狭間の選択     ~ちょっとまって!?~
   

  その声は覚悟はしていたものの。
  やはり、聞いてしまうと、固まってしまう、というのは、まあ仕方のないことであろうが。
  「た…ただいま…」
  だらだらと汗を流しつつ、そうつぶやくリナに。
  「遅かったのね。まあいいけど。リナ、早く家の中に入りなさい。」
  「ひ、ひゃい!」
  にこやかなまでの、笑みを浮かべてそういうルナに。
  思わず悲鳴に近いような声をあげ、上ずった声をあげているリナ。
  一方では。
  何やらぽそぽそと会話をしている三人の姿が目に入ってきたりはするが。
  今のリナとしては、そちらよりもルナの反応の方が気がかり。
  「リナ、いこうぜ。」
  そういいつつ、ガウリイに肩をつかまれて、促されるような格好になっているというのに。
  いつもなら、ピシャリとはたくリナの姿が見られるというのに。
  今回に限り、リナの思考回路はただいまパニックになっていることから。
  ガウリイのされるがままにとなっていたりする。


  家の中に入ってゆく二人をみつつ。
  「でも、何よねぇ。どうしてファーの子供が【あの】ガウリイなわけ?
    ルビーちゃんはまだわかるとして。」
  いいつつ、ガウリイの妹の名前を出しているポニーテールの少女。
  「あら、ユニット、だって、この地のリナって。
   本来ならば、早死にするんだったけど、それだと面白くないじゃない?」
  にっこりと微笑みながらいう、そんな金色の髪の女性の言葉に。
  「でも、そのリナちゃんの死が原因で、神魔戦争が勃発するじゃない?
   リナちゃん、殺す予定は人間だったから。」
  いいつつ、きょんと首をかしげるそんなユニット、と呼ばれた少女の言葉に。
  「そうなんだけどねぇ。でも、やっぱり、戦争とかああいった混乱みるより。
    部下たちとか、周りがどたばたするほうが面白いじゃない?
    だから、ガウリイの魂、本来はなかったんだけど。
    創り出して(というか別のところからコピーして)この世界に送り込んだのよ。
    まっさか、フェアリーの子供として誕生するとはねぇ♪♪」
  いいつつ、にこやかに。
  しかも、わくわくどきどきしたような嬉々とした表情で。
  そんなことをいっても。
  間違いなく、面白そうだから、そうした。
  というのが見て取れる。
  「ま、まあ、私からすれば、あのガウリイさんの魂が別の世界の【あの】ガウリイさんの魂。
   とわかっていても、愛しい子供には違いありませんし。
   ルビーと同じく。」
  そういいつつ、かるく微笑みを浮かべるフェアリー、と呼ばれているそんな女性の言葉に。
  「ま、確かに、事実は、あのガウリイさん。フェアリーの子供として存在している事実は変わらないんだけど…
   でも、私としては、せっかくのフェアリーの子供なんだから。
   ああいう性格でなくて、もっとかわいい性格の子供の方が…」
  などと、そんなことをつぶやいているユニット、と呼ばれた少女。
  別名を【宇宙の姫】とも呼ばれている、まさか、この世界、いや、ここの世界とはまったく異なる、
  別の空間を統べる、ここでいうところの、【金色の王】と同等の存在である。
  などと、この愛らしい、子供の容姿からは、いったい誰が想像できようか。
  「あら、それはルビーちゃんがいるじゃないv」
  「まあ、そうなんだけど。」


  ルビー。
  というのは、ガウリイとはかなり年の離れている女の子。
  といっても、今の年齢はただいま十四歳。
  リナと八つ違い、であるのだが。
  ただいま、リナは十八歳。ガウリイが二十四歳。
  正式な名前は、ルビス=ウル=セレーネ=ガブリエフ。
  通称、ルピー。
  金の髪に碧い瞳。
  こちらもまた、男性、女性、になれる特技はあるにはあるが。
  だが、その特技は不安定。
  彼女が主に母親から受け継いだのは。
  ある【特殊】な力が主。
  ちなみに、こちらは、母親によく似ており、かなりの美少女。
  一番目の子供がユニットたちが知っている人物の魂であったことから。
  まあ、それに気づいたユニットが、金色の王ことエルを問い詰め。
  その事実は明るみにはなってはいるが。
  そのことを知らないのは、ガウリイ、当人とそしてその父親。
  正確にいうならば、二人の存在が回りに隠している、というのが事実なのだが。
  


