降魔への旅立ち


何か、他人のような気がしない。
この感覚は何なのか。
いや、家族とかいうのではなくて。
どこかで出会ったことのあるような感覚に、リーアンもルナも捉われる。
「ヘルちゃん、人気があるわねぇ。」

数ヶ月前。
とある町が、デーモンなどの襲撃にあい。
そこに偶然居合わせた、シル、ラグナ、リーアン。
この三人。
そのときに。
家族を失い、それでいて、親戚も一人もいないという。
この、本人の申請によれば、まだ十二だというこの少女。
その艶やかな漆黒の少しウェーブの入った長い髪を。
腰の辺りまで伸ばしていて。
その瞳の色も髪と同じく漆黒の色。
黙っていて、そこに立っているだけで。
まず目を見張る・・というまではいかなくても。
まず、かなり、一目を引くのはまず間違いない、整った顔立ちの、美少女、ヘル。
ヘル=ネクロミスト。


覚えがいいのか、それとも天性的に素質をもっていたがためか。
少しの精霊魔法などの理とその仕組みを教えただけで。
確実に、精霊術に属する、様々な呪文を身に着けていっている、このシル。
人間の心理からして。
まず、怪我などの手当てに。
かわいい子に手当てをしてもらいたい。
そういうのがあるのは、仕方のないこと。
ここ。
オーディル・シティ。
殺伐とした世の中で。
かなり、その魔術の力を優先的に研究などを率先して行い。
その力を軍備に取り入れている、とある魔道軍備国家。
「はいはい、うごかないでくださいね♡」
「くっ!」
無造作に、はだけられた背中。
その背にあるのは、大きな傷跡。
先刻。
この付近を襲った、デーモンを含む、盗賊の忘れ物。
いう人がいれば、盗賊達のプレゼント。
とも、いえるのであるが。
ともかく。
少しばかり、この近く。
ここ、オーディル城にて。
そんな傷ついた兵士達の手当てを、シルとヘルはこなしているのである。
その生命の力を高めて、傷を治すとされている、回復(リカバディ)。
その術は。
その傷口から、入り込んだ菌なども増幅させてしまうがゆえに。
かといって。
数百名はいるであろう、兵士達に、高度とされている、復活(リザレクション)や、それに連なる、高位の回復魔法。
そんなものを唱え続けていれば。
それこそ、まず間違いなく。
魔力を使い果たして、髪の色が変わるか。
もしくは。
下手したら、禁断症状がでて、魔力の制御が利かなくなるか。
まあ、どっちに転んでもいいようにはならない。
そのために。
ある程度のところからは、魔法を使っているが。
それ以外では。
どうやって、調合したのか。
シルですら、知らなかった薬の調合法。

ヘル曰く。
「とある人から聞いた。」
といって、ヘルが調合したその薬は。
市販されているものとは違い。
かなりの効果をもたらし。
それを塗ることによって。
数日中、もしくは、数時間後にはその傷口がふさがる。
そういった即効性をもっている薬剤。

そんな薬を今ヘルは、兵士の、引き裂かれた背中に塗りこんでいっているのである。
その、赤く肉が突き出たそんな怪我を。
ただただ、にこにこと眺めつつ。
まるで、その痛みに絶えるその様子を楽しむがごとくに。
そんな一番染みるであろう、傷の深い場所を中心にしっかりと、塗り薬でもある粉薬を塗りこんでゆく。
「く・・・ああああ!!!!」
あまりの、激痛に兵士が苦痛の声を上げるが。
「あらあら、この程度で、痛がってたら、駄目ですよ?♡」
にこにこと。
どこにそんな力があるものか。
暴れそうになる、兵士の体を。
ただ、腕一本で軽く持っているだけなのに。
というか、肩に手を置いているだけなのに。
まったく、動けないヘルに手当てを受けている兵士。
ふふ。
この、負の感情が・・たまりませんわ♡
部屋に満ちる、負の感情。
それこそが、彼女達の、力の源というか、最も好むもの。
生きているものの、その純粋なる感情は。
彼らに最も力を与える糧に他ならない。
「あら、きもちいいですか?なら、もっと塗っておきましょうね♡念のために♡」
にっこりとそういいつつ。
かなりの、激痛を伴うそれを。
笑みを浮べつつ、患部にと塗りつけているヘル。
「あ゛・・・あ゛・・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」

医務室に。
兵士達の、こらえ性のない、悲鳴が。
しばらく響き渡ってゆくのであった。



「・・・・・・・・召喚術?」
その言葉に、眉をひそめるラグナ。
「はい。今回の出来事を終らせるために。
   より、何かの力を借りて。この混乱と化した世の中をすくうために。より、力ある存在が必要なのです。」
そういいつつ。

ドン!

