降魔への旅立ち


「そういうことですか。分かりました、ここにしばらく滞在してください。」
エンシェントドラゴン、その長老は。
とても竜柄のいい男性。
初対面であるはずの、リーアンとカノンを。
その正体と実力を知っているにも関らずに。
寛大な言葉。
「でも・・・・ご迷惑じゃあ・・・。」
すでに臨月が近いことを物語るように、大きなお腹を抱えていうカノンに。
「気にしないで。カノンさん。それに、カノンさん達は私を助けてくれたじゃない。」
彼女達・・エンシェントドラゴンの一族は、根本的に争いを好まない。
だが。
その滅多と人前にでない種族ということもあいまって。
そんな彼等を見世物にしようとする人間達も、いるのも事実。
それでなくても、今のこの世の中の情勢は。
少しでも、力を求めて、各国などが争いをしている今現在。
あまりに急激すぎる世界の変化を怪しみ。
とりあえず、何が起こっているのか確かめに人の町にと向かった彼女。
スピカ=ドナ=エッシェンス。
ここ、エンシェントドラゴンの一族の長の一人娘であり、時代の長。
だがしかし。
人間の町を探索しているときに。
とある人間の旅人が魔族に襲われているのを見かけて。
見かねて助けたものの、その人間が。
裏家業を営む人間達で。
竜の力を封じるという、古代の腕輪を持っていたがゆえに。
その腕輪によって、力を封じられて。
彼等の見世物とされていたこのスピカ。
もし、もう少し遅くリーアンたちの出会えば。
間違いなく、人間の男性などの欲望の渦の中に。
彼女は投げ込まれていたのは必死。
情勢を探るためのお使いは。
スピカにとっては苦痛を伴ったが。
だが、そのために。
リーアン達と出会えたのは、うれしいとすら思っているこのスピカ。
別に、異世界の魔族であろうが。
神族であろうが。
そんなことはどうでもいい。
元々、彼等の種族。
エンシェントドラゴンの一族は。
その光と闇を統べる王達が不在の間。
この地を育てるべく創られた一つの種族。
本質的には、その力のうちに、光の力も闇の力も備えている。
だが。
あくまで世界を守るという前提からして。
その籍を神族に位置しているのに他ならない。
「いいじゃない。ガルお姉さん。好意は素直にうけよーよ♡」
すでに、さすがに、十年くらい。
この地で人の振りして生活しているためか。
かなり人間くさくなってしまっている、この男性。
金色の髪に黒い瞳。
カノン=ガルヴェイラ。
今妊娠している彼女の同僚であり、弟的な存在でもある。
カイ=レッド=ゴルンノヴァ。
カノンと同じく、異界の魔王、闇を撒く者の腹心の一人。
その言葉にしばし悩みはしたものの。
この地で、安心というか、信頼できる場所が他にあるわけではない。
「・・・・じゃ、お言葉に甘えてお世話になります。」
「あ、じゃあ、俺もここで何か手伝いしますね。」
カノンの恋人でもある、リーアンは。
この場所、エンシェントドラゴンの神殿で。
しばし。
カノンが出産するまでの短い期間。
この場に滞在することを、今ここに決定を下したのである。





「いーえ!納得がいかないわ!」
依頼を終えて。
それでもまだ、何か符に落ちないことがあり。
きっぱりと宣言している、漆黒の長い黒髪に紅の瞳の女性が一人。
「仕方ないんじゃない?こんな世の中なんだしvあ、こいつ、結構いいものもってるし♡」
ジャラリ。
そういいつつ、今とりあえず、女性二人。
そう甘くみて彼女達に襲いかかってきた、
山賊をあっさりと撃退して。
その黒くこげた物体などから。
その隅の中にある、金貨や貴金属などを取り出している一人の女性。
艶やかな少し肩より長い髪にウェーブの入った黒い瞳。
対するもう一人の神官のような服を着こなしている若い女性。
シルナ=ド=ミドガルド=ラグナデス。
その見た目に映る姿は、漆黒の長い黒髪に紅の瞳。
知るなの言葉にあっさりと返事を戻して、倒した人間から、品物を奪っているのは。
艶やかな少し肩より長い髪にウェーブの入った黒い瞳をしている若い女性。
ヘラ=マグネット。
シルナと共に行動しつつ、旅を一緒にしている若い歳のころならば。
シルナと同い年くらいかそれより少ししたのこの女性。
そんな風にと、あっさりと言い切ったヘラは。
「ラッキー。シルナちゃん、こいつ、こんなにお金もってるわ♡」
「まあ、別にいーけど。死者がお金を使えるわけでもないんだし・・。」
いつものことなので。
あまり気にしないようにしているこのシルナ。
「ともかく!納得がいかないのよ!」
―この辺りに生息している、正体不明の生き物を退治してくれ。―
そういう、国からの依頼であった。
確かに。
正体不明の生き物ではあった。
・・・そう。
その気配が人のその気配が混じってさえなければ。
シルナは、父と母から、少なくとも、多少の精神面を覗き見ることが出来る。
という性質を受け継いでいたりする。
そして、その精神面(アストラル・サイド)から覗いたその生き物は。
・・・・紛れもなく、人間のそれ。
そのものであったのである。
その死亡する刹那の魂から感じられた感情は。
間違いなく、人のそれにしか他ならなく。
そしてまた。
ここ、最近、ここの国内で、国民の行方不明が続いている。
そういう噂というか事実をシルナは知っていた。
そんな中に。
かろうじて、まだ人の心が残っている、異形の生き物が存在し。
だがしかし、自ら死ぬことができなくなっているそれは。
わざとシルナに突っかかっていき。
人の心をもっているがために躊躇していたシルナの代わりに。
あっさりと留めを刺したヘラ。
さすがに抗議の声を上げたシルナではあるのだが。
だがしかし。
元の人に戻せないのなら、殺すしかないのでは?
そうあっさり言われて押し黙った。
そして、それが死亡というか消滅するその刹那。
シルナは『彼』から、一つの話しを聞いたのだ。
それは。

