狭間の選択 ~どこにでも出てくる黒い物体?~
何はともあれ、目指すはガイリア・シティ。
昨日まで、確かにいたはずの門番の兵士などの姿はどこにも見えず。
町の中に漂うのは、漠然なる不安。
町の至るところには、おそらくは昨日発生した、というデーモンの犠牲者なのであろう。
ガラガラと、まるで物を運ぶかのごとくに。
手押し車に押されて、犠牲になった人々の死体などが、どんどんと町の外にと運ばれ。
それらはそこで荼毘に伏せられている。
喧騒と、混乱にいまだ満ち溢れている町の中。
リナたちが堂々と、門の中から入った、というのに。
それらをとがめる兵士の姿すらもいない。
いや、姿は見えはするが、兵士たちは、いちいち、町の中に入ってくる人々を、
チェックしている暇はないらしく。
せわしく動き回っている。
中には、お城にいき、そのまま、戻ってこない、とかいう会話が小耳にと聞こえてきたりもするが。
状況は、今はどうなっているのか、リナたちにはわからない。
「とりあえず、私の家に…」
ジェイドの言葉に従い。
彼の家がある、という、場所にとそのまま移動する。
町を移動してゆく間にも、壊された家々や、町の人々のすすり泣く声。
そして。
「王室は何をやってるんだ!?われ等の援助をしてくれるのが普通ではないのか!?」
などと叫んでいる市民の叫びが空にと響き渡っていたりする。
復興作業をしているのは、ほとんど、雇われているのであろう傭兵や。
町の中に滞在していた兵士の姿。
正規の兵隊、という姿はどこにも見えない。
「何か殺伐としていますわね…」
そんなつぶやきをもらしているミリーナ。
「あ、こっちです。」
いいつつ、自らの家のある方向にと足を進め。
混乱した町の中を歩くことしばし。
「……そ…ん…な。」
その場にと呆然と、ジェイドはそのままの姿勢で。
その場所にと固まり、立ち尽くす。
ジェイドたちの目の前にと広がるのは瓦礫の山。
「物質の残留痕跡からして、昨日、今日、壊されたものではありませんわ。」
いいつつ、そこにある瓦礫をみて、そんなことをいっているメフィ。
「…おい。ジェイドさんよ…家…ないぞ…」
いまだにその場に呆然と立ち尽くしているジェイドに向かって。
そんなことをいっているルーク。
「つーか、ここまでやる?普通?」
半ばあきれてつぶやいているリナ。
目の前には、元ルークの実家があった広場が広がっており。
だがしかし、そこには家、などというものはなく。
ただただ、瓦礫の山が存在しているのみ。
広い土地に手入れのきちんとした庭のみが。
その場にそぐわずに残っていたりする。
「…家財没収されているかも、とはお聞きしてましたけど…
まさか、家まで壊されているとは…」
ルークのつぶやきに、半分、驚きつつも、呆然といっているミリーナ。
「…それで?どうするのだ?リナ殿たちは?
この調子では、この場を拠点として、動く、というのは無理なのではないか?」
そんな光景を眺めつつ。
冷静な分析をして、さらっといっているミルガズィア。
「なあ?リナ?これ、再構成させて、家を元通りにして、拠点にする。
というのは?」
のんびりと、普通に聞けば、絶対に不可能、というか、かなり無茶なことを言っているガウリイ。
そんなガウリイにと向かいつつ。
思わずため息ひとつ。
「あのね?ガウリイ、昨日のデーモン発生、で壊されたんだったら。
今のこの町の状況ではそんなこと、少し程度家ひとつが復活したからって、
誰も気に留めないでしょうけど。」
「「いや、するとおもいますが(と思うぞ)?」」
そんなリナの言葉に思わず突っ込みをいれているルークとミリーナ。
そんな彼らの言葉をあっさりと無視し。
「とにかく、以前から壊されてた家がいきなり復活したら。
そりゃ、あんたには簡単でしょうけど。人々の目、というのは結構面倒だからね。
ということで、ジェイド、このあたりでほかに身を隠せそうな場所ってない?」
「そんなもんか?エルさんたちはまったく気にいてないぞ?」
いいつつ、首をかしげるガウリイに。
「あのねー。ガウリイ。金色の王とか、宇宙の姫、とか、彼女たちはまた別なの。」
-ぴしり。
ため息まじりにつぶやくそんなリナの台詞に。
思わず固まっているミルガズィアとメフィ。
ちなみに、二人はもう片方の名前には聞き覚えがない。
まあ、そのような名前を知っているのは本当にごく一部、しかも、金色の王に近しいものだけ。
というのが現状なのだが。
もし、彼らがその言葉の意味を理解したら。
完全に再起不能に近い状態に陥るであろうことは…調べなくてもわかりきってはいるが。
「?何かたまってるの?ミルガズィアさんやメフィは?
