降魔への旅立ち


辺りはただ、空間が揺らめいている不思議な空間。
ここはかつて。
眠れる竜の大陸と呼ばれていた大陸があった場所。
そして。
古の文明が栄えて一夜にして滅んだ場所でもある。
力を求めてやがて、崩壊していった世界。
そのままだと。
全ての世界を巻き込むことが必死だった。
だから。
それまで、表立って行動しなかった、この世界の竜神は。
世界のために。
この場所で。
一度大地を清める意味もあり、最大級な戦いを繰り広げた地。


「さて・・と。ラグナお兄ちゃんたちは。あの遺跡にかかりっきりだろうし。」
つぶやきつつ。
何も足場も何もない空間そのものに。
空気に干渉して、足場を作り出す。
別に力を使えば浮くことなど可能であるのだが。
この場所は足場も何もなく。
ただただ。
その空間そものもが揺らめいているのが見た目にも分かる。
この場所では、過去と現在が交差するように。
まるで陽炎のごとくに、その様子が見てとれる場所でもあるのだからして。
きゅ。
とりあえず気を引き締めるがために。
後ろで一まとめにして髪を結ぶ。
「でもリーアン?下手に何かを召喚したら・・。それが原因で戦いがひどくなったりしない?」
不安そうな声を上げているのは。
シル。
「でも、今のままで。何もしないでいるよりは・・。
  たとえ、異世界の力を借りても、今の殺伐とした世界のために。何か出来ることをしておいたほうがいいともおもうけど?」
それが一つ。
そしてもうひとつは。
自分の力を試してみたいがために。
「変なのが現われたら、やっつければいいよ!」
うん!
その言葉に元気よく言っているまだ幼い幼女、ルナ。
「そりゃ、自分で制御できないものは呼び出さないよ。」
それでなくても。
『魔』を召喚して。
その力に飲み込まれそうになった権力者を。
一体この今までに何人倒したことなのか。
心配するシルの声にこたえつつ。
「・・・じゃ、始めるよ?」

いいつつ、虚空に文様を描く。
文献を元にし、そしてまた。
自らの血の中にあるその知識を利用しての。
初めての試み。



「鏡の世界に生きるもの 同じ世界にて世界に既存しないもの
  同質でありながら我が世界とは異なるもの 我の望みを叶えしものよ 我の望みを打ち砕かんものよ
  今ここに 我の力と汝が力をもて 我が呼びかけに答えやらん。」


ポウ・・・・・・。

リーアンの言葉に従い。
虚空に描かれた、六績星が淡く揺らめく空間の中で。
うっすらと輝いてゆく。







ゴォォ・・・・。
「情勢はわれらに有利、しばらく休暇を与えよう。」
すでに、世界は自分達の手に落ちたも同然。
だがしかし。
すぐに無に還すのは、面白くない。
もっと、もっと、恐怖を撒き散らせつつ。
穏やかに、あの御方の元にこの世界を還す。
それが自分の使命。
そして、今。
長き戦いの果てに。
今、この世界では。
完全に、『彼等』が圧倒的に有利と成り果てている。
何しろ、この星に住まう人間達が。
その半数以上、敵対する、漆黒の竜神側でなく。
彼―闇を撒く者。
その、甘い言葉を信じて彼の元、『神族』などに戦いを挑んでいるその結果。
もはや、今回の戦いは。
自分達の方が有利であることは眼に見えている。
主の声に顔を見合すと。
「なぁに、お前たちがいなくなったら、我が困るからな。
   休めるときに休まないと、以前のように、五人とも、過労死して、我一人でしばらく行動する。
   そんなことにならないように・・だ。」
漆黒の髪の男性がにやりと笑う。
そういわれては、言葉がでない。
事実。
以前、五人が五人とも。
その疲れなどからか。
一気に、過労死して、主に迷惑かけたのは。
つい、数億年前のこと。
しばし、顔を見合わせたのちに。
「・・・・わかりました。ダークスター様も気をつけて。」
そういいつつ、彼の前にて。
膝を折っている、男女合わせて五人の姿。



