降魔への旅立ち
ザァァァン・・。
ザザァ・・・・。
しずかに、聞こえるのは、ただ波の音。
船の舳先に打ち付けては、聞こえる波しぶき。
「ヘルちゃん?どうかしたの?顔色が悪いわよ?」
船の船倉で。
顔色の悪いヘルに話しかけているシル。
出発してしばらくは何でもなかったが。
数日、数週間経過するごとに。
目にみえて心なしか、その顔色もわるく。
それでなくても色の白いその肌は。
まるで透き通るまでに白く成り果てているヘルを心配して。
そのあまりに冷たくなっている額に手を添える。
熱があるとかならば。
普通は、赤く全身が火照るであろうが。
今のヘルの状態は。
まるで。
その全身から、全ての熱が奪われたかのように。
冷たく、まるで死人よりもさらに冷たく。
その体がなってきていたりする。
この子、こんなに冷たかったっけ?
などと、シル達が思うくらいまでに。
ヘルの体温は、極端になく成り果てていたりする。
「何でもないです・・・何でも・・・。」
そういいつつも、体にかかる負荷はどうにもならない。
日がたつにつれ、体にかかる重み。
いや、体というか、その本体にかかる重みといっていいものか。
それが、視えない圧力となり。
日を重ねるごとに、ヘルの精神を押しつぶしてゆく。
「あ・・・あの。そういえば・・私・・。この旅で・・何処にいくのか・・・聞いてないんですけど・・。」
ただ。
船で、とある遺跡調査に向かう。
ヘルはそう聞かされているのみ。
海は、その水を司る、水竜王の領域。
それゆえに、さらに、気付かれないように、何重にも結界をほどこし。
人の戦いに、または、人の間に、自分達のような存在が、入り込んだりしているということを気付かせてはならない。
その概念のもとに、それでなくても、力をかなり使っているというのに。
この、圧迫感は何なのか。
船が進めば進むほどに。
体の抵抗が無くなってゆくがごとくに。
その精神からそのものに対して。
そこに近づいてはいけない。
そう警告が発せられている。
倒れ掛かる、ヘルを抱きかかえつつ。
「あら?そういえばいってなかったっけ?
私達が向かうのは、海の果てにある、巨大なクレーター。その奥の、海底にある、神殿よ。」
・・・・・・・・バタン!
「きゃぁぁぁぁぁ!!!!!!?ヘルちゃん!?」
暗転。
こういうのをまさにそう表現する、人間の心情を。
このとき。
ヘルは初めて理解した。
人であるがゆえに。
簡単にそこに入り込もうとする。
だが。
人であるがゆえに、そこの空間のねじれと巨大な力による、その余波の残量力と余韻と、
そして、空間の歪みによって、生じている瘴気や神気。
そんなものに普通の人間などが耐えられるはずもない。
そして。
―・・・・うーん、今のヘルじゃ、無理だろうね。これは、僕からの餞別だよ。頑張ってね。ヘル♡―
意識を失った、その意識の中で。
ヘルは、自らの主であり、そしてまた上司でもあり、
そして・・・・彼女の父親でもある、自分と待ったく同じ容姿をしている、少年の声を聞いていた。
いきなり、ヘルが倒れたのをみて。
あわてて、そんなヘルを部屋にと運び。
必死に手当てなどをするシル達。
とはいえ、回復の術を・・しかも、シル達以上な高等な術を。
使える船員など、今回のメンバーにはいるはずもない。
何しろ、遺跡の調査ということであったので。
オーディル国王は、あまり戦力にならないメンバーを彼らにあてがったのであるからして。
おそらく。
長い船旅の疲れがでたのであろう。
