まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ
このお話は、あまりにスレイヤーズの児童書版としてだされた作品が何これ!?
だったので、スレイヤーズらしく改ざんしたものです。
しかし、どうやら神坂先生はこれに関してはノータッチらしい。
よく許したなぁ…いや、ほんと。
児童書かいてる南房って作者さん、スレイヤーズを理解していない、とおもうのは私だけではないはず・・・
あまりに設定もだけどもキャラが(涙
とりあえず抗議をだしてみようと画策中。
あの調子だとセイルーン編のときにナーガの正体まで間違った解釈でかかれそうだっ!!(切実
やるからにはきちんと理解してやってくれっ!!(絶叫!
あまりに理不尽すぎる児童書スレはともかくとして、気分転換にいくのですv
しかし、パラレルさん、どうしよっかなぁ?
さくっとかえすか、はたまたやっぱし一巻分の事件には巻き込まれてもらうか(まて
ではでは♪
#####################################
リトル・スレイヤーズ ~旅はみち連れ?~
「火炎球!!!」
ちょどぉっんっ!
お~し、もう一発!!
「炎の矢!!」
「「ぎゃぁ~~!!」」
何ともいえない男たちの悲鳴が辺りにこだまする。
ええいっ!
いくら悪人とはいえ根性のないっ!
いやまあ、根性がないからみみっちい悪人なんかしてるんだろうけど。
放った炎の呪文が悪人…すなわち山賊達を吹き飛ばす。
中には炎にまみれて黒こげになっている輩もいるがそれはそれ。
どちらにしても悪人に人権はないんだし。
山奥にあるありきたりな山賊の隠れ里。
あたしたちは、たまたま立ち寄ったとある村で彼らの退治を依頼された。
…まあ、連れの壊した建物の弁償かわり、ともいえなくもないが。
山賊達の隠れ家はお約束のことに古代遺跡の中にあり、滅多と人が近づかぬ位置。
どうしてこうも悪人って同じような場所を好むのやら。
ちょっとした炎の術をぶっぱなしただけで今やアジトは大騒動と化している。
「お~ほっほっほっ!!盗賊ごときがこの白蛇のナーガ様に逆らおうなんて百万年早いのよっ!」
どっご~んっ!
ベキベキ…
何やら少し離れた横のほうでは目をそむけたくなるような格好の何か。
人間だ、といったらまず普通に生きている人に申し訳ないので絶対に人外な何かとしかいいようがない。
当人いわく『白蛇のナーガ』といい、なぜかこのあたしにひっついてくるいわば金魚のフンのようなもの。
その容姿はまず、
申し訳ない度にあるかないか、という程度の布でできたまるでビキニタイプのような真っ黒な水着に黒いマント。
おどろおどろしいドクロのネックレス。
そして何よりも無意味なほどにでかさを強調しているかのような胸っ!!
くそ~、あたしだっていつかはっ!!
どこをとっても申し分のない容姿で美少女だ、と自覚しているあたしにとっての唯一の欠点。
それはなかなか胸が大きく…つまりは成長しない、ということ。
まあ、郷里の姉ちゃんも母さんも大きいのであたしもいつかは…とはおもってはいる。
思ってはいるが、何かこうむなしいのも事実。
どっかの大道芸人か何か、ともおもえなくもない格好のナーガが周囲の木々をも巻き込んでひたすらに呪文を放っている。
教訓。
自然は大切にしましょう。
マル。
敵に回すとおもしろいが味方にすればかなり面倒、もとい大迷惑。
その歩く迷惑ともいえるナーガにつきまとわれて、あげくは腐れ縁になっているこの現状。
そんなあたしはかなりかわいそうだと思う。
「ちょっと!リナ!いっときますけど私があなたと一緒にいるのはあなたと決着をつけるためよっ!
そうすれば天才魔導師の名は私のものよっ!お~ほっほっほっ!!」
どうでもいいが、毎度のことながら人の心を読んだかのごとくにときどきいってくるのは何ゆえか。
まあナーガのことだから何も考えてはいないだろうけど。
しかしこの山賊さんたち、結構はぶりがいいのか人数的には百人近くもいたりする。
これはお宝も期待できるか!?
田舎の山賊とはいえさすがはライゼール帝国内。
ここまで人数がいるのもめずらしい。
裏をかえせばそれだけまともに働く気がないやつばかり、といえるのだが。
しかしあたしとナーガの攻撃でほとんどの山賊達はすでに戦闘不能状態と化している。
残りはざっと十五、六人程度。
「さってと。とっととケリをつけてお宝をいただくわよっ!!」
「ふっ!わかったわっ!!」
あたしの声に応じ、ナーガが呪文を唱え始め……
「まて!そこまでだっ!」
突然、背の高い男が声とともにあたしたちの間に割り込んでくる。
は?
え…えっと?
格好からしてどうやら旅の傭兵か何かのようだけどまったくもって見ず知らずの人物である。
いいぬきざまに抜き放った長剣があたりにいまだにくすぶっている炎にてらされきらりと反射する。
アイアンサーペントのウロコとおぼしきもので作られたとみられる黒光りする胸甲冑。
すらりとした背の高さとその格好からしてどうやら技とスピードが売り物の戦士タイプとみた。
淡い金髪が腰のあたりまでストレートにのびている。
この兄ちゃん、何?
