只今、2003年の5月21日です。
あしからず・・・・。
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狭間の選択 〜写本〜
「・・・・・ちょっとまってよ。リナ・・・。
確かこの人・・・今死んでました・・・よね?(汗)」
思わず何でもないように。
ガウリイに指示を飛ばして。
確かにすでに死んでいたような気がする。
というか、思わずかけよって。
確かに脈拍なども調べたのは自分とゼルガディス。
確かに、完全に。
脈も呼吸も止まっていた。
なのにどうして。
―間に合うわね。
その言葉で。
リナに言われてガウリイが手をかざしただけで。
死んでいたはずの、目の前に横たわっている女性が目を開けるのか。
とまどいながら少し震える声でそうリナに言ってくるアメリアのその言葉に。
「え?ああ、死んでたけど?
でもまだ魂が肉体から離れてなかったし。
それだったらどうとでもなるわよ。誰でも。」
何でもないようにさらりと言い切るそんなリナのその言葉に。
「・・・・・・・誰でもできないと思うぞ・・俺は・・・・・」
ぽそりとつぶやいているゼルガディス。
「まあ、確かに。魂が離れてなければ。
多少の知識と力さえあれば。どうとでもなりますけどね。」
とりあえず。
逃げても無駄と悟ったのか。
にこにこと、しかし、それでいて。
額に冷や汗を一筋浮かべたままで。
にこやかに答えているゼロス。
まあ、汗を丁寧に具現化させているところが。
芸が細かいといえば細かいが。
大概。
一度離れた魂は。
そのまま近くに漂っているか。
そのまま、魂が向かう場所にと向かってゆくのが通常。
だがしかし。
強い思いなどを残している魂などは。
現世に留まることが多々とあり。
そんな魂などを利用することも、ゼロス達・・彼ら魔族達にとっては。
しばしばよくあること。
「そんなもんなんですか?」
きょとんとして聞き返すアメリアに。
「そんなものですよ?
後は死亡した、その人の魂そのものを。
僕達魔族と同じにしたりとかvこれが結構役にたつんですよねぇ(はあと)」
元々。
魂とは精神体そのもの。
魔族に勧誘することもしばしば。
人は、面白いことに。
魔族よりも魔族らしい人間などといった人物もいる。
たとえば。
死んでもまだ権力や富や名誉に捉われている人間などは。
彼らにとっては格好の標的。
「ゼロスさん、それは正義じゃないです・・。」
そんなゼロスの言葉に思わず抗議の声を上げているアメリア。
「とりあえず、プラムさん。つれて戻りましょ。」
それだけいって。
「はいv肉体労働はラドックねv」
「は・・・・はい・・・・。」
未だに視点が定まらず。
ぼんやりと目を開いているプラムをみつつ。
リナが後ろにいる黒い服装に身を包んでいるズーマ=ラドックにと。
話しかけ。
その言葉に応じて。
プラムの体を抱えるズーマ。
くたりと。
そのまま。
背負われるようにして。
その洞窟から立ち去る彼ら六人であった。
「・・・・ここ・・・・は・・・。」
確か。
自分はあのとき。
気を失ったはず。
そして。
間違いなく、意識が遠のき。
自分は死ぬのだ。
そう自覚した。
なのに・・・。
ぼんやりと目に映るのは。
なぜか、自分の部屋。
ふと。
背中に感じる柔らかな感触が。
それがベットの・・・自分の部屋の布団の中だと。
しばらくしてふと気付く。
肩の辺りより短めに切りそろえている黒い髪。
そして、緑の瞳。
それがこのプラムの容姿。
「あ、気がつきましたか?」
のんびりと。
その場に似つかわしくないゆったりとした声。
「・・・・あ・・・・私は・・・・・。
って、そうだ!ディル!」
確か。
魔獣と化したという。
ディルが。
あのとき。
確かにいたような気がする。
異形と化してしまっても。
弟には変わりなく。
「ああ、落ち着いてください!」
起き上がろうとするそんなブラムをなだめているアメリア。
「うーん、プラムさんの弟なら問題ないわよ。
今、ラドックに捜させにいっているからv」
何をしていたのか報告されたくなかったら。
弟を無傷で連れてきてねv
そのリナの言葉に。
冷や汗を大量に流して。
夜の闇にと消えているズーマ。
まあ、どうせ。
私がいわなくても。
ズーマのお仕置きは確定でしょうしね。
別に嘘はいってないし。
などとかなり非情なことを思っているリナだが。
何しろ。
あのルナのこと。
というかあの家族である。
隠し事など・・・・まず間違いなく完全にばれている。
まだその辺りを知らないズーマ・・いや、ラドックは。
これから、まだまだ精進が必要であるらしい・・・・。
「・・・・・・ディルが・・。」
ぎゅっと口をつぐむ。
「それはそうと、プラムさん?
実は、私達、写本が欲しいんだけど?許可してくれない?