  「でも。フェアリー、たったの二人しか子供つくらないし…」
  いいつつ、横にいるフェアリー、と呼んでいる、ガウリイの母親を見つめるユニットに。
  「ですが、姫様、あまりここでこの私が子供をうむと、ゆがみが…」
  そういいかけるファアリー。
  確かに。
  フェアリーそのものが、この世界に存在しているはずのない存在。
  そんな彼女がこの世界に降り立ち、しかも子供をもうけるなどと。
  この世界に少しばかり歪みをもたらす結果となっているのもまた事実。
  「いいのよ。どうせここはエルの世界v」
  「ユニットぉぉぉぉぉ~~……」
  にこやかにそういいきるユニットの言葉に。
  じとめでそんなユニットを見つめるものの。
  その顔は笑っていたりするエル。
  「それより、セルディさん、迎えにいかなくていいの?フェアリー?」
  さらっと、いきなり話題を変えているユニット。
  まあ、このあたり、さすが、というよりほかにはないが。
  「あ、そうでした。それでは、私、ちょっと失礼いたします。
   それでは、姫様。エル様。」
  そういって、かるく丁寧にとお辞儀をし。
  その場より、いきなりと掻き消えてゆくフェアリー。
  



  リナたちが家に入ってゆく最中。
  そんな会話があの三人で繰り広げられているなどとは露しらず。
  そのまま、家の中にと入ってゆくリナ。
  「まあまあ、ようこそ。ガウリイさんでしたわね。」
  にこやかに出迎える、以前、水晶玉を通して見たことのある、
  リナに雰囲気がよく似た、栗色の髪の女性。
  そんな女性にぺこりと。
  「はじめまして。ルシフェル=ララァ=ガウリイ=ガブリエフ。といいます。
   いきなりの来訪、お許しください。本日は、リナと一生を過ごさせていただくべく。
    正式に挨拶に向かいました。」
  いって、丁寧にとまるで、どこかの貴族か何かがするように。
  礼拝というか、お辞儀をとっているガウリイ。
  「まあまあ、こんなリナでよければ。どうぞ。」
  などと、そんなガウリイににこやかなまでにいっているのは。
  リナの母であるセシル。
  そして。
  「…ま、まあ断れはしないな……」
  などといいつつ。
  その後ろには、長い黒髪をしている。
  男性か一人。
  なぜかその顔色が少し悪いのは、リナは気のせいかな?
  としか捕らえてないが。
  「ただいま、父さん、母さん。…って、ガウリイ、何わけのわからないこといってるの?
    別に一緒に旅をするっていっても、『一生』はないでしょ?一生は。
    互いに結婚とかしたら、旅もそれまでなんだし。
    それとか互いに相手ができたら。」
  そこにいる、父と母にと戻った挨拶をし。
  そして、そんな母たちにと『挨拶』をしたガウリイのほうをみつつ。
  キョン、と首をかしげているリナ。
  ガタタタタッ!!!
  あり?
  そんなリナの言葉に。
  なぜか、思いっきり、足こけしている父の姿と。
  にこやかに笑っている母。
  そして。
  なぜか、涙をためつつ、リナを見ているガウリイ。
  そんな三人の様子をみつつ。
  「父さん!?どしたの!?って、ガウリイ、何なきそうな顔してるのよ??」
  まったくもって、リナには理解不能。
  ただひたすらに首をかしげているリナとは裏腹に。
  「まあまあ、リナちゃんってば、初心やさんv」
  「…セシル、そ~いう問題か?」
  にこやかに、その口に手をあてつつ、ほほほ、と笑いつつそんなことをいっている、
  リナの母であるセシル。
  そんなセシルの言葉に突っ込みをいれている、リナの父。
  「は?何が?」
  まったくもって、理解してないリナに。
  盛大にため息をついている父と、そして、ころころと笑っている母。
  「…だから、どこか私、育て方、間違ったのかしら…
    ま、いいわ、リナ、とりあえず、これから、あることがあるから。
    着替えてもらうわよ。ガウリイさんは、エル様達の方へね。」
  そんなリナをみつつ、盛大にため息をつき。
  ポン、とリナの肩にと手をおいていっているルナ。
  「?着替えるの?はーい。」
  よくわからないが、とにかく。
  ルナのいうことには逆らえない。
  そんなことを思いつつ。
  乾いた声で返事をし。
  ルナに促されるまままにと、二階のとある部屋にとルナにとついて上ってゆくリナ。
  


  「さ、ガウリイはこっちね。」
  にこやかなまでに。
  ふと気づけば。
  いつのまにか後ろに自らの育ての親でもある、二人の姿。
  「は、はい。」
  さすがのガウリイも、この二人には逆らえない。
  というか、今回に限り、はっきりいって。
  彼にとってはうれしいこと、には違いがないのだが。
  そういいつつ。
  こちらはこちらで。
  別の棟にある建物のとある部屋にとつれてゆかれているガウリイ。