まあいいわ。とりあえず、郊外の宿屋にでもいきましょ。
―話はそれからよ。」
そういうリナの言葉に。
「な、なあ、リナ?その宿屋だったら…
さっきここにくるまでに昨日のデーモン発生のときに壊されたらしく。
宿の主人がないてたぞ?みただろ?」
のほほんとそんなことをいっているガウリイ。
「「…へ?」」
そんなガウリイの言葉にしばし間の抜けた声をだしているリナ達四人。
ちなみに、ミルガズィアとメフィはいまだに固まり中。
「そ、そーいえば、何か宿がどうのとかいってたような気も…」
別にそこまで、ただ道を歩くだけで気にはしてなかったわね。
などとリナは思いつつも。
「…んじゃ、どーすんのよ?
この町…首都、という割りに…宿屋が少ないんだけど?」
思わずじと目で問いかけるそんなリナの言葉に。
「だから、これを再構成、する、とか?」
「―それは却下!」
「????」
一人、再構成、の意味がわからずに、ただただ首をかしげているジェイド。
質問したいが、何か怖いような気がして、聞くに聞けない彼であるのだが。
しばし、そんな瓦礫の前で話し込んでいると。
「うん?貴様…」
いつの間にか近くにきた、正規兵の一人が、ふとその場に立ち尽くすジェイドに気づき。
声をかけてくる。
一応、命令は、出たままになっているがゆえに。
とりあえず、命じられたことはこなす。
それが、役人、というものである。
「まずい、この場はとりあえず、逃げるわよ!」
あわてて、駆け出すリナを追いかけ。
「…まったく、人間ってせっかちですわね。」
などとつぶやいているメフィ。
「あ、おい、まて!」
追いかけようとするが。
だがしかし。
「ちょっと、あんた、正規の兵隊さんなんだろ!?
どうして、城から救援物資とかがくばられないんだい!?
城門なんかはしっかりと閉じられてるし!?」
「え、いやあの……」
正規兵の服装をみて。
周りから集まってくる町の人々。
そんな人々に囲まれて。
返事に窮する、兵士の姿が。
リナたちが駆け出したその場にて。
しばらく見受けられてゆく-。
「―こちらへ。」
しばし、走ったであろうか。
とりあえず、義理的に追いかけてきていた兵士たちを。
そのまま、ルークの術がなぎ払い。
といっても。
別に相手を傷つける、とかいう術ではなくて。
一般的な風の呪文。
魔風(ディム・ウィン)の術によって、追いかけてきていた兵士の姿はもはや見えない。
しばし、走っているそんなリナたちにいきなり建物の影から、一人の人物が声をかけてくる。
「ジェィド様、こちらです!」
「「?」」
ルーク達はその声にふと首をかしげるが。
どこかでその声を聞いたような錯覚に彼らは陥ったがゆえに。
―事実、彼らはその声は聞いたことがあるのであるが。
「君は?」
昨日、丁寧に対応してくれた兵士の顔とそして声は、ジェイドはよく覚えている。
それゆえに、驚きの声を上げているが。
「とにかく、こっちです!いそいで!」
いいつつ、リナたちをある方向にと導こうとするそんな男性の言葉に。
「…わかった。皆さん!」
声に促されるまま、そのまま、その男性にとついてゆくジェイド。
それに続き、リナ、ガウリイ、ルーク、ミリーナ、ミルガズィア、メンフィス。
彼らの姿が続いてゆく。
しばし、裏路地をとおり、とある場所の非常階段を駆け上り。
やがて。
「ここです。」
いいつつ、その男性がリナたちを案内したのは、まだ新しい建物の二階にある、とある一室。
八人で入るにはかなり狭い、といっても過言でないその部屋。
「狭いな。」
いいつつ、何やらミルガズィアがつぶやくと同時に。
空間干渉が行われ。
せつな、狭かったその部屋は、少しは余裕のある広さにと変化する。
どうやら、別次元とこの部屋とを、少しばかり融合させ、
物質世界の空間を少しばかりいじったようではあるが。
「「―な゛!?」」
いともあっさりとそんなことをしてのけるミルガズィアに。
思わず驚愕の声をあげているルーク、ジェイド、そして、この場所にと案内してきた男性。
「ジェイドさん?この人、知り合いなんですか?」
冷静に、そこにいる若い男性をみつつ、そんなことをいっているメフィ。
「何いってるのよ?メフィ?昨日、門のところであったじゃない。
馬鹿丁寧に説明してくれた、門番その一よ。」
にこやかに、そんなメフィに向かっていっているリナ。
「いやあの…門番その一…って、『マイアス』という、名前があるんですが…」
そんな彼のつぶやきはいとも絶やすく無視されつつ。
「しかし、なぜ?われわれを?昨日は命令だから、といって。
門前払いをした君が?私には追放命令がでているのであろう?」
首を傾げつつ問いかけているジェイド。
いまだにミルガズィアのやったことには驚いてはいるものの。
