リナ達の干渉   第27話


キャナル達が、その空間に突入した直後。
一気に闇が襲い来る。
「きゃぁぁ!!やっぱりぃぃ!」
泣き始めるキャナル。
「ちょっと!キャナル!!分かってたの!?」
必死に機体を保ちつつ、いっているのは、ミリィ。
「だって、ここ、エル様とユニット様が作られてるっていう、空間なんですよ!」
その言葉に。 
「・・・まあ、それは、おいといて。」
おいとくって・・。
思わず、キャナル達の思考が一致する。
ケインがつと、目の前の闇の空間を見据える。
「―でてきたらどうだ?」
「・・・・何かいるな。」
同時に言い放つ、ケインとゼルガディス。
ゆら・・・・・。

『お願いです・・・あの子を・・・オブジェを止めて・・・・。』

闇の中。
ただよう人影は・・・。
栗色の髪に紅の瞳。
「・・・・リナ・・・じゃないな?」
その容姿は、どことなくリナに似ている。
かつての、リナ=インバースの姿に。
リナスレイヤー=トゥエル=ウル=ナイトメア。
その姿におけるリナの姿においては。
容姿は同じでも、まったくといっていいほどに、雰囲気から何から違う。
今は、リナはリナスとしての姿に近い姿で降臨しているのだから。
すっと、目を細めて、目の前の残像に向かっていうケイン。
『あの子は・・・・もう、私の声は届かない・・・・。』
ぽたり。
リナによく似た女性の瞳から。
残像ともいうべき、姿が透き通った姿から。
真珠のような涙が零れ落ちた。



「今回の、実験は、成功のようだな。」
こぽこぽこぽ・・・。
ケースの中で漂っている赤ん坊をみつつ、満足そうにうなづく男性。
「長官・・もう、こんな恐ろしいことは・・・。」
おずおずと、その傍らでいっているのは、栗色の髪に紅の瞳の、どこか幼さが残る女性。
見た目の年齢は、二十歳前後。
その服装からして、研究員の一人であることには間違えようがない。
この場には、同じ服装の、そして、星をかたどった、腕章をつけている、人々がひしめき合っている。
そして、ずらりと並ぶ視界の先のケースの中には。
姿が留まっていない、単なる肉の塊が累々と並び。
それらを取り出して、融合装置に入れて、処理している人々の姿も見え隠れしている。
ダン!
ガラスケースを叩きつつ。
「何をいう!!これこそが、我らが勝利するきっかけとなるもの!」
世界はすでに混沌と化していた。
ある場所で。
負の感情を糧とする戦艦が開発されてのち。
あっというまに、瞬く間に銀河は、消滅していっていた。
そして、次の兵器を生み出されないように。
その場所を衝撃し。
次の破壊を防いだ。
と、彼らは思っていた。
・・まさか、そこで、その兵器に対抗しうるべき、新たなる装置・・
・・・つまりは、記憶を閉ざされている、漆黒の竜神が目覚めているということもしらず。
今、銀河には、六対の畏怖たる戦艦が存在している。
抵抗すべく手もなく。
そして、ここ、ある惑星では、その対策として、
頭脳明晰、精神生命体に干渉力がつよい、破壊兵器として、生命を生み出していた。


「お前は、兵器だ。」
そう、物心ついたときからずっと育てられていた。
そして。
勝つためには、あらゆる精神を支配下におく。
ということも、徹底して、教育させられていた。
物心つかない時分から、そういうふうに育てられた彼は愛情というものを知らなかった。
唯一。
「はい。オブジェ。」
兵器としてではなく、ましてや、実験生物としてでもなく。
彼本人として扱ってくれた女性。
― それが、彼女。
エレナ。
彼女は、ここの中枢たる博士であったのだが。
軍の長官のやり方には反対派であった。
―生命をもてあそぶなど。
しかも、その生命も、ただの道具としてしか扱わない。
というその姿勢に。
「・・・こんなのだから、この世界は滅びに向かっているのよね・・。」
「エレナ?」
きょんとするようやく二歳になったばかりのオブシディアン。
彼の成功とともに、次々に第二、第三のオブシディアンが作り出されていた。

そんな中。
「くぅ!!!!!ダークスターが攻めてきた!!もう!!」
空に浮かぶは、逆五紡星。
これが発動すれば、生命はその心の中の恐怖に取り込まれ死滅する。
すでに、気づけば、生き残っている銀河は・・・もはやここだけになっていた。
「何・・何なの!?エレナ!?」
自分をかわいがってくれているエレナにはなついていたオブシディアン。
「― 逃げなさい!!!!オブジェ!」
がばっ!
いうなり、オブシディアンを抱きかかえ、
一つのエレナが秘密裏に開発していた装置の中にと彼を押し込める。
― 空間転移、次元転移装置。
まだ開発途中ではあるが。
・・・・・この子は・・死なせるわけにはいかない。
「・・・・元気でね?」
「エレナ??」
ちゅ。
いつも、お休みの前にしてくれる、そのキス。
しかし、エレナの顔は涙で濡れている。
「・・・貴方には生きる権利があるの・・。私達の悲劇を・・・繰り返さないためにも・・。」
「博士!転移装置、機動しました!」
「博士!もう、ここも・・!」
エレナの人柄で、勤めていた心ある人達が。
最後まで、エレナとともに、迎えることをのぞみ。
そして。
「いきなさい!!!!オブジェ!」
「・・・エレナも一緒に!」
カッ!!!!!
まばゆい光とともに。
転移装置が掻き消えたその刹那。

ごっ!!!

