前回までのあらすじ。
赤法師レゾの中に封じられていた赤瞳の魔王を。
どうにか撃退し(嘘ではない)。
仲間となっていたゼルガディスとわかれ。
アメリアと、ガウリイと一緒に。
アトラス・シティにとやってきているリナ達一行。
そこで、とある女性が。
リナ達に依頼を頼んできたのだが・・。

        狭間の選択     〜アトラスの魔道士〜





このアトラスの副評議長の一人。デイミア。
彼曰く、平和的な交渉によりその黒いマントから見え隠れしている、首筋に青い刃を突きつけて。
にっこり笑っている金髪の男性の言葉に。
しぶしぶ従うその顔に白い仮面をつけている人でない生き物一つ。
そんな、ここ、アトラス・シティの中に位置する、ディミア邸にと。
その『それ』の案内により、やってきているリナ、ガウリイ、アメリア。
この三人。
屋敷の中に入ると、どうやらそこは、実験場らしく。
カプセルの中に入っている、どうみても、異形の生き物たち。
「・・・・悪趣味ね・・。」
それを目にして、アメアリがつぶやく。
「合成獣の実験か・・。」
それを顔をゆがめて見ているリナ。
その部屋のカプセルの中にあるのは。
犬や猫、小動物や、オーガやコブリン。
果ては、ホルムンクスなどなど。
肉体だけ作り出し、いわゆるフレッシュゴーレム状態のその人の器を。
他の生き物と合成する実験をしているらしく。
その失敗作などもカプセルの中で液体に浸かってうごめいている。
命と命の掛け合わせ。
それは、未だに議論が巻き起こっている。
事実。
そういう研究に没頭するものに限り。
よく、道を踏み外した行動に出る人間も少なくない。
「・・・・・この下だ。」
本能的に逆らえない。
いくら、契約を交わしているとはいえ。
剣を突きつけられている、黒いローブに身を包み。
顔を白い石で覆ったそれ・・名前をセイグラムというが。
彼らにとって、自分より力のあるものの言葉に逆らうことはまず許されない。
本能が、力あるものに付き従うようにとなっているのである。
つまりは、無駄と分かる抵抗はしない。
という何とも物分りのいいセイグラムなのであった。
     
     



