狭間の選択     ~四人の大神官~
   


  「くっ。面妖な技を…」
   一人、その場にたたずむ黒尽くめの人物が一人。
  あの瞬間。
  その声が届くよりも早く、それが聞こえないようにと自分自身にと結界をはり。
  その被害を免れているその暗殺者。
  普通の暗殺者がそんな技ができるはずもない。
  辺りに累々と転がる同胞をみつめつつ。
  そして、それは、リナたちを静かにと見つめる。
  「…あんた…人魔ね。」
  気配からして、わかってはいたが。
  だが、どうやら。
  この人魔。
  …まじらせているのが、エルフも多少入っているがゆえに。
  今の攻撃に免疫が少しばかりあった、というもの事実であるようだが。
  「人魔…って、あいつらか!?」
  思わず叫ぶルーク。
  かつて、ルークもまた、彼らのような魔と合成された人間を見たこともあるがゆえに。
  そして。
  「というか、こいつらの出身地は…ルヴィナガルド…」
  リナのつぶやきは辺りに静かに浸透する。
  
  ルヴィナガルド王国。今は共和国となっているが。
  かつて、そこの国王は、自らの子供たちを題材に魔を憑依させて力あるものを作り出す。
  そんな実験をしていた。
  それは、リナとそして、そのほか数名の活躍にて解決し。
  今はそのルヴィナガルドは共和国として新たな歴史を歩んでいる。
  そしてまた。
  その逃亡した国王が、少し前、ソラリアの地にて再びそのような実験をしていたことは。
  ルークもミリーナのその場に居合わせたがゆえにと知っている。
  それらは、呪文の詠唱すらなく、簡単な術を軽く扱う。
  そして、レッサー・デーモンの魔力と人の知恵とをもったそんな彼らの中には。
  空間を渡る能力すら受け継いで物すらいた始末。
  もっとも、リナもガウリイも当然のことごとくにそれはできるのだが…
  

  そんなリナの言葉に軽く笑みを浮かべ。
  「思い出してくれてうれしいぜ。リナ=インバース…今度は…手加減はなし。だ。」
  そういってくるそんなそれの言葉に。
  「なあ?あんた、これと知り合いか?」
  そう指差してくるそんなルークの台詞に。
  「あんたたちも出会ってるわよ。ワイザーのおっちゃんに。
    出会ったときにあんたたちも出会ってるしね。」
  かつて、ソラリアの街でリナたちに戦いを挑んできた、そのうちの一人。
  そういえば途中から姿をみなかったわね。
  などとリナは心で思いつつ。
  何のことはない、上司の命令でほかの地にと出向いただけのこと。
  そして、そこで、リナたちに彼が殺されたことを知り。
  そして、今また。
  リナたちの姿を目にして。
  一人、勝手にかなりの暴走をしているその人物。
  そして、笑みを吊り上げつつ。
  「まあ、どんな技を使ったのかしらないが。
   今の業はこの俺には通用しねえぜ?
    何しろこの俺はあのゾードよりも性能が高い、とあの御方がお墨付きをくれたからな。」
  いいつつ、剣を抜き放つその男性。
  「あんたら二人、不思議そうな顔をしてやがるな。」
  じっとみつめているミリーナとルークをみつつ。
  にやりと笑みを浮かべ。
  「俺たちの仲間は別にソラリアだけにいたわけじゃぁない。
    いざ何かやろう。というときのためにあちらこちらに散らばってたんだよ。
    ―最も、その前にあんたらに頭をつぶされちまったがな。
    そのおかげで今はこんな商売に身をやつしてる。ってわけだ。
    あのときの借りはいつかきっちり全部変えさせてもらうぜ。
    …まあ、今日のところは味方が使い物にならないから、引いてやるがな。」 
  いいつつ、淡々というそんなソレの言葉に。
  「おいおい。笑わせるなよ。」
  鼻で笑いつつ、そんな暗殺者にと身をおいている人魔にと話しかけているルーク。
  そんな彼の言葉に鼻で笑い返し。
  「おいおいおい。俺が逃げた後に追いかけて倒す。っていみか?そりゃ?
    いいのかよ?おい?ま、あんたは平気だろうけどよ?
    そっちの女の方はどうか…って……」
  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え゛!?」
  完全に、確かにそれを喰らわせたはずなのに。
  まったく何ともなく突っ立っているその姿を目にして、そこで驚愕の声を上げていたりするその人魔。
  「おあいにく様ですわ。私、リナさんから解毒の術を習っておりますし。
   後は少しツテがありまして、神聖魔法も少々…」
  いいつつ、表情ひとつ変えることもなく、淡々と語っているミリーナ。
  先ほどの戦いの折に確かに自分にはごろつきに混じって。
  とある遅効性ともいえる、しかも致命的な毒をうけたのは事実。
  だがしかし。
  ミリーナはそれをすかさずすぐに浄化の術にて解除したのである。
  当然、魔王の力と竜神の力を借りた神魔融合呪文のその一つであるその浄化の術は。
  どんな毒であろうが簡単に排除は可能。
  「ま、そういうことで。さぁぁって、みっちりと、白状してもらうわよ♡}
  にこやかに笑みを浮かべつつも。
  にじり、にじりとそんな彼の元にと詰め寄ってゆくリナたちと。
  「てめぇ!?俺のミリーナに毒なんかをしかけたのか!?」
  思いっきり、魔王の力を振る活用して、殺気を振りまいているルーク。

