狭間の選択 ~別れと、そして…~
カラァン。
カラァ……ン……
静かに鐘の音が鳴り響く。
離れた位置にある教会の鐘の音が。
ここまで聞こえてきているのは、その下に眠るものへの鎮魂歌か。
目の前にあるのは、なもない、小さな石の塊。
そこに、そっと、近くに生えていた野の花を供え。
そして。
「ルーク、安らかに眠ってね。あなたの犠牲は忘れないわ。」
などといって、手を合わせているリナ。
と。
ヒョイ。
ドガシャアン!!
後ろから殺気を感じ、ひょいとその身を翻す。
それと同時に、後ろからとび蹴りを食らわしてきていた黒い髪の人物が。
今まさに、リナが花を供えた石にと足から突っ込んでいっていたりするが。
思いっきり岩が崩れる音と、何かが地面に倒れふす音。
「…リナに何をする?」
いいつつ、すらりと、剣を抜き放っているガウリイに。
その声は冷たく、あたりの空気が氷点下以下までに凍り付いていたりするが。
だが、まったくそれに気づくこともなく。
「えええ!?何でいきてるの!?」
そこにいる、その人物をみて思わず叫んでいるリナ。
そして。
「まあ、ルーク、生きてましたの?」
こちらもまた、そんなことをいいつつ、その手に百合の花をもっていっているミリーナ。
そんな二人の言葉に。
「ミリーナまで!とゆ~か、人を勝手にころすなぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
そんな石にと突っ込んだ男性…ルークの声が町から離れた小高い丘の上にと響き渡る。
ガラガラと石を書き分けつつも、起き上がり、叫ぶルークのその言葉に。
「いや、だって、ルーク死んだんじゃなかったの!?」
などと、本気でいっているリナに。
「私はてっきり、赤の竜神の騎士(スィーフィード・ナイト)に連れられて、
町外れにルークが出向いていったときに。
ルークは死んだ、と思ってましたが?」
などと、こちらもこちらでさらりとそんなことをいっているミリーナ。
だが、目は少しばかり笑っていたりするのだが。
「だから、勝手に人を殺すなぁぁぁぁ!
って、ミリーナまで、どうして俺の墓を作る手伝いしてるんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そんな叫びが響き渡るが。
「でも、ルーク、あなた、あのスィーフィード・ナイトさんの、ルナさんに。
つれられて町外れに無理やりに連れて行かれてたじゃないですか。」
淡々と言い放つミリーナに。
「お、もしかしてミリーナ、やきもちやいてくれてるのか!?」
などと、歓喜の声をあげているルーク。
「違います。というか、そんな馬鹿いっているってことはやっぱり本物ですわね。」
いいつつ、ピシャリとルークの言葉をさらりとかわしているミリーナ。
「いや、でも、普通に考えたら、姉ちゃんにつれてかれた魔王が。
生きてもどってくるなんて思わないって。」
いいつつ、パタパタとそんなルークに対して手を振っているリナ。
先日のこと。
会議も無事にと終わり。
そして…
「…ね、姉ちゃん、わざわざのご足労、ご苦労様です…」
いいつつ、冷や汗をだらだらと流しつつルナにとホットレモンを差し出しているリナ。
すでにブランはあの場にて、強制的にゼフィーリアにと送還されたがゆえに。
もうここには残ってはいない。
そしてまた、フランシスはフランシスで、妻であるディーナと共に。
明日、ここ、セレンティア・シティを後にする。
引継ぎなど、そんなものも多々とあるが。
いかんせん。
彼らはどちらかといえば、下にいる者たちにと仕事を任せて、自分たちは、
その趣味…本人たちいわくだが。
つまりは、女遊びに夢中になっていた節があり。
はっきりいって引き継ぎなどしなくても問題はないのがその現状。
まあ、遊ぶのが悪い、というわけではないが。
いかんせん、フランシスはフランシスで、家にやってきた異性の客などに悪さをし。
そして彼の屋敷に勤めるメイドなどは当然のこと。
そのたびに、彼の妻から制裁を加えられているのだが。
当の本人は懲りる気配なし。
まあ、ブランよりまし。という声も上がっているのは。
