こんにちわ。
  さてさて、何かこのセレンティア。
  そんなに長くなる予定ではないような気もしなもくないのに。
  何かたったの三、四話でおわりそーにないかも・・・・。
  うーみゅ・・・・。
  ま、しかも、今回の最後にはあれもでてくるしね(まて!
  何はともあれ、いっきます!

  
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        狭間の選択     ~はやくいえよ・・・~
   


  水竜王を祀る、ここ、街の北にある【水の神殿】。
  そして、ここを収めているのはケレス=ローレンシオという大神官。
  そして、そんなケレス大神官がおそらくは雇っていると思われる。
  どうみても、あまり実践向きではないような、はっきりいって、リナとガウリイの目から見れば、
  しょぼい。
  以外の何ものでもない、そんなごろつき…もとい、護衛の者たちらしきもの。
  そんな彼らの間を抜けて、ルークはリナとガウリイを玄関の中にといざなってゆく。

  「―こっちだ。」
  ルークの先導に従い、さらに大きな廊下を外れて奥へと。
  一応、観光地となっている、というのにもかかわらずに。
  寺院の中には観光客の一人もおらず。
  まあ、今、コノセレンティアの状況と。
  しかも、入り口にあんな連中がたむろしていれば、普通の一般大衆が、
  しかも、遊び気分の観光客が寄り付くはずもなく。
  建物の中には僧侶の姿もあるにはあるが、それ以上にどうみても、
  傭兵だか、ごろつきだか、よくわからないような人物がそれ以上にとひしめき合っていたりする。
  まあ、この寺院には暗殺者スタイルのものは見受けられないのだが。
  そんなことを思いつつ、ルークに促されるままにと、廊下を進んでゆくリナとガウリイ。

  ―やがて。
 
  
  「ここだ。」
  ルークが足をとめたのは、奥待った場所にある一室の前。
  コンコン。
  その扉をノックし。
  「ルークです。客が来ました。」
  そんな彼の言葉に。
  『-客?』
  扉の向こうより聞こえてくるのはまだ若いであろう男性の声。
  「魔道士協会の使い、といってます。」
  そんなルークの声に。
  『…お通ししてください。』
  その声が聞こえると同時に。
  カチャリ。
  扉をひらき。
  「失礼します。」
  そういって、扉の中にとリナたちを促してゆくルークの姿が。

