狭間の選択     ~誰?何で?どうして?~
   

 
  ??
  何か違和感を感じる。
  「ねぇ?ガウリイ、何かおかしくない?」
  「ん~?そうか?」
  リナのそんな当然の疑問にもガウリイはそっけなく答えるのみ。
  ガウリイの目には、まやかしの光景でなく、現実の光景が映っているのだが。
  リナの目にはリナ専用にかけられている町並みの幻影の光景が映りこんでいたりする。
  リナの疑問も当然のことで。
  確か、この時期には結構な観光客などもいるはずなのに。
  リナの視界に映りこむのは、普通の、いつもの町並みの光景。
  「で?リナ、どこにいくんだ?」
  にこやかにいいつつも。
  ちゃっかりとリナの肩を抱きかかえているガウリイ。
  そんなガウリイの手をピシャリとはたき。
  「とりあえず、姉ちゃんに挨拶いかないと…って、今日はリアランサー、お休みの日ね。」
  日にち的に、今日はお休みの日。
  レストラン・リアランサーは、毎月、数回、定休日を設けており。
  今日はその定休日。
  「とりあえず、私の実家いって、姉ちゃんに挨拶して。それからね。」
  問題は、あのときの姉ちゃんの笑顔がかなり怖いんだけど…
  などと、心の中で思いつつ。
  そう横にいるガウリイにと説明するリナに。
  「そっか、リナの実家かぁ。楽しみだな。少し緊張もするけどな。挨拶するのに。」
  「?何であんたが緊張する必要があるのよ?」
  変なやつ。
  そんなガウリイの言葉に首をかしげるリナではあるが。
  …普通、実家に、しかも挨拶をするのに緊張する、とかいえば。
  気づくようなものだとも思うが…
  「あのねぇ。別に結婚の報告とかってわけでもないのに。
    そういう危険な表現はほいほいといわないほうがいいわよ?ガウリイ?」
  いいつつ、首をかしげてそんなことをいっているリナではあるが。
  そーいや、こいつもいつかは。
  誰かと結婚…するのよね。
  などと、自分でいっておいて、ふと。
  …あれ?
  何であたし、なぜか無償に寂しくなってるんだろ??
  ・・・??
  なぜか、ふと、ガウリイが別の誰かと一緒にいるのを想像し。
  ムカムカしている自分と、そしてなぜか悲しくなっている自分に気づき。
  「????」
  ただひたすらに首をかしげているリナ。
  リナはまだ、自分の心に芽生えている、というか。
  もはや、確定しているその気持ちの理解をしていないがゆえに。
  長く一緒にいるうちに、仲間意識から、それが恋愛対象と変わっていることに。
  その手に関してはとことん疎く、鈍いリナは自分自身すらも気づいていない現実がそこにはある。
  ま、いっか。
  よくわかんないものは、考えても仕方がない。
  そんなことをおもいつつ。
  「それじゃ、ガウリイ、とりあえず、姉ちゃんに挨拶がてらにまずは、
   私の実家にいくわよ!」
  いいつつ、横にいるガウリイをみつつ、気力を奮い立たせつつ、いっているリナではあるが。
  そんなリナの言葉に。
  「ああ、そうだな。リナの実家にきちんとご挨拶をしないとな。」
  などと、にこやかにいっているガウリイ。
  「?・・・・・くれぐれも姉ちゃんたちの機嫌を損ねないでね…」
  何かガウリイの口調が普通の挨拶とはちょっと違うような気がするのは、何で?
  そんなことをおもいつつ。
  とりあえずは。
  まずは、ルナにと戻ったことを報告にいくために。
  足並みを、リナの実家である、インバース商会のあるほうにと向けて。
  足を運んでゆくリナ。
  そんなリナの横から、にこやかに笑みを絶やさずについていっているガウリイ。
  

  リナの目には映ってはいないものの。
  町のあちこちには。
  『祝!インバース家次女結婚!』や。
  『結婚式記念饅頭販売!』や。
  はっきりいって、そんな『結婚』という文字があからさまに街中にあふれかえっているのだが。
  だが、リナにだけ、それらの文字や、そして、それに伴う賑わいは。
  見えないように特殊な幻影の術が施されているがゆえに。
  リナはまったくそれに気づいてない。


  リナからしてみれば、町はそろそろ蒲萄の収穫祭りで、観光客などでにぎわっているはずなのに。
  いつもより、観光客などが少なく感じる程度。
  そのような光景しか目にはいっていない。
  そんな会話をしつつ。
  二人は、町の中心地帯より少し離れた場所にと位置している。
  リナの実家が経営している、という、【インバース商会】に向かい。
  そして、その私有地の敷地内の中にある、リナの実家にむけて。
  足を進めてゆく。