歳のころは二十歳前後、といったところだろう。
金髪兄ちゃんはあたしたちをかばうようにと、あたしたちと山賊の間にわってはいり、
そしてあたしたちに背をむけて山賊達にと向き直る。
え~と……
もしかしてもしかしなくてもあたしたちが山賊に襲われている、と勘違い?
もしも~し、人手はたりてるんだけど。
というか、お宝のとりぶん減るし。
「山賊ども。かよわき女子供に手をだすとはゆるさん」
…かよわき女子供って誰のこと?
ねえ?
「やかましいっ!いきなり出てきやがって!てめえ一体何ものだっ!」
そりゃそ~だ。
山賊の一人が張り上げた声におもわずうなづくあたしは間違っていないとおもう。
「きさまらに名乗る名前はないっ!」
……え~と……思わずの事態に目が点。
そりゃよくパターン的にこういうのがいるにはいるが。
ここまでお約束のセリフを吐くとは……
「…リナ」
目を点にしているあたしにナーガが横からつんつんとつついてくる。
「ちょうどいいじゃない。そいつにやらせましょうよ」
小さくこそっとあたしの耳にとささやくナーガ。
「こいつに?」
目の前であたしたちをかばう格好で立ちふさがっている男をちらりとみやる。
「楽してお宝が手にはいるならそれにこしたことはないでしょ?」
そりゃそ~だ。
ナーガの言い分ももっとも。
ナーガにしてはえらくまともな意見である。
おっし、ここはひとまず……
「タスケテクダサイ。この人達、あたしたちをつかまえて売り飛ばそうとしてるんです~」
瞳をうるうるさせてちょっと上目づかいに相手を見上げていうのがポイント。
まあ台詞がボウヨミになったりするときもあるがそれはそれ。
自慢ではないがあたしは自分がかなりの美少女だと自覚している。
ゆえにそれをも時には利用する。
男というのはいつの時代においても単純だ、とこれはうちの姉ちゃんの格言。
旅にでてその理由がよぉくわかっている今日この頃。
そしてそれは旅においても有利に働く。
「きさまら…っ!」
金髪兄ちゃんはあたしの言葉を信じたのかその声に怒りすら浮かばせて……
「やっちまえっ!」
「おうっ!」
かくして、あたしの言葉をあっさり信じ、山賊達と金髪兄ちゃんのチャンバラが開始されてゆく。
う~ん、こりゃ楽だわ。
ヒロイン役に徹してワーキャー騒いでいるとふと気付けばナーガの姿がみあたらない。
はっ!?
このスキにお宝を一人占めにする気か!?
「あ、おいっ!?」
何か金髪兄ちゃんがわめいているけどさくっと無視。
そのまま宝物庫らしきほうにとあたしもまたかけだしてゆく。
おのれ!ナーガ!ぬけがけはゆるさないわよっ!!
どうしてこう、宝物庫とかいう場所はわかりやすくつくってあるのか。
ちなみに、この山賊のアジトにおいては遺跡の中にとあるとある一室。
案の定、かけてゆく途中ナーガにおいつき言い合いをしながらもお宝さんのある部屋にとたどりつく。
「き…きさまらはっ!金のなる商品はわたさないぞっ!!」
「すべての力の源よ 輝き燃える紅き炎よ 我が手に集いて力となれ 火炎球」
「ぎゃっ!?」
口の中ですばやく混沌の言葉を唱え力ある言葉を解き放つ。
そのまま見張りとおもわしき男をさくっと倒し、部屋の中にと入るあたしとナーガ。
入口に転がっている黒い物体はほうっておく。
「う~ん、あまりいいものはないわね~」
宝石類や金貨はそこそこ。
ナーガが金貨にみとれてそっちをうばっている隙にあたしはあたしでめぼしいものを素早く物色し、
そしてそれらをすばやく外したマントの裏地にくくりつけて確保する。
ついでに常に持ち歩いている皮袋の中にもはいるだけいれておく。
この中には旅の必需品がはいっていたりするのだがそれはそれ。
どうでもいいガラクタさんたちはあとで村人たちがきたときのためにと残しておく。
近隣の村などにかなり被害をもたらしているようなので、そういうこともありえる。
ゆえに多少おいとくことであたしたちは逆恨みともいえる村人たちの非難を回避できるのである。
ちなみに没収した品々は、近くでさばくと足がつくので少し離れた場所で換金するのがミソ。
あたしとナーガがどっちがひきとるか、でもめた品はあとできめるとしてひとまず物色し終えるあたしたち。
それぞれが没収したお宝さんを袋の中やマントの後にくくりつけて、マントを再びはおるのとほぼ同時。
「お~。こんなところにいたのか。大丈夫だったか?お嬢ちゃんたち」
入口のほうから聞こえてくる声がひとつ。
ふりむけばさきほどの金髪兄ちゃんが一人。
周囲に山賊達の気配がない、ということはこの兄ちゃん一人で彼らを倒したらしい。
「え…えっと……」
まさかお宝物色がばれた!?
