見果てぬ夢・第六話         ~アストリア~




彼女を始めて見たとき。

私は、一瞬体に電撃が走った。




「ふむ・・。間違いがないようだな。
  では、アヴァロン=ドレイク!!本日より王宮中での兵士達や城下町での子供達などに対しての普及をみとめる!!」
国王―アストリア公王がいいはなつ。
私が用意した偽造の紹介状に目を通して。
偽造といっても、はっきりいって公式ときっぱりとなんら依存はないそのできばえ。
実は、ディルス王宮の紹介状を持って、公王にこの国での滞在を申し出たのである。
私は。
昔から、祖父の手伝いやルォン兄さんの代理で公式文書を作成していた、私にとっては、偽造するなどたやすいこと。
本当に正式公布されたものと、一寸の違いもないのだから。
文字自体は、ルォン兄さんのものなのだが、それもさしては、問題視はしていないようである。
まあ、素人がみたただけでは、わかりづらいからな・・・・・。
各歴代の王の独特のサインなんかは・・・・・。
はっきりいって王宮中でも、理解できていたのは、ほんの一部であったのだから。
とにかく。私はアストリアの潜入に成功した。
だか・・。
王宮に入って気がついたのだが・・・。
この王宮にとある気配がするのは・・・・・・・。
「王、何もこんな得たいの知れない人間を城に招き入れるなどとは、私は反対ですがね。」
無粋な表情で私を見てくる将軍・・。
そ~いう、お前はどうしてこんな場所にいる!?
私は思わず声を出しそうになる。
「まあ、そういうな。サーディアン大臣よ。」
国王がそれを制する。
見た目は、三十いくらか。色白で丹精な顔立ちのその男。
やつは、私がわからないとおもっているのだろうが、わたしはやつの正体を見切っていた・・。
―魔族・・・・・。
どうやら、この国は、魔族の手の中で踊らされているようである。
・・・これは、慎重にことを運ばねば・・・・。
下手すると魔族のたくらみのまま、セイルーンとアストリアの戦争になりかねない。
何をこいつ達がもくろんでいるのかはしらないが。
とにかく。わたしの役目は、戦争を回避することのみ。
エルドラン国王は、一応、全貌がわかるまでは、仕掛けることはしないだろう。
殿下は、戦争は好まない。とおっしゃられていたことだし・・。
殿下のためにも、絶対に戦争などはおこしてはならないのである。
殿下は、まだ、アーリィ様の件で悲しまれているのだから。
「戦いは、好まない・・。」
殿下のぽつりともらした台詞がわたしの中を駆け巡る。
アーリィ様が死亡されたあのとき。
殿下は、一晩中、ずっとアーリィ様に付き添っていた。
だから、わたしは自らが志願して、このいざこざの原因をつきとめようとしたのである。
私のかつてのような思いは、誰にもしてほしくは・・・ないから・・・・。
「お父様、そのような得体の知れないものなどのもってきている書状など、あてにできるのですか?
  私にそれを見せてくださいませ。」
国王の後ろからすいっと出てくる女性。
私は、彼女を見たとき、体中に電撃がはしったような気がした。
歳のころは、十三歳前後であろう。
流れるような漆黒の長い黒髪を後ろでみつあみにして束ねて。
そして、暁の太陽のような燃えるような赤い瞳をつぶらな瞳の中にたたずまえて。
そして、何より私が一番驚いたのは・・・・。