ラグナ達の目の前に、分厚い本を、置いているのは。
この国の、魔道研究部署に属する、とある研究員の一人。
そこの、責任者を負かされている、スクルド。
ここ、オーディル王国公認、魔道研究所所長。
スクルド=トリュッツ。


「・・・これ、かなり昔の・・・神魔戦争より、前の時代の文献じゃぁ・・。」
目を少し輝かせてみているリーアン。
その、今では見られない、その紙質は。
見たことはないが、その血の記憶が何となく知っている。
かつて、かなり人間の世界において、文明が発達しかけたときに普及していた、
この地にて、鉱石の中では、一番固いとされている金剛石。
それを砕き、本にしている代物。
どういう技術をッもっていたのかまではわからないが。
完全にその金剛石・・一般には、ダイヤモンドと呼ばれているそれを。
ほぐし、糸や、普通の紙などに利用していたかつての文明。
その文明は。
魔王と竜神の滅びというか、封印というか。
ともかく、最終決戦と共に。
滅び去った文明と共に、そんな品物のことを知っている人間など。
殆ど、そのかつてこの惑星上で、栄えていた文明の忘れ形見。
今はもう、その文明のことを知っている人間や存在など。
殆ど残っていないのが現状なのであるが。
そんな、リーアンの台詞に。
にっこりと、微笑みつつ。
「ええ。実は、これの翻訳が一部できまして。何かを召喚することができるらしいんですよ。」
ただ。
それを行うには、魔力が足りなく。
また知識と経験がない。
そのために。
今回の、研究の手伝いと。
そして、この国の警備。
そんな依頼を彼ら、シル達メンバーに出している、ここ、オーディル王国。
「ねね!読んでもいい!?」
目をきらきらさせて言っているリーアン。
リーアンは、基本的に。
こういうものを読むのがすきなのである。
それは。
まだ自分でも計り知れない、その黄竜としての力を知ることが出来るかも。
という、淡い期待もあってのことなのだが。
「ええどうぞ。」
今回、依頼をしたのは他でもない。
このリーアン。
古の古代文字が読めるのである。
そのため、研究の力となると踏んだ上の存在が、彼らを正式に雇ったのである。
とりあえず、とある研究が終る、その日までという、期限を定めて。

主に、シルと、ヘルは怪我人などの対応に追われ。
また、リィナとルナはといえば。
この戦いにおいて、孤児となっている子供達の面倒というか。
王宮の中に設けられている孤児院にて。
ルナもまだ幼子でもあるので。
一緒にそんな娘をみつつ、世話をしていたりするリィナ。

そして。
今のように。
ラグナと、リーアンは、研究に追われているのである。
グナは、その、呪文のオリジナルの多さを認められ。
彼が使うのは。
強大な力を持つとされている、赤瞳の魔王の力。
それに続く、腹心とよばれている存在の力をも。
そのオリジナルティーに飛んだその思考にて生み出していたりする。
これを利用しないてはない。
そう、ここ、この王国の一部の存在達はそう思って。
シル、ラグナ、ヘル、リーアン、リィナ、ルナ。
この六人を。
国賓としてもてなしているオーディル王国なのである。



「・・・何か、最近、異様に、魔による、攻撃が・・盛んだな・・。」
それもそのはず。
まず、今のこのご時世。
どうしてそんな簡単に普及してしまったのか否か。
下級魔族である、レッサーデーモンや、ブラスデーモン。
そのあたりにいる、小動物を依り代として。
物質化する、下級魔族を呼び出す方法を知っている魔道士。
もしくは、ごろつき、もしくは、ただの、普通の家族ですら。
誰が教えたのか、普及してしまっていたりする今の現状。

