見果てぬ夢・番外編 ~フィブリゾ偏~ 第2話~



「ねぇ。もし、男の子だったら、こんなかわいい子供がいいわね。貴方♡」
「わぁぃ。キュリアお姉ちゃんの膝枕ってきもちいい♡」
「・・・だな♡」

結局、あれからフィブリゾは自由に王宮への出入りを認められていた。
しかも、国王と王妃のお気に入りと課している。
フィブリゾを取り合うのが、もはや、日課ともいえる平和な日常。
アイトリア公国・キュリア王妃の膝で、ねころんでいるフィブリゾ。
なぜか王妃に耳掻きしてもらってたりするが。
彼らは知らない。
フィブリゾが魔王の腹心の一人である、冥王だということを。

「キュリア様、本日の予定が詰まっています。」
「あら、もうそんな時間かしら?」
深深と敬礼して報告しているウラヌス。
「今日のお祝いは誰がくるのですか?」
「きっと、これだけの人々に祝福されて、幸せな子供が産まれるな。キュリアよ。」
「ま・・・あなたったら///」
アストリア王妃の妊娠をしって、各国から送られてくるお祝いの数々。
中には、わざわざ祝辞を述べにくる国もあるわけで・・・・。
「本日は・・・・私達の神殿の主が直々にお祝いの言葉を。と見えられているのですわvv」
ウラヌスの横にいたレティシアが続きをいう。
(・・・ダルフィンが?)
フィブリゾはその言葉に少し顔を一瞬だけしかめるが、
すぐに。
「じゃあ、僕も一緒にいってもいい?キュリアお姉ちゃん♡」
にっこりと笑ってキュリアたちにむかっていうフィブリゾ。
「ええ。かまいませんわ。―そういえば、ヘルちゃんのお姉さんでしたわね。」
フィブリゾは、彼らに自分の名前をヘルと名乗っているのだ。
「じゃあ、僕がお姉ちゃんを謁見の間にまでエスコートしてあげる♡」
「はい。お願いしますわ♡小さな騎士様♡」
十代の子供の姿をしているフィブリゾの手をとり、謁見の間へとすすむキュリア。
にこにこと笑っているものの、この瞬間にも、フィブリゾは、彼女の中にいる彼らが魔王に語りかけていた。
―魔力が弱まっているということは、すなわち、封印も少なからず弱まっているということ。
この機会に、キュリアの中に封印されている魔王を目覚めさせるべく。

「お初にお目にかかりますわ。私、ヘルの姉妹で、ダルフィンと申します♡以後、お見知りおきを♡」
謁見の場にいたのは、蒼い髪を長く伸ばししっかりとしたデザインのドレスを、
まとっている女性。
「・・・・ダル・・フィン?まあ、伝説の魔族と同じ名前なのですか?」
「ええ。私たちの親がそう名づけましたので。魔族の強さというか、生命力にあやかるためとからしいですわ♡」
嘘ではない。
自分達のことを言っているのだから。
彼女の名前は、海王(ディプシー)ダルフィン。
魔海を結界の拠点とし、管理している腹心の部下の一人である。
「まあ、伝説が本当なら、魔族の名前はインパクトあるからな。
  ・・・・あれが伝説でないのは、わが一族は十分に承知しているが・・・。」
かつて。
降魔戦争において、人間の精鋭部隊に所属していたこの国。
幸か不幸か、魔王が目覚めたときには、第一王女の誕生というのがあり、一部の者しか参加してなかった国。
写本に書かれている技術を応用して、魔法道具を軍備に取り入れていたこの国。
その脅威の力に翻弄されて、人の手により、滅びる寸前まで、国が衰退したこの国。
今は、沿岸諸国連合に所属して、平和に時が流れている。
技術の応用と利用。
それに脅威を感じて、攻め込まれた国。
だから、王族の中でも、かなり上の存在にしか、その写本の技術応用のノウハウは、伝えられていない。
―800年前から。
230年ほど前に、その技術を応用して、とある国にある搭を封印した一族の一人もいたりしたが。
そのヘキサグラムの効力に気づいたために。
そして、それが原因で、命を落としたというのは、彼らの国では、事実が伝わっていた。
その彼の娘であるアリシアが書状にて、詳細を伝えていたがゆえに。
長い年月の間に、それは忘れ去られているが。
「まあ、でも、わざわざ遠いところからようこそですわ。訪問、感謝いたします♡」
「いえいえ。わたくしこそ、キュリア王妃にお目にかかれて光栄ですわv
  これから長いお付き合いになるでしょうから♡」
上品な笑を浮かべるダルフィン。
「しかし・・実の姉弟といっても・・・・ずいぶんと年齢が離れてるのですわね。」
「・・・・ちょっといえない事情があるの・・・・。」
キュリアの台詞に、しゅんとなるフィブリゾ。
当然、演技なのだが。
もののみごとにだまされるキュリアとアストリア国王。
「まあ、誰にでも触れて欲しくない事情はありますわ。かわいそうな子!!!」
がしぃぃ!!!
フィブリゾを抱きしめるキュリアとアストリア国王。
「まあ、家庭の事情はとりあえず、置いといてですわね。
  これからも、ウラヌスとレティシアをお願いいたしますわね♡
  出産の際には、ぜひ、わたくしもこちらにまいりますので♡」
にこにこというダルフィンの台詞に。
「そうか。何から何まで、かたじけないな。ダルフィン殿。」
国王が礼をいう。
(・・・で??ダルフィン、何の用?)
(あら♪フィブの子供っぷりの見学ですわvv)
(あ・・あのねぇ・・・・。それより、結界の方と、この作戦が悟れらないようにするのが、先決だろ!?)
精神世界でやりとりしているフィブリゾとダルフィン。
(あら♪でも、あと、一ヶ月もありませんし♡フィブの子供姿はぜひ、見ておかなくては♡)
(・・・・ま、どうでもいいけど・・・・・。出産のときが、勝負だよ♪)
(分かっておりますわ♪赤瞳の魔王様の覚醒はあと少しですわね♪)
(そういうこと♪)
にこにことしながら、精神世界において、語り合っているフィブリゾとダルフィン。
今、キュリア王妃は、すでに、臨月へと入っている。
フィブリゾたちが仕掛けた干渉により、
キュリアの中の魔は、比較的に、きっかけさえあれば、目覚めるまでに覚醒しかけているのだ。