「・・・・・・・・・・ダイ・・・・ア・・・・ナ・・・・・。」

私は、自分でも無意識のうちに声に出していた。
彼女は、声も、容姿もなにもかもが、かつての、そして今も私が心の中で愛し続けているダイアナと瓜二つだったのである。
彼女の格好を見ていると、ダイアナが面白がって姫様の格好をしたときのことが、昨日のように頭の中を駆け巡ってゆく。
私が、完全に驚いているのを知ってしらずか。
いや・・・。
知る由ももないであろう。
彼女は、無造作に国王の手の中から私が差し出していた書状を取り、そして、目を通し始める。
やがて。
「・・・・。どうやら、間違いなく、本物のようですね・・・・。このサインは、ディルスの前国王のものですわ。お父様。」
そして、書状を側の側近に手渡している。
側近の手から私に戻ってくる書状。
「そういえば、シルメリアは、書体の判別が得意なのだったな。」
国王が感心したようにその女性を見つめていう。
「そうですわ。それの書体は、まぎれもなく、お父様とお母様がご結婚されたおりに、
  ディルス国王からお祝いの書状として贈られたものと同一。
  したがって、そのものの持っている書状も、信憑性がありますわ。」
きっぱしと言い切る。
そ~いえば・・・・。
以前、そんな内容の書状もルォン兄さんの代理で書いたよ~な記憶が・・・。
あのとき、ルォン兄さんは、
王妃と一緒に(ルォン兄さんの妻)デートにいくからとかいって、自分に仕事を全ておしつけたんだった・・・。
今はもう、なつかしい思い出ではあるが。
ルォン兄さん・・。
国王になっても、その前も、よく城を抜け出しては、私たちにいろいろと代理を頼んできてたからなぁ・・・・・。
「その方。一応、この書状が完全なるまがい物ではないことは分かりました。
   私の国での、活動において、騒ぎなどはおこさないように。」
凛とした声で私に言ってくる。
「シルメリア王女のいわれるとおりですな。あまり騒ぎなどは起こさないでくだされよ。」
・・・・。
魔族のお前に言われたくはない・・・・。
かろうじて、私は、その言葉を飲み込む。

「シルメリア・・・王女・・・か。」
ダイアナと瓜二つの女性。
彼女の命は、あのときに終わってしまった。
が。
あの少女には・・・。
・・・長生きしてもらいたい。
私は、任務に関係なく、ただ、一人の人間として、・・・・・・彼女・・・シルメリアのことを深く心に刻んだ。



「殿下ぁぁ!!?なぜ、こんな場所にぃぃ!!?」
思わず私は、声の限りに叫んでしまった。
「声がおおきいぞ!!アヴァロン!!」
殿下が私の口を押さえていう。
ここは、私が家を借りて、塾を広いている場所である。
一応、塾と住みかをかねている。
そんな私の仮家に、いきなり殿下がやってきたのである。
「いや・・・。アーリィのス好きだった、花を摘みに・・・な。」
そういう殿下の腰には、とある鉢がくくりつけられている。
「・・・。・・・・の花・・ですか。」
私は、ふとアーリィ様の言葉を思い出す。
その花は、ダイアナも好きだった花なのだ。
『ねぇ。ルー。この花、私たちのようじゃない?
  まるで色が違うけど、元は一つなのよ。私もあなたも、他人同士で、家族になったのだからね。』
『ねえ!!ガイ!!私、この花のように、生きているのよ・・。ふふ♪』
アーリィ様とダイアナが言った言葉。
この花は、とある特定の条件の場所にしか咲かず、だから、貴重とさえ言われている。
花はとても小さな花弁があつまっている小さなものなのだが。
それが三つの束に分かれていて、
一つの茎に三つの色の花が分かれて咲いているのである。
―『金。銀。黒。』の三色の色の花弁として・・・・。
伝説では、とある少女の涙が花となって、
今日までさきつづけているという説が有力視されていたりする。
・・・。
真実のほどは、自分にはわからない。
ただ、この花が誕生したのは、書物にものっていないころらしい。
私が幼い時に、お爺様と一緒にあったことのある、とある黄金竜は、この花は、神魔戦争のおりに、誕生したとかいっていたが。
真実はさだかではない。
その竜もあまり詳しいことは判らなかったようだから。
そんなことよりも。
殿下はとてもお優しい。
その外見で、殿下を始めてみた人々はかなり驚くようだが。
・・・何しろ、殿下の容姿というのが、まるで、ドワーフのごとき風貌なのである。
・・・・・。
このまま成長したら、どうなるのだろう?
そんな疑問が私にさえ、浮かんでくるほどである。
私が殿下の付き人となって、私が目くらましの役目をしてか。
このごろは殿下の容姿について、とやかくいう人間はいなくなっているが。
反対に私に対しての影口が増えているのは、いたしかたがないことであろうが。
「わざわざ、花をつみに、ここ、アストリアまでやってきたのですか?」
私が殿下に聞き返すと、殿下は、ただ笑って。
「アーリィがここで咲いている花が好きだ。と以前にいったのでな・・・。供えてやれば、アーリィも喜ぶであろう?」
殿下がさみしそうにいう。
「アーリィ様も喜びますよ・・。絶対に・・。ところで?そこの後ろで伸びている数名の人間は?」
私が殿下の後ろで伸びている人間達について殿下に聞くと。
「いや・・。なぜか、問答無用で、私につっかかってきたので・・・・。
  平和とは何かなどを言い聞かそうとしたら、そうなったのだけど・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・殿下・・・・・・。
それは、どうみても。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・暗殺者達である。
「ま・・まあ。とりあえず、こいつらは、どっかに放り出しておきましょう・・・(汗)」
こんな道に倒れていてもらっていても困るので。
とりあえず、
「ボムディウィン!!!!!」
私は、呪文を使って、そいつらをどこかに吹き飛ばす。