  そこは、さほど広くもない部屋。
  だが、その両脇にはびっちりと本棚が壁を埋め尽くしており、
  そして、そんな本棚の先には、見知った顔がひとつと知らない顔が三つほど。
  当然、リナたちが知っている顔、というのは、ルークの相棒でもある、ミリーナ以外の何ものでもないのだが。
  革ノショルターガードを身につけた、長い銀髪をポニーテールにしているのは、あいかわらずか。
  そして、ちらりとリナとガウリイにと視線をむけるが。
  …この人たちがかかわってきた…ということは、また何か厄介なのかもしれないわね…
  そんなことを直感的に感じ取りつつも。
  それでも、ルークのように大声などだすこともなく、少しばかり、
  その顔の眉をうごかしたのみ。
  残りの二人は傭兵らしき男女と。
  そして、最後の一人は、書類の束の広がった机の前にと座っている男性。
  歳のころならば二十代の半ば。
  一般的な平均値からみれば、一応ハンサムの部類にはいるその顔立ち。
  温厚-というよりは、むしろどうみても、気の弱そうなタイブにと見て取れる。
  そして、そんな彼は今はいってきた、リナとガウリイをみて。
  少し微笑みつつも、遠慮がちに。
  「…私、ここの責任者のケレス=ローレンシオと申します。」
  やたら丁寧にと頭を下げてくるその男性-ケレスと名乗った、
  ここ、水の神殿の責任者、ケレス大神官、その当人。
  そんな彼の言葉に。
  「魔道士協会評議長より、このたび市外警護の以来をうけた。
    リナ=インバースと申します。こっちは旅の連れでガウリイといいます。」
  とりあえず、本名ではないにしろ、通りなで説明しているリナ。
  別にこういう場では、一般に知られている名前のほうが何かと便利であるがゆえに。
  リナが、本当はリルナ。という名前であることは、ごく一部の者たちしか知らない事実。
  そんなリナの言葉に。
  「…市街警護…ですか…」
  どこか納得しつつも、小さくつぶやくケレス。
  「ええ。」
  そんな彼の言葉にとにっこりと微笑み。
  「最近この町の中も何かと物騒になってますようですからねぇ。
   ついでに雑魚も入り込んでいるようですし。
   まあ、何はともあれ、早まった連中がバカをやらかさないように。
   というのを見張る役目ですね。」
  にこやかに、さらりと言い放つ。
  おもいっきり、あてつけ以外の何ものでもないリナのその言葉に。
  思わずケレスの言葉で笑いそうになっていたりするミリーナ。
  そんなリナの言葉にあきれて視線をむけているルーク。
  逆に、その場にいたリナたちとは面識のない傭兵らしき男女は。
  リナとガウリイをにらんでいたりするが。
  だが、そんな彼らはガウリイの冷たいまでの一瞥をちらりと受けただけで、
  ものの見事にその場にと凍り付いて固まってゆく。
  それにまったく気づいてないリナ。
  そしてまた。
  そんなリナの言葉に、大きく賛同の意を示し。
  …どうやら、あからさまのあてつけの言葉を理解することなく。
  逆に同意しているこのケレス。
  まあ、彼らしい、といえば彼らしいのであろう。
  「そうなんですよね!最近もう、物騒で、物騒で!」
  そんなリナの言葉にこくこくとうなづき。
  「あの火事いらい、みんなギスギスしちゃいまして…互いに嫌がらせをやったり、やられたり…
   私のところなんかにも誰かの雇った連中がやってきたこともあって、
   もう、怖くて怖くて…そんなわけで結局、私自身も護衛の人を雇わなくちゃ、安心して眠れもしない。
   なんて状況になっちゃったんですけど…この費用が結構バカにならないんですよー。」
  そのまま、一息に、今までのたまっていた思いをぶちまけるがごとくに。
  いきなり話し始めるこのケレス。
  「…おひ。」
  「…何かいやな予感が…」
  そんな彼をみて思わず目を点にしているリナに。
  こういうタイブのものは、ガウリイは出会ったことがあるがゆえに。
  思わずうなっているガウリイ。
  そんな二人を尻目に。
  「私は亡くなった神官長さまにこの寺院を任されたわけですけど、
    ほら、ここって水竜王(アクアロード)様を祀っているじゃないですか。
    …私がこういうことをいうのも何なんですけど、ほら、水竜王(アクアロード)様って、
    民間伝承では、『千年前ニカタート山脈で復活した魔王に滅ぼされた』
    なんてことになってるじゃないですか。
    あ、もちろん私としてはそんなのは単なる伝説・迷信で、
    水竜王様はご健在で今のどこからか私たちを見守ってくださっている、
    と信じていますけど…世間じゃ、そう思っていない人たち、というのが結構いるんですよね。これがまた。
    赤の竜神(フレアドラゴン)様の伝承というか伝説はあんなに伝わっているのに、
    信じている人たちがいる、というのに、困ったもので…」
  も…もしかして、この人って…
  よくある、【とにかく、愚痴とか長い話をするタイプ】かぁぁぁあ!?
  それにリナは気づくがすでに遅し。
  「それで、平たい話をするならば、ほかの分院に比べると、
   ここって今ひとつ人気がなかったりするんですよね…
   でもってその…通俗な話で恐縮なんですが、何というか、お布施、というものも、
   ほかの場所と比べるとかなり少なくて…
    それでも本院があったころはそのあたりのことは本院で管理してくださってたので、
    そんなに不自由はなかったんですけどねー。
    本院が焼けてなくなってからというもの、それぞれが独自でやりくりを始めるようになって、
    もお、この寺院は火の車で…それに、護衛の人たちのお手当てとか…」
  延々と、ただひたすらに。
  ケレスの独白が続いてゆく。
  「―いい忘れてたが-」
  そんなケレスの長い、長い、いったいどこで息継ぎをしているのだろうか?
  というような話をききながら。
  「―この人の得意技は『ただひたすら愚痴る』だから…注意白・・・って。
    もう遅いけど。…俺がミリーナとはなれてまで外回りやってた理由…わかるだろう?」
  疲れたようにとつぶやくルークの言葉がリナの耳にと届き行く。
  「そーいうことははやくいって…」
  もはや、延々と話を止める気配すらみせないケレス大神官をみつつ。
  ルークの言葉にうんざりしつつも毒づくリナ。