ブランは、同じ神殿に勤める巫女などはもとより。
何しろ目をつけた観光客などに手をつけていたのだからして。
これはもう救いようがない。
本来ならば、彼らの在位は。
数ヶ月、といった具合に短い予定であったのであるが。
何しろ、そんな中、突如として野山にとデーモンがあふれかえり。
その対策を講じている間に、新たな大神官を選ぶ余裕がなかった。
というのもまた事実。
「まったくだわ。でも、リナ、元気そうなわりに一度も里帰りしないのは。
一体全体どういう了見?ん?」
いいつつも。
ピタリ。
その手に握られているのは、刀身が暁色にと染まっている一振りの剣。
ダラダラタラ。
そんな突きつけられた長剣よりも、まずは何よりも。
汗が吹き出るのが自分でもわかる。
大量に汗を流しつつ。
「いや、あ…あはは…これは、まあ、いろいろと…」
いいつつ、全身から脂汗を流しているリナ。
そして、そんなリナの横では。
「お久しぶりです。ルナ義姉さん。」
などといって、ぺこりと頭を下げているガウリイ。
そんなガウリイの言葉にビクリと反応し。
「…よりによって…あなたがリナを見初めるなんて…はぁぁぁぁぁぁ~…」
などといいつつ、どこか別の場所を眺めているルナ。
「???姉ちゃん?ガウリイ、知ってるの?」
そんなルナの言葉に首をかしげるリナに。
「…まね…」
いいつつ、ため息ひとつ。
「あ、そっか。」
そんなルナの言葉にかるくぽんと手をたたき。
「そういや、姉ちゃん、ガリウイ、水晶通して話したことあるもんね。」
などと、まったく見当違いのことをいっているリナではあるが。
「…ま、まあ、それもあるけどね。」
いいつつ、言葉を濁すルナ。
まあ、いえるわけがない。
たまに出かけていたとき、というか、かの御方に呼ばれて、かの宮殿にといったときに。
ガウリイの相手を数回以上、させられていた、などということは。
下手のことをいったら、間違いなく命がない。
そんなことをルナは思いつつ。
「まあ、それはいいとして。リナ。とにかく、このたびのことが落ち着いたら。
とにかく、一度ガウリイさんとゼフィーリアに戻ってきなさい。」
ピシャリと、会話をさらりと変えて、言い放つ、そんなルナの言葉に。
「えええええええええええええ!?
どーしてこいつと!?そんなことしたら誤解される元じゃないの!?
そうしたら、誤解を解くの、大変なんじゃ!?」
などと、思いっきり目を見開いて驚きの声を発しているリナ。
ゴゲッ!
そんなリナの言葉に。
思わず床にとつっぷしている、ミリーナ、ルーク、そして…ルナ。
「リナ。オレは別に誤解されてもいいぞ?というか誤解でないしv」
などと、とりあえずめげずにそんなことをいっているガウリイに。
「何が?あっ、そっか。確かに友達、というのは誤解でないか。
まさか、恋人同士、と誤解されるわけもないか。あはははは。」
「「・・・・・・・・・・・・・」」
そんなリナの声に同情の視線がガウリイに集まるが。
「…リナ、それ本気でいってる?」
思わず冷や汗をながしつつ、問いかけるそんなルナの言葉に。
「何が?姉ちゃん?」
「・・・・・・・どこかで育て方間違ったかしら?????」
などと、本気で小さくつぶやいているルナ。
まあ、そのつぶやきがリナに聞こえていない、というのはさすがというか、何というか。
傍目にも、というか、まったくこの二人を知らない人たちでも。
ガウリイがリナに好意を寄せている、というのは一目瞭然。
にもかかわらずに、いまだに当人がまったくそのことにすら、かけらも気づいていない。
という事実は…リナがあきらかに、その手のことに疎いというのを物語っている。
「と、とにかく戻ってらっしゃい。」
そんなルナの言葉に。
「…はーい。そういえばそろそろ収穫祭の時期かぁ。
どうする?ガウリイ?」
いいつつ、横にいるガウリイにと問いかけているリナの言葉に。
にこやかに。
「オレもきちんとリナの両親に挨拶したいし。
すぐにでもリナの実家にいきたいぞv」
などとにこやかにいっているガウリイ。
「???何で私の両親にガウリイが挨拶するわけ?
