降魔への旅立ち


キシャァァァ!!!
それはあまりに唐突で。
誰もその奇襲に気付かなかった。
「な゛!?一体!?」
まだ生まれたばかりの赤ん坊。
母親譲りで金色の髪に碧眼の瞳。
そして、その額の中央に。
もう一つの目。
第三の目が閉じられているのが見てとれる。
そんなつい先日生まれたばかりの赤ん坊をあやしつつ。
あくまでも普通の子供として育てようと、決意を新たにしていたその矢先。
神殿の周りから聞こえる、竜達の咆哮。
あわてて、窓から外をみれば。
外を埋め尽くすばかりの、黄金竜や黒竜、青竜などの姿が。
「シルナさん!隠れて!」
バタン!
顔色を悪くしてあわてて入ってくるのは、スピカ。
「ちょっと!?スピカさん!?一体、何が・・・!?」
見れば、どうやら、完全にこちらに敵意をむき出しにしているのが見て分かる。
空を埋め尽くす無限ともいえる竜達の姿。
「・・・それが・・・。」

かなり前から。
いや、何か完全にこじつけ。
そういっても過言でないであろう。
どこからか、人間の家計図を取り出して、この人の世の中の争いとなった、元々の国。
その一つの国に、彼等・・エンシェントドラゴンの血が少なからず先祖に混じっている。
そういう理由で、放っておいたら、彼等もまた。
戦いを起こしかねない。
という、何とも無茶な理由付け。
そして。
先日、人間の手によって。
開発されたというとある呪文によって。
数匹のそれ直属の黄金竜が倒されたことにより。
こともあろうに、彼等の一族を敵とみなし。
攻撃を命令した、とある竜王。

「・・以前から、彼は私達を理由をつけて排除したがっていたんです・・・。」
あまりに強大な力をもつ、彼等の一族は。
神族の頂点に立ち、この世界を支配したい。
という野望を持っているそれにとって。
邪魔以外の何物でもなく。
そして。
竜が殺されたのをきっかけに。
攻撃を命令した、この世界の神族の一人。
この世界、赤の竜神(フレアドラゴン)スィーフィードの直属の部下の一人。
火竜王ヴラバザード。
顔色を悪くして説明するスピカに。
思わず唖然とする。
確かに。
その役目を利用して、勘違いする存在は。
いることには代わりがないが。
よもやまさか、一応、この世界の竜王の地位についているものが。
そんなことに目を奪われるとは。
「とにかく、カノンさんは、隠れていてください!私達でどうにかしますから!」
そうはいうものの。
古の力を利用して。
見たところ、しかも、異世界の存在の力まで借り出している火竜王。
「駄目よ。あなたたちじゃ、勝ち目・・ないわ。」
そういいつつ。
抱いていた赤ん坊を手渡して。
「ルシフェルをお願い。リーアン、いるんでしょ?」
そういいつつ、扉の方を振り向く。
扉の奥から出てくる一人の男性。
「・・・・いいの?カノン?」
その声は少し戸惑いを感じさせているが。
「決まってるでしょ。・・・ここで、この子を殺させるわけには・・いかないからね。」
そういいつつ、スピカが抱いている自らの息子を見る。
間違いなく。
それでなくても。
かつて、あの竜王は。
この世界の黄竜族を疎ましく思っていたということをカノンは知っている。
子供だからといって容赦するとは到底思えない。
神の名前の元にといって。
自分達、魔族もやらないような非道なことをする神族のやり方。
そういう神族だけでないのは分かっているけど。
間違いなく、あの竜王はその系統。
昔はそうでなかったらしいが。
とある異界の存在との戦いにおいて。
それ以後。
今の性格になったらしい。
ということも風の噂に上司たる闇を撒く者から聞いたことがある。
そして。
「カイ、ルシフェルたちをお願い!」
そういって、傍らで、ミルクを温めていた男性にと話しかける。
「・・・えっと。ガルお姉さん?あまり僕達はこの世界に干渉は・・。」
そういいかけて、やめる。
目が・・・・カノンの目が完全に据わっているのを見てとり。
・・・・・こういう表情をしている時のカノンに逆らったら・・。
間違いなく、数千年か数百年は死亡する。
物質干渉力を失って。
「でも、カノン?君が関ったら・・。ここに闇を撒く者の部下がいるの・・気付かれるけど?」
そういって心配するそのリーアンの声に。
しばらく考えて。
「・・・・・私、形態変えるから、リーアンが私を使って。それなら問題ないでしょ?」
別に自分達が知られているわけではない。
だがしかし。
・・・・・・・形状の一つである。
そう。
武器の形を取れば?
そういって、軽くウィンクするその言葉に。
「まあ確かに・・・・。それに、俺もルシファーを守りたいね。」
そういいつつ、きょとんとした視線で見上げている、愛しい我が子をみつめ。
その金色の髪を軽くなでる。
「じゃ、カノン、いく?」
「・・・そうね。折角きてもらったんだけど・・・・。心行くまでお帰り願いましょうか?♡」
その、碧い瞳が。
にっこりと怪しく光るカノンであった。


