけのこと。
その一人で歩いていた、このご時世に何とも無防備な、とある黒い神官服を纏った男性。
そんな彼が持っていたのは・・・・他ならないオリハルコン。
今や、どこにいっても戦いの連続である。
そんな中。
その普段でも貴重とされている物質、オリハルコンは。
かつての数倍以上にその値を吊り上げている今の状況。
命を助ける代わりに。
といって、それを何処から取り出したのかをききだしたところ。
何でも、とある村の近くに穴場ばがあるらしく。
「大地に干渉して、ベフィス・ブリングで掘れば。簡単に手に入りますよ♡」
そうにっこりと。
素直に彼等にその原石を手渡した、旅の神官。
それを聞いて、彼等は。
一攫千金を目指してその村に向かおうとしたのだが。
彼等の中では、あまりそんな魔道に長けたものはいない。
よくて、ライティングかスリーピング。
襲撃するのにかなり利用ができる程度の術を覚えているのみ。
何しろ、逃げるのに、目くらましに明り(スリーピング)。
村などを襲撃したり、家などに押し入って乱暴狼藉をするのに。
眠り(スリーピング)。
かなり彼等にとっては、都合のいい術ではある。
まあ、眠りの術をアレンジして、その意識が半分残っているままに。
彼等は女達にとある行為を進行しているのだが。
それは今は関係ない。
まさに、この争いに満ちた世の中は。
彼等にとっては、別につかまる理由もなく。
まさに極楽といっても過言でないのかもしれない。
その戦いの火種が自分達に向かってこなけさえしない限りは。
腕のたつ魔道士を見つけて雇おう。
そう彼等が思い立ち。
捜しに出かけたその数日後。
とある町の一角で。
彼・・・・彼等と共に行動している魔道士に出会ったのは。
聞けば。
どうやら、話しを総合すると、彼を雇っていた兵士達の隊が。
この町でデーモンなどに襲われて。
何でも、この町にデーモンが多発するので、
その駆逐にやってきていたらしいのであるが。
全て仲間はデーモン達に殺されて。
生き残ったのは彼一人。
累々と横たわる死体の中で。
ただ一人。
表情一つ変えずに佇んでいたこの魔道士。
そんな彼に、儲け話しがあるから載らないか?
と声をかけたのは、他ならない、彼等の頭。
仕事だけの関係だから、名前を言う必要はない。
というので、その彼の名前は聞いてはいない。
だが、かなりの実力を持っているのは。
ここまでに出てきたデーモンなどを一撃で倒していたりするのからみて。
それは証明済みである。
「後は子供でもいれば・・・。かなりとくなんだがなぁ。」
何しろ、戦いに戦いの連続の世の中。
そんな中で。
子供はかなり貴重品扱い。
そのために、彼等の裏ルートでの取引は。
普段の数百倍以上にその取引は成されている。
戦いで子供を失い欲しがる親。
国などで、戦力に統べく幼いころから教育する。
といった、国々。
そんな、需要があいまって。
今では、子供一人当たりにつき、大概、金貨千枚程度で取引されていたりする。
― 人身販売。
それは、こんな世界だからこそ、逆にいえばかなりおおっぴらに、今やなされている現状でもある。
あの神官から聞いたとおり。
確かに。
とある森の奥深く。
その一角にオリハルコンの鉱石現場があったと近くの町からその情報をきき。
― 今そこは、デーモン達が群生しているから近づかないほうがいいよ。
そんな町の人々の意見も聞かずに。
そんな森にと入り込んでいる彼等達。
「きしゃぁぁ!」
「あ、本当に出てきた!?」
いきなり出現した、かなりの大きさの異形の生き物。
それに流石に驚きがまきこおる。
つんつん。
服のすそを掴み。
「ねえねえ、ヘラ姉ちゃん、あれ・・・・なに?」
何しろ初めて目にする生き物。
「あれが、人間達がレッサーデーモンとか呼んでいるやつよ。
ちなみに、それは、この辺りの小動物などに。憑依した下級魔族が実体化しているみたいなものだけど。」
幼いころから、いろいろと。
話しの合間に、ヘラやダイアナ。
そして、母であるシルナから、様々な知識は詰め込んでいっているレイ。
「そーなの?」
思わず震える。
話しに聞くのと視たのとでは。
まったくその感じは異なる。
『ブラスト・アッシュ!!』
生きるため。