  『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』


  別の建物同士の部屋にといる、二人の無言の声が。
  ものの見事にと一致する。
  そう、部屋に入り、カーテンの先にかけられたそれをみて。
  




  
  「って!エルさん!?ミリーさん!?
    こっちの、タキシードはまあわかりますげと!?これは!?」
  などといいつつ、どこか声が裏返っているガウリイ。
  そこには。
  薄い紫色のタキシードと、そしてまた。
  なぜか、真っ白などうみても、ウェディングドレス。
  としかいいようのないものが飾られていたりする。
  「ガウリイちゃんvリナちゃんと結婚したいんだったら。
    どちらでも楽しませてねv」
  にこやかなまでに笑みを浮かべる、すべての母である、金色の母、エルの言葉に。
  「そ、そ~きますかぁぁぁぁ!?」
  ガウリイの絶叫というか叫びがこだまする。

 


  そしてまた。
  「???ねーちゃん?これって、ドレスにみえるんだけど?
    あと…タキシード?」
  なぜか部屋の奥、カーテンの先にきちんと、ハンガーにかけられて、
  置いてあるのは。
  薄いピンク色をした、どうみても、ドレス、しかも、気のせいか、
  ど~も、俗にいう、ウェディングドレスに近いような気がするのは。
  私の気のせい?
  あと、この白いタキシードは?
  などと、ただひたすらに首をかしげているリナ。
  そんなリナの言葉に。
  「そうよ。きまってるでしょ。リナ、あんたの結婚式なんだから。」
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・・・・
  しばし、沈黙。
  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぃ?」
  そんなルナの言葉にしばし目を点にしているリナではあるが。
  「あら、聞こえなかったの?リナ、あんたとガウリイさんの結婚式だってば。
   ちなみに仲人は、エル様とユニット様だから、失礼のないようにね。」
  いいつつ、リナの服をてきぱきと着替えさせ。
  そして、その頭にと薄いヴェールを乗せているルナ。
  「って、けっ・・・って、え…え…ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
  そんなルナの言葉に目をしばし、丸めつつ。
  「ちょっと!?ど~いうこと!?ルナ姉ちゃん!?」
  思わず普段なら絶対にしないような、ルナに対して、そんな言葉遣いで叫んでいるリナ。
  「どうもこうも、だから、いったとおりよ。
    すでに、あんたの関係者は全員、横にある礼拝堂にもう参列してるわよ。
    あとは主役たるリナ、あんたと、それとガウリイさんが出向いたら。
    すぐさまに結婚式は始まるわよ。」
  いいつつ。
  「はい。これで完了っと。」
  いまだに呆然としているリナの手に花のブーケを握らせて。
  にっこりとそんなことをいっているルナに。
  「って、結婚!?私とガウリイが!?って、どこをどういうようにしたらそーなるわけぇぇ!?」
  そもそも、ガウリイは、私をそ~いう対象にみてもないでしょうに!?
  などと、どこか論点が違うことを思っているリナ。
  ま、まあ、人間バニックになったときには。
  何かが違っていることを考えても仕方がない、とは思うのだが。
  「どういうようにって。当たり前でしょう?
   もっとも、私としては、まさかリナの方が先に結婚する、とは思ってなかったけど。
   しかも、【あの】ガウリイさんが義弟になるとはねぇ~…」
  いいつつ、ルナはため息ひとつ。
  「って、だからそーでなくて!どーして私とガウリイが、ケケケケケケッコンって!?
   ど~いてそういうことになってるのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!?」
  リナのパニックともいえる叫びが。
  家の中にと響き渡ってゆく。
  そんなリナにと。
  「ほら、何か文句いってないで、とっとと用意する。
     まさか、リナ?エル様たちに恥をかかすってことはしないわ・よ・ね?」
  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はひ・・・・・・」
  にこやかに絶対零度の微笑みでそういわれれば。
  よもや、まさか、仲人が、金色の母たちである、といわれて。
  どうしてどうして断ることなどができようか。
  ・・・・・・・・・・・・・・・もしかして、あいつ、ガウリイのやつ、このこと知ってたの?
  ・・・・・まさかねぇ?
  と、とりあえず、あいつも困ってるだろうから。
  私の口からではなくて、ガウリイの口から断るようにいってもらおう。うん。
  などと、一人納得しつつ。
  とりあえずは、ルナにいわれるまま。
  薄いピンクのヴェディングドレスを身にまとい。
  とりあえずは、実家の横手。
  といっても、少し離れた位置にある、礼拝堂にと。
  リナはルナにつれられて。
  そのまま、部屋を後にしてゆく。