  「ま、ま・・・・て!」
  おかしい。
  計画とまったく違う。
  いくらなんでもあの毒を解毒できるはずは!?
  などと心の中で動揺しているその最中にも。
  どんどんと近寄ってくるリナたちの姿。

  そして。


  ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!


  静かな路地に。

  地を裂くようなそれの悲鳴がこだましたのは、それからすぐさまの出来事。





  街は騒然とした雰囲気にと包まれる。
  それはそうであろう。
  新たに、暗殺者が捕まり。
  そして、それらが、口をそろえ。
  『自分たちを雇ったのはフランシス大神官だ。』
  そう、答えているのだからして。
  意見は、真っ二つにとわれ。
  あるものは、それは『フランシス大神官を陥れる罠だ!』といい。
  またあるものは、『いや、これはやはり真実なのでは!?』といい。
  結局のところ、ラチがあかずに。
  それぞれ、四人の大神官を集め、事情を聞く。
  ということで話がまとまったものの。
  だがしかし。
  肝心の彼らがすんなりとそれに応じるはずもなく。
  「それじゃ、俺がケレスの旦那を迎えにいくから。」
  雇われている身でもある、彼がケレスを迎えにといくこととなり。
  「それじゃ、オレは?」
  いいつつ、自分自身を指差しているガウリイ。
  「ガウリイは、ライアンね。」
  そういうリナの言葉に。
  「え゛え゛え゛!まさか、リナが、それじゃ、ブランやフランシスのところにいくのか!?」
  などと思いっきり叫んでいるガウリイ。
  「?何いってんのよ。せっかく四人いるんだし。
   それに、いっとくけど、兵士程度じゃ、彼ら、引っ張り出すこと不可能よ?」
  まあ、ケレス大神官は素直に従うとして。
  などと、心の中でリナは思いつつ。
  叫ぶガウリイにと投げかける。
  「は!?まさか、ミリーナがブランかフランシスのところにいくんじゃあ!?
    俺は絶対ぃぃぃぃぃに!反対だぞ!」
  などと、こちらもまた、叫んでいるルークであるが。
  「仕方ないでしょう?そもそも、フランシス大神官は、今私邸にいるらしいですし。
    あそこは、彼以外の男性は出入り禁止ですし。」
  「で、ブラン大神官のところは、観光客とか以外は女人禁制だしね。」
  -表向きは。
  であるが。
  「なら!オレがブランのところにいく!」
  などと叫ぶガウリイに。
  「ん?ガウリイちゃぁん?まさか、ライアン大神官のところで、
   この私にごっついような男性と力自慢、させる気?ん?」
  にこやかなまでに、笑っていない微笑でガウリイにと問いかけるリナ。
  そう。
  ライアン大神官の困ったところは。
  たとえ、お上からとかの命令でも。
  力自慢というか、つまりは。
  自らが雇っている者たちと力比べをしてもらい。
  そして、勝ったらそのいうことをきく。
  というもの。
  いくらなんでも、そんなことをミリーナにやらせるわけにもいかず。
  かといって、ルークがいったならば、血気盛んな彼のこと。
  まず、相手の荒々しさに飲み込まれ、ことが大きくなることは必死。
  「それでは、お願いいたします。とにかく。
    彼らの意見を直接に集めて問いただす。という以外の手は…」
  もはや、兵士達や、そしてまた。
  魔道士協会の関係者。
  そしてまた。
  数日後に迫った会議のためにと集まっている主要たる人物たち。
  それらが完全にと集まるまでに、すべての結果を出しておかねば。
  はっきりいって、世間一般上の信用問題からも、体裁的にもよろしくない。
  何しろ、今までの経緯もあり、誰一人、ライアン大神官の所にいく勇気をもっている兵士など。
  このセレンティアには存在し得ないのだからして。
  …つーか(というか)、情けなすぎ。
  当然のことごとくにリナたちは思うが。
  だが、それを今いっても仕方ないのもまた事実。

