狭間の選択 〜サイラーグへ〜
「・・・で、何でお前が一緒にいるんだよ・・。」
ぞくり。
「?ガウリイ?どうかした?」
まったくそれに気づいてないリナ。
「い・・いやですねぇ。兄貴、俺もちょうど、サイラーグに用が・・。」
「・・・・嘘だな?」
「・・・・・・はい、うそです・・。」
昨夜。
リナが寝静まったとき。
彼―ランツは、思いっきり、ガウリイの制裁を受けている。
そのために、ガウリイを兄貴呼ばわりしているのであるが・・。
宿の裏庭で転がっていた、ランツを発見した、アメリアが。
丁度、朝の正義の賛歌を歌いに、外に出たときに。
転がっている物体一つ、発見して。
それが、昨夜、自分達に言い寄ってこようとしていた男性だと分かり。
あわてて、復活(リザレクション)の術をかけ。
どうにか一命を取りとめているこのランツ。
サイラーグに向かうその道筋。
その、街道の先にある、ウルル山脈の麓にと存在する、
ウルル山脈を突き抜ける、未だに工事中の、トンネルに向けて。
進んでいるのは、何も、彼らだけではない。
他にも、ものめずらしさから、そのトンネルを抜けようとする、
旅人たちなどもいる。
というか、今、海の海路が使えないということもあり。
旅人たちにとっては、こちらの道筋のほうを利用するしか手がないからなのであるが。
自分達についてくる、ランツにのみ分かるように、
殺気を飛ばしているガウリイ。
それにまったく気づいてないリナ。
ガウリイの言葉に、脂汗をだらだらと流しつつ。
昨夜、リナ達にちょっかいかけようとしていた、赤い髪の男性ーランツは、あわてて、説明する。
「いやぁ、あの村に行く前に、少し遊んだ女の子が・・その・・。俺を追いかけてきちゃったらしくて・・・。」
そういいつつ、言葉を濁す。
まだ、貰い足りない。
とかいって、わざわざ追いかけてくるか?普通(汗)
などと、心でつぶやいている彼だが。
「遊んだって・・ランツさん?一体何をしでかしたんですか?はっ!もしや、ランツさんは、女性にとっての悪!?」
ばっ!
体制を変えて、いきなり呪文を唱え始めているアメリアに。
「ち・・違いますよ!ちょっと、声をかけたら、
『あれかって、これかって!』といろいろと付き合わされて。
俺がもってた、全財産、金貨千枚、その子に全て使わされたんですよ!?
とにかく、いうとおりにしてたら、その・・ものにできるかなぁ?
とか思ってたのに・・・。気付いたら、すでにお金はないし・・・。
それで、お金がないのに、次におねだりされたのが・・。
・・とある、ブランド品だったもんで・・逃げてきたんですよ・・・。」
・・・情けないぞ!
男の癖に!
思わず、そんな突っ込みを入れかけるリナ。
「まあ、本気のところをいえば。
懸賞首だと、兄貴たちのことが分かったから。捕まえて、その懸賞金で、羽を伸ばして遊ぶ。
なんてことを思ったのも事実ですけど・・出来るわけないですし。」
そういいつつ、ぴしっと、指を立て。
「だから、ここは、ひとつ。
その、そんなに羽振りのいいという、あの懸賞をかけている、当本人に、
かけあって、どうにか恵んでもらえないかなぁ・・と。」
裏を返せば、どうにかして、その彼からお金をせしめたい。
というのが見え見栄だが。
ぎろり。
無言で剣の柄に手をやるガウリイをみて。
「ああああああ!兄貴、冗談ですって!冗談!
それに、こういっちゃ何ですけど。
俺がいることにより、あの手配書とはかけ離れて見えるとおもいますが?」
確かに、ランツのいうとおり。
まあ、服装を変えているだけで、リナとガウリイが、
手配を掛けられている、リナ=インバースとガウリイ=ガブリエフとは、見破られてないが。
アメリアの方は、少し服装を変えているだけなので。
見る人がみればすぐに分かるはずなのだが。
いかんせん、リナとガウリイの姿が、あまりに絵になりすぎていて。
アメリアは、そのそんな人々からの視界から外されているのに他ならない。
「ということで、どうです?従者として、連れて行く気・・ありませんか?
とりあえず、追いかけてきているあの女の子から逃げるまででも・・・・。」
うるうると。
本気で涙をためて、ガウリイのすそにすがりつく。
「ま、いいんじゃない?ガウリイ?」
あっさりとした、リナの返事に。
「ま、リナがいいんだったら、いいが・・・。
・・・言っておくが・・・リナに手を出したら・・・・消滅させるぞ?」
ぴくん。
周りの空気すら凍らせて、ガウリイがランツにと言い放つ。
「あれ?何か、少し寒くなった?」
「何だ?リナ、暖めてやろうか?」
ぐい。
ガウリイの殺気で、周りの空気と気温が下がったことに気付かずに。
少し身震いしているリナ。
そんなリナを抱き寄せているガウリイ。
「あ・・あのねぇ!//」
「ん?」
その碧い瞳で見据えられ。
「・・・・・・・・馬鹿クラゲ・・・・//」
少し真っ赤になって、つぶやくリナ。
未だに、ガウリイのこの格好だと。
違和感があり今までのように振舞えないリナであるのである。
そんなリナの対応に対し。
・・・よっし。
幸先いいぞ!俺!