まあ何かいってくるようならさくっとこいつも倒して……
あたしがそんなことをおもっていると、
「しかし、うばわれた荷物をさがしていたのか?」
…そ~きたか。
たしかにそういうとらえ方もできなくもない。
「そっちの子の服はみつからなかったのか?」
「え、えっと……」
もともと、こいつはこんな格好です、とは言いにくい。
というか仲間、とおもわれるのが一番いや。
あたしが言葉をにごしていると、
「…まあ、服がダメになっただけで無事でよかったな。二人とも。
村長のいってたのは一人だったけど。他にもさらわれた子がいたんだな」
え~と?
どうやらナーガの服はやつらに破かれたのかどうかして何かがあった、と捉えたのか何やらそんなことをいってくる。
しかし、はて?
あの村長があたしたちを助けてほしい、なんていうはずは思えないのだが?
そんなあたしの思いを知ってか知らずか、
「とにかく、ここは危ない。ルミナ村の村長さんも心配してたぞ?お嬢ちゃん」
・・・・・あ~、何か話しがみえてきた。
「えっと。人違いじゃありませんか?あたしたち、ルミナ村とは何の関わりもありませんけど」
「え?でも嬢ちゃん、……小さいよな?」
むかっ!今どこをみた!どこをっ!!
ひくひくとコメカミを痙攣させつつも、
「助けてもらったことはありがとうございます。
けどあたしたちはその村とは関係ありませんし。また立ち寄ってもいませんし」
つ~かあの村は昔立ち寄ったときにナーガがむちゃくちゃしており、
再度立ち入ったら怖いことになるのが目に見えている。
「ちょっと。リナ。話の最中みたいだけど、ここ、みてよ」
そんな会話をしていると、ナーガが壁の一角を示していってくる。
「こ、これはっ!?」
そこには失われた王国のレテディウス公国がよく用いたといわれている紋章が。
しかし重要なのはそこではない。
この紋章はなぜかよく隠し扉の入口などに使われることが多いのである。
何も描かれていない壁に不自然なまでに描かれているその紋章。
コンコン。
軽く周囲の壁をたたくとあきらかに音が異なる。
「壁の音からしてまだこの奥にも部屋があるみたいね」
紋章の一部分をぐっと力を込めておす。
と。
ゴゴゴ……
重い音とともに、紋章の描かれている壁が横にとずれる。
もしかしてこれはさらなるお宝の予感?!
ナーガも同じことをおもったのか、ナーガと顔をみあわし、一言もかわさずその中にと飛び込むあたしたち。
「あ、おいっ!」
何か後のほうで金髪兄ちゃんが叫んでいるけど、さくっと無視。
飛び込んだその先は、申し訳ない程度にある明かりに照らされた狭い通路。
その通路にあるのはすでに消えかけている松明の灯り。
薄暗い中では身動きもとれない。
ゆえに。
「明かり」
光量を押さえた光の術を唱え、抜き放った剣の先にともし簡単な光源を確保する。
しばらく続く長くほそい通路。
その通路を抜けるとやがてみえてくるいくつかの小部屋。
よくよくみれば、部屋の中には何かの魔方陣らしきものがすべての壁や床においてきざまれており、
特質すべきはその部屋には鉄柵のようなものがすべてにおいてはめこまれている。
しかもそれらにも小さく魔方陣らしきものが刻まれているようである。
一見したところ、どうも封魔の魔方陣っぽい。
つまりは、魔術というか魔力を抑えたり封じ込めたりするための魔方陣。
んな代物、たかが一介の山賊が持ちえる知識ではない。
まあ直接壁に刻まれている具合と状態をみればもともとこれはあったと推測するほうが確かである。
「誰かいるわよ。リナ」
「・・・子供?」
そのいくつかある一室。
そこになぜか岩でできたベットがひとつ。
御丁寧に岩の台の上にはふかふかのお布団。
その上にちょこん、と自分の体よりも大きな袋のようなものをもっている子供が一人。
大きくぱっちりと開いたつぶらな瞳に何とも愛らしい顔立ち。
そして癖のある髪の毛。
……え~と……
「リナ。あんたいつこんな子供うんだの?」
う…
「う、うむか~!!ボケっ!!」
「だってどうみてもそのこ、あんたにそっくりよ?小さいとこまで」
「あのねっ!ナーガ!…ちょっと。ナーガ。小さいってどういう意味かしら?ん?ん?」
「そりゃ、その大草原のちいさなむ…」
すぱぁっん!!
言い終る前にそんなナーガを懐から取り出したスリッパでおもいっきりしばいておく。
うん。
あたしはわるくない。
断じて。
しかし、こりゃ、たしかに……
「え、えっと。お嬢ちゃん?」
おそるおそる声をかけるとぴくりとその子供…みたところ二歳か三歳くらいであろう。
あたしの声に反応してかこちらに視線をむけてくる。
そのぱっちりと開かれた対の瞳は海を連想させる碧い瞳。
が、しかし何よりも気にかかるのは……
「え。えっと。あたしたちはあやしいものじゃないんだけど」
どうもこちらを警戒してか、ぎゅっと袋をつかんだまま固まっている。
と。
「お~い。いったいどうしたってんだ?」
ちっ。
まだいたのか、こいつは。
先ほどの兄ちゃんが何とおいかけてきたらしく、近づいてきながら声をかけてくる。
そしてふと、どうみても石牢の中、としか思えない中に入れられているおんなの子に気づいてか、
その子とあたしを見比べつつ、
「そ~いうことか。ちょっとまってな。今、妹さんも出してやるからな」
いいつつなぜか剣を抜き放つこの兄ちゃん。
「ちょっ!?」
次の瞬間。
キッン!