「粗茶ですが。どうぞ。殿下。」
私がとりあえず、殿下を家の中に招きいれ、お茶を進めていると。
「お~ほっほっほっ!!
  ここが、あの人間とはおもえない容姿が塾を開いているという場所ですのね!!
  なぜか、子供達に人気があるというので、見に来ましたわ!!」
なぜか異様に聞き覚えのあるなつかしいような声が玄関の方からしてくる。
この・・声・・は?!
私が玄関の方にいくと。
案の定。
そこには、あのそっくりさん・・・・・。
シルメリア王女がなんとお忍びでやってきていた。
「あ・・あ・・あの?」
私が何か聞くのより早く。
ずかずかと家の中へと入ってゆくシルメリア王女。
「あら?人間もどきのお知り合いには、ドワーフもどきもいましての?」
それが、シルメリア王女の殿下をみての第一声であった。
「まあ。確かに。ドワーフに似ているとはいわれますよ。私は。」
素直に認めている殿下。
殿下ぁぁ・・・。
そして、ふと、殿下の腰に下げた花へと気がつき。
「・・・・。ヴァルキュリアの花ね・・・。アーリィ姉様や母様が好きだった花ね・・。」
寂しそうに。
そして、懐かしいように。
ちいさな言葉をもらしていた。
「?アーリィを知っているのか?もしかして、その方は、アーリィがよく話していたシルメリア?」
殿下が聞き返している。
が。
「姉様を呼び捨てにしないでっ!!!!!って・・・・・!?
  もしかして、あなた、アーリィ様が嫁いでいたセイルーンの第一王位継承者じゃあ!!?」
シルメリア王女が何かを思い出したように殿下にいう。
「確かに。私はフィリオネル=エル=ディ=セイルーンではあるが?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・殿下・・・
まがりなりにも、一応、ここの国とは一触即発の状態なのですから・・・。
「なるほど・・・。確かに。アーリィ姉様の言っておられたとおりだわ・・・。」
なぜか納得しているシルメリア王女。
「あ・・あのぉ?」
私が思わず聞き返すと。
「アーリィ姉様、手紙でいってたもの。フィリオネル王子は、ドワーフのような外見で、いたって、平和主義。
  デーモン達なんかは素手でド突き倒すって・・。あなたなら、納得するわ・・。それも・・。」
ごかじゃ!!
私はおもわずころげてしまった。
ア・・アーリィ様ぁぁ!?
一体、何を手紙に書いているのですかぁぁ!!?
「アーリィは、シルメリア殿のことをよく話していたからな・・・・・。妹のような存在だったと・・。」
どこか寂しそうにいう殿下。
「何を!!?」
シルメリア王女は、おそらく。アーリィ様の死因を聞きだそうとしたのであろう。
あんな元気だったアーリィ様が病死するはずはないと。
しかも、私が聞き入れた情報だと、セイルーンの上層部の誰かが毒をもって殺した。
というまことしやかな噂がここ、アストリアでささやかれているようなのだ。
私の情報網をたどってゆくと、その噂を流したのも、あのサーディアンとかいうやつらしい。
そんな事情で、ここアストリア国王は、明日はわが身。
と吹き込まれたらしく。
戦争の気配をだんだんと濃くしていっていたようなのである。
シルメリア王女は、殿下に突っかかっていこうとするが・・。
殿下のとても寂しそうな表情を見て。
その質問を取りやめたようである。
「その花・・・どうなさるのですか?」
「・・・アーリィがここの花が好きだ・・といってたのでな・・・。墓に供えるつもりだ。」
殿下がどこか遠い目をしてシルメリア王女に答える。
「な!?そんな理由で!共もつれずに!?花を摘みにわざわざここまでやってきたのですか!!?」
「・・・いけないか?」
殿下の言葉に、王女は完全に言葉を失った。
そして。
「・・・・・・。アーリィ姉様がいってたことって・・・・・・。間違いではなかったのかしら・・ね・・・・。」
そんな台詞をぽつりともらしているシルメリア王女なのであった。