  インバース商会。
  それは、ここ、ゼフィーリアでは有名すぎるちょっとした大型店。
  まあ、知る人ぞしる品物なども扱っているがゆえに。
  国外からも買出しに来る観光客や普通の商売人なども少なくない。
  もっとも。
  あまり高性能すぎて、使い方がわからないような品物も、多々とあったりするのだが。
  そして、何よりも。
  見た目、かなり大きなお屋敷か何か。
  のように見える建物なのにもかかわらず。
  この建物全体が、実はひとつの店。
  ということに、まず初めてここに訪れたものはまず驚愕する。
  しかも、このあたりの土地は、すべて、インバース家の私有地。
  そしてまた。
  すごいことには、託児所、そしてまた、剣や魔法の指南所。
  といったものまでもが、この建物の中には存在していたりするのである。
  当然のことながら、私有地であるがゆえに。
  店の外の整地も滞りなく人の手がゆきわたり。
  店の前のちょっとした広場などには噴水と、そして、人工的な小川が流れ、
  それらの周りを色とりどりの花壇が計算された形で設置され。
  夜は夜で、そこに植えられている夜行草のほのかな明かりで、ライトアップされ、
  何とも幻想的な雰囲気となる、このお店。
  ゆえに、この町の中では、デートスポットなどとしてもかなり有名。
  そして。
  そのインバース商会と書かれている大きな白い建物を過ぎてしばらく。
  大体、約一時間程度くらい歩き、私有地の中にあるちょっとした小さな森をつっきったところに。
  リナの実家、インバース家は存在する。
  まあ、この私有地の敷地内には。
  はっきりいってみたこともないような生物やそして植物。
  などといったものがひしめき合っているのもまた事実なのだが。
  ゆえに、まず、道を知らない一般の何もしらない観光客などが、
  この私有地中に迷いこみでもしたら。
  まず間違いなく。
  ちょっとしたスリル体験ができるのは明白。
  何しろ、この土地の中には、肉食植物、といったものも存在しているのだ。
  ―最も。
  それらが人を襲う、といったようなことは、今までにあまりないのだが。
  あったとしても、それは。
  無謀にも、インバース商会に盗みを働きにきた盗賊など。
  そういった輩が。
  多少腕、もしくは足の一本か二本程度、溶ける程度でそんな植物の栄養とさせられたりしているのではあるが…
  まあ、奇声を上げて、ケタケタと笑う、花や。
  …挙句は、なぜか、弦が足のようにと数本に伸び。
  踊りまくっている…野蒲萄や。
  そんな植物などがひしめき合っているのもまた事実。
  ほぼ、毎月、もしくは数ヶ月に一つ以上のペースで。
  そういった新種が増えているのは、それは、インバース家の人々が行っている、
  ある種の実験の成果によるもの。
  …なぜか、インバース家の家長の妻である、セシルは。
  よく、魔法薬などの調合に失敗し。
  こういった、新種の植物などを誕生させるのである。
  それも、かなり奇抜、というよりほかにはない生物を…
  まあ、物心ついたころから。
  色は原色、しかも色彩豊か。
  それでいて、その数枚にと分かれた花弁のすべてに目や口がつき。
  ケタケタと始終笑っているような花や。
  または、同じ種類でも、歌をずっと歌っているような花。
  どうやらこれは雄株、雌株によって分かれているらしいのだが。
  そんな私有地の中で育ったリナが、あまり物事に動じなくなっているのは。
  仕方ない、といえば仕方のないこと。


  何はともあれ。
  そんな、はっきりいって、世間一般では考えられないような植物などが。
  なぜか奇声を上げていたり、もしくは弦などで移動していたり。
  挙句は取っ組み合いの喧嘩らしきものをしていたり。
  などという光景を、何もないかのようにと、つかつかと道を進んでゆくリナとガウリイ。
  リナの何ごとにもあまり動じないその精神は。
  こんな生活環境であったがゆえに、培われたのはいうまでもないが。
  そんな植物などはまったく無視するかのごとくに。
  …まあ、ガウリイとしても。
  これ以上のモノを今まで、というか、幼いころから。
  育ての母たちにと連れられて、いろいろ目にしているがゆえにまったくもって動じる気配は微塵もみせず。
  そのまま、二人は、その先にある、インバース家の本家にと向かってゆく。


  昼間だというのに、うっそうと茂った森。
  どこからか、この世のものとも思えないような奇声が聞こえてくるが。
  そんなものには異にも介さず。
  そのまま、二人して、続く道筋を進んでゆく。