まあ、相手はその姿を実際にみたわけではないが。
黄金竜(ドラゴン・ロード)だというのだから。
それくらいできてもおかしくはないよな。
などと、自分自身に言い聞かせつつ。
―もし、これがリナやガウリイがやったのであれば。
しばらくジェイドはパニックになっていたであろうが。
人間、多種族、しかも、かなりの力をもっている、といわれている種族がやったことならば。
それで納得していまう、というところがどこかにあるのもまた事実。
とりあえず、…気にしないことにしましょう。今はとりあえず。
ほとんど現実逃避に近いようなことをおもいつつ。
「…確かに、命令は出てますし。私も兵士のはしくれ。
ほかのものもいたことですし。あの場はああするしかなかったですけど…
正直なところを申し上げて…私はどうもアルス将軍のなさ利用が納得いかないのです…」
いいつつ、マイアスは軽くため息をつき。
「…女傭兵の登用…その傭兵にすき放題をやらせて…
異を唱えておられたお父上、グランシス将軍の病死の報。
正直、その忙殺ではないか…などと思っておりましたところ。
昨日、ジェイドさまが町に戻られになった、という報告を上にいたしましたところ。
その…アルス将軍の手のものか存じませんが。
ともかく、ジェイド様と共に居られたかたがたの容姿を詳しく聞きだし。
そして、そのしばらく後…私の直接の上司が言うところによりますと…
その…昨日の夕刻以降、城門は閉ざされっぱなし、中の様子もわからない。
当然、デーモンが出てきたときも城からの増援もなし。
何が起こったのか城に向かったものは…誰一人として戻ってきません…
こんな状況を私は何とかしたいんです!」
ほとんど悲鳴というか懇願に近い声。
「あ゛~。まあ、普通の人間には状況は理解しがたいでしょうね…」
「多分オレやリナの名前を聞いて。
城に閉じこもったんじゃないのか?覇王のおっさんは?」
しみじみいうそんなリナの台詞に続けていっているガウリイ。
「だとしても。よ。どうして町にデーモンなんか発生させる必要があるわけですの?」
「ふむ。目くらまし…ではないのか?
かつての、冥王も、デーモンの大量発生を目くらまし、として。
導入し、われ等竜族や神族の目を欺き。そして、魔王を復活させた。」
そんなメフィの言葉に淡々と語っているミルガズィア。
「まあ、それもあるかもしれないけど。
でも、確か、エルさんたちいわく、何でも魔族側は、
あと、ゴキブリからきいたんだけど…」
そういいかけるリナの言葉に。
「リナさん!ですから、その『ごきぶり』というのはやめてくださいぃぃ!」
「「な゛!?」」
突如として何もない天井から、ふとしゅつげんしている、
まるでどこぞの世界のラーメンの器の模様のようなものを、
その襟首にとつけ、真っ黒い、どこにでもあるような神官服、しかも黒。
をまとっている人物が突如として湧き出てくる。
いや、出現してくる、というべきか。
リナにとっては、湧き出てくる、という表現がとてもしっくりきているのだが。
「-な゛!?魔族!?」
いいつつ、思わず身構えているメフィ。
そんなメフィに。
「…メフィ、うかつに仕掛けるな…」
声を低くしつつ、そんなことをいっているミルガズィア。
そんな彼らの目の前で。
「リナさん、何回もいいますけど、その呼び方はやめてください!」
なぜか、丁寧にもいつのもにこ目から、涙を少したたえつつ、
そんな抗議の声をいっている、どこにでもあるような錫杖をもっている、
年のころならば二十歳前後くらいであろうか。
いかにも、人のよさそうな笑みを浮かべている一人の男性。
だがしかし、この男性が普通の人でないことは。
虚空からいきなり出現したことでも明らか。
思わず、それをみて、絶句しているマイアスとジェイド。
「なら、生ごみ、もしくはバシリ神官。」
「…しくしくしく…」
そんなリナの言葉にその場になぜかいじけて、うづくまり。
その場になぜかのの字を書き始めているその神官。
「あ、あの??この人は?」
どうにか気を取り直し、とりあえず、知り合いらしいので問いかけるマイアスのその言葉に。
「ああ、これ?ゴキブリ神官。」
「ですからぁ。その呼び方はやめてくださいぃぃぃ…」
本気でなぜか、胸の前で手を組み合わせて、懇願しているその男性の姿に。
「…というか、あの獣神官まで手玉にとっているリナ殿はさすがというか…」
などと、一人違う方面でしみじみと関心しているミルガズィア。
「?おじ様?何なんですの?この魔族?」
おそらくは魔であろう。
気配はまったく人であるが。
虚空から出現したのが明らかであるがゆえに。
そんなメフィの言葉に。
「メフィ、お前も聞いたことがあるであろう?