  そんなこんなで。
  結局のところ。
  まず、ルークが『水の神殿』の責任者。
  ケレス=ローレンシオを迎えにいき。
  そして。
  ガウリイが、『地の神殿』ライアン=セインフォート。
  彼の担当となり。
  ミリーナが『火の神殿』フランシス=デミートリィ。
  彼女が私邸にいるという、彼を迎えにいくこととなり。
  そして。
  リナが『天の神殿』のブラン=コンニール。
  当然、女人禁制なので、男性の姿でいくこととなり。

  それぞれが、それぞれ。
  主たる四人の大神官を迎えにいくために。

  役所を跡に、それぞれ、東西南北にと散ってゆく姿が。
  すでに日が傾きかけた、セレンティア・シティにて見受けられてゆく。


  水の神殿-
  「というわけなんだが?」
  ルークとしては、気が気でない。
  とっとと、このケレスの旦那を連れて、話し合いの場でもある、
  とある建物に彼を連れて行き、一刻も早くミリーナと合流したいのが、そもそもの本音。
  そわそわ。
  そわそわそわそわ。
  落ち着きがない、そんなルークの様子に。
  「はぁ。確かに、それはいい手かもしれませんねぇ。
   というか、確かに、このままではラチがあきませんしねぇ。
   それに、うわさが真実ならば、大変ですし。わかりました。少しまっててくださいね。
   今出かける用意を…」
  いいつつ、ごそごそと出かける準備をしはじめるそんなケレスに。
  「だぁぁぁぁ!別に何の準備なんていりませんから!とにかく、いきますよ!」
  いいつつ。
  ズルズルズル。
  そのまま、ひきずるようにして、ケレスを外に連れ出してゆくルークの姿が見受けられてゆく。