  やがて、森の視界が開け。
  そこに、ちょっとした、というか、はっきりいって。
  かなり広い空間が姿を見せる。
  インバース家は。
  その四方を森に囲まれ、その森がちょっとした防犯の役目をも担っている。
  開けたその場所に見えるのは。
  きちんと剪定されている、庭の木々。
  そして、左右対称にと存在する、いくつかの小さな噴水。
  噴水の周りには小さな花畑などが点々とし。
  …問題は、その花畑の中の花が、ほとんど薬草、または毒草である。ということなのだが。
  中央にはまっすぐに伸びている、小石がきれいに敷き詰められた白い道。
  どこぞのちょっとした領主の館や、または城でも。
  ここまで、整った庭先は、まずはめったにはお目にはかかれない。
  「すぅぅぅぅぅ。はぁぁぁぁ・・・・・。よっし!」
  大きく息を吸い込み、そして吐きだし。気合を入れるリナ。
  この先に進めば、おのずから。
  家族と会うことになるがゆえに。
  気合をいれないと、まず、あの家族のこと。
  相手に飲まれたものがまずまけである。
  それは重々にわかっているがゆえに。
  そんなことを思いつつ、気合一発。
  気合を入れてその一歩を踏み出そうとするそんなリナの耳にと。
  「あ、おかえりー♪リナちゃん、ガウリイさん♪」
  ・・・・・・・・・・・・・・・ん?
  どこかで、いや、気のせいであってほしいようなそんな声が。
  リナの耳にと聞こえてくる。
  「あら、ようやく戻ってきたのね。リナちゃんとガウリイ。」
  それと同時に、同じような澄み切った声が続けざまに発せられ。
  そして。
  「お帰りなさい。ガウリイさん。そしてリナさん。」
  リナのまったく聞き覚えのない声が、リナの耳にと届いてくる。
  「??????は?」
  はじめの二人の声はよくわかる。
  イヤというか、わかりすぎるほどに。
  だがしかし。
  どうして、あの【二人】の声と同時に。
  その声がしてくるのか。
  というか、どうしてそもそもは。
  かの御方たちがここにいるのか。
  そんなことをふと思い、一瞬リナの思考は停止するが。
  だがしかし、人間。
  好奇心。
  というものが誰にしも存在する。
  それゆえに、その声のしたほうにと無意識に振り向いているリナ。
  その声がしたときに。
  ガウリイが少しばかり驚いたような表情をしていたのは。
   リナは声にばかり気をとられていたがゆえに、気づいてはいない。

  声のしたほうを何気にリナが振り向くと。
  そこには、予想したとおり。
  というか。
  「…なぜに二人ともそんな格好を?」
  思わずそんなことをつぶやいているリナ。
  リナの目に入ったものは。
  黒い、それでいて、しっかりと、体にフィットしている、
  なぜか、イブニングドレスのようなモノを身にまとい。
  そして、その背には、薄い金色のような淡い色調のマントを羽織っている、
  はっきりいって、まず誰しも間違いなくは見とれること間違いなし。
  それでいて、その雰囲気から感じる威圧感と、威厳、それと神々しさ。
  それらに押されて、怖気づくのは間違いなし。
  しかも、それにブラス。
  神秘的さは当然のことごとくにあるわけで。
  長い、凄烈なまでの金色の髪に金色の瞳。
  スタイルなどもどこをどうとっても、非の打ち所のない絶世の美女。
  そんな女性が一人。
  そして。
  なぜかこちらは、薄いピンクの、しかも、かなりフリルやリボンのついた、
  スカートの幅が広く、まるでどこぞのちょっとしたお人形のような服装。
  そんなドレスを身につけている、漆黒の長い黒髪をチャームポイントの赤いリボンで、
  蝶々結びにとし、ポニーテールにしている女の子。
  手にしている扇らしきものが、結構これが似合っていたりするのが何ともいいがたい。
  こちらは、絶世の美女、というよりは、どちらかというと、美少女。
  といったほうが過言であろう。
  年のころならば、十かそこら。
  といっても、どうみても、十四、とかそのあたりまではいってはおらず。
  よくて、八歳から、十一歳くらいの間?
  といったような女の子が一人。
  まあ、この二人はわかる。わかるのだが。
  問題は。
  もう一人。
  さらりと伸びたといっても、少しばかりウェーブが入っているのであろう。
  髪質が柔らかであることが、一目でわかるほどに。
  ふわりと何の違和感すらなく風にとなびいている、漆黒の長い髪。
  その髪の長さは腰の辺りくらいまでであろうか。
  そして。
  太陽の光に照らされると、不可思議にその髪の色もまた変化しているように感じられるのは。
  おそらく、気のせいなのか、そうでないのか。
  漆黒の黒い髪は、その女性の横にいる女の子と同じ色、のようにも見えなくはない。
  そして、また。
  少女の瞳が深い、深い、青い色であるのに対して。
  その横にとたたずむのは。
  碧い瞳をしている歳のころならば、二十歳前半くらいであろうか。
  どこか、物腰、穏やかな、それでいて。
  不思議な独特の雰囲気を放ちつつ、水色のワンピースらしきものを着ている女性。
  金の髪の女性と、黒い髪にポニーテールをしている少女は誰だかわかるが。
  だがしかし、もう一人の女性はリナはまったくもって覚え、というかあったことすらない。