金属音とともに、きれいに目の前の細かな魔方陣らしきものが刻まれている
よくわからない材質の金属のようなそれを剣の一閃とともに斬りとっていたりする。
「へ~。この人、結構やるわね」
横でナーガがそんなことをいっているけど。
たしかに斬り口もきれいな断面となっており、そう生半可な腕ではこんな切口にはならないだろう。
「と、ともかく助け出さないと」
感心したのはあたしも同じ。
だが今は中の女の子を助け出すのが先である。
「え、えっと。大丈夫?」
座っている女の子の目線にあわせて問いかける。
その瞳に恐怖の色は浮かんではいない。
が、こんな小さな子なのでよくわかっていない可能性のほうが高い。
「ここは危ないから。いっしょにいこ?」
あたしの言葉にこくん、とうなづき抱えるようにしていた袋を背負い……
どうやらこの袋は背負うタイプの袋だったらしい。
とにかく、女の子はその袋を背中に両手を通して背負い、きゅっ、とあたしのマントをつかんでくる。
そのまま一緒にひとまず牢の外にと歩き出す。
う~む。しかし……
「そっか。ルミナ村の村長がいっていたのはそのこか。よかったな~。お姉ちゃんがみつかって」
おひこらまて。
たしかにあたしもびっくりするくらい、この子はあたしのミニチュア版、といってもいいくらいにそっくりだけど。
違うのは髪と瞳の色だけだし。
「え~と、剣士さんが探していたのはこのこ?」
名前もわからない兄ちゃん、ではたぶんわるいし。
なので無難な問いかけをする。
「あ。そういえば自己紹介がまだだったな。オレはガウリイ。見てのとおり旅の傭兵だ。お嬢ちゃんたちは?」
ひくひく。
お嬢ちゃんよばわりされておもわずコメカミがひきつるものの、
「いえ、なるのほどでは……」
「お~ほっほっほっ!この私は白蛇のナーガ様よ!リナの最強最大のライバルよ!お~ほっほっほっ!」
あ~、たしかに最凶、だわ。うん。
「そっか。リナお嬢ちゃんにナーガお嬢ちゃんっていうのか」
ナーガまで嬢ちゃん、ときたよ。この兄ちゃん……
「君は?」
「……エル」
きゅっと名乗ったと同時にあたしの後に隠れるエル、と名乗った小さな女の子。
「しかし、女の子ばかりの旅っていうのは物騒だな。他につれは?お父さんか誰かいないのか?」
「い…いえ」
つ~か郷里の父ちゃんがいたらそれこそすごいことになりそうである。
「そりゃあ物騒だなぁ。まだこんな小さな妹さんもいることだし。
よし。乗り掛かった船だ。オレがお前たちを家まで送ってやろう」
おいおい、まていっ!!
一人勝手に決めて、ぽんっ、と手をうっているこの兄ちゃん。
髪でかくれてこの兄ちゃんからはみえないだろうが、ひくひくと自分でコメカミのあたりが痙攣しているのがはっきりとわかる。
「で?あんたたちの家は?おうちはどっちだい?」
ムカムカ。
どうもあたしに対しては完全に子供に問いかけるようにナーガとは口調すら変えてきいてくる。
「いえ、あの。あたしたちは旅をしていまして。別に何かのアテがあるわけでもないんですけど。
アトラス・シティにでもとりあえずいってみようかな、なんておもってるんですけど」
とにかくてっとり早く厄介ばらいをしたい。
まあ、アトラスにむかっているのは嘘ではないし。
女の子は今だにあたしの足元にしがみついたまま。
…ま、ナーガの格好と、そして剣を携えたわけのわからない兄ちゃん。
その二人よりははるかにあたしのほうが安心できるのであろう。
ナーガの格好をみて大人ですらひるまないモノなどいないのだから。
小さな子供ではおしてしるべし。
「そうか。うん。そうだったのか。いや、大変だね。君たちも」
「「…は?」」
なぜかあたしの説明にひとり納得し、しみじみとつぶやくこのガウリイ、と名乗った兄ちゃん。
思わずあたしとナーガが間の抜けた声をだすのとほぼ同時、
「いや、わかってる。いろいろとあったんだろう。いろいろとね」
「いえ、その……」
「あ~。何もいわなくていいよ。わかっているんだから」
「「・・・・・・・・・・・・・・・」」
思わずナーガと二人、顔を見合わせる。
どうやらこの兄ちゃん、
”聞かれたくないことを聞かれてしまったためのリアクション”
だとあたしとナーガの表情をみて勝手に誤解したらしい。
ナーガのほうは隠し扉の先にあったのがお宝でなくて子供だったので少しばかりがっくりきているだけなのだが。
「いえ。あたしはただ単に世の中をいろいろとあちこちみてまわりたくて……」
つうか、世の中をみてこい、と郷里の姉ちゃんに放り出されたのだが。
ナーガはたしか修行とかいってたけど、ナーガの場合はただ道に迷ってるだけだ、とあたしはおもっている。
そんなあたしの真実の台詞に対し、
「いいんだよ。あわてて言い繕わなくても。あれやこれやと尋ねたりはしないからね」
子供を諭すようにといっくてる。
…ダメだこりゃ。
「そうか。よし。それじゃあオレがアトラスシティまでついていってやろう」
…ちょっとまていっ!!