  地の神殿-
  「たのもう!」
  とにかく、早くにリナと合流しないと!
  ガウリイとしては、気が気でない。
  何しろ、リナが向かったのは、あのブラン大神官の所である。
  あせるが、それ以上に、手を抜いたら、リナに嫌われるのが怖くて、とにかく。
  このライアン神官を連れてゆく以外に、方法はなく。
  「ん?何だ?貴様は?」
  いぶかしる、どうみてても、ごついそんな男たちに。
  「会議の前に全員を集めて、話し合いがあるそうです。
    魔道士協会と、それとセレンティア領主の代行でやってきました。
    ガウリイ=ガブリエフといいます。
    今から、関係者を集めて、このたびの騒動の決着をつけるそうです。
    なので、ライアン大神官にはご同行願いたいのですが?」
  とりあえず、丁寧な口調で相手にと伝えるが。
  「ふっ。ここでは、ライアン様に頼むときには。力じまんをする…」
  キッ…ン…
  シィィィィィン・・・・・・・・
  力自慢をすることがおきてとなっている。
  それに勝ったら取り次いでやるよ。
  と言いかけたそんな言葉をいっている男性の持っている剣が、音を立ててはぜ割れる。
  「―いっとくが、今のは手加減したんだぞ?取り次ぐのか?取り次がないのか?
    それとも、剣だけでなく、そこの柱でもきろうか?」
  しかも、ガウリイが手にしているのは。
  小さなナイフ。
  「「・・・・・・・・・・・」」
  しばしの静寂がその場を支配し。

  「す、すぐにお取次ぎをいたします!」
  なぜか、顔色を真っ青にしつつ。
  まあ、当然であろう。
  あまりに動かない彼らにしびれを切らして。
  ガウリイは、そこに転がっている木の枝で。
  神殿の柱の五本ばかりを一閃のうちにとたたききったのだから。
  バタバタ。
  あわてて、奥にと引っ込んでゆく雇われている男たち。
  やがて。
  奥から年のころならば四十前後。
  ブラウンの髪に白いものがかなり混じっている体格のがっしりした男性が奥から出てくるが。
  彼が、ここ、地の神殿の責任者である、ライアン=セインフォート。
  その当人。
  そんな彼の姿を認め。
  「ようやくでてきたな。悪いが、こちらは急ぐんでね。このまま移動させてもらいますよ。」
  「…は?」
  何か会議よりも早くに話し合いの場を設けることになったらしい。
  と、護衛のものから、引継ぎを受けたのは、つい今しがた。
  胡散臭さを感じつつも、外にでてみると。
  先日たずねてきた金色の髪の男性が一人。
  そして、彼が間の抜けた声を出すよりも早くに。
  プワッ!
  シュン!
  「「うどわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」
  突如として、その場から。
  ライアンの姿が、ガウリイとともに掻き消える。
  その味わったことのない感触に思わず叫び声をあげているライアンに。
  そしてまた。
  彼の周りにて彼を護衛していた男たち。
  そんな彼らの悲鳴が、ものの見事にと一致してゆく姿が。
  ここ、地の神殿の玄関先にて見受けられてゆく。
  





  「ごめんくださーい。」
  ?
  挨拶をすれども、返事がない。
  しかも、玄関先を守っているはずの傭兵たちの姿も見えない。
  「うーん、気配は感じるし。このままいきましょ。」
  いいつつ、そのまま、すたすたと。
  ここ、天の神殿にと入ってゆくリナ。
  「うーん?気配は地下から?」
  気配が地下からしているのに気づき。
  「とりあえず、隠し扉というか入り口探すのも面倒だし。」
  いいつつ、軽くとある言葉をつぶやき。
  次の瞬間。
  シュッ…ン…
  リナの姿はそこより一瞬のうちにと掻き消えてゆく。
  リナが今行ったのは瞬間移動。
  つまり、リナは地上の建物から、彼らの気配が感じる地下にと、移動したのである。
  「しっかし、本当、これって便利よねー。」
  いいつつ、その右手にとはめられている指輪をみて、くすりと笑っているリナ。
  だが、リナは気づいていない。
  その指輪がどういう意味を持つのか、いまだに…
  もう、この指輪をガウリイからもらって、というか彼が作ってずいぶんと立つ、というのにもかかわらずに。
  まあ、手袋をしているので、表面からは見えないが。
  リナが右手の薬指にとはめているそれは、かなり純度の高い青ダイヤ。
  しかも、おまけつきで、それは魔力を高める用途と、逆に抑える用途を持っている。
  それは、身に着けている当人の気分しだいなのであるが。
  ちなみに、余談ではあるが、ガウリイは赤い同じデザインのダイヤの指輪を、
  こちらはこちらできちんと左手の薬指にとはめていたりする。
  リナとガウリイがであってからまもなく、ガウリイがリナに頼まれて作った品であるのだが…
  いまだに、リナはその指輪の意味にまったくもって気づいていな。
  という事実があるが…
  そんなことを思いつつも。
  とにかく、気配のするほうにと進んでゆく。
  「…や…ぁ…」
  何か、女性の叫びが聞こえたような気がするが。
  だがしかし、この気配は。
  ほのかににおってくるとあるにおい。
  「あ…あいつはぁぁぁぁ!」
  やっぱり殺しとくべきか?
  などと、リナがそんなことを思うのも当然のこと。
  におってくるにおいは明らかに麻薬。
  そして、聞こえてくる声は、あきらかに、女性の声。
  「…とりあえず、制裁は加えときましょう。うん。」
  いいつつ。
  声のしたほうにと駆け出してゆくリナ。
  どんどん強くなる麻薬のにおい。
  リナだから、意識を保っていられるが。
  まず、免疫のない一般人ならば、その体の自由は完全にと奪われる。