― ここの国王は不死を求めるあまり、ある研究に手を染めている ―


それは、人と他の種族を合成させて、その中に。
別の生き物・・つまり、別の精神を入れ込む。
というもの。
ある生物から抜き取った、体を再生する能力のその細胞と。
そしてまた、尻尾などを切られても再生するトカゲなどの能力を秘めた細胞。
そして・・・この世界では強いとされている、『魔』それらを召喚し。
様々な命を掛け合わせて新たな命を作っている。
という内容であった。


つまり。
シルナたちは、知らずに。
国王直々の指示の元、裏で開発されている、軍備用の実験体の始末を。
させられていたのである。

殺してしまった人間達が生き返るわけでもないにしろ。
それでも、じっとなどはしていられない。


何か一言をいおうと。
彼女達に依頼をしてきた寺院に向かう。


シィィン。
一ヶ月前に来た時には。
確かに、人々のざわめきなどでザワめいていたその場所が、やけに今は静まり返っている。
「おや?誰ですか?もしかしてここの関係者さんですか?」
しばらくその場に意味が分からずに佇むシルナに。
そんな彼女の後ろから。
聞き覚えのない、のんびりとした男性の声が投げかけられてきたのは。
ざわめきがないのを疑問に思いながらも。
その寺院がかつてあった場所にたどり着いたとき。
そこには。
何があったというのか。
完全に焼け落ちている寺院の残骸が。
シルナたちの目の前に横たわるのみ。
そんな焼け落ちた寺院を呆然と眺めていると。
気配も何も感じさせずにいきなり、聞き覚えのない声がしてくるのである。
あわてて振り向くと。

黒い神官服に身を包み、そして、その手にはどこにでもあるような、
錫杖をもち。
その腰にたすきがけにされている茶色い鞄。
それらがローブの中で少し見え隠れしている。
そして、特質すべきは、おかっぱの黒い髪に。
絶えず、場違いな笑みをずっと浮かべているという。
この場には似合わない、どこかのどうやら神官のような男性が一人。