  結局のところ。
  リナとガウリイは、延々と。
  そんな彼の愚痴にと、用件をリナたちが切り出す暇もなく。
  ただひたすらにときかされ続けてゆく。

  あまりにウザったいので、リナが幾度このまま攻撃呪文で黙らせてやろうか?
  と思ったほどに…


  カァァァ…カァァァ…


  やがて。
  窓の外から…先ほどは確かにまだ昼だったはずなのに。
  夕暮れ時の赤い夕日と、そしてカラスの声が、彼らの耳にと届いてきたのは。

  いまだに、ケレスの愚痴が続く真っ只中のことであった……




  「だぁぁぁぁぁぁ!何でもう太陽が傾いてんのよぉぉぉぉ!?」
  リナが思わず絶叫をあげる。
  「…長かったなぁ…あの人の話…」
  そんなリナの言葉に続くように、ぽつりとつぶやくガウリイ。
  「うう、やっぱり呪文のひとつでもかまして、
    話を切り上げさせるべきだったかも…」
  どこか、その話の中に、今回の事件の鍵になることはないか。
  などとおもいすべての話を聞いてしまったがゆえにのこの時間。
  「それか力つかって、一時しゃべれなくする、という手もあったけどなー…
   まあオレはリナがいわなかったからならなかったけど…」
  そんなことをいいつつも、並んで宿にと戻っているこの二人。
  「だぁぁあ!モウ!ガウリイ!こうなったら!
    あの雑魚でも捕まえてから、とっととこの依頼、完遂するわよ!」
  あれと、あとは、エルさんに頼んで、元神官長でも連れてきてもらえば。
  すべては丸く万事解決。
  などとおもいつつ、きっぱり言い切るそんなリナの言葉に。
  「とりあえず、あの雑魚魔族がどいつの継続かだなぁ。
    あまりに下級すぎるから、よくつかめないしな。」
  「あ、それ私も。」
  そんな会話をしつつ。
  二人は、夕暮れの明かりに包まれた、赤い光に覆われた町の中。
  今回の事件の一番の発端となっている焼け落ちた元本院にとむかって足を進めてゆく。

  そもそもの原因は、二ヶ月前。
  原因不明の火事でその本院が焼けたことにすべての単は発している。
  そして、その火事の原因もはっきりせず。
  しかも、その火事の直後に四人が四人とも、焼け落ちた寺院にて、
  ある【声】を聞いたということは。
  当人たち以外には知られていない事実。
  だがしかし、いくらなんでも、素直にそれを神の言葉。
  信託だ。と受け止めてしまう彼らもまたどうか…とも思わなくもないが…

 

  やがて、まだ胸のうちにとのこる、イライラを抱えつつも、二人がたどり着いたのは。
  その外装が黒くススで汚れた石造りの塔。
  道に迷う心配などは皆無。
  何しろ、今はあまり観光客がいない、とはいえ、腐っても一応は観光地。
  大通りにと出て、道沿いにと進めば簡単に何も考えずとも、その現場にはたどり着く。
  
  目の前にあるのは、無意味に広い敷地と、そして噴水に庭木にベンチ。
  そして、焼け焦げた石造りの寺院。
  その前にあるのは、いくつも供えられている花束の姿。
  建物の入り口にはイタズラ目的や、挙句はヤジウマ根性で入ろうとする者が後をたたない。
  というか、人間というものは、こういった場所にはワザと入り込みたい衝動に駆られることがあり。
  それを理性で抑えられない困ったちゃん、というものはどこの世界にでも存在する。
  ゆえに、そんな神武を防ぐために、見張りの兵士が二人ばかり、あくびなどをしつつ、
  そこの見張りをやるきのなさそうな雰囲気でしかも、きちんと椅子に座り、
  暖かい飲み物などをのみつつ、やっていたりする。
  当然、リナとガウリイはそんな兵士に築かれないようにと建物の中に入り込むことなどは朝飯前。
  だけど、さて、どうするかな?
  などとリナが思っていると、すたすたと。
  そんな彼らのところにと歩いていき。
 ゜「すいません、魔道士協会の関係者なんですけど。中をみたいんですけど。」
  いいつつ、にこやかにそんな兵士にと交渉しているガウリイの姿が。
  「あ、いいですよ。」
  戻ってきた返事はいともあっさりとしたもの。
  「…は?」
  思わず目を点にするリナであるが。
  「…いやあの、そんなにあさりと入れてもいのーの?」
  思わずあっけにとられて聞き返すリナであるが。
  「ええ、別に中をみたい人たちは入れてはだめ、という命令はうけてませんし。
    あ、それじゃあ、私が内側を案内させてもらいます。」
  などといいつつ、にこやかに手を差し出してくる先ほど暖かい飲み物を飲んでいた兵士その一。
  「…すんなり、いれるなよ…おひ…」
  おもわずリナがうめいたのは当然、といえば当然であろう。
  そんなこんなで、兵士にと連れられて、建物の中にと入ってゆくリナとガウリイ。

