降魔への旅立ち




世界はすでに安穏としている。
その中に、魔の動向があるのに気付くのに、さして時間はかからなかった。
以前、シルとラグナと一緒に旅をしていた少女。
年月の間に、成長しているかとおもいきや。
そうでもなく。
本来なら、三十年を軽く過ぎている年齢なのであるが。
幼い当時。
母親と一緒に出かけたその場所が。
『魔女狩り』と称して、少しでも魔力がある人間などを闇にと生贄に捧げ、その国の安泰を図る。
という、何とも、気分が悪くなるような場所。
異世界の魔族を召喚したその場に立ち合わせた。
それはいい。
その波動で全てを思い出したこともまた、それもまた。
だがしかし。
さすがに目の前で。
母親が殺されて、自ら・・・まだ幼い自分すら、殺そうとした人間達。
それは、わかってはいても、まだ幼い彼女にとって。
ショックは大きく。
無意識に自己防衛として、その身を封印し。
しばらく眠っていただけのこと。
長い眠りの中で、記憶と力と精神がどうにかつりあうようになり。
目覚めたその目に映ったのは・・。
以前より、格段に。
世界が混沌とした世界にと変化を遂げていた。
「・・・・・・人間って・・弱い・・・。」
小さくつつぶやくその言葉が意味するのは。
どんな時代でも、恐怖に駆られ人間達は信じられないような行動をする。
―そう。
たとえば、噂で、とある国がらみで、紅い瞳をした人間というか、生き物全てを排除している。
という噂すら。
それが噂でなく事実であると。
風が物語っている。
―七人。
本来は、基本となる彼女を中心に。
その力の大半を分けている彼女の分身というか、部下のような、人間達もいるはずなれど。
以前の戦いにおいて、魔王をその戦いの最中、その力と精神を七つに分断した赤の竜神。
伝説では、竜神もその戦いで力尽き混沌にと沈んだ。
そういわれているが。
事実はそうではない。
魔王と同じく人として、その力を人の内に眠らせる方法と。
そしてまた。
基本となる、その精神というか魂そのものは。
その動向を見守るために、あえて人として、人の輪廻の輪の中に入っていったかつての戦い。
誕生したはずの彼等数名は。
その大量虐殺の中において。
感じるだけでも数名・・命を落としている。
「・・・・・私は死ぬわけにはいかないのよね。」
気配でわかっている。
彼が・・・・この世界に生まれでようとしていることは。
別にそれ自体は問題ではない。
・・・・・そう。
というか、そうでなくては、あの御方からどんな・・・・。
そう思いかけ、止める。
「・・・・・何もしなかったらしなかったで・・・。・・・・エル様のお仕置き受けるものね・・・。」
見た目、どうみても、十歳の女の子がいう台詞ではない。
どこか大人びたその口調。
母親が死亡した事柄は、人間の都合のいいように。
子供を守って戦士した。
そう伝えられている。
事実はそうではなく。
彼女・・少女の母親を殺したのは。
紛れもない人間達であるというのに。
当時はよくわからなかった。
だが、数年も人の世界で、人々を助けている最中。
知ってしまった事実。
その衝撃はあまりに大きく。
自らを幼児化して、そのまま、眠りについていた彼女・・ルナ。
母親が死亡して、数年、眠りについていた。
数年後、目覚めていろいろと人間の世界の手助けをしていただけ。
だがしかし。
彼女が16に為るかならないか。
そのときに知ってしまった事実。
それは。
彼女の力そのものを手にいれるために。
人が母親を殺すために刺客を差し向けた。
という事実。
どうしてそこまでして・・・。
湧き上がった感情は、留まることを知らずに。
無意識のうちに、その国・・。
つまり、それを指示した国の上層部の人々を闇にと沈めたルナ。
彼女の殺気を受けただけで。
通常の生き物ならば、まず太刀打ちができない。
人の身で、その力をコントロールするには。
まず感情のコントロールが優先だと。
そのときに分かり。
今まで自らの身を封印し、眠っていた彼女、ルナは。
自らを封印した当時の年齢、16ではなく。
今は、10歳くらいの女の子の姿を保っている。
「・・・とりあえず、無駄な戦いに巻き込まれないように。瞳の色を変えておきますか。」
そう小さくつぶやくと同時に。
その紅の瞳が、黒い色にと変化する。
「・・・・・・・・馬鹿・・・やってるし・・・・。ヴラバザードも・・。」
精神世界を通じて視た光景は。
何を考えてなのか、あの一族に戦いを仕掛けていた、自らの部下の一人、火竜王の姿。
だが今。
それを追求するわけにはいかない。
時が来るその時までは。
間違いなく、彼が今回の転生により、覚醒することは目に見えている。
・・・・少しでも戦力は多いほうがいい。