「とりあえず、今後のために、他の世界を見分してみないか?」
主の言葉で、別々に行動している各五人。
その中で。
金色の髪を持っている男女二人。
「あ、それいいね。ガルお姉さん。他の世界を見ておくことは。かなり、闇を撒く者様の有利にもなるしね。」
そういいつつ、横にいる、金髪碧眼の女性に話しかけている金髪、
黒瞳の男性。
この二人。
同時期に、彼等の主が創り出した存在であり。
いわゆる双子のようなもの。
彼等には血のつながりといったものはないのであるが。
別に男性、女性。
そうはっきりと確定しているわけではない。
ただ、どちらにもなれる。
彼等には性別。
というものは皆無に等しいのだからして。
まあ、自分達がどちらを好むか、好まざるか。
その程度のもの。
だが、さすがに。
長い時を存在していると。
その自分にあっている姿。
というものが定着してくるのもまた道理。
そんなこんなで。
彼等の主は、殆ど男性形態をとり。
そして、彼等もまた。
主である闇を撒く者の五人の直接の部下。
そんな彼等を取りまとめている、この金髪碧眼の女性。
カノン=ガルヴェイラ。
「あ、ガル姉さん、あれ・・・・。」
そんな理由から、他の世界に足を踏み入れようと。
世界を隔てているその壁の部分に差し掛かったとき。


『・・・・な゛!?召喚・・・・魔法陣!?』

偶然か、はたまた仕組まれているものか。

唐突に彼等の進む目の前に出現する、異世界の召喚陣。

「き・・・・・きゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
「う・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」

まるで、その一瞬出現した、六績星の魔法陣に吸い込まれるように。
彼等は。
その光の中に飲み込まれてゆく。



「・・・・・・・・・失敗・・・・・したかな?」
そうつぶやくその瞬間。

・・・・・・・・・ドサリ。

何か、重いものが二つ。
落ちてきた感覚。


自分の意思できたのならまだしも。
いきなり無理やり。
心構えも何もなかったがために。
一番無難な・・・形態をとる。

即ち。
自分達が本来いる場所ではない位置に属している、この世界。
その本質は、自分達の本体そのものは。
彼等の世界に属する精神世界にある。
いきなり召喚された場合。
少なからず、何らかの制限を受ける。
まあ、彼等のように高位である存在には。
まず関係ない事柄といえば事柄なのだが。
いかんせん。
そうでないと示しがつかない。
とかいう理由で、上からそう指示が出ているのであるからして。
そのように決まりごとをしているのだから、仕方がない。

一番、手っ取り早いのは、無機質の形を取ること。
さすがに、生き物の形態をとるのは力を使う。
何処に召喚されたのか分からない状態で。
そのままの状態でいるのは、今までの経験上。
面倒ごとに巻き込まれる可能性が高い。
そう。二人はよくわかっている。



「・・・・・・・・・・・・・・あれ?」
呆然としたような声が聞こえ。
そちらをその物質化した体を向けると。
そこにいたのは。
二人をみつめて呆然として佇んでいる、三つの人影。
いや、一人は、人でないのが見てとれる。
彼等にはわかる。
一人が、この世界にいるはずの、黄竜族。
という種族である。
ということが。


「え・・・・・ええと・・・・・・一体?」
ただ、その場に、シルの呆然とした声が響き渡ってゆく・・・・・。


ドォォォォン!!!!!


「危ない!リーアン!」
「あ、カノン!そっちが!」
互いに背中を合わせつつ。
弓と剣を互いに手を取り。
目の前にいる存在達を相手に戦っている、まだ若い男女が二人。
見たところ、二人とも、二十歳前後くらいであろうか。
あれから、約十年。
あのあと。
シルはラグナと結婚し。
子供まで身に宿したものの。
二人とも。
そのまま、どこかにいなくなってしまった。
見つけたときには。
もう、二人とも、土の中。
話しを聞けば、どうやら、シルが妊娠している間に。
魔に襲われて。
そして・・・・二人とも。
ということらしい。
女性は妊娠しているとき、すくなくとも、臨月のときなどには得に魔法が使えなくなる。
その一瞬を突かれたらしい。
生まれたばかりの子供の行方は・・・用として知れない。
それと同時に。
気になるのが、あのヘルという女の子も消えてしまったということなのだが。
リィナは、我が子・・ルナを守って戦死した。
今、ルナは。
母親の死とともに自らの力に目覚めて。
今や、世界の希望とまでなり始めている。