しばらくして。
たびたび、シルメリア王女と殿下が一緒におられることが多くなっていた。
殿下は毎日のようにアーリィ様への献花の花を摘みにこられ、そして、シルメリア王女も一緒になって、花を摘んでいた。
こころなしか。殿下の顔に、明るさが戻られた頃。
殿下は、周りの人々には、迷惑をかけまいとして振舞っていたが。
さすがに、初恋でもあり妻だった女性が、目の前で、死んでいったショックは計り知れない。
だから、殿下は、誰にも話さず、一人で全部抱え込んでいた。
それをいち早く、見抜いたのは・・・。
他でもない、シルメリア王女であった。
王女もまた、アーリィ様を実の姉と慕っていたらしく。
殿下と王女は、急激に仲良くなっていっていた。
実は、アーリィ様は、このアストリアと血縁関係にあり。
歳が二歳しか離れていないこのアストリア王女。
シルメリア=セイ=ティル=アストリア様を
実の妹のようにかわいがっておられたのである。
そして、殿下がようやく、心から傷を乗り越えて、笑え始めたころ。
それは起こった。


爆発音が鳴り響く。
いきなりの出来事だった。
私が王宮中で、兵士達に指導をしていたその日の夜。
熱風がふきあれる。
「何が起こったのだ!!」
兵士達は、あわてて、宮殿の中を駆け抜けてゆく。
と。
「るぐぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
響く悲鳴とそして、風にのって、漂ってくる・・。
この匂いは・・・・・。
血匂・・・・・。
何が起こった!!?
あわてて、宮殿の外・・つまり庭へとでてゆくと、あちこちで火の手が上がり・・・・。
そして、忘れようがない咆哮が聞こえてくる。
「な゛!!?なぜ!? この宮殿にレッサーデーモンやブラスデーモン、
   あげくは下級魔族(しかも純魔族!)が仕掛けてきたのだ!!??」
私は、おもわず、声の限りに叫んでいた。
そう。
この騒ぎの原因となっているのは、魔族の仕業・・。
ま・・・。
まさか!?あのサーディアンとかいう魔族が!?
はっ!!?
ということは!!?
アストリア公王は!?
シルメリア王女は!?
私は、胸に湧き上がってくる不安をかき消すように。
気がつくと。
王の寝室と姫の寝室がある棟へと駆け出していた。
そのころ。
「こうしてはおられん!!」
私の家で、睡眠をとっておられた殿下も、王宮からの火の手があがったのに気がついて。
この王宮内へとダッシュで向かっていた。