  「とりあえず、神官長の部屋でもみせてもらえますか?」
  歩きつつ、兵士にと語りかけるそんなリナの言葉に。
  「ええ。いいですよ。それではついてきてください。」
  いともにこやかに案内してゆくその兵士。
  
  会談をを登っている兵士にと、
  「-そちらの調査ではどうなってます?」
  とりあえず、確認のために問いかけるそんなリナの言葉に。
  苦笑しつつ。
  「多分単なる失火ですよ。これは。」
  いともあっさりと返事を戻してくるその兵士。
  というか、こいつら、ここまであからさまに、魔力的な残痕が残っている炎の気配に、
  そういいきるか?
  …こりゃ、調査、といのもきちんとしてないわね…
  などと思いつつ、思わずその返事にため息を吐き出すリナ。
  リナとガウリイにはこの建物のそばに近づいたときにはすでに。
  この建物が見えたのが自然発火、というような代物ではなく。  
  明らかに第三の手が加わったものだ、しかもこの炎の残像痕跡からすると、
  間違いなく、魔力にて生み出された炎にて燃えたことが一目瞭然。  
  それをあっさりと、【失火】の一言ですます兵士のその言葉にあきれるのも無理はない。
  そんなリナやガウリイの思いは当然彼らを案内している兵士にはわかるはずもなく。
  「放火だとか、暗殺だとか、物騒なうわさは流れてますけどね。
    …ま、世間、というものはそういう噂が大好きですから。」
  などと笑いつつ、リナとガウリイにと説明し。
  そのまま、兵士は階段を登り、廊下を渡り、さらに別の階段へ。
  白い壁は炎とススとで焦げ、汚れ、床の上には炭と貸した、元絨毯らしきもの。
  そんなものが見て取れる。
  「神官長のご趣味で、礼拝堂では魔法の明かりではなくて、蝋燭を使ってましたし。
    あちこちで香をたいてましたからねぇ。
    それが壁掛け(タペストリー)や絨毯なんかに燃え移ったんですよ。
    あ、ここが、神官長のお部屋です。」
  人間、思い込みでの調査はいかに恐ろしいか。
  ということ。
  つまりは、ここを調査にあたったものたちは。
  それが頭にあったがゆえに、礼拝堂が激しく燃えているのをみてとり。
  いともあっさりと、【失火】ということで結論を出したのである。  
  …これでは、世間に様々な噂が飛び交うのもわからなくはない。
  リナたちにと説明しつつ、兵士が足をとめたのは。
  ほかの部屋よりもちょっとしたコジンマリとしている小さな部屋。
  焼け落ちた窓から空が見え。
  部屋の中を夕暮れ色にと染めている。
  家具などはすべて焼け落ち、積もった灰の上には前に調査にきたのか、
  または観光にきたのかわからないような人物たちの足跡がいくつもの痕跡をのこしている。
  「…まあ、参考になるものは残っていませんけどね。
   -他にはどこかごらんになりたい場所は?」
  にこやかにいってくる兵士のその言葉に。
  だがしかし、リナもガウリイも、この場にのこる、独特の気配を捉えている。
  「…というか、一応は抵抗はしたのね…」
  「…だな。」
  それを感じ取り、そんな会話をしているリナとガウリイ。
  そして。
  「…しっかし…そいつも、何考えてんだか…」
  いいつつ、ため息ひとつ。
  「だな。念のために聞くけどこの建物の中にオレたち以外、誰かいるのか?」
  とりあえずは聞き返すそんなガウリイの言葉に。
  「いえ。他には誰もいないはずですが…」
  きょんと首をかしげて問い返してくるその兵士。
  「しっかし、気配消すの…下手よね…」
  「だなぁ。はっきりとオレたちに見られているのを知られてるもんなぁ。」
  その気配を感じ取り、のほほんとそんな会話をしているこの二人。
  「??気のせいですよ。まあ、火事があって人の死んだ現場なんて。
   あまり気持ちのいいもんじゃありませんからねぇ。」
  まだ気づくこともなくにこやかにそんなことをいっている兵士に。
  「とりあえず、ガウリイ、このあたりの建物、というかこの建物からあれが出れないように。
   結界お願いね。―それじゃ、いくわよ!」
  「わかった。」
  いいつつ、何やらガウリイがふっと手を天井付近にとかざす。
  それだけで十分。
  人の目に見えることのない、精神世界面からの隔離的な結界が。
  この建物全体を包み込んでゆく。
  そんな会話をしつつ。
  そのまま、部屋を飛び出してゆくリナとガウリイ。
  「―あ!ちょっと!」
  そんな二人の行動に呼び止めている兵士の声が二人に聞こえてくるが。
  当然そんなものは無視。