降魔戦争の『竜を滅する者』ゼロスの名前は…」
「ゼロスって…これが!?」
まあ、リナにいいようにいわれて、涙を流しているその男性が。
竜族などの間で恐怖として語られている魔族など。
…信じろ、というのが無理、というか、別の意味で驚愕するのもうなづけるのであるが。
「…あ、あの?ジェイド様?いったい…」
さきほどから、何か、『魔』という単語が連続して出ているのは気のせいであろうか。
そんなことを思いつつ、横にいるジェイドにと問いかけているマイアス。
まあ、気持ちはわからなくもないが。
そんなマイアスをみつつ、そんなことをふと心で思いつつも。
「で?何だって、そのバシリ神官さんが、またこんなところにでてきてるんだ?え?」
などといっているルーク。
まあ、伊達に数回、リナとかかわってこの男性に出会っているのは伊達ではない。
「ルークさんまでひどい!ゼロスです!ゼ・ロ・スぅぅ!」
叫ぶそんな男性-ゼロスの言葉に。
『ゴキブリゼロス。』
面白いまでに、ルーク、リナ、そして面白いことにミルガズィア。
その言葉が完全にと一致する。
「ひ、ひどい!みんなしてぇぇぇ!どうしてそんなに僕をいじめるんですかぁぁ!」
いいつつ、なぜか、壁に向かって、いきなりのの字を書き始めているゼロスの姿。
「…な、何か…もっと怖い姿を連想していたのですけど…
これがあのドラゴンスレイヤー???」
そんなゼロスを眺めつつ。
呆然とつぶやいているメフィの姿。
「で?どうしてゼロスさんはこんなところに?」
一人、冷静にそんな風にゼロスに向かって問いかけているミリーナの言葉に。
「ミリーナさぁん、ありがとうございます!名前を呼んでいただいて!」
…どこか、感謝する場所がずれているゼロス。
「何なら、バシリゼロスさん、でもいいんですよ?」
さり気にさらりとミリーナもまた、ゼロスに対してそんなことをいっていたりするが。
「ひ、ひどい、みんなして、みんなして、僕をイジメルゥ……」
いじいじいじ。
丁寧にもどこから調達したのか、はたまた作り出したのか。
人魂オプションまでくっつけて。本格的にいじけ始めているゼロスであるが。
「-で?何しにきたんだ?ゼロス?」
いいつつも、にこやかに。
いつの間にか抜き放った抜き身の剣をゼロスの頭の真上にと突きつけて。
そんな質問をしているガウリイ。
ちなみに、剣のキレアジに、とある力が上乗せされているのは、当然、といえば当然のこと。
「しくしくしく。いや、別に何しにって。
とりあえず、貧乏くじを引いたと思われる覇王様を笑いに…」
さらりというそんなゼロスの言葉に。
「…おまえ…それでも仲間か?」
あきれた口調でいっているルーク。
「ちっちっちっ。ルークさん。僕は別に覇王様の配下、ではありませんから。
面白いことには参加しないと、人生損でしょ?ね♡」
「あんたは人ではないでしょうが…」
あきれてつぶやくリナの言葉に。
「ですからぁ!いったい何がどうなっているのか、説明してくださいぃ!」
「…私も知りたいです…」
会話についていけない、マイアスとジェイドの叫びが。
しばし、部屋の中にと響き渡ってゆく……
-続くー
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あとがきもどき:
薫:うーん。
やっぱりメモリ増設しないとやばいのかな?
・・・・・そんなにいれてないのなぁ(多分・・・・・
どれが必要なのかそうでないのかもわかんないから。
とにかく、入れるだけ入れて、何もアンインストールなんてしてないからなぁ。
間違えたらこわいもん・・・・。
とりあえず、次の休みにデオデオさんにききにいってみよう。
話によれば、どうにか今回もボーナス出る予定らしいし。
・・・・・・今年は去年お年玉渡せなかったから二年分…渡さないとなぁ・・・・。
姪とか甥に・・・・(従姉妹の子供)
まあ、近況報告はおいとくとして。
それはそーと、とある人にメールすでに八回送ってるんですけど・・・・。
何か返事がない、というメールが・・・・(汗)
何でぇぇぇ!?
とりあえず、昨日で八回目のメール送りましたからね、はるかさん(こらまて)
(超個人的)
何はともあれ。
次回でようやく城の中に突入…かな?
ではではvまた、いつかv
・・・・・今年中にこれ、完結…できるかなぁ・・・・(したいなぁ・・・・しみじみ・・・・)
んでは・・・・・・
2003年12月12日某日