「い、いえ。そこまでしていただくわけには…」
冗談ではない。
ここからアトラス・シティまでは約十日はかかる。
そんな道中、こんなムカナカする子供あつかいする兄ちゃんと一緒なんてっ!
「遠慮はいらないよ。君たちはまだちいさいんだから」
ムカムカムカ。
誰が小さい!誰がっ!!
「そっちの人も男手があったほうが楽だろ?
子供二人の面倒をみるにしても、また悪い奴らのちょっかいに巻き込まれない、ともいえないし」
こ…こいつ、こともあろうにナーガがあたしの保護者がわりとおもってるのか!?
ンナやつ保護者にもったらそれこそまちがいなく人の道を踏み外す。
というか保護者してるのはあたしのほうだってばっ!!
「それにもう夜もおそい。まず近くの村で服を調達しないといけないだろ?」
あ~、そういやこいつ、ナーガの格好が今だに下着か何かだと勘違いしてるままだったんだ。
説明するのも面倒なので説明する気もさらさらないが。
「遠慮します」
すかさずいったあたしに対し、何か下のほうからつんつんとマントがひっぱられる感触が。
「リナおね~ちゃん。あたし、おなかがすいた」
え~と……
どうやらこの子、あたしたちのやり取りであたし達の名前を覚えたらしい。
「いつ残党が襲ってくるとも限らないしな。ともかく安全な場所に移動しよう」
別に残党が襲ってきてもあたしたちの敵ではないが。
しかし、たしかに殺伐シーンは小さな子供にみせるものでもないだろう。
「ルミナ村の人たちも心配してるしな」
何か説明する、というのか説明するのもかなり面倒。
というかこの兄ちゃんのことだから話しをききそうになさそうである。
「…は~……」
溜息をもらすあたしとはうってかわり、
「お~ほっほっほっ!おごってくれるならばどこでもついていくわよっ!お~ほっほっほっ!」
こらまて!
余計に話しをややこしくしそうな台詞をナーガがのたまわる。
そんなナーガをしばらくみたのち、そして視線がなぜか憐みの視線になり、
「苦労してるんだなぁ。よっし、おもうぞんぶん好きなだけたべさしてやろうっ!」
ああっ!
完全に誤解されたっ!
ちょっと!その憐みの視線はやめてよねっ!
しかし、ルミナ村にはよりたくない。絶対に。
というか以前の弁償をしろ、ともいわれかねない。
こ、ここはひとまず……
「ルミナ村よりこっちのパミラ村のほうが近いですし。それにもう遅いですし」
ここは言いくるめるに限るっ!
相手はどうもこちらを力のない女子供だ、とおもいこんでいるようだからそこにつけこむ隙があるっ!
「そうか?それもそうだな。夜道の旅路は危険だな。
なら、パミラ村におくったあとでオレは子供は無事に家族と再会できて無事だってルミナ村に伝えてくるよ」
どうやら厄介ばらいができそうである。
結局のところ、あたしたちは、小さな子供【エル】を伴い、近くのパミラ村へと移動することに。
世の中、親切な人、というのは一応いるらしい。
つうかよくあれで旅の傭兵なんてできている、とおもうが。
道すがら聞けば、ルミナ村の村長に山賊に襲われさらわれた小さな女の子を助けてやってほしい。
という依頼をうけてあの場にやってきたらしい。
特長とか名前は教えてもらったらしいのだが、当人いわく、覚えていない、といわれたときには心底あきれたが。
とにかく村に一件しかない宿屋。
その宿代をもガウリイ、という兄ちゃんははらってくれてしかも食事代とばかりにいくばくかのお金をもおいてった。
あえてあたしたちはその言葉に甘えてもらえるものいただいておいた。
いくらムカムカする兄ちゃんとはいえ、お金さんには罪はないっ!
「で、リナ。その子、どうするの?」
今だにあたしにぺったりとくっついて離れないこの子。
しかし、みればみるほどあたしによくにているので何かこう、他人、という気がしないが。
「やっぱりリナ。あんたの子なんじゃないの?」
「アホっ!あたしはもうすぐ十五よっ!この子はどうみても二歳か三歳でしょうがっ!」
逆算してほしい。
そんなことはありえるはずもない。
そもそも、あたしは迷うことなくれっきとした乙女である。
「じゃあ、リナの妹?」
「あたしに妹はいないわよ?」
姉ちゃんならいるが。
あたしが旅にでたあとで産まれていたとしても、あたしが知らないはずもない。
…いや、あの家族のことだから驚かそうとおもってそれくらいしてそ~ではあるが……
あたしが里帰りするたびにこっそりと隠してたりとか、他の人に口止めしてたりとか…あ、ありえる……
「そりゃまあ、うちの母さんは金髪だけど……だけど妹が生まれたって聞いたことないわよ?