別に旅の仲間だからってそこまでする必要ないとおもうけど???」
本気でガウリイの言葉の意味をわかっていないリナに。
さらに同情の視線が集まったのは。
いうまでもない……
「とりあえず、リナ、ガウリイさんとゼフィーリアに戻ってくること。いい?」
そんなルナの言葉に。
「はーい。」
仕方なしに返事をしているリナ。
そして。
「よろしい。さって。リナへの用件はこれなんだけど…」
いいつつ、ちらりとルークの方にと視線をむけ。
「これからは、私たちの用件よ。シャブ。」
にこやかに、ルークに対して微笑みかけているルナ。
その言葉に。
ピクリ。
ルークの中にいる魔王が反応し。
ルークの体が無条件にとびくりとはねる。
「ま、そういうわけで、ミリーナさん。このルークさん。お借りしますね。
私が用事があるのはルークさんの中にいる、シャブこと、シャブラニグドゥですけど。」
いいつつ、にっこりと微笑んでいるルナに対し。
「わかりましたわ。ルーク、安心して死んでください。骨は拾ってあげます。」
「ミリーナァァァァァ!!!!」
「ルーク、安心して、お墓は作ってあげる。」
などといいつつ、ルークの方をむきつつ、手をあわせているリナ。
「さ。ルークさん。いえ、シャブ。
ここでは何ですから、場所を変えて話し合いといきましょう。」
ズルズルズル…
いいつつ、ミリーナに手を差し伸べたまま。
そのままの姿勢でルナにひこづられ。
その場を後にしてゆくルーク。
やがて。
パタン。
とルナにつれられてルークの姿が掻き消えると。
「…ルーク、ま、悪いやつでもなかったけど、気の毒に。」
「リナさん、お墓はどこに作りますか?」
などといった会話が女性陣の間で繰り広げられ。
「…何か人事でないような気がするなぁ…ルークのやつ…」
などとぽつりとつぶやいているガウリイ。
そんな光景が見受けられたのが、昨日の夜のこと。
結局のところ、次の日になってもルークは戻らず。
こうして、リナたちがルークのお墓を作っていたところ。
ルークが戻ってきたわけなのではあるが……
「よく生きてたわねぇ。ルーク。姉ちゃんにつれてかれて。」
などと関心した声をだすリナに。
「…いや、ルナさんに…というよりは。
言った先にあの王もいてな…」
そういうルークの顔色はどことなく悪い。
・・・・・ポン。
そんなルークの肩に手をおき。
「お疲れさまでしたわ。ルーク。」
そのルークの表情と少しの言葉で何となく状況を理解し。
同情の声をむけているミリーナ。
「お、さすがは俺のミリーナ。やっぱり何のかんのといって。
俺のことを愛してくれてるんだな。」
いいつつ、ミリーナにと手を伸ばすルーク。
だがしかし。
スカッ。
ものの見事にその手は空振りにと終わり。
ルークの手はむなさく空をつかむのみ。
するりと向きをかえ。
ルークの手から逃れているミリーナ。
さすが、というよりほかにはないが。
「…ま、まあ、何があったのかは聞かないけどさ。
でも、本気で一度も死ななかったわけ?エルさんがきてたんだったら。
一度や二度、死んでてもおかしくないんじゃ?」
などと、しごく当然のことのようにいっているリナ。
「「・・・・・・・・・・頼む。聞かないでくれ・・・・」」
そんなリナの言葉に、ルークと魔王の声が同時に発せられる。
その声が震えているようにと感じられるのは、何も誰の気のせいでもないであろう。
まあ、何があったのかは想像に難くはないが。
トレジャーハンター・ルーク。
彼は魔王をその身に宿し、そしてまた、魔王とその意識を共存することにより。
この世界のどうにもならない部分、というか、真実を知ってしまったある意味。
別の意味でのトレジャーハンターの達人、ともいえよう。
「ま、怖いから何があったのかは聞かないことにするけど。
でも、せっかくお墓つくったんだし。ルーク、一度でいいからこの中にはいらないv」
「だから!勝手に人を殺すなぁぁぁぁぁ!」
いまだに少しばかり混乱にあふれているセレンティア・シティ。
そこの町外れの小高い丘の上にと。
何とも平和な叫びが響き渡ってゆく。
その声は、沈みかけた太陽に吸い込まれるかのように。
夜の帳の闇へと、吸い込まれてゆくのであった。
「ま、それじゃ、私たちはゼフィーリアに向かうけど。
ルークたちはどうするの?」
とりあえず。
数日間。
一応、それぞれに雇われていたこともあり、それらの引継ぎや報告などをすべて済まし。
晴れて、今日。
この町を後にすることになったリナ・ガウリイ・ルーク・ミリーナ。
この四人。
まあ、いまだにこのセレンティアは混乱に満ちてはいるが。
それは、彼らの知るところではない。
これからはおそらく、あの世から指名された新たな神官長が。
この町の神殿や寺院を切り盛りしてゆくことであろう。
町をでて、しばらくいった街道の分かれ道。
ルークとミリーナにと問いかけているリナ。
「ふっ。それはだな。これからは、今度こそ、俺とミリーナの。」
「ルーク、まさか、ワンパターンにもラブラブカップル。ですか?」
「・・・・・うっうっう。ミリーナ…冷たい…」
ピシャリと言葉の先をいわれて落ち込むルークをみつつ。
相変わらずルークの道は遠そうね。
などと自分のことを棚にあげ。
そんなことをリナは思うが。
「それで、リナさんとガウリイさんは?やっぱりゼフィーリアに向かうのですか?」
そう問いかけてくるそんなミリーナの質問に。
「ま。まあね。そろそろ収穫祭の時期でもあるし。
…姉ちゃんの命令だし、帰らないと命ないし…」
などとそんなことをいっているリナ。
ミリーナは、昨夜。
とある訪問者をうけたので。
どうしてリナたちが里帰りをするようにいわれているのか知っている。
だが…それを口にすることは。
硬く、硬く口止めされているがゆえに。
「そ、そうですか。まあ、どこかでまた機会があったらお会いしましょう。」
少しばかり言葉を濁し。
そういいつつ、リナにむかって手を差し出すミリーナに。
「そうね。またいつか。機会があったら。」
いいつつ、リナもまた、にこやかに微笑み手を伸ばす。
何か腐れ縁のような気がするから。
またすぐに出会いそうな気もするけど。
そんなことをリナはおもいつつ。
それぞれに異なる道を進み始めてゆくミリーナとルークを見送りつつ。
「それじゃ、ガウリイ、いきますか。」
「だな。」
いいつつ、こちらもまた。
行き先をリナの実家のあるゼフィール・シティにと定めて出発してゆくリナたちの姿。
これから先。
故郷で何が待っているのか。
幸か不幸かリナはまだ知らない……
-続くー
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あとがきもどき:
薫:まあ、ちょっとしたぼやきかな?