というのが医者の意見。
本当はまったくそうではないのであるが。
ふと。
目を開けると。
自分の側で、ベットの端で眠りこけているシルの姿が目に入る。
「・・・・人間って、不思議よね。」
そう思いつつ、少し起き上がる。
額に当てられていた冷たいタオルに苦笑する。
こんなことしても。
自分には意味がないのにと思いつつ。
逆に。
自分を心配しているその戸惑いの感情が。
かなりのご馳走とになっているに他ならない。
それ以上に、心から心配しているその純粋なる、まっすぐな気持ちは。
逆に、ヘルの弱体化をも誘いかねない。
だが、その辺りの対策は万全に整えている。
彼女が唯一、彼らと行動を開始したときに身につけていた。
シル達は、形見と思っているその品物。
シルの左手の中指にはめられている銀色の指輪。
この指輪を通じて、ヘルは、主から、指示と。
そしてまた。
力の補助と補給、そして、主の力を使った結界で、その身を覆っているからこそ。
誰にもその正体がばれていない。
まったく、血のつながりもないというのに。
子供などには親切にする人間もいるとすれば。
逆に、同じ種族や、家族、血のつながりがある自分の血族にもかかわらずに。
率先して、命を奪う人間。
そしてまた。
無条件に、他人にこういうように、愛情を注ぐ人間もいれば。
逆に無条件に、他人を排除して殺して行く人間達もいる。
どちらかといえば、後者の方が、ヘルにとっては面白い状況と思えると思うのであるが。
とりあえず。
横で看病しつつ、眠ってしまったシルをみつつ。
小さくつぶやく。
「・・・・・・まさか、あそこに向かっているとは・・・道理で・・ね・・。」
小さく、小さく、誰にも聞こえないように。
いつもの、子供らしい声でなく。
どこか、落ち着いた、まるで全てを悟りきっているかのような。
そんな声がヘルの口から漏れてゆく。
あの場所は、禁断の地。
あのとき。
かつての、あの戦いの後より。
神と魔の間で、取り決められた。
禁断の地。
それもそうであろう。
まずそこに入ろうとすれば。
その残った、余韻によって、心構えなどのない、多少の存在などは。
まず間違いなく、気が狂うか、もしくは、そのままその力を受け止めることができきれなくて。
力に押しつぶされるかのごとくに、虚無へと還り行く。
あの場所に移動して。
無事なのは、まず、彼女もしくは。
魔王や、その腹心、そして、竜神、竜王以外では。
魔の中では、彼女・・ヘルと、とある黒い神官くらいであることを、ヘルはよく知っている。
「・・・・とりあえず、もう少し早く聞いておけば・・。」
それなりの対応はしておいたのに。
あの地に行くにも、何にしても。
それなりの結界を人知れず張っておかないと。
まず下手したら、自分の正体がばれてしまう。
まあ、このご時世。
よもや、まさか、魔が。
完全に人の形で人の世の中に紛れ込む。
そんなことを思っている人間、または、考えている人間など一人も存在してなどいなく。
だからこそ。
かなり、周りから、操作が簡単にできるのであるが。
人間達の行動などに、少しばかり、道を誤るように進言を下す。
それだけで。
そうつぶやきつつ、何かをつぶやくヘル。
次の瞬間。
一瞬、ヘルの姿が掻き消えて。
だがしかし、瞬きするより早く、
いつものヘルの姿が。
そこにはあったのであった。
順調に航海の道筋は進んで行く。
船で、いくら、揺られて旅をしていたであろうか。
船旅の最中の食事は。
前もってつんでおいた食料品。