「・・・・リナ、ルーンブレイカーよ?」
周りを見渡しアメリアが小さくつぶやく。
セイグラムに言われるままに。
地下にと移動した彼らが目にしたのは部屋一杯に広がる水面。
部屋の五隅にある五角形の柱が。
この部屋が五績星の結界で形勢されているというのが見てとれる。
この五績星に形勢された、この部屋の中では。
この魔法陣には魔力を封じ込める役割を背負わしているらしく。
まず、普通の魔道士などの魔力では。
この部屋の中に入ると、魔法が使えなくなるであろう。
魔力が極力低下しているのに気付いたアメリアが部屋の様子をみてつぶやくが。
「だから?」
「そうそう、お、アレだな?リナ、どうする?」
何でもないようにいっているリナに。
水面の奥底に緑色の何かに閉じ込められている人影を認め。
リナに聞いているガウリイ。
「とりあえず、この水、のけない?」
一つの石柱の上にたち、その石柱のしたに広がるデイミア邸の地下室。
そこは完全に水が張っているいってみればちょっとした、
プールのようになっている。
用途はまったく異なるが。
「とりあえず、この水のけない?」
そういったリナの言葉の意味がわからずに、セイグラムはただ首をかしげるのみ。
何しろ、逃げようとしても、精神世界で、
彼の本体そのものが束縛されているのだから逃げられるはずもない。
どうして、人間にこんなまねが出来る?
その疑問に誰も当然答えてくれるものなどいるはずもなく。
「じゃ、ど〜する?電解して、分子と原子にわけるか?
それとも、この部屋の水を別の場所にそっくり移すか?」
さらりと、人には今の技術では出来ないことを、
言ってのけている、自らを精神世界で捕らえている男性・・ガウリイの言葉に。
思わず絶句する。
のほほんとさらりと言っている割には。
とうてい人ができ得ないことをさらりと言っているのである。
この人間は。
絶句しているセイグラムをよそに。
「別の部屋に移しましょv
   というか、あんな実験されてたら、寝覚めわるいじゃない?」
そういいつつ、天井を指し示すリナ。
「分かった。」
リナの言葉に。
ガウリイが、軽く、手を動かし、何かの印を手にて刻み込んでゆく
そして、それと同時に、石柱の下の水にと手をかざし。
ただ一言。
「ЦИ!」
聞きなれない言葉を発してゆく。
ガウリイがそう呟いたその刹那。
バシュ!
「・・・・・・・・・うそ・・・。」
小さくアメリアが声を漏らす。
その一瞬に。
広い部屋になみなみあったはずの全ての水が。
ガウリイの言葉と同時に。部屋から綺麗さっぱりと消え去っていたりする。
流石のこれには、セイグラムもしばし硬直していたりするのであるが。
「はい。ガウリイ、ご苦労様v」
普通なら硬直ものだというのにもかかわらずに、まったく驚いてもいないリナ。
リナも姉に鍛えられてこの程度なら出来るようにとなっている。
昔、湾岸諸国に位置している場所にある砂漠の地帯に、家族で出かけたときに。
その術を使ってオアシスを作れと、いわれ、しかも所要時間は、数分間のみ。
そういわれて必死に別の場所から水を引っ張ってきて。
砂漠の一角にオアシスたる泉を作り出したという実用例もあったりする。
呆然としているアメリアを尻目に。
「ほら、アメリア。驚いてないで。
ハルシフォムのとこににいくわよ。」
そういいつつ、
『レビテーション!』
掛け声と戸に。
高くそぴえる石柱の上から。
和歌にむかって飛び降りる。
「あ!まってよ!リナ!」
いつシュンのうちに水の無くなった地下室にとリナに続いて降り立つと。
部屋の中心に、今度は六歩星の魔法陣が描かれ。
その魔法陣の上に未゛取り色にぬめりとして光る、水色の物体が一つ。  
その緑の物体の中に、白いローブと服をきている男性が。
「・・・・リナ、この人、悪人じゃないわ!」
きっぱりと。
その姿をみて、言い切るアメリアに。
「何で?」
あきれたように聞き返すリナ。
「だって!白い服を着ています!」
きっぱりはっきり、握りこぶしをつくり言い切るアメリアに。
ずしゃ!
その言葉に思わずこける。
ガウリイの横では、唖然としているセイグラムの姿が見てとれるが。
「あ・・・・あのねぇ!」
どうにか起き上がり、抗議するリナであるが。
そんなリナ達の目の前で。
パシャ・・・。
今まで、水とルーンブレーカーの結界で封印されていたそれは。
まるで何かをつぶすような音を立てて。
そのまま、その緑のゼリー状の物体は。
音を立てて、床にと広がり、後には、そこに、目をつむったままの、男性がたっているのみ。
その男性は目をうっすらと開けて。
「・・・どういうことですか?セイグラム?
   ・・私は、力あるものに協力させてこの結界を解くようには命令しましたけど。
   その理由を説明するようには指示してませんよ?」
結界に閉じ込められている状態でも。
それでも、セイグラムの仮面の中に、その魂を閉じ込めている理由から。
リナ達が自分のことを知っているのを理解している彼。
白い服に身を包んだ、ここ、アトラスの魔道士協会、評議長、ハルシフォムその当人。
そういいつつ、セイグラムを一瞥し。
ゆっくりと前にでる。
「あんたがハルシフォムね?
私達、ルビアに頼まれたのよ。
あんたを止めてくれってね。」
腕を前で組み、言い切るリナに。
「・・・・ルビアに?ああ、それは彼女の思い過ごしですよ。
   私は、彼女のために行っているに過ぎません。
   もう少しで完成するんですよ・・。もう少しで・・。」
そうにっこりと微笑む。
その直後。
ハルシフォムが唱えていた転移の術が完成し。
リナ達の姿は。
ハルシフォムから広がる魔法陣の光に包まれて。
一瞬のうちに、とある別な場所にと移動してゆく彼らの姿が見受けられてゆく。