そういえば聞こえはいいが。
少なくとも。
村にて生活する子供達の大半は。
まずこの術だけは覚えこまされる。
それは、もし村の外などでデーモンに直面したときに。【戦う手段がないとこまる。】という理由で。
だがしかし。
いくら覚えているとはいえ。
子供の魔力。
その威力は普通とは比べてかなり低い。
個々の魔力に応じて、その威力は変化する。
まあ、逃げるのには必要最低限の力ではあるものの。
「ヘ・・・・ヘラお姉ちゃん!加勢してよぉ!?」
まったく殆ど効いていない、デーモンをみつめ。
涙を浮かべて言っている子供達に。
「あ、ごめぇん、私今、あの日なのよね。」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・
しばらく沈黙。
その意味を理解したのは、あまりいないが。
「というわけで、私は今魔力、使えないの♡」
よくわからないが・・・。
分からないが・・・。
そういえば、大人たちがあの日だから魔力が使えない。
とかいっていたような気がする・・・。
しばしの沈黙のうちに。
『嘘ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!?』
『先にいってよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!』
子供達の悲鳴が。
辺りの森の空間にと響き渡って行くのであった。
別に嘘というわけでもない。
嘘ではあるのだが。
別にあの日が人間のあれとはいっていない。
魔法が使えないというのもある意味本当。
何しろ、今回の命令では。
彼女に力を使うな。
という命令が彼女の上司たる冥王から出ているのであるからして。
今回の作戦は。
始めの楔。
その重要性がよくわかっているからこそ。
子供達の手だけでは。
さすがにデーモン相手はきつい。
実戦など・・・・したことなど殆どない子供達。
ザシュ。
「・・・・・!!!!!!ミッチ!」
思わず叫ぶ。
逃れようとしたその背中に。
目に焼きつく紅いもの。
ゆっくりとまるでスローモーションのように。
何か紅いものを飛び散らせながら。
倒れてゆく中のよかった、村の子供の一人。
ミチ。愛称はミッチ。
その銀色の髪が赤く染まる。
みれば。
ヘラもまた。
片腕を炎に焼かれて消失していたりする。
・・・・・何が起こっているの?
思わず何が何だか分からずに。
ただただ、呆然と佇むレイ。
・・・・分かっているのは。
自分のわがままで。
友達が・・・・ヘラがかなり危険な目にあっているということのみ。
「う・・・・うわぁぁぁあ!」
かなわないまでも、辺りに落ちている木の枝を拾い。
デーモン達にと向かってゆく。
「!!!!?危ない!!!!レイさま!」
どしゅ!
「・・・・・・・・・・・え?」
自分の上に覆いかぶさる、ヘラの姿。
そして、思わず手を背中に回したその手に、ぬるりとした何か生暖かい感触。
「・・・・・にげ・・・・。」
紫色に染まった口から逃げるようにと声がかすれつつも紡がれる。
周りを見渡せば。
かなりの怪我を負っている友達の姿が。
「あ・・・・あ・・・・・ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」
レイの叫びが。
辺りへとこだまする。
「お、子供の声、頭、いってみますかい?」
「・・・・そうだな。」
くすり。
その言葉に。
彼等と共に行動している魔道士が薄く笑ったのに。
彼等は気付くことなどは・・なかった・・・・・・・・
-第16話へv-
HOME TOP BACK NEXT
#####################################
まえがき:
今回は描写してないけど、一応戦闘シーン(そーか?)
んではではv
よーやく少しづつフィブリゾの覚醒作戦実行ですv
#####################################
あとがきもどき:
薫:・・・・・ふふふ。
次回、レイの決意。
村に一人だけ生き残って戻ったレイの思いとは?
・・・・・・・・・ま、元々、彼等は死んでるんだけど・・(こら!)
HOME TOP BACK NEXT