魔力を利用して、一度、瞬間冷凍食品などとしておいて。
食べる直前にそれを解除する。
それだけで。
食材を腐らせたりという、典型的な、船の旅にあるような、失敗はしていない、シル達一行が乗っている、この船。
グラントス・マーメイド。
これが、この船の名前らしいが。
そんなことは、シル達にとっても、また、ヘルにとっても、どうでもいいこと。
「・・・・・あそこにいくの?リーアン?」
不安そうな顔をして。
船の船室で話しかけているのは、ルナ。
その紅の瞳が心配そうに揺らめく。
「うん、そのつもりだよ。
・・・あそこなら、何やっても、魔王にも、腹心にも。そして、竜王にも気付かれることなんてないしね。」
そういいつつ。
本の解読に余念がないリーアン。
「・・・何か、すごく私不安・・・・・・。」
まだ小さな女の子だというのに。
その口調はしっかりしている、紫がかった青い髪に紅の瞳をしている女の子。
多少その小さな体が震えているのは、気のせいではないらしい。
何か、とてつもないことを思い出しそうで。
それが、怖くもあり、そしてまた。
だが思い出さなければいけないと。
物心ついたときから漠然と感じていた何かの気持ち。
その気持ちがどんどん、目的地の近くに近づいてゆくたびに強くなっているのは。
ルナの気のせいではない。
ヘルとであったのは、ルナがまだ一歳になって間がないとき。
あれから。
数ヶ月が経過して。
再びあと少しでルナは二歳となる。
まだ幼いわりに、しっかりした口調は。
しっかりした子だね。
と周りに言われていたりする事実もあったりするが。
それ以上に。
幼い子供だというのに。
その力の大きさは。
母親である、リィナの努力によって、未だに、シル達以外には知られていない。
知られそうになる前に、シル達は、ルナのことを思いやって。
すぐに別の土地に出発していたその結果。
大切に、大切に、ルナは守られて。
ゆっくりと成長を果たしているのである。
長い船旅のために、気分が悪くなる船員も少なくない。
大量に、積んであった果物などのために。
たまぁにあるという航海病は、この調査船には起こってないが。
別名、喀血病ともいうが。
それは、栄養不足から起きる、病気の一種。
まあ、果物さえ取っていれば。
まずかからない病気ではある。
彼等の船団。
この調査船の目的地は。
なぜか、海の海原のその先に。
突如として出現する、巨大なクレーター。
そのために。
まだこの周りを回りこめることを知らなかった人々などは。
この地が、平である。
そうこれをみて、勝手にそう思い込んだりもしているのであるが。
まあ、確かに。
奥底が見えないくらいに、急激に、その海の水が。
途切れてクレーターと化して絶壁と成り果てているのを目の当たりにすれば。
そんな錯覚を起こしても不思議ではないのであるが。
何はともあれ。
その海が途切れているその場所。
つまりは。
その少し先にある、海底にと沈んでいるといわれている神殿。
かつて。
シル達が、まだうまれる前のリーアンの卵を発見した神殿でもあるそこに彼等は向かっているのだ。
「理をなし、風の力よその恵みをもてあまさせん。」
ヘルの言葉によって、出現する。
船の周りを包み込む、風の結界。
「じゃ、僕とルナさんとで、留守番してるから。シル達は、兵士の皆さんの案内役、お願いね?」
これは、始めに打ち合わせていたこと。
「あ、私もそこ、知ってますから、出来たら、シルさんがこちらで留守番されませんか?