アトラス・シティから外れた一件屋。
アトラスのホボ中間地点の場所からそこに飛ばされたリナ達三人。
リナ、アメリア、ガウリイの前に部屋の中央にある水晶のケースが目に入る。
そして。
その床には、一面に広がる人の閉じ込められた姿が、塗り込められ。
「まあ、私の結界を解いてくださったことには感謝しますよ。
   お礼として、私のルビアの復活の、力となってくださいね?」
にっこりとそう言い放ち、その水晶にほお擦りしているハルシフォム。
そして。
「セイグラム、その人達を丁寧に、殺さずに。この、魔融炉にご案内してあげてくださいね?」
リナ達の横にいる、セイグラムにと話しかける。
「・・わ・・かり・・まし・・た。」
契約している限り。
その契約は絶対。
契約している主からそういわれて、拒むことは。
まず彼ら、精神生命体の生き物として、
   それは、致命傷のダメージを与えることに他ならない。
まず彼程度の実力では、そのことで。
契約を破棄したという事柄から滅びる輩も少なくない。
それほど、彼らには、契約や盟約。
そういったものはかなり重要視されているのである。
本能は、かなうわけがないと。   
側にいる人間二人に対しては、警告を発している。
だが。
もう一人の人間は。
どうみても、普通の人間。
彼にとって、何でもない相手。

― そう判断し。
とりあえず、無難なアメリアに標的を絞り行動を開始しようとする。

カタン・・。
ハルシフォムの言葉を受けて。
攻撃を開始しようとしたその矢先。
部屋の隅にある小さなドアから。
一人の女性が出現する。
リナ達がデイミア邸に行く時に、別れた。
ハルシフォムの助手を務めている、ルビア。
いや、正確にいうならば、そのルビアのホルムンクス。
彼女を模して作られた・・人工的な肉体。
それでも・・・・・

「・・・もう、止めてください・・・ハルシフォム様。
今、この部屋の供給源を絶ちました・・。」
リナ達に依頼したものの。
やはり、自分の手で、少しでも。
そう思い立ち。
この部屋にはあまり近づかないようにしていたルビアが、よろめきながら扉から出てくる。
この部屋に入っているだけで。
気が遠くなるような感覚に襲われる。
その理由ははっきりしている。
・・・・彼女はかりそめの生を得ているのに過ぎないのだから。
やはり、本体である、肉体に、どうしても引きずられてしまう。
「・・・ルビア、私は君のためを思って・・。」
そういいつつ、水晶のケースにと手を伸ばす。
   
彼が実験している最中。
その研究が暴走し。
あろうことか、最も大切であった、彼女・・ルビアが犠牲となった。
しかも、彼を庇って・・・。
認められない彼は。
やがて彼女を生き返らせるために、死者をよみがえらせる方法を見つけ出す。
それは、つまり。
死者に生命エネルギーを注ぎこむことによって、かりそめでも。
生き返らせる方法がある。
というのを研究の果てに突き止めたのである。
そんな矢先。
まだルビアが生きていた当時に。
二人で作った、ルビアのコピーが。
目覚めたのは、彼にとってはとても都合がよかった。
同じくルビアと呼び。
自分の研究の手伝いをさせていたハルシフォム。
どうして、魂を持たせなかったはずのその肉体が。
タイミングよく目覚めて、自我を持ったかなどとは。
まったく気にせずに。
   
自分が死んだことにより、暴走していこうとする彼を。
彼女は見ていられなかった。
だからといって、すでに彼女は死んだ身。
すでに肉体から離れてしまった彼女には。
彼を見守り、声をかけても、戻ってくる返事はない。
だから。
正気に戻ってもらうために。
彼に幸せになってもらうために。
― あえて、魂のない器に憑依し。
ずっと彼の元にいた・・彼女、ルビア。
ハルシフォムは気づかない。
いくら、ルビアが話しかけようとも。
その、ホルムンクスでしかない、その器に入っている、魂が彼が最も愛した女性本人であるということに。
   
入ってきたルビアをみて、にっこりと笑い。
「ほら、もうこんなに、ルビアの体は赤みを帯びている。もうすぐ、この体は生き返る・・。」
魂のない、ただの器。
それでも。
かりそめとはいえ、本来の体が活動を始めようとしているとなると。
やはり、魂はそちらにひっぱられてしまう。
つまりは。
彼女 ― ルビアにとって、この部屋に入ることは。
魂を吸い取られてしまうことにも等しいことなのである。
そして―。
すでに数年無理している。
ひとたび、この体から魂が離れてしまえば。
・・もう、現世には留まっていられるほど。
彼女には力は残ってない。
生きた生き物の、血肉で復活を果たそうとするルビアの肉体。
それは、かりそめに過ぎないと分かっているはずなのに。
それでも、ルビアを生き返らせようとするハルシフォムは。
やがて、人攫いという手段を用いて。
ここ数年は、お構いなしに行動をし始めていた。
それに気付かれて、彼の下で働いていた。
副評議長の二人である、タリムとデイミアが協力して。
彼を、ルーンブレーカーの結界と水の結界によって。
閉じ込めていたに他ならない。
すでに、魔との契約により、
『かりそめの不死』
を手に入れていた、ハルシフォムをどうしても殺せなかったがゆえに。