  「そこまでよ!」
  バタン!  
  いいつつ、扉をあけたその先には。
  数十人の男の姿と。
  そして。
  「あ…あんたたちは何をしてるのよぉぉぉぉぉぉお!」
  リナが思わずその光景をみて叫んでいるが。
  それもそのはず。
  リナがそこで目にしたのは…
  服をかなり破かれた女性の姿……
  ふと、数名が、いきなり扉をあけて入ってきたリナにと気づき。
  「お、女だ!あいつはオレが!」
  などといいつつ、リナにとまるで飛び掛らんばかりの勢いで、走りよってきている男性数名。
  「子供っぽいが、女は多いほうがいいしな。」
  などといいつつ、リナに対してねちりとした視線、というか、狂気の視線を向けてくるそんな男たち。
  プチリ。
  リナの怒りの叫びとともに思いっきりリナが切れたのは当然のことで。
  「こっちへ!あんたらは全員いっぺん地獄をみてこーい!!!!」
  女性を一瞬のうちにと保護し。
  次の瞬間。
  ドゴガァァァァン!!!!
  リナの放ったその黒い、黒い渦の舞は、しばし、部屋の中を荒れ狂ってゆく。
  一時近く、その黒い塊の舞は部屋の中にて荒れ狂い。
  そして。
  「ほらっ!」
  いいつつ、なぜかその程度で魂が抜けかけているそんな彼らというか、約一名、
  というか、とりあえずよんで来い。
  といわれている人物のみ、簡単にと動ける程度だけに回復をかけ。
  そのまま、それをとりあえず、術にて飛ばしてゆくリナであるが。
  そして。
  「大丈夫?ひどい目にあったわね?」
  「…あ…うわぁぁぁぁぁん!」
  泣き叫ぶ女性をリナが保護し。
  とりあえず、事情を説明させるために、近くの役所に連れて行ったのは、いうまでもない。

  ブラン大神官。
  やっぱり、生き返らせないほうが世間のためだったかな?
  と、しみじみ思うリナであった。

  もっとも、彼はこれから、死ぬよりつらい刑罰を受けることになることは。
  それは、あとしばらく後の会議にて、決定されるのは、いうまでもない。


  