目に飛び込んできたのは。
見覚えのあるシルエット。
そして、その側で、首を縦に振ろうとしない国王の姿―。
「ふむ・・・・。早く、始めから言えばよかったのですよ♡」
コミカルに。
ポシュ!!
と小さな音。だが、とても重要な音が響く。
「ふむふむ。どうやら、本物のようですね♡まったく・・・。
  でも、まさか、ここにガーヴ様の配下の存在が入り込んでいるなんて、おもっても見ませんでしたねぇ♡あははは♪」
そんな明るい声の元で。
国王だったその物体は、静かに、倒れてゆく。
「これで、僕のお仕事は、お終いっと♡」
にっこりと場違いなまでの笑いを浮かべている、一見人畜無害そーなおかっぱ頭のその男・・・・・。
「ゼ・・ゼロス様ぁ・・・・・。我らの仕事を邪魔するおつもりですか!?」
抗議の声を上げているサーディアン。
まあ、呼び捨てにしないというのは、おそらく、身分が違うせいなのであろう。
「おやおや♪下級ごときが、この僕にかなうとでも♡」
「くっ・・・・。まさか、この写本を処分にこられるとわ!!計算外だったわ!!」
歯ぎしりをして、悔しがっているサーディアン。
だが、怪しい神官風の男性―ゼロスに向かってゆく気配は微塵もみえない。
「ゼ・・・ゼロス・・・・。獣神官・・ゼロス・・・・・。」
静かに、そして、深く、重苦しい声で、私は、よーやくその名前をつむぎだす。
「おや?おやおや♡まさか、あなたが、こんなとこにおられるとは♡お元気ですか?」
場違いなまでに。
私ににっこりと挨拶なんてしてくる獣神官ゼロス。
以前、二度ほど出会ったことがある。
いや・・。
性格にいえば、三度ほど。
一度目は。私たちが力試しと肝だめしを兼ねてカタート山脈へと踏み入ってとき。
二度目は、ディルスの写本がもやされたとき。
そして、三度目は・・・・・。
カタート侵攻の戦いのとき・・・・。
私が、じりっと、ゼロスの方に歩みよると。
びしゃっと。私の足が何かに触れた。
そこは、すでに血の海と化していた―。
「おやおや♡でも、残念ですねぇ♪貴方にも手をださないように!との厳命がでてますので♡」
それだけいって、ゼロスは空間に解け消える。
「きゃあああ!!!!お父様ぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
ゼロスが掻き消えると同時に。
シルメリア王女が部屋へと入ってくる。
「お父様の仇ぃぃ!!!!!」
無我夢中で。
王女は短剣を持って私の懐に飛び込んでくる。
鈍い衝撃が走る。
「よくも!!よくも!!お父さまを!!」
どうやら完全に誤解しているらしい。
が。
現状をみれば、仕方のないことなのかも知れれない。
何しろ、ここにいるのは、私と死体となった国王だけなのだから。
サーディアンは、ゼロスが掻き消えるのと同時に、
「こうなったら!!どんな手を使ってでも!!戦争を起こしてやる!!」
といって。移動していった。
・・・・・。
どうやら、あっちも大分切れたようである。

不意に。
殺気が生まれる。
私は、王女を抱えて、後ろに飛び下がる!
「ぐふぅ!!」
私の口から血が吐き出る。
王女はみごとなまでに。
その一瞬で、私のわき腹をふかく突き刺していた。
だが、回復魔法を唱える暇など、ましてや誤解をといてる暇などないのが事実。
私が飛びのいたその場に、国王がたたずんでいた。
「お父様!!?」
王女がそちらに駆け出そうとするのを私は、どうにか押し止める!!
「離しなさい!!この人殺し!!」
「う・・。シルメリア・・さま・・・。よく、見て・・・く・・ださい・・・・。」
私がかろうじて、声を絞り出すのと同時に。
かつての国王であった姿は、だんだんと崩れてゆき、やがて、一匹の獣と成り果てる。
いや・・・。
獣もどきというべきか・・・。
『ちょっと、楽しませてはもらいますよ♡命令違反にはならない範囲でね♡』
虚空より。
何とも、その場の空気にそぐわない明るく楽しい口調が響いてくる。
「な!!!??」
王女が絶句する。
どうやら、ゼロスは、死んでしまった国王になんらかの力を加えて。
いや、おそらく。
死んでしまった国王の体に魔族を憑依させたのであろう。
しかも、かなりつかえる魔族を。
「うぐわわわわるどわああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
かつての国王でもありシルメリア王女の父親でもあり、唯一の王女の肉親でもあったそれは。
やがて、狂えるまでの叫びとともに。
王宮の中より町の中へと飛び去っていった。
ちょうど、そのとき。
「無事か!?シルメリア殿!?アヴァロン!!」
殿下がどうやってきたのか、王宮中の私たちの元へとやってきた。