リーアンが放った、弓の一撃により。
空を埋め尽くしていた竜の大群が。
一瞬のうちに消滅したのは・・。
それからすぐのこと。




カノン=ガルヴェイラ。
金色の髪に碧い瞳をしている二十代前後の若い女性。
人間のときは。
服装的には、まるで巫女のような格好をしている。
そして、よく彼女がとる、武器の形態は・・。
それは黒い弓。
異界の魔王、闇を撒く者の腹心の部下の一人であり。
そして、そんな彼の五人の腹心の中のリーダーでもある彼女・・・カノン。
そんなカノンの実力は・・。
いくら竜族などが束になってかかっても。
・・・・どうにかなるものではない。




「では、シルナさん・・・・私はこれで・・・。」
「・・・・気をつけて・・・・レイ・・・・。」
瞳を潤ませて見送るしかできない自分が悔しい。
それは、偶然。
とある洞窟の中。
そこの奥深くに幽閉されていた一人の男性。
長い黒髪に紅い瞳。
聞けば。
今、完全に世界に向けて攻撃を仕掛けている、とある王国の。
・・・・・・・第一王位継承者。
それが、周りの臣下などの手によって。
ここに幽閉されて、はや数年。
まだ若い男女。
そんなシルナも両親をなくしている身。
そしてまた、聞けば、このレイという男性もまた。
そんな互いの生い立ちから・・。
若い二人が、それなりの感情を抱くのは当然といえば当然のこと。
「・・・落ち着いたら、絶対に迎えにいくから・・。」
そういって、涙をためつつも、気丈に振舞うシルナをみて。
軽く額にキスを送る。
レイ=ビフレスト=マグナス=ウル=ユグラシドル。
ユグラシドル王家、王国最後の正統なる継承者。
それは、王国の近くに行くまでの短い旅の期間。
それでも。
二人の想いが燃え上がるのは、別に問題ではなかった。
記憶の橋にある、父親の姿と。
このレイの姿が似ているということもあったのか。
数日前に、二人だけの秘密の誓いを立てたばかり。
そんな二人を祝福していたのは、他ならない。
ずっと、シルナと一緒に旅をしているヘラ。
そういいつつ。
未だに国政どころか、国内も殺伐として混乱と破壊に満ち溢れている、自らの王国に戻ってゆく彼を。
・・・どうして引き止めることができようか。
いかないで。
そういいたいのは山々だが。
そんなことをいうのはプライドが許さない。
彼には彼のやることがあるのだから。

・・・・・そう。
その結果。
命を落とす結果が待ち受けていようとも。
そのことを彼にも伝えたが。
未来は絶対に変えられる。
そん信念のもと、この少なくとも、自らの国が。
他の国などに攻撃を仕掛けている状態でけでも打破しようと。
そんな王国にと戻っていった彼・・・レイ。
 どうして引き止めることができるだろう。

やがて姿が見えなくなる彼をみつつ。
「・・・さ、シルナちゃん、あなたはあなたのやることがあるでしょ?
  ・・・・少なくとも、どこか安心した場所に落ち着かないと・・ねv」
そういって、軽くウィンク一つしてくるそのヘラの言葉に。
涙をためていた視線をむける。
「ヘラぁぁぁぁぁぁ!」
溢れる涙はどうしようもない。

言えばよかったのかもしれない。
・・・・・・自分が彼の子供を身ごもった・・。
という事実を。
だが、そんなことを言ってしまえば・・・。
間違いなく、彼は自分と子供を優先して。
自分の使命を置き去りにするのは目に見えている。
そんなことはさせたくなかった。
少なくとも、自分が彼の負担にはなりたくなかった。


両親が死亡して以後ではないだろうか。
人前で人目をはばからずないたのは・・・。
少なくとも、このとき、シルナは。
側にヘラがいてくれることを。
心から感謝しているのであった。