勝手に取っていくも悪いと思って。
了解とりにきたんだけど・・・・って。
まあ、気配が遠のいたし・・・。もう相手の手に渡ったみたいだけど・・。」
そんなことを。
とある方向を眺めていっているリナに。
「・・・・ちょっとまて。リナ・・。」
その言葉に。
思わずストップをかけているゼルガディスに。
「・・・って!?リナさん!?
もしかして、写本のありかをしってたんですか!?
ならどうしてそうあっさりとクロツさん達に渡すような真似を!?」
少しばかり、その紫の目を見開いて言っているゼロス。
その言葉に。
「あら。だって、黙って保管者の了解もなくして取っていったら。
泥棒じゃないのよ。・・・そんなことしたら・・・家族・・特に・・姉ちゃんに・・。」
ぶるり。
思うだけで身ぶるいが走る。
だったら。
盗賊とかから奪うのはいいんかい・・・
などと心で思うゼルガディスであったが。
下手なことをいってリナの怒りを買うほうが。
かなり危険とすでにもう悟りきっているがために。
あえてそれは口にしないゼルガディス。
「まあ、保管者の了解をとることは。
それは正義の道にのっとっています!
・・・・・ところで、その写本・・何が書かれていたんですか?」
本当にその・・・・ザナ・・・。」
まだゼロスから聞いたことが半信半疑であるアメリア。
そんなアメリアのその言葉に。
すっ。
一気に顔色を悪くして。
「・・・・ご存知だったんですか・・・。
はい。あれに書かれているのは・・・。
【魔獣ザナッファー】その製造方法です。」
声を震わせてその質問に答えるプラム。
かつて。
代々管理している写本が。
本物なのか、疑問に思ったブラムの先祖が。
行った過去の悲劇。
その悲劇に二度と繰り返さないために。
完全にと封印した、その写本。
まあ、人間。
自分達が守っているものが何であるのか。
好奇心には勝てないというもの。
そして。
それに協力した、かつての魔道士協会本部の開発部の人々。
性能を高めるために、題材にしたのが魔族だったせいか。
はたまた、人材に選んだ人間が。
たまたまであるのか、故意か偶然か。
・・・・闇の残留思念に近い欠片を宿している人間であったことから。
一夜にして。
その地・・・・・百二十年ほど前に。
魔道都市サイラーグは消滅した。
魔獣ザナッファー。
光の剣を携えし勇者の手によって滅ぼされ。
そして、その勇者の手によって、その屍から発する瘴気を抑えるために。
神聖樹、フラグーンの苗が植えられた。
そのことは。
今や小さな子供でもよく親から聞かされる昔話。
「・・・そんな・・・・。」
声を震わせるアメリアに。
「・・・・いったい、そんなものを手にいれて。
あいつらは何をたくらんでいるんだ?」
疑問の声を出しているゼルガディス。
「まあ、あのクロツさん達が何を考えているのかどうかは別として。
今までに彼らが集めていた情報で。
すでにザナッファーはあの人達、つくってますからねぇ(はあと)」
ズヘヘッ!
その言葉に。
思わずずっこけているアメリアとゼルガディス。
ずるり。
そしてまた。
どうじにベットにずり落ちているブラムの姿。
「・・・・ゼ・・・ゼロスさん!
それをしっていて!どうして止めないんですか!?」
起き上がりつつ、抗議の声を挙げているアメリアのそんな言葉に。
「いやぁ、僕には関係ないことだしたし。
あのときは、まだあの人達。写本、もってなかったですしぃ。」
とことんお役所仕事まるだしのゼロスのそんな言葉に。
「・・・いうな、アメリア、こいつに何をいっても無駄だ・・。」
あまり長い付き合いではないが。
魔族だというこいつに。
何をいっても無駄であろう。
それだけは何となくだが理解できる。
そんなアメリアに冷静に突っ込みをいれ。
「・・・・・だが、とりあえず。
その場所に向かってみるのが筋ではないのか?」
「そーね。プラムさん(はあと)そこに現本があるの。
しらなかったでしょv」
くすり。
そんなゼルガディスの言葉に続くようにくすくすと笑って、
さらりというリナのその言葉に。
『・・・・・・・・・。』
しばし無言に陥る、アメリア、ゼルガディス、ゼロス、そしてプラムの四人。
「そーいえば、そーみたいだなぁ。」
のんびりとそんなリナの言葉に続けていっているガウリイのその言葉に。
「そうよね。というか、誰もあれの現本に気付いてない。
というのがすごいと私は思うけど・・ねぇ?」
「まあ、どうやら。あの失敗の後に。
本家を探し出して、その間違いに気付いて。
で、両方保管しておくのが正解だとおもったようだけどな。」
「うーん。でも私としては、というか。
人間の魔力容量にあれ、あわさないから問題あるわけで・・。」
「でもなぁ。人間の小さい魔力だと。
制御するの難しいと思うぞ?俺は?」
何か。
二人で。
完全に二人しか分からない会話をしているリナとガウリイ。
「・・・・あ・・・あの?」
思わず震える声で問いかけるプラムに。
「それくらいどうにかするのが人間じゃない?