「まさか・・・。アヴァロンがそんなことをするわけがない!!」
「でも!!現場にはこいつしかいませんでしたわ!!」
殿下とシルメリア様の言い合いの声。
「で・・殿下!!それよりも!!国王を何とかしなくては!!
  それに、このままでは、また、アーリィ様の二の舞が出かねます!!」
私が殿下に言うと。
「何!?まさか、この件にも魔族が関わっていたというのか!?」
驚愕の声を荒げる殿下。
「な゛!!?何をでたらめを!!?」
王女がいうが、この際、誤解をとくより先に。
国王を何とかするのが先決である。
「うぐっ・・。リザレクション・・・・・・。」
「な゛!!!!!!!!!!!」
私の呪文に応じて、見る間に私の傷は回復してゆく。
王女は私が『回復(リザレクション)』を使えるのに、かなり驚いているらしいが。
私が、殿下とともに、外に出てゆくと・・・・。
そこは。
無限地獄といっても過言ではない情景がただ広がっていた。
群がるデーモン達。
そして、悲鳴と嗚咽。
そして、何かをぱりばりと食べている国王の姿・・・・・・。
「見るな!!!!!!」
とっさに。
殿下は王女の目を覆っていた。
無造作に。
それがむさぼり食べているのは・・・・・。
ぼとっ!!
・・・・・・・・・。
何かが落ちてくる。
見ずともわかる・・・。
・・・・・・・あれは・・・・・。
・・・・人間の・・・・・・。
胸焼けがしてくる。
この思いは、あの侵攻のときと同じ。
私は、国王を眠らせるには、単なる呪文ではダメだということがなぜだか分かっていた。
多分、これは、あの魔法・・・。ラウグヌトルシャヴアナに近い物。
ならば―。
―解決方法は?

「たそがれよりも暗きもの、血の流れより赤きもの、 時の流れにうずもれし、偉大なる汝の名において・・。」
私が呪文を唱えつつ、両手を虚空に突き出して。
紋章を描く。
ディルス王室の紋章を。
魔力が込められたその指から虚空に、光の紋章が描かれてゆく。
「我、ここに汝に願わん!!
  我が前に立ちふさがりし、すべての愚かなるものに、我と汝の力もて、等しく、滅びを与えんことを!!」
呪文詠唱終了とともに。紋章も描き終わる。
そして、その紋章を国王の方に向けて、
「ドラグスレイブ!!!!!!」
私は、紋章の中心に向かって呪文を解き放つ。
この方法は、限られた者しかしらないこと。
私の剣の柄に描かれているも紋章と原理は同じであるらししい。
なんでも、魔力を込めて、虚空に紋章を描き、その中心に魔法をかけると。
その威力が数倍にもなるというのである。
これは、私は、試したことは、黒魔法ではなかったのだが。

私の予想を裏づけるかのように。

国王は、音もなく、そして、風に溶け消えた・・・・。

「お父様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」

ただシルメリア王女の叫びがこだましていた・・・・。


アストリアは、事実上、原因不明の怪物によって滅ぼされた。
世間にはそう伝わった。

                              -続くー

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  「ちっ・・・・。まさか、あの国に写本がまだあったのが敗因だったな・・。」
  赤い髪の男性がした打ちしている。
  「それはそうと。あのゼロス様があの男を知っているようだったのですが?」
  サーディアンがかなりびくつきながら報告してたりするが。
  「そのうち。あいつもぶちのめす!!
    とりあえず・・。そうだな・・・・・。せいてはことを仕損じる。
    地道にやっていこーや。
    フィブの陰険やろーに気づかれでもしたらやっかいだしな。」
  「御衣にございます。ガーヴ様・・・・・・。」
  男性―魔竜王ガーヴの台詞に、サーディアンはうなづいた。
  まったく・・・・・。
  あいつの部下って・・・・・。
  教育がなってないわよねぇ・・。
  ってことで、今晩にでも、S、どつきにいきましょっと♪
  リナス達もいなくて、あたし寂しいし♪


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  あとがき:
      よーやくの、第六話です・・・。
      一つ判明したこと。
      私、やっぱ、シリアスかいてたら、
      無償に、ギャグにいきたくなってしまうという傾向を発見(笑)
      やっぱ、漫遊記を同時に打ち込んでいたりするせいか!?(こらこら・汗)
      では、かなり遅くなってしまいましたが。
       ・・・・・。
      あと、フィルさんの結婚。そして、アメリア&ナーガの誕生。
      そして、シルメリアの死因の原因。
      そして、結末(?)といった形になる予定(あくまでも)です。
      ではでは。

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