  
  「あの?」
  戸惑う以外の何者だ。
  というのだろうか。
  火の神殿を任されているフランシス大神官。
  そこの私邸に彼を迎えにいったのではあるが。
  どうして、メイドが、バニーガールのような格好をしているのやら。
  しかも、『話を聞くのについでに一緒にお茶でも。』
  といわれ、とにかくとっとと用件を済ましたいがゆえに。
  「結構です。」
  何度断ったであろう。
  にもかかわらず、目の前にと出されているのは、薄いピンク色をしている紅茶。
  「それを飲まれましたら、お話を聞きましょう。」
  いいつつ、なぜか、人払いをしているフランシス。
  …仕方がないか。
  いいつつ、それに口をつけるが。
  バタン!
  ミリーナがそれを飲もうとしたその直後。
  勢いよくあけられてゆく部屋の扉。
  「ふふふふふふふふふふ…フランシス様ぁぁぁぁぁぁぁぁ?
    私がいない間に何をしてるのですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ????」
  そこには、紫色の髪の女性が、目を据わらせまくり、しかもなぜか、
  その手にもっているのは、抜き身のバスター・ソード…
  「げっ!ディーナ!?いつ、戻ったんだ!?」
  あからさまに動揺しているフランシス。
  ディーナ=デミートリィ。
  一応、このフランシスの正妻なのであるが。
  「んっんっんっ!?フランシス様ぁぁ?
    確かその人はケレス大神官のところに雇われている人ですわよねぇ?
    まさか、この私の留守にまた違う女性に手をつけようとしているわけですか?ん?
    しかも、留守中に、いろいろとやったそうじゃないですか?
    ここは、はっきりと、させないとねぇ?」
  いいつつ、なぜか、バスター・ソードをなめているディーナ、と呼ばれたその女性。
  「ま!まて!ディーナ!話せばわか…」
  あせりまくるそんな彼の首ネッコをつかまえて。
  「あ、確かミリーナさんでしたわよね?それ、飲まないでくださいね?
    この馬鹿亭主であるフランシス様が、媚薬いれてますから。
    代わりの飲み物はすぐにもってこさせますからね。」
  いいつつ、ずるずると、横の扉にむかって。
  フランシスを引きずってゆくディーナの姿が。
  「ビ!?」
  今まさに飲もうとしていたミリーナは。
  珍しく驚きの表情をしつつ。
  しばし、そのまま固まり。
  「…の…のまなくてよかった…(汗)」
  珍しく安堵のため息をついてゆくのであった。


  ギャァァァァァ!!!!!!!


  ミリーナの耳に悲鳴が聞こえてきたのは。
  ミリーナに変わりのちゃんとしたレモン・ティーが運ばれてきたすぐのこと。


  
  フランシス=デミートリィ。
  私邸などに来た女性に、こういった飲み物を出して。
  いいようにしてしまう。という何ともこちらもまた。
  女性の敵、以外の何者でもない。
 
  まあ、フランシスとブラン。
  この二人は、似たり寄ったり、といえるのであろうが。
  だが、しかし。
  ブランの方が救いがないのは…言うまでもない。




  そもそも、彼らがここ、セレンティアの大神官に抜擢されたのは。
  ほんの一年ほど前のこと。
  その当時、いい人材がいなかった。
  という理由で。
  人材が確保できるまでの仮地位。
  としていたのだが、少し本院の方がごたごたしていたそんな中で。
  この騒ぎ。
  本院の意向としては、実は別の場所から、それぞれの神官を迎え入れる準備ができていたことは。
  ブラン・ライアン・フランシス。
  この三人は知らない事実。
  知っていたのは、ケレス大神官。
  彼一人のみ……



  それぞれのそんな事情、というか、とりあえず。
  とにかく、それぞれに四人の大神官は。
  問答無用で、一時のちには。
  

  話し合いの場となる、とある建物にと集められてゆく-……

   
                             -続くー

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    あとがきもどき:
       薫:うーん、問題児ばかりの神官さん・・・・。
         それぞれの性格設定・・・表現できてないなぁ?うーみゅ・・・・
         何はともあれ。
         まあ、この程度なら表でもオッケー(のはず・・・)
         しっかし、間に合いませんでしたねぇ。
         サーバーのメンテが終わったときに、このハザマ。
         完結させようとがんばったのに・・・・くすん。
         ま、次回で、あのお人の登場です(笑
         で、ガウリイとルークの共同作戦?(ん?笑
         ではではvまた、次回にてv
     
       2004年1月16日某日