轟音がしたかと思うと。
後には・・・・。
銀河があった形式すらもなくなっていた・・・・。


「う・・・ここ・・は?」
目が覚めるとまったく知らない場所。
かろうじて、エレナがその身を守るために、渡してくれていたブレスレット。
その小さなブレスレットに。
エレナの知識、すべてが埋め込まれていた。
どこかの、森の中らしい。
三歳になるかならないかの彼は。
一人、まったく知らない世界にと送り込まれていた。
―どこにいても、私と話せるから・・。
そういわれていたはずのブレスレットからは何の応答もない。
離れているから。
そう自分に言い聞かせようとするが。
自分が消え去るその刹那。
確かに、彼は、銀河の悲鳴ともいうべき、精神世界において悲鳴を聞いていた。
それが何を意味するか・・。
「僕は・・・・僕は・・・・。僕は、すべての精神を従えて、悲劇を修復させるもの・・・。」
その脳に叩き込まれている彼の存在する理由ともいうべき、作られた理由。
その世界は、すでに、彼は滅び去っていることなど知る由もなく。
かさり。
知らない場所で。
彼は第一歩を踏み出していた。

― すべての精神ともいうべき、魂を従えて。悲劇を終了させるべく ―



「・・・そ・・んな・・。」
キャナルはここにいたり。
彼―オブシディアンが。
かつて、自分が、キャナル=ヴォルフィードとして。
人類に作り出され、それに同化したときのことを思い出す。
その当時、人間達は、あきらかに、精神世界をも支配しようとして。
始めに、魔王であるダークスターたちの魂をもった機体を作り出してしまったのである。
当然、依り代があるがために。
力をつかって実体化する必要がない。
というために、それを逆手にとり。
行動しようとした彼らであったが。
機械というその束縛によって、一時期。 
記憶を飛ばしてしまったことから、あの戦いは起こりえた。
それは、キャナルにもいえることなのであったのだが・・。
そして。
エレナが作り出していた装置。
それは、四界の世界をつなぐ装置。
それに近い試作品であったのである。
それを察知して。
ガルヴェイラは、そこの銀河を襲撃したのであるから。
「ちょっとまて。すると、何か?あのオブシディアンは・・人が生み出した・・・。」
それが何を意味するか。
人は、踏み込んではならない域までふみこんでしまう。
その典型。
その姿が、以前前世で、曽祖父に合成獣にされてしまった、自分の姿と重なる。
思わず、その自分と重なり、目を見開くゼルガディス。


『私が試作品として作り出していた・・装置は。彼をあの・・・二千年後の・・。
  赤の竜神と赤瞳の魔王の世界に送り込んでいたんです・・。』
エレナの残留思念は。
淡々と、キャナル達に語りかけてゆく・・・・・




「何考えてるの?その王は・・。」
はき捨てるように、レティシアがつぶやくと。
「同感ね。」
「これに関しては、私も同感だな。」
まったく同時に、同意するサミィとイーザー。

『王は・・・・自らを滅ぼすものを生み出す・・。その女性を捕らえたかったんです・・。
  そして・・・その子を自分の我が子とするために・・・。』

イブの体内で。
語りかける、封印されていたウラノフェンの本来の自我というか意識。




彼らの世界には一つの伝説があった。


― 光と闇に祝福されし母なる存在 すべてを包み込むべき存在を生み出す礎とあいならん ―



それは、ここの、監視者クラフトルイスと、神魔の王であるエミーリアキャロラインが兼任しているもう一つの隠れた役目。
それは。
ここで、ある程度の、新たなる監視者となるべく魂を育成すること。
下地を作り出し、そして、下地が出来た時点で、その生み出された新たなる魂は。
本格的に、新たなる世界を任されるべく、その任につくために研修という名目で育成機関に入る。

この銀河を治めていた王は。
それが、自分を滅ぼす者となると判断し。
そしてまた。
その真実をしらないがゆえに。
その力を我が物としようとしているのであった。
彼の先祖もまた、その伝説によって、誕生した王であったというのは、余りにも有名すぎる話であったがゆえに。
その呼び名。
兇王。
始めのころは、よき王であり。
彼が即位してから、数億年は、確かに平和だったのである。
だが・・・今は・・・・・。