一人、かなりガッツポーズをとっているガウリイ。
そしてまた。
・・・・・・私、どうしたんだろ?
???????
自分のその興りつつある感情をまったく理解できずに戸惑うリナの姿がしばし見受けられてゆく。
そのころ。
とある場所では。
タタタタ。
「くっ!ポム・ディ、ウィン!」
ごぅぅぅ!
「うわっ!?」
風がその場に吹き荒れる。
「ゼルガディスさん!こっちです!」
「こらまて!飯の種!」
「構っている暇はない!」
ばさり。
そのまま、身を翻す。
「・・くそぉ。俺の飯の種・・・。」
いいつつ、がさり。
その手にしている紙を取り出す。
「・・・とりあえず、資金を一つでも稼いでからでないと・・。こいつに戦いが挑めないからな・・。」
そうつぶやくその彼は。
次の瞬間には。
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・・・・・・・・。
おもいっきり、お腹を鳴らして、その場に立ち竦んでいた。
服装は、マントをその身にまとい、とんがった帽子を目深にかぶり。
流れの剣士のような格好をしているその男性。
・・彼は、この十日間。
何も食べていなかった・・・・・・。
「・・・・・・何?これ?」
どがっ。
おもいきりけりを入れる。
そこにうずくまる物体に対して。
「おやおや、エリス、いけませんよ?そんな乱暴にしちゃあ。」
にこにこと。
温和な笑みを浮かべている、しっかりと目を閉じた、
真っ赤なローブで全身を纏っている男性。
そういいつつ、手をかざす。
「ふむ・・・ゼルガディスとシルフィールさんを追っていたようですね・・。
この彼は・・・利用できそうですよ?」
そういって、傍らにいる、肩の辺りまでの黒い髪をしている、
女性にと話しかける男性。
「・・まったく、貴様がふがいないから、あんな巫女に、
疑問を悟られるのよ。」
「・・申し訳ありません。」
「・・・ふん。コピーが!」
言い放つ、その口調には・・軽蔑。
その言葉に、眉を男性がひそめたのに。
その彼女は気付いてすらもいない。
「まあいいけど。そうね。
とりあえず、こいつに食事をさせて。
・・・あいつたちを絶対に私の元まで向かわせるように。
いい?絶対に、あいつたちを始末するのは・・この私の手で!」
いいつつ。
ぎりっと歯をかみ締め。
手に握り締め。
「・・・・レゾ様・・・・仇は・・・このエリスが・・・。」
そうつぶやいている女性。
服装は、何処にでもいるような、いたって軽い典型的な、
剣士の服装。
いや、剣士の服装を模しているそれ。
といったほうがいいであろう。
何しろ、彼女が来ている服は。
かつて、彼女が仕えていた、とある人物が、
実験用に創り出した、魔力のこもった布で作られているのだから。
噂を聞いたのは・・・数ヶ月前。
・・・・・赤法師レゾが・・・・殺された。
というものであった。
それ以後、痕跡はまったく残さず消えた、彼女にとっては愛しい人。
事実は、痕跡が残っているはずもない。
彼は、金色の王に連れて行かれているのだから。
だが、そんなことを知らない彼女は。
・・・情報から、
その前後に関りのあったという。
とあるメンバーに復讐を誓い。
こうして、今。
前を歩くかつて、彼が実験のために創り出した、彼のコピーホルムンクス。
それを利用して。
今。
その彼らをおびき寄せるために。
サイラーグを拠点とし。
今、罠を仕掛けているのである。
サイラーグでそんなことが行われているのを。
何となく、視つつ。
・・・・幼いころからの特訓の成果か。
はたまた、その母親の影響か。
賛否は定かではないが。
「・・・・リナに危害を加えるようなことをしたら・・・ふふ・・・。」
今、離れたその地で何が起こっているのか。
確実に捉え、把握しているこのガウリイ。
とにかく、自分だけでなく。
リナにも手配をかけた、それらを放っておくことなどできるはずもなく。
「・・?ガウリイ?どうかしたの?」
手配対策v
と称して、服を変えただけでなく、そのときから、
常にリナの肩に手を回しているガウリイ。
横に付き添うリナがキョトンと、そんなガウリイを見上げてくる。
たまぁに、呪文で吹き飛ばしていたりするが。
リナは、ガウリイを。
そこはそれ。
「ん?いや、このトンネルを抜けたら、サイラーグ地方だなぁと。」
「・・そね・・・。」
さすがに、未だに、工事中のトンネルのことだけはあり。
その壁には、魔力の明りが、白々と灯っている。
持続性の長い魔力の淡い光も。