魔との契約。
それは、己の魂を代価にし。
契約のもと、かりそめの不死を得るというもの。
大概、魂そのものを差し出し、不死となる。
契約と、魂を閉じ込めておくために、契約の石。
というものが存在する。
魔と契約したものを倒すには。
一つ。
その契約の石を壊すか。
もしくは、その契約した魔以上の力をもつ力をぶつけて殺すか。
その二つに一つ。
一般に知られている高位魔族の攻撃呪文などとは。
確実に普及して、間違いなくしとめられるのは。
黒魔法、攻撃魔法最高峰とされている、『竜滅斬(ドラグスレイブ)』
この世界の魔、闇を統べる暗黒の王の力を借りた、攻撃呪文。
アレンジ次第でどのような威力にもなるが。
その威力は馬鹿にならない。
その応用力を知らない人々にとっては。
その術を使うこと、即ち、町一つ滅ぼしかねない威力を持っている。
それゆえに、使わなかった。
いや、魔力が足りなくて、仕えなかったというのが正解か。


ルビアの訴えもそこそこに。
閉じ込められる前に、誘拐していた人々の生体エネルギーを。
自身の力をつかって、その肉体にと注ぎこんでゆく。
「あ!そんなことしたら!」
さすがに、リナが抗議の声を上げる。
リナは、一目みたときから。
この女性が、普通のホムルンクスでないことは判っていた。
動いているのは・・人の魂が憑依して動かしているのに過ぎない・・・と。
「・・・・馬鹿だな。」
ガウリイも小さくつぶやきリナの肩に手をのせる。
・・・どうして気付かない?
そんなに大切な人ならば。
ずっと肉体は違うとはいえ、側にいたのに。
死体ばかりに目を向けて。
その魂そのものがずっと側にいたということに気付きもしないで。
人を愛するということは。
その外見だけではない。
その中身から全てを愛するということではないのか?
俺は、少なくとも。
リナを見間違えたりはしない。
たとえ、リナがどんな姿になろうとも。
そう心でつぶやいていたりするガウリイ。
「・・・・ハルシ・・・。」
「あ!ルビアさん!」
どさり。
倒れるルビアを支えるアメリア。
その体が極端に軽い。
体も冷たい。
「・・・・な!?ルビアさん!?」
驚愕の叫びを上げるアメリアをよそに。
ルビアが倒れたその直後。
ゆっくりと。
ゆっくりと、水晶の中にいた人間が。
目を開ける。
「おおお!ルビア!」
狂喜し、その体を抱きしめる。
「・・・・・・・・・・。」
何かつぶやき。
そのまま。
そっと、ハルシフォムの頬にと手を当てて。

くた・・・・。

その手は、まるでスローモーションのように崩れおちてゆく。


「な・・・・何で!?駄目です!ああぁぁ!」
抱きかかえているルビアの体が。
アメリアの腕の中で、塵と化してゆく。
それに気付いて、叫ぶアメリア。
本来なら、動ける肉体ではなかったのだ。
― 不完全なホルムンクス。
実験用にと、作っただけのその器。
それに、長年、ルビアの魂が憑依して、使っていたのである。
当然、普通なら、培養カプセルの中から、そんな不完全な、
ホムルンクスが出されてもまず長くは持たない。
大概は、その肉体は維持できずに瓦解する。
それらをその魂の力で、ハルシフォムの為だけに、留めていたルビア。
だが。
その肉体をどうにかたもっていた魂が元々の肉体の方に引っ張られ。
その器から、魂がなくなると、どういう結果になるのか。
押してしるべし。


サラ・・・・・。
アメリアの叫びもむなしく。
その手の中で、ルビアの肉体は完全に塵と化していた。


「・・・・・何・・・が?」
何がどうなっているのかわかっていないハルシフォム。
目覚めた、ようやく最も大切な愛する人が狂喜する彼の腕の中で。
最後にもたらされた言葉は・・・。
― さようなら。
小さく、確かに彼女はそうつぶやいたその言葉。
その瞳から輝きが失われ絶句したその直後。
後ろから聞こえる悲鳴。
混乱する思考の中。
そちらを目で一瞥すると・・・。
自分が呼び寄せた三人のうちの一人の少女の手の中で。
今、まさに、ルビアの体が・・・塵と化して、完全に溶け消えていた。