数日後。
「う・・・!!!!」
「大変だ!!キュリア様の陣痛が始まったぞ!!!」
ばたばたばた!!!!
にわかにさわがしくなる王宮。
ようやく・・・・・。
フィブリゾは、ウラヌスとレティシアに目配せする。
「僕、お姉ちゃんについてる。」
「国王、私たちが、王妃に立会いますので。ご心配なく。」
レティシアとウラヌスの台詞に。
「うむ。そなたたちなら安心だ。」
国王は、キュリア出産の立会人に、こともあろうに、ウラヌスとレティシア、そして、フィブリゾに頼んでいる。
―それが、彼らのたくらみだとは知らずに。
「邪魔だよ。」
フィブリゾがそう言い放っただけで、その場にいた人間達は、そのまま、失神する。
「さってと♡キュリア姉ちゃん。頑張ってね♪」
にっこりと笑いかけるフィブリゾ。
「はぁはぁはぁ・・・・。」
陣痛に苦しむキュリア。
・・そろそろいいね♡
極限にまで達したキュリアの精神。
子供が産まれる一瞬の魔力の無効化。
それに、フィブリゾはかけていた。
「・・・・・・赤瞳の魔王(ルビーアイ)様vvお目覚めくださいな♡」
ふわ。
フィブリゾの手に、金の小さな球が出現する。
それは、キュリアの魂の球。
死を操るもの。
それが、冥王(ヘルマスター)フィブリゾである。
ぱっきぃぃんん・・・・・。
静かに、それを壊すフィブリゾ。
「あ゛・・あ゛あ゛~!!!!」
キュリアが叫ぶ。
その瞬間。
「・・・・おぎゃ、おぎゃぁぁ~!!!!!!!」
キュリアの体内から赤ん坊が生まれ出る。
「ちょうどいい♪この赤ちゃん、魔王様への生贄だねvv」
『・・・・フィブリゾか・・・・。久しいな・・・・。』
キュリアだったものから、声がもれる。
「お久しぶりです。赤瞳の魔王(ルビーアイ)様♪」
にっこりと本当の子供のようにわらうフィブリゾ。
かなりうれしいらしい。
ウラヌスとレティシアは、床にひざまづいている。
「じゃあ、魔王様の食事に。赤ん坊の悲鳴でも♪」
いって、フィブリゾが今、生まれた赤ん坊へと手をかけて―。
『させない!!!!!』
『何!?』
魔王の口から、二つの声が飛び出ていた。
「何!?ば・・馬鹿な!!」
フィブリゾが目を見開く。
『甘く見ないでほしいですわ。伊達に、私は、レテディウス王国の血を引いているわけじゃありませんわよ!』
『ば・・馬鹿な!?人間ふぜいが!!』
キュリアの口から交互に発せられる言葉。
フィブリゾたちは、事態が把握できない。
「ば・・馬鹿な!!たしかに、キュリアお姉ちゃんの魂の球は砕いたはず!!」
かなり驚いているフィブリゾ。
まあ、当然であろう。
魂を砕いたはずなのに、ここに、こうして、しかも、自我をもったままなのだから。
『・・・・調べがたりませんでしたわね!!こういう言葉があるのですわ!!』
  ―世界の戒め解放せし 母なる金よ 四界の狭間にて 我に今ひとたびの 
    癒しの安らぎを与えたもう 我のうちにて 束縛をあたえたもう―
『ぐ・・そ・・そのカオス・ワーズは!?』
「ま・・まさか!!!!!!??お母様の!?」
絶句する魔族達。
やがて。
『うぐわぁぁぁぁ・・・・・・・!!!』
「ふぅ・・・。どうにか、押さえましたわ。・・・・・まさか、ヘルちゃん・・・・・。・・・・彼方が、冥王・・とは・・・ね。」
その声は、どうみてもキュリアのもの。
「な・・なぜ!?」
「簡単ですわ。レテディウス王国は、不死の研究をしていて、たまたま、魔王達の真の王の存在なるものを知ったのですわ。
  それに・・・・。魔族を自らに合成するのに、役立てるのに、このカオス・ワーズを考え出していましたの。
  ま・・まさか、私の中に魔王がいるとは、思いませんでしたけどね。」
産後まもないというのに、起き上がるキュリア。