―赤の竜神の騎士。

この世界の至高神、赤の竜神(フレアドラゴン)その力を受け継ぎし者として。


だれともなく、そう呼び出した。


まだ二十歳にもいかない若い女性。
そんな彼女の力を手にいれようと。
国などといった組織的に彼女に刺客などを差し向ける者達もでてきていたりするが。
人とはかけ離れた彼女の力に、屈するより他にはなく。
今、彼女は。
この混乱と化している世界の希望の一旦として。
まるで何かを探すように断ち切るように行動している。
旅の最中知り合った、一人の女性と共に。


「でも、いいの?カイ兄さん?」
自らが持っている剣に話しかけているリーアン。
すでにもう。
かつての少年は。
立派な青年にと成長を遂げている。
「何、気にするな。」
そういって、剣から発せられることば。
実は彼がもっている剣は、ただの剣ではない。
彼が昔・・・召喚した。
異世界の魔族である、閃光の剣、ゴルンノヴァ。
カイ=レッド=ゴルンノヴァ。
かなり異色の組み合わせではある。
異世界の魔族二人に、そして。
この世界、最後の生き残りでもある黄竜。
「でも、どうやら、本気でここの冥王は、ルビーアイ様を。復活させる気のようね。」
そうその金色の髪をさらりとかきあげつつ言っている、金色の髪に碧い瞳の女性の言葉に。
「まあ、確かにこのままだったら・・・・・・エル様に何かいわれるのは必死だもんね・・。」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・確かに。』
どこか遠くをみてつぶやくリーアンの言葉に。
剣と女性。
その二つから同時に声がしばらくの沈黙の後に発せられる。

別に思い出さなければよかったと思わないわけではない。
ただ。
呼び出したからには、その実力をためさせてもらう。
いって、ゴルンノヴァとガルヴェイラ。
この二人が仕掛けてきたときに・・・・。
その戦いの中で、彼・・リーアンは覚醒を果たしたに過ぎない。
ただの生き残りとしてでなく・・・黄王として。


だがしかし。
人の中で育ったリーアンのこと。
彼は・・あくまでも人として生活することを選び。
そして・・・・今現在。
彼は、その行動に賛成してくれた、ガルヴェイラとゴルンノヴァ。
この二人と共に行動を共にしつつ、旅を続けている。



あくまでも、竜王としての力を使わずに。
一人の人間として。


別に只今休暇中。
ということもあり、そのまま、召喚されたまま。
この世界でしばらく休息を取ることにきめた、この二人。
この世界とは別の世界。
漆黒の竜神と闇を撒く者。
という、竜神と魔王が光と闇を治めている世界の魔族。
闇を撒く者(ダークスーター)の五人の腹心のうちの二人。
カノン=ガルヴェイラ。
カイ=レッド=ゴルンノヴァ。
この二人。
今、彼等は。
リーアンと共に、旅をつづけつつ。
この混乱と殺伐に満ちた世界を互いに支えあいながら。
旅を続けているのであった。

                             −第9話へv−


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    こんにちわv
    よーやく?スレイヤーズに関りのある、一つのあれが登場ですv
    ・・・・・長いなぁ・・・。
    ・・・・・・・・レイ=マグナスの登場は・・モー少し後・・・・・。
    ではではv


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   あとがきもどき:
         薫:ふふふふふふふふふふv
           次回で、カノンが?
           というわけで次回に続く!(こらこらこらこら!)
           え?
           ガウリイの先祖?
           感のいい人は判ったはずv
           さって、リーアンとの間に出来た子のもう片方の親はだぁれだv
          (っ・・って!今後の展開ばらすなよ!爆!)

     2003年4月17日


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