一応、定期的に里帰りはしてるし」
どうやらあたしも郷里の姉ちゃんも母さんか父さんの祖父か祖母ににたらしい。
ちなみにあたしの父ちゃんの髪の色は黒である。
つまりはあたしと姉ちゃんの髪の色は栗色なれど、両親の髪の色は黒と金。
まあ、あたしはうまれてこのかた祖父母のことなんてきいたことはないし。
そもそも、あの二人、もともとは旅のさなかに流れに流れてゼフィーリアに落ち着いたっぽい。
何でも母さんの家がもともとゼフィーリアにあったとかその関係で。
祖父母といったものにはあたしは出会ったことは一度もない。
まあ、母さんたちいわく、あの親がしぬとは思えない、どっかで遊んでるんでしょう。
とのことらしいが……
「でも、ここまでそっくりなんだからあんたの親戚か何かの子じゃないの?」
珍しくナーガにしては今回はまともな意見を続けていうもんだ。
さすがのナーガもけっこう飲んだっぽいからついによっぱらったか!?
しかし、親戚の子、というのはそれはあたしも考えた。
もしくはものすっごい他人の空似か。
「え~と、エルちゃん、だったわよね?お父さんやお母さんは?」
あたしの問いかけにふるふると首を横にふる。
う…うわ~…もしかして聞いてはいけないことを聞いてしまったんじゃぁ……
ナーガなどはあわてて視線をそらしてるし。
「いくあてあるの?」
ふるふる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
どうしよ?
どうやらいくあてもないらしい。
「あ、でももしかしたらこの子のことを誰かが知っているかもしれないし」
「そ、そうね」
こんな小さな子供に情報を求めるのが無理、というものだ。
あたしの言葉にナーガがうなづき、
「じゃあ、リナが責任もちなさいよね」
ナーガに任せるなんて怖いことできないし。
何より本当に親戚の子で放り出したと姉ちゃんや母さんに知られたら…
ぶるっ。
か、考えまい。
「え、ええと。とりあえず、おちつける所が見つかるまでは一緒にくる?あたしはリナ。で、そっちの変なのがナーガ」
「ちょっと!誰が変なのよっ!」
あたしの声にナーガが声をあげてくるがあんたは自覚がないんかっ!
あたしの言いたいことがわかったのか、女の子はにこっと笑い、
「うん。あ、じゃあタダはわるいからこれ、どっちかあげる。あたしにはひつようのないものだし」
いいつつも、にこりと笑みを浮かべたままでエル、と名乗った女の子は背中の背負い袋をおろし、
ごそごそと袋の中をしばしまさぐりはじめる。
やがて小さな箱のようなものと皮袋を一つ取り出し床の上にと置いてくる。
ちなみにあたしたちはすでに食事を終えてひとまず宿の部屋にと入っている状態。
ちょこん、とベットの上にこしかけている姿は何とも見ていてほほえましい。
つうかあたしもこんな時期があったよな~。
あのころは、姉ちゃんのすごさを知らずに絶対に姉ちゃんに勝とうと必死になってたっけ……
「何?これ?」
あたしの問いかけににこにこしたままで何もこたえてはくれない。
箱に描かれている紋章らしきものがあたしとしては気になってしょうがないんですけど。
ゼフィーリアの城でみたことのある【神魔の樹】と言われているモチーフに【魔族の樹】と呼ばれているモチーフ。
その二つにとてもよくにた模様。
それらが対をなすように箱の両面に刻まれている。
そして箱の表面には何らかの魔方陣らしきものが刻まれている。
はっきりいってみたことないやつ。
失われた古代文字が描かれているようにもみえなくもない。
箱を手にとるとそれはとても軽く、中に何がはいっているかは一見したところわからない。
そしてまた、
「ちょっと!?これって金!?」
何か横ではナーガが小さな皮袋を開いて中を確認しているが。
のぞきこんでみれば、その中はどうやら砂金がぎっしりとはいっているらしい。
量からしてちょっとした財産である。
…もしかして、もしかしなくてもこの子ってどこかすごいところのお嬢様?
と、とにかくまずはっと。
すばやく頭の中で計算し、
「じゃあ、あたしはこっちをもらうわ。ナーガはそっちね」
いって箱を手にとりナーガに言い放つ。
「お~ほっほっほっ!リナ!やっぱりヤメタとかはなしよっ!お~ほっほっ!これでこの金は私のものよっ!」
今が夜だと失念してないか?
まあ、ナーガにとってはいつものことだが。
「で、臨時収入があったところで今までにあんたに立て替えたお金の一部を返してもらうわね」
ひょいっ。
いってナーガの手の中の皮袋をひょいっとつかみにっこりと言い放つ。
「ちょっと!リナ!それは私のっ!」
「じゃ、今まであたしがあんたに立て替えた宿代とか食事代。
そのほか弁償代にいたるまで、そのほかもろもろ。それらの代金をきっちりとかえしてもらえるかしら?」
「そんなっ!リナちゃん。私とあなたの仲じゃない~」
ええい!しつこいっ!
と。
「いたぞ!とうとう見つけたぞ!」
いきなりバン、と宿の部屋の扉が蹴破られる。
ふとみればそこにはなぜか廊下を埋め尽くすトロルの群れ。
そしてその中に見え隠れしているミイラ男…と一瞬おもったが、
よくみると体を包帯でぐるぐる巻きにしている魔導師らしき男の姿だったりする。
しかし当然あたしたちはこんなミイラ男もどきに知り合いなどいない。
「う~ん。人違いじゃありません?それに乙女の部屋に入り込むなんて。そっちこそ何さま?