根性でどうにかなるわよ。」
などと。
まったくアメアリたちには理解不能な会話をしているリナとガウリイ。
「まあ、確かになぁ。」
しみじみと。
二人して、わけのわからない会話をしているリナとガウリイ。
「・・・・・・・僕達としては、あれの完全版・・・
・・・・・あまり作って欲しくないんですけど・・・。」
などと。
そんな二人の会話をききつつ。
ぽそりとつぶやいているゼロス。
まあ、彼くらいの実力をもっている存在なら関係ないが。
少しばかり下の存在では。
かなり脅威になりえる代物。
まあ、だからといって。
別に増産されても。
彼らのような高位魔族にとっては。
簡単にどうにかなるような代物ではあるのだが。
「・・・・・おい、どういう意味だ?」
そんなゼロスのつぶやきに。
ふと言葉を投げかけているゼルガディス。
「・・え?それは・・・秘密です(はあと)」
あまり人に知られていいような知識ではない。
にっこりと。
口に指をあてて、交わしているゼロス。
そして。
「あ、それより、ズーマさんが戻ってきたみたいですよ(はあと)」
何気にさらりと話題を変える。
「・・・・・・・今戻りました・・・。」
ゼロスの言葉と同時に。
ガタンと。
なぜか。
閉じていたはずの窓が開き。
そこから。
別に玄関から入ればいいものの。
闇の中に佇む人影が一つ。
「あら、遅かったわね。ラドック。」
その声に。
ふと。
ガウリイとの会話をやめて振り向くリナ。
そのまま。
まるで闇が部屋にとけいるように音もなく入ってくる一つの人影。
その背に。
何か大きさとしては、人の大人くらいより少し小さな何かが。
その肩にと背負われているのがぼんやりとした、
部屋の中の明りの元。
その黒っぽい茶色い肌をした何かが。
見てとれる。
「・・・・・・・・・・・ディル!?」
その肩に背負われているそれをみて。
思わず叫んでいるプラム。
それは。
紛れもなく。
かつてはプラムの弟であったはずの、ディル。
その当人の変わり果てた姿・・・・。
その肌は。
黒ずんだ茶色い鱗のようなもので覆われ。
その足元にかろうじてのこっている人の肌。
そして。
その今はつむっている瞳のみが。
かつての面影を残している。
そして。
尖った口元に見え隠れしている、鋭い牙の並び。
それがかつて、元、人であったとは。
誰が想像できようか。
「・・・・・・・そんな・・・。」
近くで見たことはこれがはじめてとはいえ。
元が人間だと、アメリアはリナ達から聞かされて知っている。
その変わり果てた姿に思わず言葉を失う。
―・・・・・人は、どこまで残虐になれるのか・・・・。
それを思い知らされてしまう。
だからこそなのかもしれない。
彼女が正義をよりよく愛することは・・・・。
「・・・・・・・ずいぶんとひどいまねをしたもんだな・・・。」
そういいつつ。
思わず自分のことを思い浮かべる。
確かに自分もまた。
曽祖父であるレゾの手によって。
合成獣とされた身。
だがしかし。
基本は人間のままで、自我もそのままのこっている。
だがしかし。
今。
目の前に連れてこられているこの元少年は・・・。
おそらく自我ものこっていないという。
そして、かろうじてわずかにのこった人間の心が。
姉であるプラムだは襲わなかった。
ということのみ・・・・。
「うーん。確かに、本当、ときどき人間ってどうでもよくなってくるわよね・・。」
そう吐き捨てるようにつぶやきつつも。
それでも。
そんなことをしてしまうのが人間なのだということも。
分かっているがゆえに。
「とりあえず、ちゃっちゃと、この子、元に戻すわよ?
あ、元に戻したとき、その辺りにいろいろと出てくるから。
それはどうするかはアメリア、ゼル、任せたからv」
そういいつつ。
バン!
手を軽く打ち合わせ。
ちらりとガウリイの方を見るそんなリナの行為に。
「ま、とりあえず、今までのことの記憶は取り除いておいたほうが。
この子のためだろな。」
「それはガウリイがお願い(はあと)」
「はいはい。リナの仰せのとおりに(はあと)」
・・・・・・・・・?
一体、リナとガウリイは何をする気なのか。
意味が分からずに。
ただただ。
そんな二人の行動を。
しばし。
どう対応していいものか。
眺めているアメアリたちであった・・・・・・・・。
−続くvー
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あとがきもどき:
薫:・・・・よっし。次回でディル、元通り!(はげしくまて!)
え?ゼロスとズーマ?
まだしばらくはリナたちのパシリ(こらまて!)
んではでは・・。
多分・・・きっとおそらく(多分)・・・・・。
次の次・・・くらいで終る・・かな?
このプラム偏・・・・・。
んではでは・・・・。