「母さん!」
その外見どおりに、見た目、まったく女の子のように成長してゆくウラノフェン。
「何かよんだ?」
ウラノフェンには、生まれつき、特殊な力が備わっていた。
それは、言葉が通じない者達とも、心を通わせるこどかできる。
というもの。
そして、それらの力を借りることができる。
というもの。
平和な時代では、巫女としてあがめられていたであろう。
キョトンと、くるくると、その幼い水色の瞳で母親たちを見上げるその表情は、どこをどうみても、女の子そのもの。
逃げ惑う生活の中で。
ウラノフェンは、すべての希望となりかけていた。
何しろ、彼女の側にいるだけで。
こころやすまる空気に包まれるのであるからして。
「喜んで。ようやく、資金が集まったわ。」
イラベルの言葉に顔を曇らせて。
「・・このままでも、私、幸せだけど?」
「そうはいかんからな。」
父親代わりのウランの言葉。
何しろ、この三年で。
どこから情報がもれたのか。
必死で、ウラノフェンを我が物にしようとする、王以外の存在も目立ってきている。
それらの追撃を逃れつつ。
また、ウラノフェンを助けるために。
いろいろなルートで集められた援助金。
「とりあえず・・これで、前金は用意できた。」
「だから・・。わかって、これは貴方のためなのよ?」
王に捕らえられたら。
どうなるのかは分からない。
噂では、水晶に閉じ込められた女たちのオブジェが、こころない人達の間で流行しているとかいないとか。
― そんな目には、この子にはあってほしくない。
願いは全員、みな一緒。
この三年間。
ウラノフェンのその特殊な力によって。
かろうじて、追撃の手を免れていた彼らにとって。
まさに、この子は、すべての希望に他ならないのである。


「―話がついた。・・・ナドゥーライトだ。」
集団を率いていた男性の言葉に。
「あそこなら、この子も大丈夫ね。」
まだ王の手が伸びていないその星。
あそこなら、この子を隠すのにも手術にも最適であろう。
「院長が二つ返事で了解してくれた。―すぐにも出発するぞ。」
その言葉に。
ウラノフェンの未来を守るべく。
彼らの集団は、惑星ナドゥーライト。
ナドゥーライト星系にと出発していった。


『・・・・母も誰も・・知らなかったんです・・。いえ、疑う。ということすらも、もはや、出来なかったのかもしれません・・・。』


殺伐とした世の中というか、王が治めている銀河である。
そんな中で、なぜ、その星系だけが、未だに手が伸びていないのか。
それをまず疑うべきだったのであろう。
だが・・・。
何よりも、周りから狙われている今の状況では。
とにかく、ウラノフェンを助けることを。
手術という手段を・・・彼らは優先させていたのだ。


そして・・・・。
そこから運命が大きく変わることになるとは。
そのとき。
まだ誰も。
予想すらしていなかったのである。



星系ナドゥーライト。
・・・・裏の奥深いところで、王とつながりがある・・・。
その星に・・・・。

今、彼らは向かっていったのである・・・・・。



                                         ―続く―

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ちょっとした豆知識:

この私が使っている。敵の首謀者、二名の名前の由来。

オブシディアン。
無謀にも、リナス(リナ)を狙って、反旗を翻している存在。
英名:オブシディアン(黒曜石)
属性:宝石
特筆:溶けた溶岩が結晶化できないほど、急激に冷えたときにできる物質。
   古代から矢じりなどに使用されている品。
 
ウラノフェン。
こちらは、無謀にも、すみれちゃん(宇宙の姫)を狙ってる存在。
英名:ウラノフェン
属性:鉱物
種類:ケイ酸塩鉱物閃ウラン鉱の二次鉱物
   そのほか:フェンが意味する意味→何かほかのものに似ている物質。



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まえがき:

こんにちわ♪三日連続!(まて!)
というわけで・・続きです♪
うう・・・眠い・・・・・。
ハナァ(家の犬)・・・・。
お願いだから、昨日、仕事から戻るのがおそかっんだから・・・・。五時に起こさないでぇ・・・(涙)
しくしくしく・・・・。
ちなみに。
今回は・・・エル様の一人称ではありません・・・。あしからず・・。


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あとがき:

 薫:はい♪私が大概、オリジのメンバーの名前には、
   宝石関連や鉱物関連の名前を使っているのでその説明です♪(こらこら!)
   さて・・・。オブシディアンの過去。ウラノフェンの過去。
   それぞれが、エレナ。ウランをとおして。
    キャナル達や、レティ達シェリフスターズのチームに、伝えられていきます・・。
    ・・・・もーちょっと、過去話・・・・。お付き合いください・・てへvv
  姫:何しろ、リナスvv未だにカウリスに掴まって身動きとれなくなってるからねvv
エル:ま、いつものことよvv
 薫:・・・・ファイト・・リナ(涙)それでは・・・。
エル&姫:また次回でね♪


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