「・・・・気付くべきだったわね。
   彼女が、・・彼女自身の魂が、ずっと側にいたことに。」
静かに、リナが語りかける。
無理やりに、死した体を復活させようとし。
どうにか力の限り、側にいようと力を尽くしていた、ルビアの力を削いでいるなど。
彼―ハルシフォムは夢にも思っていなく。
無理をしすぎたその魂は。
元々の肉体に戻ったその瞬間に力を使い果たして。
今、今度こそ、永久の眠りに入ったのだ。
輪廻の輪にも乗ることのない、完全な消滅。
彼女が願ったのだ。
それでもいいから。
全ての力を尽くして、彼の側にいることを。
その純粋なる願いを全ての母が叶えていたのに他ならない。
初めてあったときに、その魂に感じた、金色の母なる力。
一度、出会ったことのあるリナにとって。
その理解はすぐ出来た。
きちんと、ガウリイに確認を取ってないが。
視線で話しかけたところ、肯定の視線が戻ってきたのである。
淡々と哀れむように言い放つリナの目の前で。
やがて。

サラリ・・・・・・・・・。


ハルシフォムが抱きかかえている、ルビアの体そのものも・・・。
空気に溶け消えるように消滅してゆく。

すでに死んだ肉体を魔力と、生命エネルギーで保っていたに他ならない。
その全ての力が閉ざされた今。
今までのつけは、一気に、そのすでに魂のない肉体にと襲い掛かり。

彼の胸の中で、完全にルビアは消滅してゆく。


「お・・・お・・・・おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
視線の先で消失した、ルビア。
腕の中で消失したルビア。
リナの言葉が頭に響く。
― 彼女がずっと側にいたことに。
言われてみれば。
ホルムンクスなのだから、知らないようなことも。
彼女は知っていた。
彼の好物、癖、昔の出来事。
その全てを。
その時点で気付くべきだったのだ。
ようやく、どうして、魂を持たせなかったはずの、
ホルムンクスが、動いたのか。
その理由に気付くハルシフォム。
・・・・だが、すでに遅すぎた。


リナとガウリイの様子を確認しつつ。
アメリアに攻撃の手を仕掛けようとしていたセイグラム。
絶叫を上げるハルシフォムを前に。
今が攻撃のチャンスだとばかりに。
呆然と座り込んでいるアメリアにと向かってゆく。



ドシュ!

――― パキィィィン!!!!!!



アメリアが振り向くのと同時に。
誰かが側に移動してくる気配。
そして。
アメリアの振り向いた、その先で。
胸を黒い腕にて貫かれ。
手にした短剣が、セイグラムの仮面を叩き割っている姿が。
目に飛び込んでくる。


何かが貫かれる音と。
はぜ割れる音が。
部屋に静かに響き渡る・・・・・。


「・・・・・ナゼ?」
理解ができない。
自ら、契約の石を壊して。
あろうことか、自らその身を差し出してくるなどとは。
セイグラムにつらぬかれている、元契約者にと話しかける。
契約した本人の手により、セイグラムが、彼の魂を閉じ込めていた、
契約の石が割られ。
アメリアを攻撃しようとしたその腕は。
仮面を壊したハルシフォムを貫いていた。



「・・・・ルビアがいない世界になど・・・生きていても・・・・・。・・・・ルビア・・・・・。」
その目に涙をため。
そのまま、その場にと崩れ落ちてゆく。
   

「・・・で?どうする?まだ私達とやりあう気?」
その様子を静かにみていたリナが。
ハルシフォムの胸から手を引き抜いたセイグラムにと話しかける。
「・・・・契約の石が壊れ。契約主が死んだ今、我としては貴様らと戦う理由はない・・。」
かなりくやしいが。
このまま戦っても負けるのは、理解できる。
精神世界にある彼の本体にかかる、この二人の実力という名前のプレッシャーは。
まずまがい物などではない。
「・・感謝するがいい、命拾いしたな。人間よ・・・。」
すぅ・・・。
それだけいって。
セイグラムは姿をかき消していっていた。

「あ!待ちなさい!逃げるなんて卑怯よ!」
アメリアがおい際に。
「エルメキア・ランス!」
攻撃を一つ、放つが。
それは、あっさりと、虚空を突抜だだけで留まっていた。