神族も人が召喚している限り。
手出しは出来ない。
それ以上の被害が広がるのが分かっているから。

今の状況は。
かなり、魔に属する、魔族達にとっては。
世界のどこにいっても、おいしい食事が取れるという。
何ともうれしい世界にと成り果てている。

小さく、つぶやく、兵士や、町の人々の声は。
ただただ、誰も答えているものなど当然いるはずもなく。
むなしく風にと散ってゆく。



何しろ、人々は知らない。
国やおきな町などといった、大きなところで。
裏で、公式に。
そういったことが認められ。
その手の能力者を集めているなどとは。
そしてまた。
それを進言する、臣下や、町の実力者たちといった、政治的にも、楔的な存在を果たす人々が。
こぞって、魔の支配を受けて、操り人形と化しているか。
または。
完全にその姿、形が乗っ取られている。
という事実を。


冥王の立てた作戦。
それは。
まずは、王位継承者や、少しばかり、大きな財産などをもっている、人間達の間に不穏の種を撒くこと。
互いの後継者などに、不安の材料を与えれば。
面白いまでに、人々は。
あっさりと、彼の言葉を信じた。
まあ、目の前でたとえば食事に、毒が微量に盛られている。
そういって、金魚などに、出された飲み物を鉢の中にいれると。
その金魚が、ぷかぷかと浮かんだりすれば。
疑心暗鬼も高まるというもの。
そしてまた。
道を説く人間は邪魔なので。
偶然や事故を装って、始末し。
彼・・・死を操るものとしての称号をもっている彼にとっては。
とてもそれは簡単すぎること。
たとえば。
その人物が行く先に。
ちょっと、盗賊や、夜盗などを差し向けたり。
暗殺者を雇えばいいこと。
今や、そのために。
野心に燃える人々が。
権力者の最高責任者と成り果てている、今の現状。
たとえば。
ある国などでは。
冥王の指示のもと。
直接に、自らが、国王などに成り代わり政治を行っていたりする。
という、魔王の腹心たちや、そしてまた。
彼らの部下達が治めている国も少なくない。
それでも。
竜王達に気付かれていないのは。
一重に、冥王フィブリゾが。
気付かれないように、そんな彼らに、とある術を施しているからに過ぎない。
何しろ。
たとえ、その精神が、魔だとしても。
その前に、カモフラージュとして、人の魂を置いておけば。
まず、視た限り、契約を結んでいる。
としか映らない。
たとえ、精神世界面から、視られたとしても。
基本的に、人間がすることには、不干渉。
その立場を貫いている神族を今実質的に治めている竜王達四人。
そんな、冥王の作戦通りに・・。

今。
この惑星の、大地では。
殺伐とした状勢と。
そしてまた。
どこにいっても、戦いと混乱に満ち溢れた。
混沌とした世界にと成り果てているのが今の現状。

そんな中で。
より強い力を求めようとする、人間の心の心情は。
面白いほど、冥王の手の中で転がるように。
どんどんと、彼の思いのままに、行動している人間達なのである。




ぱらり。
見られているのが以上に心苦しいが。
研究するにしても。
そしてまた。
本を読むにしても、常に見張りの兵士などが付きまとっている。
別に、リーアンの実力をもってすれば。
どうってこともないのであるが。
そこまでして、逃げたりはしない。
「へえ、異世界の魔王・・ねぇ?」
その文章を読んだとき。
彼の血に含まれるその知識が。
彼は、その血筋からか。
生まれたときから、その血に含まれる情報などは。
リーアンの意思とは関係なく受け継いでいる。
黄竜族としての記憶を。
「・・・・・もし、『異界の何かを。武器として使用することができないか』・・・か。」
確かに。
それは面白そうでもあり。
逆にいえば。
その力を使えば。
この殺伐とした世の中に、終止符を打つことすら可能。
・・・・正しい心の持ち主が、それを使えば・・だが。
「・・・・やってみるだけのことは・・・あるよね?」
そういいつつ、空を仰ぐ。
異世界との通路。
それは、あってなきがごとくのもの。
それでも。
一番、その通路にふさわしい箇所を。
リーアンはその魂のうちにある情報で。
どこで召喚すれば問題ないか。
神にも、魔にも気付かれないか。
それをよく知っている。
「・・・とりあえず、名目上は・・調査という形で。船団・・・出してもらえれば・・後はこっちでどうにかするんだけどな?」
あそこには、彼が元々いた。
卵のあった神殿もある。
それを進言するだけで。
まず、その調査団は、認められるであろう。
だからといって。
たとえ、召喚が成功したとしても。
その力をみすみす、こんな王国などに手渡すことなどしたくはない。
「・・・さて・・・どうする?」
やってみたい好奇心もさることながら。
それでも、
その力を使えば。
この混乱がたとえ、一握りの間でも収まることができるなのらば・・。
リーアンは、そう思いをはぜつつ。
その場にしばし、頬つえをつき考え込んでゆくのであった。