とりあえず、私でも、何かあったときには、回復くらいできますし。」
下手をしたら。
手伝えといわれかねない。
冗談ではない。
いくら、冥王様の力添えがあるとはいえ。
みすみす。
魔王様と竜神の力の余波が残っているその場所に向かうとなれば。
まず間違いなく、消滅まではいかずとも正体がばれてしまう。
それは好ましくないので。
それより。
ここの海底にある、かつての、黄竜族の神殿の遺跡に向かうことをそれとなく、提案しているヘル。
そんなことを思いつつ、ヘルがちらりとシルをみつつ話しかける。
その言葉に。
・・・確かに。
いくら、大丈夫と本人がいってても。
リーアン一人で行かせるわけにもいかないし。
それとなく、隙をみて、一行から離れて。
リーアンと合流し、事を成し遂げようと考えていたシル。
ちなみに、ラグナはというと。
二人もいきなりいなくなっては怪しまれるから。
という理由で、先導し、調査員たちの案内をすることで。
話しはまとまっている。
「とりあえず、案内願いますかな?」
伝説の中にある、その時代よりも古い神殿。
そういわれて、国王は、遺跡調査の許可を出した。
それで、何か得られればよし。
悪くても、あのクレーターと化している海のそこにいったという事実は。
少なくとも、他の国にの対抗手段となりえる事柄。
まだ誰も。
王国などが先を切って。
その海の中に突如としてあるクレーターの箇所に近づけるものすらいない現状。
そんな場所にいったということは、少なくとも、他の国々などに対して。
力の誇示にはなりえる事実。
今回の調査隊の責任者でもある一人の将軍の言葉により。
船に、数名の人達を残して。
魔力により唱えた球体に包み込まれて。
海のそこに向かってゆく、ラグナを含む兵士達一行。
「・・・・さて、いくよ?どうする?ルナさんもいく?」
どういうわけか、まだ相手は子供だというのに。
赤ん坊のときから、さんづけで呼んでいるリーアン。
それは、呼び捨てにするなどとんでもないと。
その本能がいっているからに他ならないのであるが。
そんなリーアンの言葉に。
「・・・いかないと、何か、とてつもなく、怖いことが起こりそうだから・・いく・・・。」
顔色を真っ青にして答えているルナ。
「じゃあ、リィナさんは、留守番お願いしますね。僕の力じゃ・・せいぜい、シルを守るのが精一杯・・かな?」
何しろ、そこの中心の力は並大抵ではない。
今はまだ。
その中和剤ともいえる、魔王や竜神が覚醒すれば別なれど。
その行き場のない力の溜まり場ともなっている、ここの中心地帯。
「ルナ、くれぐれも無理はしないのよ?危ないと思ったら、すぐに瞬間移動して逃げなさい。」
真剣に諭していたりするリィナの台詞に。
「はぁぃ。リィナママ!」
元気に答えるルナであった。
ラグナたちは、海のそこにあるという神殿の遺跡に。
そしてまた。
リーアンとシル、ルナこの三人は。
そのさらに先。
このクレーターの中心地帯にむけて。
ゆっくりと出発を開始してゆくのであった。
ここ、この地は。
かつて、昔は。
眠れる竜の大陸という大陸があった場所。
そしてまた。
今や伝説といわれている、赤の竜神と赤瞳の魔王が、その戦いの決戦の地にしたといわれている。
あくまでそれは伝説と言われているのであるが。
その伝説が事実であることを知っている人間など。
まず、今の世の中残ってはいない。
この地は。
それゆえに、神族、魔族ともに禁断の地として。
かつての戦いより後。
どちらの種族も互いに足を踏み入れることなく、
神聖な箇所としてあがめられているその場所に。
今、リーアンたちは向かってゆくのであった・・・・
-第8話へv-
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まえがき:
・・・・何か、最近。
こればっかり打ち込んでいるよーな気がするなぁ・・・。
オリジナルとか・・どうなってるんだ!?自分!?(まてぃ!)
・・とゆーか。
・・・・本気で、フォーエバーとか、リレーとか、狭間とか、行方とか、
漫遊記とか・・(ありすぎです!)
打ち込まないと・・・とおもいつつも。
まったく違うこれを打ち込んでいる今日この現在・・(かなりまて!)
ま、何はともあれv
いくのですvv
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あとがきもどき:
薫:あれ?ちがったっ・・っけ?ま、いっか。
長い船旅などでよく昔はほとんどかかっていた船乗りの病気・・。
ま、ちがってもいーや(まてやこら!)
・・・・ちなみに。
・・・・・次回の召喚呪文・・・・なぜか。
思い返すたびに違っている・・・・。
自分の記憶がそーいっている・・・・(まて!)
・・なので。
その言葉を打ち込むか否か・・未だに悩んでます・・。
ついでにいえば。
リーアンが召喚するのは、もっちろん、当然のこと?(まてぃ!)
ふふふふふふv
しっかし・・・いいのかなぁ・・・(まてぃ!)
ガウリイの先祖・・こんなのにしても(こらこらこらこら!)
ではではvv
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