アトラス・シティの役所に投げ文をし。
そのまま、町を立ち去るリナ達。
数時間のちに、役人たちが、ハルシフォム邸を訪れる。
そこで彼らが目にしたのは。
地下に横たわる一つの男性の死体と。
その床に広がる・・・・この数年間、行方不明になっていた、
人達の死体であった・・・。



    
「・・・・あんなの・・正義じゃないです・・・・。」
無言で歩くアメリアがぽつりとつぶやく。
意味が分からなかったアメリアは。
リナとガウリイから。
ルビアの肉体に、ルビアの元となっていた、人間の女性の魂。
そのものが憑依し、その肉体を操っていた。
ということを聞き出した。
ずっと、側にいたというのに。
それでも、気付くことなく。
死んだはずの恋人をよみがえらせようとしたハルシフォム。
― その結果。
この、数年間。
・・・いや、ルビアが死亡して、からこのかた。
行方不明と正確にわかっている人間だけでも。
・・・・およそ、百人。
そう、風の噂で聞いた。
「・・・・何が、大切なのか。よく考えれば・・・分かったでしょうにね?」
そんなアメリアの肩に手を置いて。
静かに空を見上げるリナ。
その姿は、いつもどおり、男性の姿ではあるものの。
まあ、リナが取る男性形態は。
あまり、女性形態と殆ど代わりがないという事実もあるが。
違うのは、そのスタイルが得に目立つ程度くらいか。
あとは、体つき。
小柄で華奢なのはそのままだが。
女性のときには、その体は丸みを帯びている。
男性の姿をしているときには、少しその丸みが余りない。
その程度の変化。
「・・・・もし、私にそんな大切な人ができて・・・。同じ目にあったら・・・どうするだろ・・。」
そうぽつりとつぶやくアメリアに。
「・・・・それは、誰にもわからないのよ。アメリア。
   ・・・そう思う自分自身ですら・・も・・ね。」
彼とて、始めからルビアを犠牲にするつもりはなかったはず。
ルビアのために、他の命を犠牲にしても。
彼女を生き返らせたかっただけ。
「リナなら、そういう目には絶対に遭わないさ。・・・・リナを残して俺が死ぬなんて絶対に!ないから。」
そんなリナの隣で肩に手を置き言い切るガウリイに。
「?何でガウリイがそんなこというのよ?ま、まあ、一応、気休めでもありがとね。」
・・・・・・・・・リナ・・・。
この言い回しでも気づいてないリナに。
多少あきれ。
「・・・・プッ!ま、リナ、ガウリイさん、気分を取り直して!次いきましょう!」
リナのあいかわらずの鈍さに少し笑みがこぼれ。
気を取り直して、青空の下、駆け出すアメリア。
「そね。気分転換に、しばらく盗賊退治のはしごをするわよ!アメリア!」
「あ!それ、大賛成!」
「おい!!リナ!アメリア!」
    
苦い思いはそのままに。
三人は、アトラスシティを後に。
さらに旅を続けてゆく。
三人の旅の果てには・・何が待つのか。

それを知っているのは・・。
全ての母なる金色の王のみであろうー。

   

   
                                       −終わり♪ー

#####################################

あとがきもどき:
  薫:・・・・・ふっ。
    やっぱり、疲れが溜まってるんでしょうねぇ・・・。
    流石に残業明けの今日。
    ・・・・折角のお休みなのに目が覚めたら・・。
    すでに十二時過ぎてました・・・(汗)
    そんな理由から、本日の午前中・・・小説のアップがまだです・・。
    さて・・・・。
    今から頑張って何処まで更新できるか!?
    まあ、何はともあれ。
    狭間の選択、いってみましたのです。
    (とゆーか、何まだ本編打ち込まずに先に後書きを?爆!)
    しっかし、頂いた小説の編集・・・。
    かなり時間がかかりました(汗)←とっとと貰った時にやりましょう(汗)
    しかも・・・寒いせいか手がうごかないぃ!(涙)
    あうあうあう・・。打ち込み間違いが多いし・・。
    何回訂正を掛けていることやら(滝汗)
    しっかし・・・・。
    この、アトラスの魔道士偏は・・・・くらい!の一言!(こらこらこら!)
    次回、あるとすれば・・・。サイラーグ偏かな?
    んでもって、セイルーン偏・・・。
    ではではvv