  


 
                             -続くー

#####################################

    あとがきもどき:
       薫:ガウリイ、ガウリイ、プレゼントの上で踊っているのは。
         パニックになってるのかな?(こらこらこら←富士見のサイトの画像から
         ついに発売です。スレイヤーズの特集。
         もう、スレイヤーズも15周年なんですねぇ。
         今回は、スレイヤーズファンにはお勧めです!
         月間ドラゴンマガジン三月号。
         ぜひに!購入しましょうねv
         何しろ、スレイヤーズ、あらいずみ先生の書き下ろしテレカとかの、
         全員プレゼントがついている!!!!
         ちなみに、発売日予定、2004年の1月30日。
         定価は690円なり。
         まあ、とりあえず、スレイヤーズファンなら誰でも知ってるでしょうねぇ。
         というような、報告はこれくらいにしておいて。
         さってさって、今回のあとがきは…

     ルビ:はーい。こんにちわvララァ兄さんの妹のルビでーすv
      薫:初登場ですね。このハザマのラストで。
     ルビ:それは、薫さんが出してくれないからでしょう?
      薫:・・・・・・うぐっ!?
        で、でも、ルビーさんも、エル様の変わりに、さまざまなここの時空のエル様の部下達。
        のところにお使いとかいってて、多忙でしたし…
     ルビ:それは、【言い訳】。っていうのよ?しってる?
      薫:・・・・・・・・・・・・・・・・
     ルビ:ま、とりあえず、皆様、始めまして。
         私は、ルビス=ウル=セレーネ=ガブリエフ。
         フェアリー母さん、というか、ファーナ母さんと、セルディ父さんの二番目の子どもで。
         ちなみに長女。という形式となってます。
         私はララァ兄さんのように、簡単に男性、女性。
         になれる、というのは、あまりありません。
         やろうとしたらできますけど。
         でも、結構体力使うから、やってません。
         魂の霊的構造的には、私はフェアリー母さんの力を濃く受け継いでますが。
         肉体的にはセルディ父さんの血を濃く受け継いでいる、というのも理由のひとつです。
         ただいま、というか、エル様に言われて、アルバイトのつもりで。
         エル様たちがいうところの、曰く、『部下達』彼らの『監視人&報告係』をやってます。
         ちなみに、彼らがさぼっていたりするときに対する刑罰。
         それらを与える資格も、エル様からいただいてますv
         結構これが、ストレス解消、というか美容によくて。
         うろたえる、しかも、地位的には、そこそこの神様とか、魔王とか。
         精霊王とか、根源主。とか。
         そんな彼らがうろたえて、私に成敗・・・もとい、お仕置きされる姿なんて、
         もう、快感v
         ちなみに、この楽しみ、物心ついたときに、エル様たちから教えてもらった、
         私の趣味ですv
       薫:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
      ルビ:まあ、ララァ兄さんが、リナさんにぞっこん、というのは。
          わかってましたし、これから面白くなりそうです。
          今度は、リナ義姉さんも連れて、『監察』にいったら、楽しいでしょうねv
       薫:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(滝汗)
         な・・・・何か今、とてつもなぁぁく、怖いことを聞いたような気が・・・
         き・・・・聞かなかったことにします。
         ところでルビーさんは、ガウリイさんたちの結婚式にいかなくてもいいんですか?
      ルビ:今からいきますわよ?それではv
         (ルビ、瞬間的に掻き消えてゆく)
       薫:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・性格・・・・ルビーさん。
         もしかして、スミレちゃんに近いのでは・・・・(汗)
         ・・・・・・・・・・・・・・・フェアリーさん・・・スミレちゃんを参考に育てましたね・・・絶対に・・・・
         彼女、結構、スミレちゃんに対しては、何というか…
         ・・・・・・・・・いわないでおきましょう。何か怖いから・・・・
         ・・・・・・・・気持ちはわかりますけどねぇ・・・・
         でも、まさか娘に『かの姫』と同じように性格とか、しぐさとか、
         そーいったものをしつけてゆく、というのは・・・・
         ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
         と、とりあえず、まあ、あまり考えないこととして。
         何はともあれ、今回、ちょっとゲストにガウリイの妹さんに参加していただきました。
         次回で、本当の結婚式ですね。
         さって、本気でエル様とスミレちゃんの祝福(!?)をどうするか…
         何はともあれ、ではでは、また次回にてv

     2004年1月29&30日某日