ルナティック=トゥエル=ドナ=インバース。

それが彼女の名前。
人気のない、山の奥深くの洞窟で。
今、ルナは完全に目覚めを果たしているのであった。






「まあまあ、シルナさん、そんな重いものをもってはだめよ。」
「すいません。」
臨月に近いお腹を抱えた一人の女性。
こんな混乱した世界だというのに。
その気配すら微塵も感じさせない。
大きな町や国などから。
かなり離れた位置にある、山の奥の一つの村。
今、彼女は。
この村にと落ち着いている。
近くの村などが、盗賊の被害にあったという、噂もきくが。
この村は、どういうわけか。
殆ど外部からの侵入者がいなく。
子供を戦争や争いに巻き込まずに、産み、育てるのは絶好の場所。
曰く、誰ともなく、隠里みたいね。
という言葉が出るほどに。
というのも。
町に下りる、とある森。
ここの村から出るには絶対に通らないといけない、山の麓にある、その場所に。
なぜか、野良デーモンが群生し。
ここから出ることも、入ることも出来ない状態が。
ここ、数年以内で起こり、それが今でも続いている。
別に町に降りれなくて困ることはない。
この村は、自給自足で成り立っている、小さな村。
そんな外部から入ることが出来なくなっていたはずのこの村に。
先日、やってきた、女性三人。
一人は臨月のお腹を抱えて。
後の二人は、どうやらその女性を心配して側にいる女性らしい。
シルナ=ド=ミドガルド=ラグナデス。
漆黒の長い黒髪に紅の瞳
ヘラ=マグネット。
艶やかな少し肩より長い髪にウェーブの入った黒い瞳の女性。
ダイアナ=アポロミス=マグネット。
紺色の髪に琥珀色の瞳をしている、ショートカットの少女。
この三人が、この村にやってきたのは、つい先日。
特にダイアナとヘラは、彼等・・・村人が知り得ない技術や。
そして、回復といった術というか力を持ち合わせており。
村人達は、こころよく彼等を迎え入れているのである。


世界の情勢がまるで嘘のような平和な村。
こんな混乱と殺戮に満ち溢れた世界に。
まだこんな村が残っていたのかというほどに。
居心地がよすぎて。
今までの争いが夢のようにまで思えてしまう。
「リルナさん、今日は、いいお野菜が出来たのよ。おすそ分け、健康な赤ん坊を生んでね。」
「はい、ありがとうございます。」
彼女達が住んでいる家は。
どうやったのか、皆目不明だが。
一夜にして、ヘラとダイアナが建てていた。
どうやら、何らかの力を使ったらしいのであるが。
よくまあ、一夜でできるものである。
ある意味感心してしまう。
まあ・・・彼女達にとっては、それは、かなり簡単なことなのであるが。






あの村にいる限り。
これで、他の人間達の干渉を受ける心配はない。
・・・・後は。
「うーん・・・・。誰に頼もうか・・・・な。」
腕を組み考える。
少なくとも、子供だけで彼女に接触するのは。
あまりに、こんな世界情勢となっている地上のこと。
それで警戒を抱かれては元も子もない。
「・・・・・でも、ダルに頼むのは・・・それこそ計画を壊されかねないし・・。」
しばらく考え込む。
「・・・・だからといって、グラウは・・・・。固くなだし・・。・・ガーヴにいたっては問題外・・。」
考えに考えをめぐらせて。
「・・・・・・よし。やっぱ、ゼラス達に頼むとしようv」
消去法でいけば。
どうしてもそうなってしまう。
ポンと手をうち。
なぜか、ケタケタと笑う、人間の姿をしている、
一応食用の花。
それを手土産に。
自らが鎮座している宮殿から。
彼・・・・見た目はどうみても十歳そこそこ。
艶やかな少しウェーブの入った黒い髪に大きな瞳。
見た目、かなりの美少年。
女の子にみまごうばかりの。
それを手土産に。

少年・・・・フィブリゾの計画は。
今、少しづつであるが、確実に、進行を開始するのであった。


                             −第14話へv−


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まえがき:

・・・・・うーん。
今日は起きたら・・すでに十一時近かったので・・。
・・・・多分午前中の更新・・・不可能です・・・はい。
・・・・・とりあえず、途中でもアップしておこうか・・やめようかなぁ(こらこらこら!)
ま、何はともあれ・・。
あと数分で仕事・・・いかなきゃ(汗)


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あとがきもどき:

薫:・・・・・・・・あ゛あ゛!時間が!!!!?やばいです!?
  というわけで、後書きは・・・なし!(まてこら!)
  ・・・・気が向いたら仕事から戻ったら・・・かくかも・・・・・・。
  あ゛あ゛!時間がぁぁぁぁ!!!!!!?それでは!!

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