「・・・・よし!ヘラ、彼とあの子・・くっつけてねv」
輪廻を見渡して、出した結論。
間違いなく。
あの人間の娘・・・・子供が、欠片を受け継いでくるのは分かっていた。
少なくとも、その魂のうちに、子供に受け継がせるべく。
ずっと、シルナは保有していたのだから。
それは、父親から死亡したときに。
無意識に引き受けてしまった、とある欠片。
そして。
輪廻転生を視ていると。
父親の欠片とは別に。
本体でもある、彼等の王の精神ともいえるそれが。
彼女の子供に転生を果たす。
それが分かったのは、しばらく前のこと。
だから。
先を見通して、ヘラにあの二人を絶対に結びつけるように、行動するように命令したのだ。

その結果。
ヘラの努力・・・というか、彼女はいつもの通りにしていただけなのだが。
確実に。
鍵は。
シルナのその肉体の中に宿っている今の現状。





気がつけば、揺らめく空間。
そんな中で、輝く一つの光を見出した。
「・・・・・・どうしてないているんですか?」
その光に近づく。
「・・・・・父様が・・・死ぬの・・。」
まだ誕生したばかりのその新たな魂という名前の光。
まだ生まれてもいない、その藍色の空間に、
生まれ出るまで待っているその純粋なる魂。
「・・・それにね。僕も・・・長く生きられないの・・。」
血筋からして、近すぎる血。
それは、両親のその両方は知らない事実。
だが、それゆえに。
近すぎる血は、強い力をもたらすものの。
逆に、魂とその肉体に負担をかける。
「・・・・なら、私を受け入れますか?
    少なくても、あなたの母親を・・・看取るまで、悲しませるようなことにはなりませんが?」
そういって、手を差し伸べてくるその声に。
「・・・・・本当?本当に?」
まだ誕生したばかりのその光は。
疑いを持つ。
ということすら知らない。
「・・・・ええ。」
「・・・・・・じゃ、受け入れる・・・・。」
その言葉ににっこりと微笑み。

カッ!
その刹那。
そこにあったはずの二つの光は。
一つに溶け込む。
ゆっくりと意識を向上させれば。
そこにあるのは、まだ誕生もしていなかった、彼の記憶というか意識のみ。
「・・・私は嘘はいってませんよ。」
本来ならば。
産まれて一年もせずに死亡してしまう人間である。
だったら。
別に、今。
誕生する前に、その魂がなくなってしまっていても問題はないはず。
「・・・・利用させてもらいますよ。あなたのその想い・・はねv」
物質世界に生れ落ちた瞬間に。
ここの記憶は書き消える。
そういう約束。
そういう束縛。
『力』によって覚えている存在もいるものの。
今・・『彼』は、この世界においては、とある封印を受けている身。
「・・・・さて、後は頼みましたよ・・・・フィブ・・・。」
それだけいって。
彼の意識は。
やがて、完全にすこしづづではあるが、薄れてゆく。
そう。
その母体となる母親の胎内に移ってゆくべく・・・・。



ドクン。
間違えのない波動が一瞬精神世界全体に感じられた。
「・・・・・どうやら、魔王様も順調のようだねv」
後は。
物質世界で、その封印を。
解く原因をつくるだけ・・・・。

くすくすくす。
「さて、これから本格的に、頑張らないと・・・ね(はあと)」
覚醒するまでに、竜王達や、神族側に気付かれてはいけないのだ。
そんなことをしたら、今までの苦労が水の泡。
くすくすと笑いつつ。
「さって、ダルたちにも魔王様が人として転生完了!というとってもいい知らせをしておこうっと♡」
うきうきと。
なぜか。
その手に。
山ほどの果物などを手にとって。
その場から掻き消えている一人の少年。

彼の名前は、フィブリゾ。
冥王(ヘルマスター)フィブリゾ。
生き物の輪廻転生を視る能力を備えている・・・この世界の超高位魔族・・・・。


                             -第12話へv-

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まえがき:

  こんにちわ♪
  この小説、また一人ご来店vv(まて!)
  星野さん、ご来店ありがとうございますv(だからまて!)
  只今、五名vふふふふふv
  こんな殆どオリジナルともいえる小説にご来店ありがとうございます(まてぃ!)
  んではでは、いくのですvv

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   あとがきもどき:
         薫:・・・・・ぎ・・・ぎりぎり(汗)只今11時30分・・。
            今から仕事に向かいますのです・・・・・。
            さって。次回でよーやくレイの誕生までいけるかなv
            さあ、問題です!
            ルシファー・・って、ルシフェルとは誰の先祖?
            ・・・・(笑)
            ばればれですね(爆!)
            ではではvv

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