レテディウス王国。
不死の研究の果てに滅んだ国。
事実は、・・・・その呪文のカオス・ワーズの応用で滅んだのだが。
力がそのものであるあの御方にとって、あの御方の一部である力を利用しようとした時点で。
あの王国の末路は決定したのだろう。
闇に飲み込まれ。
一瞬で滅び去った王国。

不完全ずきるものゆえに、難をまぬがれた一族は。
今、このアストリア王国という形に姿をかえて、血を残している。
「・・・・でも、私では、魔王を滅ぼすことは・・できませんわ。自我で封じるのが精一杯・・・・。」
いって、今生まれた赤ん坊を抱きしめる。
「くっ!!まさか、そんな言葉を知っているとはね。計算が甘かったよ。キュリアお姉ちゃん。
  でも・・・・。もし、自害でもしようとしたら・・・・わかってるよね♡」
いうフィブリゾの手には、小さな金色の球。
「や・・やめて!!!この子には、手をださないで!!!!」
「じゃあ、魔王様を開放してよね(はあと)」
「そ・・・それは!!??」
「・・・・いやなの??♡」
フィブリゾの手が球を握る。
びし。
ヒビが入る音がする。
「やめて!!!!j魔王の自我とだけは、あなた方と通達できるようにするから!!!封印を緩めるから!!!!」
「あっそう♡」
その言葉とどうじに、フィブリゾの中にある球は、掻き消える。
まあ、人間の寿命なんて短いもの。
意思の力が弱まったときに、再び、開放を促せばいい。
フィブリゾはそう判断し。
「とりあえず、自殺なんてことは、考えないでよね♡キュリアお姉ちゃん♡その赤ちゃんの世話人は―彼らなんだから♪」
「くぅ!!!」
結局、キュリアは、今生まれた愛する娘を人質にとられたようなもの。
何しろ、キュリアの側で、赤ん坊の世話をすべく使えていた彼女達も、魔族であるのだ。
下手な行動は…即、娘の命にかかわる。

―――結局、キュリアは、冥王のいわれるままに、行動するよりなすすべがなくなっていた。


「この子の名前は・・・そうだな。シルメリアにしよう。キュリアが好きなヴァルキュリアの花の伝説の一人の名前に。」

何も知らない国王がつけた名前―。
シルメリア。


その後の、セイルーン、第一王位継承者。
フィリオネル=エル=ディ=セイルーンの、正妃となる王女の・・誕生である。


                                      -続くー


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  あとがき:
     かお:いいのか!?国王!?王妃!?魔族にそんなに心を許して!!!!
         う~・・・・。突っ込みたい・・・(まてや!!!)
         とりあえず、このとき、すでに、カタート侵攻(ディルス王国)は終わっています。
         ディルスのカタート侵攻から三年後の出来事です。
         ではでは♪

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