「あら、ゼロスじゃない。」
・・・・・・・ぴし。
その言葉に、そのままの笑顔で完全に凍りついたのがすぐに分かった。
「・・・・・って!?ヘヘヘヘヘヘラさん!?え・・・えと・・僕はこれで・・。」
あわてて、ヘラの姿を認めると逃げようとするゼロスと呼ばれた、一人の神官の男性。
「あら、折角恋人に出会えたのにそのその反応?♡」
がっしりとその服のすそを掴むヘラの言葉に。
「冗談は大概にしてください!あ!ほら、そこの人!ヘラさんの冗談をまにうけないでくださぃぃ!!!!(涙)」
本気で涙を流してそう言っているその男性に。
「・・・えと・・・・ヘラ?知り合い?」
戸惑いつつも聞き返す。
「あ・・ええと、始めまして。お嬢さん。僕はゼロスといーます。ごらんの通り謎の神官です。
   ヘラさんとは・・ある神殿でお会いしたことがありまして。」
そういいつつ、にこにこと手をシルナにと差し出してくる、ゼロスと名乗ったその男性。
「もう、ゼロスったら、シルナちゃんは知らないんだから。話しをあわせてからかってくれてもいいじゃないv」
そういいつつ、ぷうと顔を膨らませるヘラの言葉に。
「冗談じゃないです!」
きっぱりとはっきり言い切るゼロスに。
「・・・・・・・・・・あんたもヘラに苦労してるのね・・。」
「・・・・分かってくれますか?えと・・シルナ・・さんでしたっけ?」
どこか違うところで意気投合しているこの二人。
そんな二人の横では。
「まったく、神官と普通の民家の娘といった身分の差で。引き裂かれた恋人達の再会。という設定にして。
  シルナちゃんが信じたところで嘘といったほうが、面白いのにぃ。それか信じ込ませたままでも面白いけど。」
そんなことをぶつぶつといっていたりするヘラ。
・・・・・どちらも僕には迷惑です(汗)
そんなヘラの言葉が聞こえているゼロスと呼ばれた男性は。
心の中で突っ込みをいれていたりするが。
「・・・・ねえ?もしかして・・・・ゼロス・・さんでしたっけ?あなたとであった当時から・・ヘラって・・こんなの?」
「・・・・そーです・・。」
「そ・・・・・そう・・・。」
どこか遠い目をして肯定の言葉をはっするゼロスをみつつ。
少しばかり冷や汗を流しているシルナ。
やがて。
とりあえず、深く、ヘラの性格については考えないようにして。
「と・・・ところで。こんな所で何をしているのですか?ゼロスさんは?
    私達は、ここの寺院に用事があったのですが。どうやら、最近燃えた感じのようですが・・。」
未だに辺りに燻っている熱気は。
昨日、今日といったものではないにしろ。
ここ数日以内にここが燃え尽きたのは、明らか。
「ああ。ここですか?いやぁ、僕もこまっているんですよぉ。
  どうやら、ここの寺院の一人のメンバーが。
  何らかのここで国王自ら頼まれていた何かを作ることに反発して。国王を暗殺したとか何とか。
  その見せしめとしてこーなった。という噂ですけどね。
  いやぁ、ここの文献に用事があった僕としては困ったもんです。はっはっはっ♡」
まったく困ったようではなく、にこにこと笑って説明してくるゼロスの言葉に。
「・・・・国王が・・暗殺?」
「まあ、真実かどうかはわかりませんけどね。ま、焼けたものは仕方がないですけど。
  とりあえず、焼けたという証拠をもって、上司に見せようかとおもいましてね。
  こうして、焼けた書物を集めているわけです。」
そういいつつ、その辺りに積まれている、黒い墨のような品物を指差す。
中にはどうみても、人の形をしているものも含まれていたりするのであるが。
「・・・・・・・焼けた本なんてもって戻ってどうするのよ?」
当然の疑問である。
「いやぁ、僕が命令されたのは、『書物を手に入れること』でしたから。別に焼けていようが関係ないかと♡」
あくまでもその命令のままに動くお役所のようなその台詞に。
思わず頭を抱え。
「あ・・・・あっ、そうなの・・・頑張ってね・・。」
どこかむなしい風が。
シルナの心の中を吹き抜けてゆくのであった・・・。



国王が暗殺という言葉の真意を確かめるべく。
数日滞在したものの。
・・・・それはどうやら。
ゼロスの言ったとおりに事実であるらしく。
国王自らが、この国の国民を使って人体実験をしていたことが。
国民に知られることなり。
国民の間から、かなりの大きな暴動が起こり。
この国が壊滅してゆくのは・・それから一週間もかからなかった。



「嘘はいっていないですよ♡僕は、シルナさん♡」
シルナたちが立ち去ったあと。
その場でくすくすと笑っているゼロス。
そう、嘘はいっていない。
ただ、まだこの時点で。
国王は生きているということ。
そして。
ここの生き残りをわざと国民に突き出して。
その国王がしていることを国民に教えたのは、他ならないゼロス本人。
そして・・・この場所、寺院に火を放ったのもまた、他ならいゼロス本人。
「まったく、古の合成術・・・使わないでくださいよね。」
それでなくても、これから仲間は必要となってくるというのに。
戦力にもならない人間に合成されるのを。
防げ、そのために書物をし余分しろ。
・・・それが、彼・・・・獣神官(プリースト)ゼロスに。
彼の上司たる、獣王(グレータービースト)ゼラス=メタリオムより出されている命令であった。



そして、立ち去るシルナ達を見送りつつ。
「・・・・さて、そろそろですかねv」
くすりと笑って。
ゆらり。
その一瞬のうちに、その場から掻き消えているゼロスであった。

今は少しでも、何かの抵抗のきっかけとなるような、
大きな国は、つぶしておくべき。
・・・・冥王の作戦のもと。
少しづつではあるが。
大きな国などは。
内部から、確実に崩壊を始めていることを。
まだ、誰もこの時点では・・・そう、
竜王ですら誰もが気付いてなどいなかったのである。


                             -第11話へv-

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まえがき:

ふふふふv
今回登場する黒い男性はだぁれだv(ってばればれだってば!)
・・・よっし!
あと少しでレイの誕生だ!(かなりまて!)
んではではvいっきますvv


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あとがきもどき:

薫:ふふふふv次回!シルナが恋!?(こらまて!)
  をお送りします!(そーか?そーなのか?!)(違うと思うぞ・・・・汗)
  そーして、ルシフェルの誕生ですv
  え?ルシフェルって・・・誰って?
  それは・・・・・・・・ふふふふふv
  ちなみに・・・・火竜王・・・・のあれ。馬鹿・・開始です・・・はい(汗)


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