  「・・・・・誰?」
  思わずリナがつぶやくのと。
  そして。
  「な゛!?ファーナ母さん!?」
  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
  その姿をみて、さすがに驚きの声を上げているガウリイ。
  そんなガウリイの言葉に。
  思わず目を点にしつつ。
  そして、しばし、その女性とガウリイを見比べ…
  「…ガウリイ?…え?」
  何度も、何度も、ガウリイとその女性を見比べるそんなリナの近くに。
  気づけば、先ほどの三人はいつの間にか二人の目の前にとやってきていたりする。
  「はじめまして。といっても過言ではないですわね。
    いつもうちのガウリイさんがお世話になってます。
    私、一応、ガウリイの縁があって母親になっています、フェアリー。
    というか、今、人としての名前はファーナ=ドナ=ガブリエフ。と申します。
    リナさんには、いつもうちのガウリイがお世話になりまして。
    また、これからも一生にわたり、ガウリイさんの面倒をおかけしますことにあたりまして、
    今回はセルディの代理として、私が参列いたしました。
    それと、同時に姫様のおつきとして。」
  にこやかにいいつつ、手を差し出してくるそんな女性の手を。
  「あ、どうも。って、ガウリイのお母さん!?」
  確か、ガウリイのお母さんって…
  条件反射でそんなフェアリー、と名乗った女性の手をにぎりしめ。
  そして。
  再びガウリイと女性を見比べる。
  ―似てない!
  それが、リナの本音。
  だがしかし。
  女性となったときのガウリイの雰囲気は、確かにどこか似ているものがあるかもしれない。
  そんなことをおもいつつ。
  「えっと…確かガウリイのお母さんって人間じゃないんじゃ…」
  そうつぶやくリナの言葉に。
  にっこりと。
  「ええ。わたくし自体は、そもそもは。
   姫様がいつもその身にとつけておられます、【石】が本体ですから。」
  さらりと何でもないようにと言い放つそのガウリイの母、と名乗ったその女性。
  「…いやその…というか、どうして、その、エルさんとミリーさんはまあわかるとして。
    どうして、ガウリイのお母さんまでこんなところに?」
  リナの疑問は当然のこと。
  まあ、先の二人に関しては。
  その理由を細かく聞くのが怖いのであえてリナは聞かないのだが。
  そんなリナが疑問を口にとしたその刹那。

  「あら、リナ、遅かったのね。」

  
  -ぴしり。

  そんな疑問がリナの脳裏を掠めたその刹那。
  リナはその声を耳にと捕らえ。
  今抱いていた疑問は。
  ものの見事に掻き消え。
  そのまま、その場にとしばし固まってゆく。

  「ま、いいじゃない。ルナ、それより、ようやくリナちゃんたち戻ってきたんだしv」
  「そうそう、さっv準備は万端vもう明日にでもすぐにできるわよv」
  「セルディ、迎えにいかないと…」
  固まるリナの回りでは。
  そんなリナにとっては意味不明な会話をしている金色の髪の女性たち…すなわち。
  金色の母(ロードオブナイトメア)と、そして宇宙の姫(ユニバースオブザプリンセス)。
  そう呼ばれている存在たちの会話が。
  硬直するリナの耳にと。
  ただただ、流れるように聞こえてゆくのみ。
  

 
                             -続くー

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    あとがきもどき:
       薫:次回で。
          いきなりのイベントですね(笑
          んでも、お約束、やったほうがいいのかな?
          お色直しぃv(爆!!!!!!
          まあ、二人をおもちゃ・・・もとい、着せ替え人形・・・・もとい、
          祝福しているお二方がいらっしゃいますからねぇ・・・・・(しみじみ
          何はともあれ。
          ようやく次回で結婚式だぞ!
          それがすんだらようやく回想シーンの終わりだぞ!(まて!
          もうすこぉぉぉし、お付き合いくださいませね。
          んではではでは、また次回にてv

   2004年1月28日