それがたくさん集まると、暗いはずのトンネルの中も。
まるで日中の明るさまでにと変化している。
その明るい魔力の灯りの中で。
作業員たちが、ことごとく、壁を呪文や工具などを使いつつ。
工事をしていたりするが。
―まず、崩れないようにその対策として。
セメントをその壁にと流し込み、定着させる。
そのセメントに、魔道士の手を借りて、風水の通りなどをよくして。
風化などの衝撃にも耐えるようにとアレンジし。
なおかつ、流れ出る地下水をその道筋を確保し。
長く続くトンネルの中に。
休憩所たる場所を設けて。
そこに、その湧き水が、絶えず出るようにと作業をしつつ。
セメントとは、砂や水、石灰石などといった物質を。
とある比率で混ぜ合わせ、かなり固い物質にと変化させるもの。
無意味に長く、数キロは続くであろう。
そのトンネルの中には。
簡易休憩所なども出来ている。
このトンネルを抜ければ・・・。
そこは、もう。
ウルル山脈と川と湖に囲まれた地。
ライゼール帝国の中に位置する。
サイラーグ方面。
「うわぁぁぁ!明るい!」
思わず、トンネルを抜けたとたんに、巻起こる、感嘆の声は。
・・・・数キロもトンネルという地下を進んでいた旅人にとっては。
当然といえば当然であろう。
思わず眩しさに目を細める。
その眩しさの先に・・。
遥か視線の先に、広がる、鬱蒼とした森。
ここからは、この辺りの風景が一瞥できる。
「・・・あれが、サイラーグの瘴気の森・・ですね。」
そういってつぶやくアメリア。
その視界に入る、森をみつつ。
「んっふふ!よぉし!アメリア!ガウリイ!あと一息よ!
あんな手配かけたやつ・・ぎたぎたのコテンパンにしてやるぅ!」
「リナ、その姿でその台詞は・・やめたほうがいいかと・・。」
さすがに、深層のお嬢様にしか見えないリナがいった、
その台詞に。
他にその場所に居合わせた、旅人たちなどは。
盛大にずっこけていたりするが。
「そうだな。いこうぜ。」
ぎろり。
リナをみていた、そんな人達を一瞥し。
思いっきり、殺気を投げかけておいて。
リナを促し、道を下り始めるガウリイ。
・・・・ひゅぅ・・・・。
後には、残された人々が。
しばし、その場で、完全に凍り付いている風景が夕方近くまで、見受けられていたのであった。
向かう先は、サイラーグ。
かつて、百年と少し前魔道の実験によって、暴走したとされる、魔獣、ザナッファー。
それが一夜にして、壊滅させた、かつての魔道都市、サイラーグ。
今では、その一件、以後、ここは、死霊都市、サイラーグ。
そう呼ばれている。
この地で目立つのは町の中央にある、神樹。
聖樹、フラグーン。
瘴気を吸収、消化して、その糧とする、特殊な樹。
そのフラグーンの足元にあるのが、リナ達が今めざしている、
今回、リナ達に賞金が掛けられている、その支払い場所。
サイラーグ・シティ。
そこに向かって、リナ、ガウリイ、アメリア、ランツは。
ようやくその入り口までたどり着いていたのであった。
「・・・・わたくし、お父様達を・・どうにか・・。」
「気をつけろ。あいつの後ろには・・・。」
女の姿をしている長い黒い髪の女性に言っているのは。
全身を白いフードで被っている男性。
「わかってます。・・・・スィーフィードのご加護があらんことを。」
「俺も他にも調べてみよう。気をつけろよ・・・・シルフィール。」
「はい。ゼルガディスさんの方も・・。」
そんな会話をしつつ。
地下にある、空洞のその一角で男女は、互いに逆方向にと進んでゆく。
彼らの目的は。
リナ達と同じといっても過言でないであろう。
シルフィール=ネルス=ラーダ。
ここ、サイラーグの神官長。
エルクの一人娘――。
−続く♪ー
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あとがきもどき:
薫:今日、お休みなので、友人と(女の子・・・同性・・爆!)
と、食べ放題に言ってきましたv
・・・あの日の関係で、お腹があまりに痛くて、
あまり食べれませんでした・・・・あうあうあう・・・。
何か、動くたびに体がしんどいです・・・・。
しかも、ものすごく眠いし・・・。
・・・やっぱ、疲れているのでしょうか・・(汗)
それはそうと。
エリスとザングルス・・・両方だすことにしました(かなりまて!)
つまりは、ガウリイを付けねらうのをザングルスにして。
ゼルを狙うのをエリスに・・(まてこら!)
小説版・・だって、ゼル・・エリス知らなかったしv
ではではv