  「ちっ!私たちが向かってるのに気づいて動いてるわね。」
  「ま、この建物の中からは逃げられないって。
    ―このまま追い込むぞ。リナ。」
  「了解!」
  あからさまに移動しているその気配。
  楽しんでいるのだ。
  それは。
  というか、彼らの実力を知らない、というのは、不幸以外の何ものでもないだろうが…
  いいつつ、二人は。
  それをもはや逃げられない場所にと追い込みをかけるために。
  そのまま、相手に気づかれることもなく、それを追い込んでゆく。

  天井にあるのは以前ステンドグラスがはめられていた窓。
  焼けたシャンデリアのみがぽつんと不自然にと残っている。
  「というか、それで気配を隠したつもり?」
  にこやかに微笑みつつ。
  そして。
  「烈閃槍(エルメキア・ランス)!」
  そのまま唱えた呪文を解き放つリナ。
  まあ、リナはカオスワーズを唱えることもなく、術を発動させることが可能なので、
  それはすぐさま一瞬のことではあるのだが。
  狙うは、不自然にと残ったただひとつ残っているステンドグラス。
  術が命中するその直前。
  ―ニュル。
  ステンドグラス-いや、それに化けていたものが溶け流れ、
  リナの一撃…まあ、リナはわざと威力を落として放ったのだが。
  それの姿を現させるために。
  そして、それは、床の上にとわだかまってゆく。
  「…困りますよ!かってにあちこち走り回られては!
   ほら!誰もいないでしょう…って……」
  ・・・・・・・・・・・・・・
  しばし、その場にて固まる兵士。
  まあ、それも当然であろう。
  彼が目にしたものは、まるで生き物のようにと床にと落ちて行くステンドグラスだったもの。
  そして。
  『…ほぉぉぉぅ、よくわかったな。この俺の居場所が……』
  いまだにこの場に結界が張られていることにも気づくこともなく。
  そしてまた、自分との力の差にも気づくこともなく。
  あからさまにと馬鹿にした口調でそのわだかまった元ステンドグラスのわだかまり。
  そんなそれの言葉にため息ひとつ。
  「あのねぇ。普通おかしい、とおもうわよ。そもそも。
    あんた、ステンドグラスに使われてる材料…理解してるわけ?
    ステンドグラスの枠って、熱に弱い鉛でできてんのよ?
    というか、それなのに他のものがすべて焼け落ちてるのに、
    それが残っている、というのを気づかなかった調査隊が大馬鹿以外の何ものでもないけどね。」
  完全にあきれたそんなリナの声がそれに向かって投げかけられ。
  そんなリナの言葉に小さく震え。
  それは目の前にて一瞬にして形を取ってゆく。
  色ははっきりいってステンドグラスの色彩を混ぜたようなまだら色の色彩。
  背はガウリイよりも頭二つ分ほど大きい程度。
  一応、人の形をしているものの、その顔には当然のことながら、
  目も鼻も口もなく、代わりにその全身には無数の目と口とが開いていたりする。
  『くくっ。人間にしては洞察力に優れているな。
    だがしかし、このヅェヌイ様にかなうとでも?』
  いまだに力の差に気づかずに嘲笑しつついってくるその魔族-ヅェヌイ。
  「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」
  それをみて、あからさまな悲鳴をあげている兵士その一。
  ま、当然の反応であろう。
  いきなり目の前でんなものが出現したその日には。
  そして。
  人間、というものはパニックになると何をしでかすのかはわからない。

  これはその典型、ともいえるであろう。
  いきなり、首にかけていた、非常用の通信手段の笛を手にとり。
  挙句は腰にとつけていた非常灯の花火を着火させ。

  ポシュ!

  ピィィィィィィィィ!!!!!!


  パンパンパンパン!


  夕暮れ時の町の中。
  
  兵士が行った非常用の花火が空に花を咲かせ。
  町の中にと笛の音が響き渡ってゆく-
  
  
                             -続くー

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    あとがきもどき:
       薫:うーん。ま、いきなりんなものが目の前に出現したら…ねぇ・・・(汗
         ちなみに、私のイメージ的にはこの魔族。
         妖怪の百目のイメージだったり(まて!
         それが、人間の体ニビッシリト・・・というイメージかな?
         あと、その体の色を変化させて、簡単にいったら。
         ガソリンをアプラに浮かべたような色彩。
         んなイメージもってます。
         さて、皆さんはどうですか?
         何はともあれ、次回、大騒動!?をお送りします(ん?
         んではではvv

      2004年1月15日某日