あたし、ソフィアっていいますけど。きっとあなたたちの探している人とは……」
冷やかな目でみつつも、ひとまず偽名を名のっておく。
面倒なことに巻き込まれたくないし。
そもそもここには小さな子供もいるんだし。
が。
「やかましい!名前なんぞ知るかっ!とにかくお前たちちょっと前、野盗のお宝をごっそり荒らしていったやつだっ!」
え~と?
「ともかく、人違いです。あたしたちは身も知らないミイラに狙われる覚えはないですし。それに他の客への迷惑です」
つうか、客はあたしたちだけ、というど田舎なのだが。
「とぼけるなっ!あの隠れ家でこの俺様をこんな目に合わせたのはお前だろうがっ!
おまえと!そっちの変な格好のドクロネックレスの女の顔を忘れるとおもったか!?」
はて?
そういわれてもまったくもって心当たりなし。
そもそも、悪人いじめ…もとい退治は日常的にしているのでいつのことだか皆目不明。
「お前のおかげでこの大怪我だっ!」
…つまり、こいつは悪人に雇われてた魔導師ってところか。
というか…かなり間抜け、の一言である。
普通、魔導師ならば炎にまかれたりけがなんてしても呪文でなおせるぞ?
「しかし。あのとき奪っていった品をすべてかえすならそれでよしとしてやるが?」
言外にこれだけの数のトロルを相手にはできないだろう、というのがあるらしい。
しかし!あたしたちの実力を舐めてもらってはこまるっ!
あたしが口を開こうとしたそれより先に、
「お~ほっほっ!いうにことかいて人のものをよこせ、ですって!?この白蛇のナーガ様もなめられたものねっ!」
無意味に胸をそりかえらせながら高笑い。
……いやな予感。
「エルちゃん!逃げるわよっ!」
すばやくさっきの箱をつかんで袋の中にエルちゃんが放り込むのとほぼ同時。
あたしも又、自分の荷物をひっつかんで窓を開け放つ。
「浮遊!!」
「火炎球!!!」
あたしが窓を飛び出すのと、ナーガの声が同時に重なる。
どぐわぁぁっん!!
…夜の村の中。
紅い炎がの場を覆い尽くしてゆく……
しかし、敵も見境がない、というか何というか。
「とうとうこの村にまで……」
呆然と村人の一人、宿屋のおかみさんが燃える宿をみつつ横でつぶやいている。
どうやら盗賊か山賊の襲撃と勘違いしてるらしい。
まあある意味正しいが。
おそらくどっかの残党がしかけてきて、いつものように何も考えていないナーガが・・というのが正解なのだが。
嫌な予感がして荷物をひっつかんで窓から外にでたのは大正解だったようである。
しかし、それをあえていうこともない。
ここはおかみさんには勘違いのままでいてもらおう。
「あんたたち、大丈夫だったかい?もう一人は?」
あたしとエルちゃんしかいないのをみて心配そうにきいてくる。
「あ~、アレなら大丈夫ですよ」
というか殺しても絶対にアレは死なないし。
ナーガを倒すならば熱湯をかけるのが一番かもしれない。
「まったく。宿は建て替えはきくけど、お客様に何かあったらそれこそ取り返しつかないからね」
そんなことをいってくるやどのおかみさん。
確かに、こんな小さな田舎の宿は信用が第一、ではあろう。
こんな小さな村など信用一つでさびれもすれば発展もする。
「っ!?」
やどやのおかみさん、もといおばちゃんが悲鳴に近い声をあげてくる。
見れば炎から免れた数匹のトロルたちがあたしたちの周囲を取り囲んでいたりする。
トロルは人間よりも通常、二回りほど大きくそれに比例して体力がありその動きも敏捷。
そして再生能力の速さにより生半可な傷はあっというまに治ってしまう。
ゆえに倒すならば一撃で。
しかし、炎をこのままほうっておいて他の家に燃え広がってもわるいし。
ここはひとまず。
「おばちゃん。この子と荷物、お願い」
いいつつ荷物と女の子を預けだっとかけだす。
向かうは当然トロル。
やたらおおぶりしてくる一撃をさけ右手をくるりとトロルの腰にとあて支点にしくるのと反回転。
そして次の一匹へ。
小柄でじまんではないが体力にも自信がある。
ついでに動きが早くなるオリジナルの十も自分自身にかけている。
トロルたちはといえばまず、倒すべきは力のない子供や大人よりまずはあたしを先に、
とおもったらしくまんまとあたしの挑発にのってくる。
ある程度二人からトロルたちを引き離す。
ふと気づけばぐるのとあたしは囲まれている格好になっていたりするがこれもけいさんのうち。
「さってと……」
仕掛けは済んだ。
あとは……
ザッン!!