「うーん。まだまだ・・・・だね。」
まだ足りない。
竜神がかけた、物質的な封印を解くその楔は。
かつて、この地において。
赤の竜神は、魔王を七つに分断し。
そして、本来ならば、自力で物質化できるそんな彼ら、精神生命体の王である、魔王を。
器を通してでしか、出来ないようにし。
しかも。
その器・・つまり、光と闇の狭間に位置している生き物。
つまりは人間の心のうちに。
そんな魔王を封印した。
人の心は、強くて、逆に弱くもろいもの。
だが。
時と場合により、信じられない力を発する。
そんな人の心を信じての、スィーフィードの成した業。
人の輪廻転生を視ることなど。
フィブリゾにとっては、とても簡単なこと。
その魂の中で。
より強い、光を放つ存在に目安をつけて。
自分達のいる闇にと引き込もうとする、そんな些細ではあるが。
重要でもある今回の作戦。
今、見つけたのは、まだ四つ。
後、三つで完全となる。
七つ完全に見つければ。
そんな人間七人を集めて。
何らかの手段を用いれば。
彼らの父親であり、王でもある、赤瞳の魔王の完全復活も夢ではない。
そして。
ふと。
顔を曇らせて。
「・・・・・本当に早くしないと・・・ルビーアイさま・・弱体化してしまう・・よね(汗)」
なかなか、復活しない、彼を。
よく、精神世界から、とある御方から呼び出しを受けて。
その力すら、ここの世界では弱くなっていることを。
彼だからこそ気付くことができる。
「さて、もう一息・・・かな?ふふ。」
とりあえず。
今は。
完全に確証がつかめている、この四人の人間の、その封印解除が何よりの先決だよね。
そう気分を切り替えて。
「くすくすくすくす。」
くすくすと。
さて・・どういうように仕掛けようかな?
心底、楽しそうに作戦を練る冥王の姿が。
そこ。
冥神殿にて。
見受けられてゆくのであった。


時と、運命は。
ゆるやかに、未来に向かって歩み始めていることを。

まだ誰も。
この時点で気付いては・・いない。


                                     -第7話へv-


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まえがき:

何か、これを打ち込んでいる最中。
六万四千に向かいそうな今日この頃・・とゆーかもうなってるんじゃ(汗)(確認昨夜が858・・・・)
ふふ。とりあえず。隠しにしているこの時点。
2003年4月12・13日のこの時点。
とーとー、5話を超えたので。リンク方法を変えましたv(まて!)
え?どーして、二日かいてるかって?
打ち込み始めたのが、只今、23時20分!(爆!)
・・・・つまりは、そーいうことです(笑)


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あとがきもどき:
薫:ふふふ。とーとー、この話も7話ですv
  只今、2003年の4月13日。
  え?行方の続きは・・って?
  ・・・・・・フォーエバー・・いい加減にウチコマナイト。
  『書き殴り』さんのツリー・・落ちました(汗)←当然です!(滝汗)
  ・・・何か気分的に乗らない今日この頃・・。
  って・・・・リレーも・・・なかなか打ち込む気力がわかないよぉ(涙)
  ・・・何か、何もしたくないときって・・・人間、ありません?(まてぃ!)
  昨日も、ついつい、小説(ネット上と、本当の本)を読みふけったり、したりしてたし・・・。
  あと、なぜか
  最近、チャレンジ・・つまりは、裏小説を考えるのが。
  面白いというか、ガウリイの暴走を考えるのが。
  面白くなりだしている、危ない心情の今日この頃・・(笑)
  ま、何はともあれv
  只今、朝の九時半ですv
  ・・・さって。・・・・・十時半まで・・・どれが一本・・・打ち込めるのだろうか(汗)
んではではvv


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