某所でとある人がやってるスレイヤーズの魔法用語問題集。
・・・・・・・・・・回答自分でしてみて、自分で調べてみたら・・・・パーフェクト・・・おひ・・・・(汗)
何も見ずにこの成果って・・・いったい・・・。
何か怖いので(おもいっきりオタク度←というか、今さら・・・・笑)
とにかく、それ(爆!)がわかってしまうので。
投稿はしませんでしたけどねぇ?
気づいたら覚えているもんですねぇ・・・・・しみじみ・・・・・。
まあ、いつのまにかソラでラティルトの呪文とか、ダイナスト・ブレスの呪文とか、
ゼラス・ブリッドの呪文(カオス・ワーズ)とか・・・・いえますしね・・・・。
ああ、ゲームとかにどれだけ没頭しているのかが丸わかり・・・・・
まあ、愚痴はとりあえずこの程度にして(自覚あり
ようやくリナたちの里帰りv
結婚式で終わりですねv
ちなみに。
だぁぁぁぁぁぁぁぁぁれも指摘してくれないよぉ・・・・。
リナの子供のリルナとユーリ・・・・
どうしてリナ(母親)と娘が同じ名前なのか・・・・
突っ込みないと寂しいものです(設定はあるんだけどね・・・笑)
まあ、もう少しこの意味のない小説にお付き合いくださいなv
ではではv
2004年1月22日某日
おまけv
「いらっしゃいvルナvそして、ルークにそれにSv」
ずざっ!
思わずその場から一気に数十メートル以上後退したであろうか。
『エエエエエエエエエル様ぁぁぁぁあ!?』
ルナと魔王の声が同時にと響き渡る。
そこに、いるはずのない人物の姿を目の当たりにして。
「あ、ルークは久しぶりね。」
「オオオおおおひさしぶりでございます。」
いきなり話しかけられて思いっきり狼狽しているルーク。
まあ、それはそうであろう。
目の前にいる金色の光を纏った絶世の美女。
そういうよりほかにはない美女がいったい誰なのか知っている彼としては。
「あ、あの?エル様…いったい…」
だらだらと冷や汗を流しつつも。
それでも、怖い可能性が頭にと浮かぶが。
聞かずにはいられない。
そんなルナの言葉ににこやかに。
「いえね。あなたたち、目覚めているわりにお仕事サボっているようだからねぇ。
ここはみっちりとお灸をすえておこうとおもってねv
リナたちの結婚式まで暇なことではあるしv」
などと、にこやかにそんなことをいっているのは。
万物の母たる、金色の王(ロードオブナイトメア)その当人。
彼女こそ、宇宙に満ちる暗闇を統べている存在であり。
そしてまた、すべての生き物の創造主。
「…あ、あの?」
恐る恐る問いかけるルナの言葉ににこやかにと微笑み。
「リナたちがゼフィーリアに戻ったら、問答無用で挙式できるように。
もう、セシルとかの協力はとりつけてあるからv
さって、とりあえず、スィーフィード、シャブラニグドゥ。
お母さんが、何をいいたいのか、わかってる、わ・よ・ね♡」
にっこりと微笑む万物の母たるその本人の言葉に。
『い・・・・きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
『うどわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
とある空間に。
悲鳴とも何ともいえない叫びが数時間以上響き渡ってゆく。
いったい何が起こったのか。
それを知るのは万物の母と、そして悲鳴をあげた当人たちのみ・・・・・