あたしが走りつつもひろっていた小石を手にするとほぼ同時。
「お嬢ちゃん。大丈夫か!?」
え~と……
みればいつのまにやらやってきたのか例の金髪兄ちゃんの姿が。
そういいつつも残りのトロル達に彼はそのまま斬りかかってゆく。
「「ぎぐぎゃ~~!!」」
何ともいえない悲鳴があたりにコダマする。
何のことはない。
例の金髪兄ちゃんことガウリイのつけた斬り傷により身動きできないダメージをうけたらしいトロルたち。
が、その傷はあっというまにみるまにひろがり更なるダメージを追加する。
「なっ!?」
その光景に驚いたのか剣をもったまま、呆然とたちつくしているガウリイの姿。
傷は四方八方に広がり続け、やがてトロルたちはただの肉塊もとい、肉片となり果てる。
「消化弾」
術が成功しているのをちらりとみたのち、あたしはあたしで宿のほうにとかけてゆき、そのまま消化の術を解き放つ。
アレは直視するのはちょっと何なのであえて逃げたのは内緒である。
何しろ直視したら夢でまでうなされるし、あれは。
「お~ほっほっほっ!お~ほっほっほっ!」
半壊した宿の仲。
無意味に響き渡る高笑いがひとつ。
どうでもいいが、ちょっぴしマントが焦げてないか?ナーガのやつ。
「ナーガ。あいつらは?」
「何か逃げていったわよ?この白蛇のナーガ様におそれをなしたのね!お~ほっほっほっ!」
逃げた、というのはかなり怪しいぞ。
もしかしたらこの燃えて崩れた瓦礫の下に埋まっているのかもしれないが。
だからといってわざわざ確認してやるギリもない。
そもそも、手が汚れるのも術を使うのも面倒だし。
何よりも悪人にそこまでしてやる義理もない。
「悪かったねぇ。お嬢ちゃん達。うちの家でかわりに休んでおくれ。宿代はいらないからさ」
ラッキー!!
あくまでも悪人による侵略行為、と思っているらしくそんなことをいってくる宿のおばちゃん。
何でも村長のきまぐれでこの宿をつくったとき食事のときにいってたし。
「もう夜もおそいし。じゃ、おねがいします」
「お~ほっほっほっ!お~ほっほっほっ!」
夜空に響く高笑。
あたしたちはお言葉に甘えて、おばちゃんの家。
つまりはこの村の村長の家へと移動することに。
「しかし。あんたたちも本当に災難だなぁ。一日に二度も山賊の一味に襲われるとは」
村長の家にと案内され、まずはテーブルにと案内されるあたしたち。
何やら何でもどってきたのかわからないが、ガウリイとか名乗った男性がいってくる。
そういえば、こいつにきちんと説明するのをわすれてたっけ?
ま、いっか。
村長の家にたどり着き、まずは気持ちを落ち着けてもらおうとおもったのか、
あったかい牛乳があたしたちにとふるまわれる。
外では何かトロルの死体の始末に村の男たちが駆り出されているのかときどき声が聞こえてくる。
「しかし。何かイヤな予感がして急いでもどってきてよかったよ。
お嬢ちゃんたちを助けたのにオレがいなかったせいで死にました。では寝ざめがわるいしな」
いって何やらかるくわらうこのガウリイという兄ちゃん。
いや、いなくてもまったくもって平気だったってば。
「でも、宿代まで戻してもらうなんて。ここまでしていただいてこちらこそすいません」
ちなみに、一度あげたお金だから、とガウリイは宿代をあたしたちにわたしてきている。
人がいいというか何というか。
「いやいや。本当に災難だったねぇ。ここ最近はこのあたりで山賊の被害が増えていたからね。
聞けばあんたたちも襲われたんだって?一日に二回もとは。領主さまは何をしているのかねぇ。本当に」
どうも村長さんまで勘違いをしているらしい。
「あんたたち、三姉妹での旅も大変だね」
ぶぶぅっ!
「ちょ、ちょっとまってください!!こいつとあたしは他人ですっ!!」
おもいっきり口に含んだミルクを吹き出し、間髪いれずに抗議する。
「お~ほっほっほっ!私の妹はもっとかわいいわよっ!」
ナーガにかわいいっていわれる妹…その容姿と性格がかなり怖い。
気にしないことにしよう。
うん。
「おや。ちがったのですか?」
「まあ、旅は道づれ、というしね。はい。スープ。体があたたまるわよ」
以外そうな村長さんの顔と、そんなことをいいながら笑顔でお皿をもってくるおばちゃんの姿。
何だか完全に宿を壊したのが奴らだ、とおもっているのがしのびない。
だけど下手に真実をいう必要性もないから、いっか♪
しばしたわいのない会話をしつつ、あたしたちは今日のところはこの家で休むことに。
…どうか滞在中。
宿を燃やして壊したのが実はナーガ、だ、とばれませんように……
そう心の中で願いつつ……
-続くー
HOME TOP BACK NEXT
#####################################
あとがきもどき:
薫:ちなみに、これ、発売当初からちまちま~~と大学ノートのA4に書き続けていたりします(笑
気がむいたらかいているのでまだ完結はしてませんけどね~
しかし、書いてみてわかったけどシルフィールの活躍の場がない(苦笑
あえていうなら、彼女は悲劇のヒロイン?の位置かな?
ではまた、次回にてv
次回で旅のさなかの連続襲撃にいく予定v…P数的にまだまだあるけど何話しになるのかな?
ちなみに、ここまでで大学A4ノート6ページ分です。
何はともあれまた次回にて♪
2009年4月4日(土)某日
HOME TOP BACK NEXT